第216話真似っ娘少女スミカ




『なるほどね、あらゆる武器を扱えるって訳ね――』


 私はそれを聞いてちょっとだけワクワクした。


 だって面白そうでしょ?

 そんな戦い方出来る人物に会うなんて。


 一瞬、アイテムポーチから無数の武器を出すのは反則じゃない?なんて思ったけど、そもそも私の装備だって似たようなもの。


 ある意味無限に武器を生成出来る。


 もちろん形を変えて自由自在に作成できるし、

 重さも大きさも範囲内なら自在に変えられる。


 そして武器、防具、トラップや足場にも使えるし

 更に範囲内ならどこでも展開できる。


 こんなチート装備でアマジを乏しめる事なんてできない。

 元々ルールでもそんなこと決めてなかったから実際は反則でもないだろうし。


 なんて思ってもみたり。



「それは俺の武器を真似て魔法で作った物か。かなりみすぼらしいが」


 アマジは私のスキル武器を見てそう感想を漏らす。


 確かに私の真似た双剣は何の凹凸もましてや装飾など一切ない。

 ただ単にちょっと薄く変形させた三角柱を繋いでるだけの物。


「これもさっき言ったでしょ?私は魔法に関しては未熟だって。どっちかっていうと魔法よりも近接戦闘が得意な肉体派だからね」


 そう言って私は「むんっ」と両腕を上げて握りこぶしを作る。

 知らず知らずに口元にも力が入ってしまう。


「どうだ。これが私の――――」

 私は更にポーズを変えて見せつけて行く。


 さぁ慄くがいいっ!

 私の素晴らしい肉体美を目の当たりにしてっ!!


 フロント・ダブル・バイセップス

「ふんっ」

 ラットスプレッド・フロント

「どりゃっ」

 サイドチェスト

「ぬふっ」

 モスト・マスキュラー

「最後っ!」


 と威嚇するように様に次々とポージングを決めていく。

 これで少しでも委縮してくれれば私の勝ち。


「はぁ………………色々残念だな、お前は」


 それを見て一言だけアマジは感想を漏らす。


『………………イラッ』

 何だよ色々残念ってっ!

 それとどこ見て溜息付いてるの!?



 まぁそれでも――――


「スミカお姉ちゃんっ!なんか強そうだよっ!!」

「お姉さま可愛いですぅっ!その踊りっ!」

「お姉ぇっ!ワタシにも後で教えてくれよその構えっ!」


 一部の妹達には好評だった。


 まぁ姉妹が言う踊りでも構えでもないけどね。

 それとユーアは多分雰囲気で言っているっぽい。

 なんかって言ってるし。



 私は黄色い声を上げるユーアたちからアマジに視線を戻して、


「じゃ、どちらが武器を使いこなせてるかハッキリさせようか?言うほど私も得意じゃないけど、あなたよりはきっとマシだからね」


 私はポージングを止めて前面で双剣を構える。

 アマジが何か呆れた雰囲気を醸し出してるけど気にしない。


「ふん、お前のその若さで俺より武器を扱えるとは到底思えんがな。まぁお前のその自信を俺が打ち砕いてや――」


「よし、次はこっちからいくよっ」

  私はアマジが言い終わる前に口を挟む。


「ぬっ!」


 そして私は重心を下げて地面を滑るように疾走する。


「よっ!」


 ブンッ ×2


「ふんっ」


 同時に左右から振り下ろした双剣のスキルを、

 アマジは同じように左右の双剣で受け止め防ぐ。


 私は両手に衝撃を感じた瞬間にスッと力を後ろに逃がす。


「ッ!?」


 それにより体は前のめりにバランスを崩すが、アマジはその態勢を利用して咄嗟に前蹴りを私に放つ。うん、いい判断だ。


 ブンッ!


「っと」

 私はそれを体に掠らせながらグルンっとアマジの懐の中で回転し、その遠心力で肘鉄を脇腹に打ち込む。


「ぐぅっ!」

 アマジは避けきれずに短い唸り声をあげて後方に跳躍する。


 でも私の攻撃の半分以上は威力を消されてしまったようだ。

 その手応えから、後ろに跳躍して散らされてしまっていたとわかる。


「まだまだいくよっ」

「はっ!」


 私は今度は2メートル程上に跳躍し、双剣のスキルをギュンと回転しながらアマジに打ち込む。


 ガギィンッ!


 が、それもやすやすとアマジに受け止められる。


『まぁ、防御させるように誘ったんだけどね』


 私はアマジに空中で受け止められながらも更に体ごと縦に回転をし、そしてもう1本のスキルを叩きつける。


 ブウンッ

 ガギンッ!


「くっ!」


 更にもう1回転


 ギュルンッ!

 ガギンッ!


「ぐっ!!」


 アマジはそれでも双剣を盾に被弾を防ぐ。


 それでも私は構わず体の全身を捻り回転を上げていく。


「んんんんっ!!」


 ギュルルルルンッ―――――!

 ガガガガが、ギギギギギィ―ンッ!


「ぬ、ぐぐぐっ!」


「そぉれっ!」


 私は掛け声とともに2本同時に振り上げ、

 アマジの双剣に遠心力と体重も乗せて思いっきり叩きつける。


 ブォンッ!!

 ガガギィンッ!!


「ぐぐっ!」

 アマジはそれをも受け止めるが衝撃を逃しきれずに片膝をつく。


 私はスキルを叩きつけた衝撃を利用してそのまま後方に跳躍する。

 

 そして今度はアマジの両足目掛けてスキルを振るう。


「んっ」

 シュッ

 

「ちっ!」

 ガゴォッ


 とアマジは私の接近に気付き、振り返ると同時に防御する。

 手にしていたのはさっきまでの双剣ではなかった。


『ふ~ん、今度はそうきたか』


 アマジは右手は大剣で、左手には大盾を持っていた。

 またアイテムポーチで装備の変更をしたのだろう。


「なら、私も真似しないとね」


 私は双剣モドキを消してアマジと同じようにスキルを装備する。


 右手には

 細長い四角柱+短い四角柱。

 で、大剣もどき。


 左手には

 私を隠すほどの薄広い四角柱。

 で、大盾もどきに。



「どう今度は中々上手くできたでしょう?」


 私はブンブンと大剣と大盾を振り上げアマジの反応を見る。

 上手くとは言ってもブロックを継ぎ足したような武骨なものだけど。


「ち、くだらない。それでもまだ真似たつもりなのか?」

 と相変わらず苦虫を嚙み潰したような顔で返答する。


「そうだけど。外見以外はほとんど一緒でしょ?武器の特性だけ見れば」


「はん、特性云々より魔力が切れれば消滅するんだろ?その武器は。ならそんなものは武器とは言えん。だから俺が破壊して消してやる」


 アマジはそう言い武器を構え若干低く姿勢を落とす。


『うん?いきなり雰囲気が変わった』


 その目は一挙手一投足を見逃さないように油断なく私を視界に捉えている。


 それはまるでネコ科の動物が獲物を狙うかのようなそんなイメージ。

 一歩でも動けば即座に襲い掛かってくるような身の危険を感じる程の。


『……う~ん、なんか向こうから仕掛けるつもりがないみたい。ならまた私から仕掛けてみるか。睨み合っててもキリないしね』


 私はそう決めて盾を前面に出しグッと後ろ脚に力を溜める。


 そして――


 タッ!


 私は力を開放して一足飛びでアマジとの距離を一瞬で詰める。

 そしてそのままシールドバッシュの要領で大盾をアマジに叩きつける。


 ガインッ!!

 ギュン――――

 

「えっ?」


 盾同士が衝突すると同時に、私は森に向けて大きく弾き飛ばされていた。

 スキルを持つ手にはビリビリと強い痺れが残っていた。


『え、弾かれた!?』


 まさか今の全力で打ち負けるとは正直予想外だった。


「っ!?」


 そしてアマジの姿も消えていた。

 

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