第302話SS【剣も魔法も使える少女】は〇世界でも無双するっ!




 ※このお話は人物以外本編とは関係ありません。

  魔法や武器の名称も、ある人物の想像の物となっています。


  300話記念のお話になります。





「『ストーンバレット』50連一斉掃射っ!」


 ユーアを狙うゴブリン共を石の魔法で一掃する。


「ありがとうスミカお姉ちゃんっ!」



「こっちは『アイスアロー』乱れ打ちっ!」


 ラブナを囲んでいるオーク共を氷の弓で穴だらけにする。


「スミ姉っナイスよっ! 助かったわっ!」



「まだまだ『ファイヤーストーム』『ウインドトルネード』っ! 私たちの前の数多の敵を焼きつくせっ!」


「お、お姉さまっ! す、素敵ですっ!」

「お姉ぇっ! カッコ強いぞっ!」


 ナゴタとゴナタを襲っているトロール共が灰と化す。



「ね、ねぇね、こっちも頼むのじゃっ!」


「任せてっ! この聖なる蝶聖剣で一撃だよっ!『エクス、カ〇バァー約束された蝶の一撃』っ!!」


 ナジメに飛び掛かってきたワイバーン共を一瞬で消滅させる。


 そして聖剣から放たれた眩い光の奔流が、他の魔物を飲み込み、私たちの前に光の残留が残ったままの道を作りだす。



「早くっ! みんな私に付いてきてっ!」


 私は後ろを振り向き大声で叫び、一番に光の道に走り出す。



「「「はいっ!」」」



 その掛け声に反応して、シスターズのみんなも後に続く。



 恐らくこれで暫くは時間が稼げるだろう。







「みんな大丈夫? 『エリアヒール』」


 森の大木の陰に隠れながら、傷を負ったみんなに治癒魔法をかける。



「うん、ありがとうスミカお姉ちゃんっ」


 ユーアが汚れた体を拭きながら笑顔で返答する。


「アタシも大丈夫よっ! スミ姉の魔法で助かったから」


 水を口に含みながら話すラブナ。


「お姉さま、私たちも問題ありません」

「うんっ! うんっ!」


 返事しながらも周囲に視線を這わすナゴタとゴナタ。


「それにしても、ねぇねがあんなに多種多様な魔法を使えるとは思わなかったのじゃ。わしもラブナもとうに追い抜かれておるのじゃ」


 最後にそう話すのは、この大陸一番の土の魔法使いナジメ。



「うん、確かにそうだね。正直私もびっくりしたもん。装備を脱いだら魔法が自由自在に扱えるなんてね。もっと前から練習しとくんだったよ」


「それ以外でもお姉さまは、聖剣の所持者にも選ばれましたし、魔法も全属性扱えるしで、もう世界の大賢者を名乗ってもよさそうですね」


「う~ん、そうだね。でもそうなると色々と有名になるから嫌だなぁ。私はみんなの為にこの力を使いたいんだから」


 ナゴタの提案に悩みもせずにそう返す。


 私のこの力は世界だなんて、会った事もない人々や、知らない誰かを守るためではなく。もっと身近な大切な者を守るためにあるんだって思う。



 おおよそチートとも呼ばれそうなこの力。

 それは装備を脱いで魔法の真似事をしたら簡単にできたものだった。 


 無限の魔力と全ての属性を操れる魔法使い。

 聖剣も、そしてあらゆる武器も難なく扱える戦士。


 それが装備を脱いだ私に備わっていたらしい。

 まるで元々の装備が、その強力な力を封印していたかのように――



 だが、その力に目覚めると同時に街や大陸を大災害が襲った。

 数百年に一度、各地に潜む魔物が一斉に大陸中の生物を捕食する行動。



 『モンスターディザスター』



 その災害が、私の力に共鳴するかのように起こってしまった。

 

 そうして、みんなを守りながら辿り着いたのが、今いるビワの森だ。

 偶然かどうかわからないが、ここはこの世界で私が初めに顕現した場所だ。




「そう言えばお腹減ったね。何か出すから待ってて、て、あれ?」


 簡単に摘まめるものを出そうとしたが、アイテムボックスが開かなかった。


「あ、やっぱりスミカお姉ちゃんは、もう……」


 ユーアがそれに気付き目を伏せる。


「うん、そうだったね、忘れてたよ。今までの癖だね、きっと」


 そんなユーアを撫でながら思い出す。

 魔法が使えると同時に、メニュー画面もアイテムボックスも喪失した事を。



「ん~、マジックバッグでも買っておくんだった。収納魔法の中身がまさか無くなるなんて思っても見なかったし、この力に目覚めたらさ」



「はい、どうぞお姉さま。味も食感も悪い物ですが」


 空を見上げ、小さく愚痴る私にナゴタが黒いパンを差し出してくれる。

 きっと保存がきく食材なんだろう。


「ありがとね、ナゴタ。あ、そうだっ!『リタイム』」


「え? お姉さま、何を?」


 ナゴタの掌の上のパンに魔法をかけてみる。

 これは癒しの魔法と言うよりは、物の時間を巻き戻す魔法。



 すると――――



「あ、温かいです、お姉さまっ!」


 ホワホワと湯気が出て、白い焼き立てのパンに変わった。



「よし、成功だねっ! それじゃみんなのパンも出来たてにしちゃうから持ってたら出してねっ! パン以外でも悪くなったものでもいいよっ!」


 その魔法の出来栄えを見て、みんなにそう声を掛ける。



「うんっ! ボクはお肉をお願いしますっ!」

「アタシはスープでお願いするわっ! スミカ姉」

「私はパンで結構です、お姉さま」

「ワタシはこの串焼きお願いなっ! お姉ぇ」

「わしは前に捕まえた魚なんじゃが、ねぇねよ」


「うん、私に任せてっ!」


 それぞれがマジックバッグから古くなった食材を取り出す。

 それを私の万能魔法で出来立てに戻していく。


 

『剣や魔法が使えても、みんなの役に立てて嬉しいよ』



 笑顔で口に運ぶみんなを見て、私も笑顔になった。







「ス、スミカお姉ちゃんっ! 起きてっ!」

「ねぇね、起きるのじゃっ!」


「何っ! また魔物が来たのっ!?」



 すぐさまユーアとナジメの声に反応して目を覚まし、体を起こす。

 二人の今の時間は見張りをしているからだ。



「お姉さまっ!」

「こら、ラブナっ! 早く起きろっ!」

「う~ん、ゴナ姉って、あっ! また来たのアイツらっ!?」


 近くに寝ていたナゴタたちもすかさず起きだし、それぞれに武器を手に取る。



 魔物の襲来は、一日に約10回ほどだ。

 それを3日間、この薄暗い森の中で迎え撃っている。


 そんな中で今回のように、見張りを立てて交代で仮眠を取っていた。

 だがそれもそろそろ限界だ。

 体力もそうだが、気力が持たない。


 旅に慣れているナジメも姉妹の表情にも陰りが見られる。

 冒険者になったばかりの、ユーアやラブナは恐らく限界が近い。



「う~、もういい加減頭に来たっ! 睡眠不足はユーアの成長にも悪いしっ! 乙女のお肌の天敵なんだよっ! だから私が殲滅させるっ!」


 みんなの前に一歩踏み出し、数多の魔物に向かって咆哮し睨みつける。


「え? スミカお姉ちゃんっ?」



「今までは大陸のダメージを心配して魔法を抑えてたけど、もう手加減しないよっ! どうせ私の魔法で治してやるんだからっ! そしてゆっくり寝るんだからっ!」


 正直もう我慢の限界だった。


 だから全力で殲滅しようと決めた。

 ユーアと私の睡眠を妨げる存在を。



 だが既に、私たちの四方は魔物だらけだ。


 空を飛ぶ数々の飛竜や、地を駆ける大量のウルフ。

 草むらにはゴブリンや、離れた所には地竜やオークも見える。


 見えるだけでも、その数は万を超えるだろう。



「いくよっ!」


 私は空に向かい勢いよく両手を掲げる。


 すると上空に、幾何学模様の魔方陣が浮かびあがる。

 その大きさは、見える範囲の空を彼方まで覆いつくす程だ。


 恐らくこの大陸全ての空を埋め尽くしている。


 そして私は全力で魔法を放つ。

 ユーアの成長とみんなのお肌を守るために。



「魔物なんて全部滅んじゃえっ!『エク〇プロ――ジョン広範囲爆炎魔法』っ!!」


 

 ドゴォォォォ――――ンッ!!



 私が放った爆炎魔法は、視界に映るもの全てを燃やし尽くし消滅させた。

 目の前の景色も空も森も、もちろん魔物も全て業火に包まれ火柱が上がる。



 そうして、この大陸からは私たち以外の生物がいなくなった。



 ただそれは一瞬の出来事で、この大陸も森もコムケの街の人々も

 みんな元通りになった。



 それは私のチート魔法で全てを元通りに戻したからだ。




 だけど、それを見届けた後、



『あ、さすがにもうダメかも。全力出し切って疲れちゃったし……』



 その後、とうとう力を使い果たし、私はゆっくりと眠りについた。




――――――




「ス、スミカお姉ちゃんっ! 起きてっ!」


「何っ! また魔物が来たのっ!?」


 体を揺さぶられる感触と、私を呼ぶ声ですぐさま体を起こす。

 見張りのユーアの声に危険を感じたからだ。



「へ? 魔物って何? スミカお姉ちゃん」

「え? あれ?」


 身構える私とは打って変わって、ユーアはキョトンとしている。



「そうじゃなくて、もうみんな迎えに来てるよ? 今日はピクニックに行く日でしょう。ハラミもお外で待ってるよ」


「あ、ああ、そうだったね。みんな待ってたら寝ちゃったんだっけ」


 ユーアの少しだけ怒った声に、我に返り思い出す。



 今日は朝からシスターズ全員で息抜きのピクニックに行くんだっけ。

 それぞれがご馳走を持ち寄って、湖に泳ぎに行こうって。



「う~~ん、あれ? 何か変な夢を見てたような――――」


 何かおかしな夢を見たようなと、欠伸をしながらふと思い出す。

 ただその内容は頭に浮かんでこなかった。



「スミカお姉ちゃ~~んっ! 早くぅっ!」


 レストエリアの玄関ではユーアが大声で私を呼ぶ。



 そんな中、待たせてしまった外のシスターズたちは、


「もう、スミ姉は、今日呼んどいて待たせないでよねっ!」

「ふふ、きっとお姉さまは疲れてるんですよ、ラブナ」

「そうだぞっ! お姉ぇはいつも誰かを救っちゃうんだからなっ!」

「ねぇねっ! 手洗いを貸してなのじゃっ! お腹が痛いのじゃっ!」


 それぞれが笑顔でわちゃわちゃと騒いでいる。

 お腹を押さえているナジメだけは涙目だけど。



「おっ待たせっ! それじゃレッツゴーっ!」


「「「はいっ!」」」


 揃ったところで号令をかけ歩き出す。

 そんな私にみんなも笑顔になる。


 今日は天気も気温も風も心地いい。

 絶好のピクニック日和だ。



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