第211話続・抱かれちゃうの私+感想




 ナゴタとゴナタのお願いを叶えた後、


「ボクもスミカ姉ちゃんにしたいですっ!ね?ラブナちゃんもっ!」

「うへ? し、仕方ないわねっ!ユーアの言う通りにしてあげるわっ!」

「おお、わしもやりたいのじゃっ!わしもやってもらったからのうっ!」


 と何故か勝手に盛り上がり、今度はユーアたち三人もナゴタとゴナタの真似をして私を順番に抱きしめてくれた。



 その感想をここに記す。


 カタ カタタ


 一人目。

 ボクっ娘美妹少女ユーア。


 ユーアは私の顔を胸に引き寄せ「よしよしいい子いい子」と頭を優しく撫でてくれた。この年でこれをやられるのは正直恥ずかしかった。きっと孤児院の子にもしてたのだろう。


 《感想》


 いつものベビーパウダーのような甘い匂いがした。

『うん。毎日嗅いでる匂いだから安心感あるねっ!』

 はぁはぁっ――すぅ~はぁ~すぅ~はぁ。



 二人目。

 スク水のじゃロリフラット幼女ナジメ。


「わ、わしもお姉ちゃんをやってみたいのじゃっ!」とナジメは騒ぎ出し、ユーアと同じように顔を胸元に抱いてくれた。


 《感想》


 温かかったけどちょっとだけ硬かった。そして少し痛かった。

『ナジメには言えないけど。もう少し厚みが欲しかったよ…胸囲のさ』



 三人目。

 リアルツンデレ毒舌魔女っ娘ラブナ。


 3人目のラブナはユーアに言われて仕方なくって感じで、顔を赤くして「ちょっとだけだかんねっ!」と二人と同じく私の頭をギュッと胸に抱えてくれた。


 《感想》


 「むにゅん」てなったからすぐ離れた。ユーアやナジメと大違い。

『くっ!な、生意気なのは口だけじゃないんかいっ!』



 そんな三者三様の温もりを味わった私は、


 タタタッ

 ガバッ!


「ハラミ~っ!」

『わ、わうっ!?』

「うわっ!!」


 と、ラストのツンデレ娘で傷ついた心の拠り所としてハラミにダイブする。

 その上にゴマチもいたからついでに抱きかかえる。


 おまけ。

 ユーア大好きもふもふオオカミ(仮)のハラミ。


 《感想》

 モフモフしていて日向の匂いがした。毛も柔らかかった。着てみたい。

『ユーアがマメに洗ってるせいか、少しシャンプーの匂いもするねっ!』



 おまけその2。

 俺っ娘コミュ少女ゴマチ。


 《感想》

 ユーアより全体的に肉付きが良かった。そしてぷにっと柔らかかった。

 ある部分が。


 こ、これは……


『こ、これはユーアの完全敗北だ。ユーアの方が年上なのに、これじゃきっと将来的にもヤバいかも……でも私は小さいままのユーアも好きだから別にいいんだけど……。で、でもそれじゃユーアの成長はどうなるの?いつまでも小っちゃかったらユーアだって不安になるよね?それとも私のしてる食事や体操の事教える?それで結果が出たらユーアだってそれが自信に繋がるかもしれない。うん、まてよ?それじゃ私がユーアに追い越される可能性が……』


 それはユーアの将来を見据えて教えるのがいいのか?

 お姉ちゃんとしてつまらない優位性を遵守するのか?


 私は頭を抱え「むむむ」と首を傾げてチラとユーアを見る。


「あ、あのさっ!」

「へ?な、何ゴマチ?」


 そんな私にゴマチが声をかけてきたので返事をする。


「お、俺、女同士ってのは――――――ないからなっ!で、でもどうしてもって言うなら、ごにょごにょ――」


 とハラミと一緒に巻き込まれた形で、私に抱きつかれているゴマチが、どもりながらそんな事を言い出す。ちょっとだけ顔も赤いけど。


 女同士?

 いやいや私だってないよっ!


 たまたまそこにいたから仕方ないじゃんっ!

 ゴマチをわざわざどかしてダイブなんてノリが狂うし。


 それとその長が――い間と、最後に何て言ってたの?



※※※※



「それじゃ最後は私だからバシッと決めてくるよっ」


 私はみんなの顔を見渡して立ち上がる。

 色々悩んでいたけど、みんなのお陰で吹っ切れた気がする。


『やっぱり持つべきものは妹だねっ!』


 それでもまだ思い悩む事は山ほどあるが、現在のやる意義と方針だけはハッキリした。これでダメなら私が出来る限界だったって事。それ以上はただの我儘や押し付けになる。


 私はそう頭の中で精査整頓し、シスターズのみんなを見て口を開く。

 まだ大事な事、相談してなかったから。


「あのね、みんなちょっといい?」


「はいスミカお姉ちゃん」

「スミ姉?一体何なのよ。そんな真面目な顔して」

「はいお姉さまどうしました?」

「何だい?お姉ぇ」

「どうしたのじゃ?ねぇね」

「スミカ姉?」

『わう?』


「あのね、これから私がやる事なんだけど、ゴニョゴニョ……」

 と、みんなを集めてひそひそと内緒話をする。


「スミカお姉ちゃんなら大丈夫だよ!」

「うーん、スミ姉がやる事ならそれでいいんじゃない?」

「お姉ぇのやる事なら何も心配ないなっ!」


 ユーアとラブナとゴナタはそれぞれ全面的に認めてくれた。


「お姉さま、あなたは何処まで考えて……それでも難しいとは思いますが、お姉さまならきっと大丈夫かなと思います」


「ねぇね、わしから見てもさすがにそれは困難じゃと思うぞ……でもねぇねが決めてやる事じゃ。何かあってもわしたちもいるから安心してくれなのじゃ」


 ナゴタとナジメは二人とも不安そうだったが、最終的には賛成してくれた。


 でもゴマチだけは何も言わずにハラミに顔を埋めていた。


 それは、


『………………』


 何かを誤魔化すように。

 視線を逸らすように。

 そこから逃げるように。

 考えるのをやめる様に。


『まぁ、ゴマチにはあまりいい話じゃなかったよね……』


 私はギュッとハラミに顔を埋めているゴマチの背中を見てそう思う。


『でも、ね……』


 それでも私は己の出来る事をやっていく。

 そこに可能性があるなら手を差し伸べる。少しでも努力する。

 そうじゃないと私はずっと思い悩む。

 そして会うたびにきっと思い出す。

 あの時何もしなかった事に後悔する。


 だからと言って私には――


 この世全ての不幸を取り除く事も、あらゆる過ちを正すこともできない。

 そんな力もないし、する気もない。私は何でもできる正義の味方でもない。


 けれど、


 目の前の小さな少女くらいは救いたい。

 このまま何も知らない方が不幸だと思うから。


 

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