第322話双子同士の邂逅と害獣発見
ボウのパンツを確認した後、何故か妹のホウのパンツまで
って言うか、ゴナタがホウのスカートをめくったからだ。
「お姉ぇっ! こっちも色違いだけどお姉ぇのマーク入ってるぞっ!」
「や、やめてくださいっ! 一体あなたは誰なんですかっ!」
確かにゴナタが言う通りに黄色の下着に蝶のマークが見える。
ただ無理やりにスカートを捲り上げられ、珍しくホウが怒っている。
まぁ、ホウじゃなくても普通は怒るけど。
あ、でもユーアは私がめくっても普通なんだよね。
年頃なのに、色々と羞恥心と危機感が足りないんだよね、きっと。
かと言って、本気で怒られても傷付くけどね。
だから今のままが一番いいんだよ、私の前だけでは。
「あ、ゴメンなっ! ワタシはお姉ぇ…… じゃなくてスミカ姉ぇのパーティーメンバーのゴナタって言うんだっ!」
「私はこの双子のゴナタの姉のナゴタと申します。ゴナタが突然ご迷惑をおかけしてしまい、申し訳ございません」
このタイミングでボウとホウの姉妹に自己紹介をするナゴタとゴナタ。
ゴナタは無邪気な笑顔で、ナゴタは優しく微笑んでいる。
「あ、はい、わたしは妹のホウです。姉は――――」
「わたしがホウの姉のボウだ、ですっ!」
そんな二人に少し委縮しながら答える姉妹。
その若干畏怖する理由は――――
「あ、あのぉ、姉妹で大きいんですね、そ、そのぉ~」
「う、うん、わたしたちも将来大きくなれる、ますかっ? 胸がっ!」
『はっ?』
それはナゴタとゴナタの胸部装甲を目撃しての事だった。
『いや、いや、この流れでその質問は絶対におかしいでしょっ!』
ボウとホウを見て心の中でツッコミを入れる。
子供は場の空気より、興味が優先なんだなって。
「え? む、胸かい? ワタシはお姉ぇみたいになりたいんだけど……」
「私もお姉さまのように可憐で儚いのに憧れるんですけど……」
同じ双子の質問に真面目な顔でそう答えるナゴタとゴナタ。
何か嫌な話になってきたな、と思う。
『………………』
でも私みたいにって何?
成人でも年齢疑われるんだよ胸部装甲を見て。それでもいいの?
ナゴタの儚いって、まさか儚い大きさって意味じゃないよね?
「そ、そうなんですか、確かにスミカお姉さんはきれいですけど、成人までには大きくなるから、きっと今の憧れとは変わってくると思われますが……」
「そうだ、ですっ! スミカ姉ちゃんはわたしたちと年齢変わらないから、まだ少しは大きくなると思うし……」
「ん? お姉ぇはもう成人してるぞ? だから憧れるんだろう」
「そうですよ、お姉さまは成人としても完成されてますから憧れるんですよ」
ホウとボウの疑問に、何故か誇らしげに答えるナゴタとゴナタ。
『………………』
うん。
二人がそう思ってくれるのはいいんだけど。
憧れのお姉さんみたいになりたいって。
でも、さ、
「えっ! 成人? それで完成ってっ!?」
「えええっ! せ、成人ですかっ!?」
そんな事言うとホウとボウがこっちを見るから。
そして私と目が合うと視線を逸らされたけど。
「あ、そう言えば自己紹介で思い出したけど、ハラミがいないんだけど」
気まずくなる前に話題を変える。
「え? 確かにいなくなってますね?」
「あれ? お姉ぇがカイという人と話してる時はいたんだけどな?」
3人でキョロキョロと周りを見渡すが見当たらない。
まぁ、ハラミはお利口だから後から勝手に合流するだろう。
「姐さん、そのハラミって方がいなくなったんですか?」
「スミカ姉ちゃん、誰なんだいそれ?」
私たちを心配してか、カイとボウが声を掛けてくれる。
「うん、こっちは気にしないで大丈夫。かなりお利口だから飽きたら戻ってくると思うから。どこか適当に散歩に行っただけだよ」
「姐さんがそう言うならいいですが。ならもう行きましょうか?」
「お利口? ふ~ん、でも子供がこんなところ見ても何もないけどなぁ?」
私の返事を聞いて少しだけ不安気なカイとホウ。
うん、大丈夫。
そんな心配しなくても、ハラミはまだ子供だけど賢い魔物だから。
※
「それでさっきは何やってたの? ボウとホウも乗せて」
後ろを振り向き、ガラガラと引かれている荷車を見て聞いてみる。
その上にはまだボウとホウが乗っており、軽く揺られていた。
「大豆の収穫をしてたんですよ姐さん。その袋の中身がそうですよ」
カイがすぐに教えてくれる。
荷台に上には膨らんだ麻袋が大量に乗っている。
「あ、それがそうなんだ。それを取って来てどうするの?」
「はい、これから姐さんの話だといくらあっても足りなさそうなので、収穫をしてたところです。それと新たに土地を開墾をしてもらったので、規模を広げて栽培も始めたんですよっ!」
嬉しそうに微笑みながら話すカイ。
「開墾? それと規模って、それを昨日の今日で広げたって事?」
「はいそうですっ! ナジメさまが昨日広げて下さったんです」
「え? ナジメ、昨日穴埋め以外にもそんな事してくれたの?」
「はい、それはもうあっという間に終えてしまいましたよっ!」
「ね、だから言ったでしょ? ナジメは土魔法の達人だって」
「は、はいっ! 姐さんの言う通り凄い人でしたっ!」
その光景を思い出したのか、かなり興奮気味に返事をするカイ。
私も孤児院を整地してもらった事を思い出す。
確かにあの腕前は見事だった。さすが大陸一番を謳うことはあるなと。
「あのぉ、お姉さま」
「お姉ぇ、あのさぁ」
カイと話をしているとナゴタとゴナタが割って入ってくる。
「うん、何? ナゴタとゴナタ」
「さっきからアンダーラビットがちょこちょこと見え隠れするんですが?」
「うん。多分あっちの岩の下から出てきてるみたいだなぁ」
「アンダーラビット? て、どんな生き物」
聞いたことのない名前に二人に聞き返す。
「アンダーラビットは、普段は穴の中に巣を作り、住んでいる魔物で――」
「あ、ワタシも説明したいなナゴ姉ちゃんっ!」
「ふふ、どうぞ。ゴナちゃん」
「うん、ありがとなっ! ナゴ姉ちゃんっ! それでアンダーラビットは――」
「うん」
何故かナゴタから譲られた、ゴナタの説明はこうだった。
普段は地中で過ごしている事。
性格は臆病であまり人間は襲わない。
ただ仲間が襲われると、一斉に襲い掛かってくる。
武器は鋭い前歯と前足の爪。
30体前後の群れで暮らしている。
肉は美味しい。
「それと作物を喰い荒らす事で有名だなっ! 一晩で街の畑を全滅させたって話も聞いたことあるんだっ! もっと大きな群れだったかもしれないけど」
「そうですね、それと非常に強靭な後ろ足での攻撃も侮れないです。それに跳躍も素早さも脅威となる武器です」
ゴナタに続き、ナゴタの注釈も入った説明が終わる。
ナゴタはいつも通りだが、ゴナタは少し得意げに見える。
ただ腰に手を当て胸を逸らすから、巨大な山が強調される。
ナゴタは胸の下で腕を組み話すので更に目立っている。
そんな凶悪な4つの膨らみに男どもの視線が集まる。
「「「ゴ、ゴク……」」」
『…………………』
まぁ、かくいう私も自然と見ちゃうんだけど……
あそこまでじゃないけど、似たようなもの持ってるし。
「…………って、事はこの街の大豆が食べ尽くされるって事ですか? それとどうして今までいなかったのに突然現れたんですか?」
いち早く、魔の巨大な膨らみから目覚めたカイがナゴタたちに尋ねる。
それはこれからの街の発展に欠かさない素材を心配しての事だろう。
ただし、その目は二人を見ていなかった。そして真っ赤だった。
「カイさん?でしたね。恐らくアンダーラビットはここを襲った魔物の影響か、環境が変わってここに移り住んだかもしれませんね。原因はハッキリは言えませんが」
カイに聞かれて、ナゴタがそう答える。
それを聞いたみんなはお互いに顔を合わせ不安気な表情に変わる。
「そ、それでは街の人たちで退治しますっ! だったら大丈夫ですねっ!」
「そうだな。一度退治すれば、他の群れは殆ど来ないからなっ! それがお互いに喰い尽くし、食料が無くなるのが嫌なのかわからないけどさっ!」
退治と聞いて、今度はゴナタがみんなに説明する。
「そ、そうですかっ! 姐さんたちは先に行っててください。ゴナタさんが言った岩を調べてみますからっ!」
カイはそう言い、森の付近にある大きな岩を見る。
その岩は5メートル程で、ゴナタが言うにはその付近から出てきたらしい。
「だったら、ワタシが退治するからいいぞ? ナジメもお姉ぇの街の為に頑張ったって聞いたからさっ!」
「そうですね、それなら私とゴナちゃんで掃討いたしましょう。私たちも負けてはいられないですからね」
「ナゴタ、ゴナタ。あの岩の後ろの穴に39体いるね」
二人の協力の申し出に、私は正確な数を教える。
あまり深くないところに、動くマーカーが映ったからだ。
「はいっ! ありがとうございました! お姉さま」
「うん、ありがとなっ! お姉ぇっ!」
「あ、あの、姐さんもナゴタさんたちも、ここは俺たちがやりますよっ! 姐さんはいいとして、ナゴタさんたちみたいな少女に任せるのも……」
勝手に進んでいく話にカイが口を挟む。
それは、私たちにそこまでさせる訳には。って申し訳ない気持ち。
そしてナゴタたちを心配する気持ちが混ざっていた。
なんでその中で、私だけが
「まぁ、いいから見てなって。あれでも私よりランクが上のBランク冒険者だし、それにパーティーメンバーだからね。あと――――」
「えっ! 冒険者として、姐さんより上っ!?」
「スミカ姉ちゃんよりっ!?」
「えっ!」
「「「っ!!!!」」」
「あと、素の強さに関しては私より上だから」
「「「「えっ!?」」」
驚くみんなに事実をそう付け足す。
あの姉妹には元々、それに今でも普通の状態では敵わないから。
『それに、前よりどんどん強くなってきてるしねっ!』
魔物に向かい歩く、頼もしい二人のシスターズの背中を見てそう思った。
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