第225話新技?[spinal reflex 改]&裏切者!?
「説明って言っても、そんな難しい話ではないんだよ。簡単に言うと
と、端的に説明を終える。
纏めて言うと単純にこれだけの事。
「…………それが目を閉じてた理由か?意識を集中するために」
「まぁ、それもそうなんだけど、それだけでは無理だね。で、もう少し補足すると、自分よりも圧倒的に強大な敵を前にして目を閉じた時、あなただったら何を感じる?」
人差し指を立ててアマジにそう問い掛ける。
「……それは恐怖。か?」
「正解だね。他には?」
「錯乱、するかもしれん。その恐怖に耐えられなければな」
「それも正解。ならその二つの感情を極限まで高めればいいんだよ」
「……お前は何を言っている、それでは逆だろう?その感情に飲まれたら戦いになどなりはしない。ましてやそれを高めるなどと正気の沙汰ではない。すぐさま殺されるっ」
と、アマジは疑惑と疑念の目を向け声高に反論する。
確かにアマジの言う通り、そんな精神状態を意図してできたとしても、強い恐怖で錯乱するだけで戦いなんて出来る訳が無い。直ぐに相手にやられるだけだろう。
「うーん、やっぱりそう解釈するんだ。それは私に言わせれば逆なんだけど。だって人間や魔物もそうだけど、生物である以上、生きる事に執着してるわけでしょ?その為に生まれてきたんだから」
「ああ、極論で言えばそうだ。生に絶望しない限りは、だがな……」
「だったら、自分が殺される恐怖と錯乱。それが目の前にあった時、生物は信じられない力を発揮するんだよ。死の結果に抗う為に、ガムシャラに、全ては生き抜くために。あなたにもそう言う事なかった?かなり修羅場を体験してるんでしょ?」
「そ、それは…………今それをお前に言う必要はない。それに人間はそこまで便利ではない、きっと自滅する、そして絶望する。俺が思うに。な……」
「……でも私はそう考え目を閉じさっきまで戦っていた。少しでも攻撃を受けたら、即消滅って。そんな風に自己暗示をかけてた。だから触れられた瞬間、その強い暗示で回避できた。生きようとする本能と脊髄反射の超反応を利用してね」
「………………」
1ダメージでも受けたら即終了。
そう条件付け自分を追い込み極限まで感情を高める事。
後は生きる本能が体を勝手に動かす。意志とは反して。
それが今回私が習得したかった『spinal reflex 改』だった。
そのプロトタイプを今回披露しただけ。
『それにこれを使いこなせれば殆どの攻撃を無意識で回避できるし、反射で反撃も出来るかもしれない。それとあの能力で体に負荷をかける状況も減るだろうしね……』
そうは言ってもまだ使い始めたばかり。
これを自在に発動できるのには、まだまだ時間がかかるだろうと思う。
「で、こんな感じで、私の考えも入ってたけど理解できたかな?誰にでも出来るかどうかってのはまた別の話ね?」
と、腕を下げ私は話を締めくくる。
「……お前は逆境になる程に強くなるのだな」
「……別にそういう訳ではないよ。ただ絶望を知ってるからこそ、二度とそうならないように強くなろうとしてるだけ」
私はトーンを落とし神妙な表情のアマジにそう返す。
「絶望を知っている?お前のその年でか?」
「まぁ、ね。でもそれは私がそう強く感じてるだけで、この世界の人にとってはもしかしたら……、あ、今のは無しね?ちょっと口が滑っただけだからっ」
と、私は慌てて口を噤む。
どうしても日が浅いせいか、私の世界とこの世界を別々に話してしまう。
この世界に慣れてないというか、今の私が話す状況でもない。
むしろ私はアマジに勝って話を聞く側だ。
「……別にお前の話にはさほど興味はない。だが絶望を知って強くなる。その話には些か興味が……いや、違うな、真っ向から否定したくなった。そして証明したくなった。絶望の先には絶望しかないということを。絶望を知って強くなるのは憎悪だけだということをっ」
「………………」
そう言い終えたアマジは武器を小剣と鉄甲に持ち替え姿勢を落とす。
その言葉には怒気や憤怒と言った強い感情が含まれていた。
何がそこまでアマジの逆鱗に触れたかなんて分からないが、この男と私の考えが相違なるものだという事ははっきりした。
今のこの場では決して交わることはないという事も。
「…………そう。ならもうおしゃべりは終わりだからそれを証明してみせてよ。その強くなった憎悪ってやつを使ってさ」
私はそう言って目を閉じる。
ならこっちはこっちで好きにやらせてもらう。
私もこの状況でやるべき事もあるから。
「なら行くぞっ」
その掛け声とともにアマジの気配が消え、
そしてすぐさま濃密な気配が増える。
殺気を纏った存在が、最大らしい3体ではなく2体。
私は暗闇の中で意識を落とし、深く深く集中していく。
『………………ん』
恐怖や絶望、そしてあの出来事さえも力に変えて――
『……』
深い暗闇の中、私の脇腹に触れた何かを感じる。
『え、これってっ!?』
私はそれを躱すことも出来ず攻撃を振り抜かれそのまま吹っ飛ばされる。
「うぐぅっ!」
それでも違和感を感じた瞬間に反応し直撃は避けたので、体が飛ばされた見た目程のダメージはない。
『それにしても何でこんな状況でっ!!……』
私は意識を戻して目を見開く。
この場に於いてあり得ない人物を察知したからだ。
そこには――――
「な、何であなたがそこにいるのっ!」
「………………」
そこにはシスターズの一員のナジメが立っていた。
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