SS会議という名の乙女子会

第246話それぞれの目標って?




「みんなぁ~、傾注、けいちゅう~~!!」


 「パンパン」と手を鳴らしてシスターズの意識を私に向けさせる。


「はいスミカお姉ちゃんっ!」

「何よ? モグモグ。スミ姉」

「はいお姉さまっ!」

「あ~ん。ん、何だい? お姉ぇ」

「どうしたのじゃ、ねぇね。モグモグ」

『ばうっ!』


「何って? ラブナとゴナタとナジメは忘れてるの? 今日はこれからの私たちの活動予定を決めるって言ったじゃない。だから今日は呼んだんだよ? ケーキ食べに来たわけじゃないんだよ?」


 私はユーアにケーキを食べさせてもらっているラブナとナジメ。

 そしておこぼれをもらおうと、口を開けているゴナタを注意する。 


 今の説明の通りに、私たちの予定を決める為に集まってもらった。

 今後の予定と、それぞれの方針を決めてもらう為に。


 そうは言っても、何年後とか、何を叶えたいとか大袈裟な話ではなく、

 ある程度の数か月先の話と、各々やりたい事を話す。そんな場を作った。


 因みに今私たちがいるのは、ナゴタたちが住んでいるレストエリアの外の空き地。

 ここは森の中を歩いて、30分以上も掛かる結構深い森の中。


 そこにお茶とテーブルセットを設置して、わいわいと話している。


 今日は天気も良くて、日差しも強くなくて絶好の森林浴日和だ。

 まぁ、癒されに来たわけじゃないから森林浴はしないけど。


 風も心地よく吹いていて、干した布団が気持ちよさそうに揺れている。

 ナゴタたちが気候が良くて干したものだろう。


 そこに洗濯物も干してあるが、私は見なかったことにする。


『………………』


 だって、どれもこれもサイズが異様だと一目でわかる。

 そんな規格外のブラジャーが干してあるんだもん。

 私と同じ「Cランク」のラブナのも混じってるけど。


 そんなこんなで今のこれからは、ちょっとだけ大事な話になる。



「もちろん覚えてるわよスミ姉。だって孤児院の話もあるんでしょ?」

「うん、そうだね。ラブナ」


「ワタシも覚えてるぞお姉ぇ。だって大会の話もあるんだもんなっ!」

「まぁね」


「わしもきちんと覚えておるのじゃねぇね。報告もあるからな」

「うん、それは後でお願いね」


「私とユーアちゃんももちろん覚えていますよ。お姉さま」

「うん、ボク覚えてたよっ! 孤児院の話もあるもんね」


「そりゃ、みんなが覚えてもらえててホッとしたよ。 なんて言わないけどね? 昨日の休みの前の話だし」


 そう、これはアマジとの戦いが終わった帰り道で決めてあった予定だ。

 なので一日休みが入ったからって忘れる訳もない。


「それでどういった事から始めるんですか?」


 ナゴタがみんなの分の紅茶を淹れ直しながら聞いてくる。


「そうだね、まずはみんながしたい事聞いておこうか。それが今後の予定にも絡んでくるかもしれないからね。それによって予定が増減するかもだし」


 私はみんなを見渡しながら、そう聞いてみる。



「ボクはやっぱり孤児院の子たちの事ですっ!」

「あ、アタシもユーアと一緒だわっ!」


 「はいっ!」と手を上げてユーアとラブナが発言する。


「うん、それについては予定に入れてるから後で話すね? 他には?」

「あっ」


 するとすぐさま「はい」とユーアが手を上げて話し出す。


「う~んとね、もう少しお料理を練習したいのと、もう少しハラミと遊びたいのと、もう少しゴマチちゃんもメルウちゃんとも――――」


「ちょっと待ってユーア。やりたいことが多すぎない?」

「えっ?」


 私はユーアの発言にストップを掛ける。

 本当は多い少ない以前に、途中から願望みたくなってるし。


 まぁ、それはそれでユーアのやりたい事が聞けたからいいんだけど。


「それともう少しパーティーとしてやりたい事ないかな? 依頼もお料理も大事なんだけど、どっちかっていうと私とユーアの話だもんね?」


 私はやんわりとユーアに説明する。


「そうよユーアっ! 個人的な事でもいいんだけどスミ姉が言いたいのは、パーティーに関わる何かを聞きたいのよっ! ユーアがどうなりたいのかをねっ!」


 私の説明にラブナが付け足して説明してくれた。


「だ、だっだらボク、もう少し練習したいですっ」

「練習?」

「はいっ! もう少し戦いの練習をしたいですっ!」

「それって、強くなりたいって事?」

「はいそうですっ! スミカお姉ちゃんっ!」


 「シュタッ」と手を上げて私の問いかけに元気よく返事をする。


「うん…………」 


 そのユーアの気持ちは良く分かる。


 ユーアは元々私と冒険をしたいって言っていた。


 それは高ランクの私に守られながらの冒険ではなくて、ユーアも強くなって、私と対等な関係で冒険をしたいと願っていた。そうユーアの中では。


「あ、ならアタシも魔法の練習とか、基礎とか覚えたいわっ!」

「そうですね、私ももう少しコンビ技とか練習したいですね」

「ワタシも能力を使っても大丈夫なくらい訓練したいなっ!」

「わしも新技を覚えたいのじゃっ!」

『がうっ!』


 ユーアに触発されたのか、他のメンバーも続けて意見を出してきた。

 その全てが自身のレベルアップに関するものだった。


『まぁ、職業が冒険者なんだから強くなりたいと思うのは普通だけど、年頃の乙女たちが率先して言う事じゃないよね? でもみんながそう思うなら、私は協力するんだけどね』


 私は頼もしくもあり、残念でもあるシスターズのみんなを見てそう思った。



「それじゃ訓練については先に決めちゃおうか? ユーアは私と一緒ね?」

「はいっ! スミカお姉ちゃんお願いしますっ!」


「で、ラブナは……ナジメが一番最適かな? 魔法に関しては。それ以外の基本や、動作の事はナゴタとゴナタが最適だから、二人が空いた時間に適度に教えてもらってちょうだい」


「わかったわよっ! スミ姉ぇ。師匠が3人になったわよっ!」



「それでナゴタとゴナタは――――」


「あ、私たち姉妹はアオウオ兄弟に、コンビ技とか教わる予定です。それとたまに他の冒険者たちの指導に行かないといけません」


「え? あの兄弟ってこの街に残るの?」


 意外な名前が飛び出したので聞き返す。


「あ、それが昨日街中で会ったんだけど、あの3人は暫くこの街に残るって言ってたんだっ! な、ナゴ姉ちゃん?」


「へ? 三人って、サバもいるって事?」


「はいお姉さま。ゴナちゃん言う通りです。それにサバではなく、バサですね。それであの3人はアマジの父のロアジムさんに雇われたみたいです」


「そうなんだよ。それとゴマチちゃんの家庭教師みたいな事も言ってたなぁ?」


 ナゴタに続き、ゴナタも補足して、そう教えてくれる。


「ゴマチの家庭教師って、それ絶対に躾の話じゃないよね? きっと何かやらかさないように監視するだけのような気がするなぁ?」


 昨日も普通にアマジといたけど、ユーアを襲った件の罰って一体?

 それともアマジか、あの3人がいる事が罰になってるんだろうか?


『そもそも、ゴマチになんの罰を与えるか聞いてないから知らないや。もしかしたら家庭教師ってのがそうなのかもしれないけど、今度会ったら聞いてみようか?』


 何かモヤモヤが残ってはいるが、人の家の躾に関しては私が口を挟むのもお門違いだ。ましてや相手は貴族の可愛い孫娘だし。下手に強く出れないし。


『それにユーアが厳しい罰を望んでる訳もないし、むしろ遊びたいみたいな事もさっき言ってたし。それこそ外出禁止になったら悲しむだろうしね? う~ん、簡単そうで意外とデリケートな問題だなぁ……』


 ゴマチとユーアが一緒にいた時の、笑顔を思い出しながら一人悩んでしまう。


「あ、あのねぇね。わしじゃが……」


 おずおずと小さい手を上げるナジメ。


「あ、ごめんごめんっ! ナジメはラブナの魔法以外は私とユーアと訓練ね?」


 ナジメは見た目はあれだが、この中では一番能力が突出している。

 身体能力に関しては、ナゴタとゴナタ程ではないが、それ以外の能力が高い。

 それに非常に多様性のある威力のある魔法も使える。


 なので私との訓練にも最適だし、そこにユーアを加われば尚更幅が広がる。



「え? ねぇねが直々に教えてくれるのかのぅ?」


 なんか手をにぎにぎして嬉しそうに聞いてくる。


「うん、って言いたいけど、私魔法はからっきしなんだよ? 色々特殊すぎるし。だから教えられるのは戦略とか駆け引きとかだね? どっちかっていうと。後はナジメの練習台くらいかな?」


「そ、それでもわしは嬉しいのじゃっ! よろしくなのじゃっ!」


 今度は八重歯も見せてにこにことさっきよりも喜んでいる。

 そんなナジメをみんなが見てる。きっと微笑ましく見えたのだろう。



「それじゃ訓練の話はこれで終わりね。それでも各自でやりたい事は好きにしていいよ。みんなが強くなると私も嬉しいから。それとハラミも暇な時はみんなに協力してね?」


 そう言ってシスターズを見渡し一度話を閉める。


「はいわかりましたスミカお姉ちゃんっ!」

「わかったわよスミ姉っ!」

「お姉さま承知いたしましたっ!」

「わかったぞお姉ぇっ!」

「うむ。了解したのじゃっ! ねぇね」

『ばうっ!』


 これでひとまずは強くなるための話し合いは終わり。

 細かい内容はその都度話し合えば問題ないし。


「次はちょっと込み入った話なんだけど、直接パーティーには関係ないから、何か適当に口に入れながら話そうか?」


 私はみんなを見渡して次の話に入った。


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