第199話ナジメ〇〇〇大地に立つ
「では見せてやるのじゃ、わしの新技をっ!!」
ナジメはベティ( 土龍 )の頭にちょこんと立ちながらふんぞり返る。
「へ?お姉さまっ!あの土の龍小さくないですか?」
「も、もっとデカかった筈だぞっ!森の巨大トロールみたいにっ!」
「ちょ、スミ姉っ!もしかしてナジメの魔力がっ?」
その光景を見て、姉妹は口々にその大きさに驚愕し、
ラブナは同じ魔法使いとして魔力の残りを懸念していた。
「ス、スミカお姉ちゃんっ!!」
「………………」
ユーアが私の腕を取り心配げな目で見てくる。
もしかしてナジメ本人も土龍の大きさに気付いてない?
劣勢に見える状況で、そんな事もわからない程混乱してる?
『い、いや、そんな訳ないでしょ!ナジメはゴナタの言葉じゃないけど、百戦錬磨の冒険者だよ?それに私との時はもっと魔法使ってたよ!って、それじゃいったいあの大きさは何だっていうの!?』
私がそう心の中で悶えているとナジメの土龍が動き出す。
ナジメを乗せたまま首を「ぐぐぐっ」と一度下げたと思ったら
「ぐいんっ」とすぐさま勢いよく首を振り上げる。
その際に、遠心力でナジメの体は空中に「ひょい」と飛ばされる。
「「「「???」」」」
『???』
土龍に飛ばされ、空中に浮かんだナジメは
もちろん飛べる訳もなく重力に任せて落下する。
ひゅ――――ん
そして、
『バクンッ――――ゴクッ!』
と、下で待ち構えていた土龍の開いた口に吸い込まれ姿を消す。
「ナジメっ?」
「へ? ナ、ナジメちゃん?」
「ナ、ナジメが食べられたわよっ!?」
「はぁっ!?ナジメあなた何をしてっ!」
「お、お姉ぇナジメが、ナジメがぁっ!?」
落下してきたナジメは土龍に丸呑みにされていた。
それを見てアマジ陣営も、
「な、何やってんのよぉっ!勝てないからって自害っ?」
「ナ、ナジメの奴はいったい何をっ?」
「「なっ!?」」
そんなナジメの行動に面喰らい、一様に驚愕の声を上げる。
「ス、スミカお姉ちゃんっ!あ、あれあれっ!」
「わ、わかったよユーアちゃんと見てるから、服引っ張らないで!」
ユーアは興奮のあまり私の衣装をグイグイ引っ張っていた。
そんな最中に、
「あ、お姉さま見て下さいっ!か、形が何か!」
「うん!何か変化してるぞっ!!」
「な、何かドロドロと動いてないっ?」
姉妹とラブナの言う通り、ナジメを飲み込んだ土龍は動き出し、硬質に見えた土龍の体は、今はドロドロと表面が蠢いている。
そしてその異形は、ある形に整えられていく。
「人の、かたち――――だよね?」
「う、うん……」
誰もが息を呑みその光景を眺めていたが、次第にその変化を終え停止する。
そこには3メートル弱の、人の形をした土の人形が出来上がっていた。
「ふうっ、何とか出てこれたのじゃ」
胸のあたりに穴が開いたと思ったら、そんな声が聞こえてきた。
それはもちろんナジメの声だった。
「うむ、思ったより不格好じゃが、これから鍛錬する事にしようぞ」
胸の穴から「ひゅこ」と顔を出し、自分を包む土の人形を見渡してポツリとそう感想を漏らす。そして、ぶんぶんとその土の腕を回し始める。
「おお、まだ慣れてないが思ったほどよく動くのじゃっ!」
今度は少し前進してみたり、ドスンドスンと飛び跳ねている。
そしてピタと停止して周りを見渡し、
「さあ待たせたのじゃっ!これがわしの新技『ナジメゴレム』じゃっ!」
と、土の人形にもかかわらず、大袈裟に胸を逸らせて叫んでいた。
「あ、あのさナジメっ!」
「うむ、どうじゃねぇね、これがわしの新技じゃっ!」
「へ、へ~~、凄いねっ強そうな気がするよっ」
「うむ。じゃがまだ改良と慣れが必要じゃがなっ!魔力消費も多いしのぅ」
そう言いながらナジメは結構満足そうな笑顔を浮かべている。
それよりも聞きたい事があるんだけど……
「でさ、その形って何で
私はナジメの姿を見渡しそう突っ込む。
なんで強そうな鎧姿とか、自分の姿にしなかったのだろうと。
「うむ、この姿はわしのイメージしやすかったものにしたのじゃ」
「そ、そうなんだ……でもそこの部分って……嫌味?じゃないよね?」
私はしげしげとナジメゴレムの胸部に目を向ける。
そこは異様な程に盛り上がっていた。そうまるで、
「あ、これはきっと姉妹のイメージが強かった部分の影響じゃな」
「な、なんでそこだけナゴタとゴナタなのぉっ!!」
「じゃからまだ不慣れじゃと言ったろう?じゃからイメージが先に念頭に来て作ってしまったのじゃよ」
「な、なるほどねっ!」
私はそう言いグルッと周りを見てみる。
「………………」「………………」
「………………」「………………」
『き、気のせいか、何かナジメゴレムと私を見比べているような……』
私と視線が合うと、何故かそっぽを向くこの広場の面々。
ラブナなんか口笛なんて吹いている。
「あ、あのさその部分だけ小さくできるかな?あっても色々邪魔じゃない?下見えないし、シャツ伸びるし、肩凝るし、サイズ探すの大変だし」
よくは知らないけど……
「うむ、やってみるのじゃ。ねぇねの言う事にも一理あるのじゃ」
「あっ!?」
「お、お姉さま?………………」
「お姉ぇ………………」
な、なんか姉妹の目が気になるけど今は無視しよう。
だってこのままだと私が晒し者になるから。
「ふぬっ!」
ボコンッ
「ちょ、ちょっと陥没させてどうするのっナジメっ!!」
「う、うむ。まだうまく操作できないのじゃ、もう一度じゃ」
ポコンッ!
「お、いいねっ!でも……もう少しあってもいいんじゃない?」
「そ、そうかのぅ?ならもう一度じゃっ」
ポコッ
「あ、もう少し、もう少しっ!!」
「むう。ね、ねぇねは細かいのぅ」
ポコ
「あ、それでいいよっ!どうせなら少しでも似せないとねっ!」
「…………………」
私はその出来栄えに「うんうん」と腕を組み頷く。
これなら私も含めてみんなも納得するはずだ。
「それじゃ、そのナジメゴレムで、ちゃっちゃと終わらせてきてよっ!」
「う、ううむ。わかったのじゃ。それにしても結局……」
「うん?」
「な、何でもないのじゃ、それでは続きを始めるのじゃ」
「よろしくね。ナジメっ」
私はそう締めてみんなに振り返る。
ナジメが何ともなくて良かったよ。
「ナジメは全くの無傷だったね。ん、どうしたのみんな?」
なんだろう。
『??』
みんなの目がなんか伏し目がちに見える。ジト目?
「それではバサとやら、仕切り直しと行くのじゃっ!」
「は?あ、ああ、わかったわよっ!」
そうしてナジメとバサの戦いは佳境に入っていくのであった。
ナジメゴレムの性能とはいったい。
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