第193話ユーアさまさまと報告会
※この物語は作者の創作の世界になります。
他の作品の設定や、現実の倫理観とは
異なる場合がありますので予めご了承ください。
外に出ていた澄香と、別行動だったナゴタとゴナタが合流し、ユーアたちの待つレストエリアに戻って来た。
そして、お互いに起きた事を報告するのであった。
澄香たちはゴマチの父親、アマジと出会って明日の事を。
ユーアたちはゴマチの冒険者の件と、ユーアをさらおうとした訳を。
「まぁ、何となくは予想できてたけど、本当にそれだけなんだ」
私は今回の騒動の中心のゴマチに声を掛ける。
(( そ、そうだっ!わ、悪いかっ! ))
「いいか悪いかで言えば、それは悪いよ。もちろん」
(( だったら、俺をどうするんだ!つ、潰すのか?あの男みたいにっ! ))
「別にどうもしないよ。事情はわかったし。ただ言いたい事はあるよ」
(( な、何だっ!?やっぱり俺の両足をっ?? ))
「いいや、先にそこから出てきて私の顔を見て話しようよ。いい加減に」
(( い、嫌だっ!お前はそう言って俺を殴るんだっ!アイツみたいにっ! ))
『はぁ………………』
相変わらずゴマチは私が怖いみたいだ。
いいや、恐いとか苦手とかそんな感じじゃない気がする。
完全にあの時の出来事がトラウマになっている。
あの男たちと同様に、恐怖が具現化したみたいな存在だと。
そんなガクブルのゴマチは、今はユーアとナジメの背中に顔を埋めていた。
そして恐怖で上ずる声で私に答えていた。
「はぁ、絶対にそんな事しないから。なら私は私の信じる神さまに祈るよ。それなら信じてくれるでしょう?」
(( か、神さまだって!?わ、わかった聞いてやるよっ! ))
私は胸の前で両手を合わせ目をつむる。
「――天にまします我らが神のユーアさま。私、透水澄香は女神ユーアさまの名を汚さぬよう、ゴマチに嘘をつく事も、暴力を奮う事も致しません。それを天使ユーアさまに誓います」
と、胸の前に合わせていた両手をゆっくり下ろし目を開ける。
「ちょっとスミカお姉ちゃんっ!? ボクはここにいるし、それに神さまでも女神さまでも天使さまでもないよぉ!」
「ほらスミ姉がユーアに誓ったんだから、ゴマチは安心しなさいよねっ!」
そんな私の誓いにユーア、そして何故かラブナまでもが後押ししてくれる。
まぁ、ユーアは後押しでもフォローでもなかったけど。
ただただあわあわしてただけだけど。
「う、うん、わかったよ……そこまで言うなら信じるよ……」
と、こっそり顔だけ上げて私を見ている。
「そ、そうわかってくれて嬉しいよ。ホントにさ」
さすが
その効果は抜群だった。
※※※
「それで、じゃ。わしもその訓練と称した、あ奴らの私闘に参加すればよいのじゃろ?わしは全く構わんぞ?寧ろわしをパーティーメンバーと認めてくれて嬉しいのじゃっ!」
「そう言って貰えて私も安心したよ。試しにと言った事が何事もなく受け入れられちゃったから。それと勝手に決めちゃったのは私だしね」
ここにいる皆に、アマジとの対決の流れを説明した時、ナジメは少し複雑な表情と、若干寂しそうな表情だった。
けど、その対決のメンバーの中に、ナジメが含まれている事を知ると、急に顔を綻ばせて喜んでいた。それでも思うところはあるようで、神妙な表情を繰り返してはいたけど。
「ううう、ごめんなさい。お、俺のせいで……」
そんなナジメとは打って変わって、ゴマチは首を垂れて謝っていた。
「ううん、ゴマチが全部悪いわけじゃないよ。だから頭を上げなよ」
「だって、俺がユーアさまに手を出さなければこんな事にはっ!」
ユーアさまっ!?
な、何?ゴマチの中での私たちのヒエラルキーはどうなったの?
ゴマチが怯える私がユーアを奉ったから、それで序列が変わったの?
「う、ううん。多分違うよそれは。今回はゴマチが原因になってるけど、多分あなたのお父さんは遠からず冒険者とは揉めてたと思うよ?そんな感じがしたからね」
「で、でもよぉ……」
そう。
アマジはまるで何かの切っ掛けがあれば、そこから突っかかって来たと思う。
鬱憤とか、恨みとかそう言った物を冒険者相手に晴らすために。
それが今回はたまたまゴマチがダシに使われたんだと思う。
それも都合のいいように。
そしてそのタイミングでの私たちの登場だった。
そんなアマジたちにしてみれば絶好のエサだっただろう。
娘をさらったと名乗る者が冒険者だったのだから。
しかも英雄と称えられる。
娘を心配する親なら、あの時に力づくでもゴマチの居場所を相手に履かせていた。
私だったらそうしてる。ユーアやシスターズが同じ状況になった場合は。
『建前でも、そんな素振りを見せなかったあのアマジは親失格だね。そんな親の子供に生まれたゴマチも不憫って言えば不憫だよ。いくら親は選べないって言っても。ね』
片親の筈のアマジはそんなゴマチを放置し、名を上げるために各地を放浪している。
一人娘のゴマチはゴマチで、そんな親の温もりも寵愛も与えられなかった。
『それに、おじいちゃんがいるって話だけど、ゴマチの話を聞いてあげてるだけで、道徳とか倫理観とか、そう言った人付き合いに必要な事は教えてなさそうなんだよね。ただ孫を可愛がるだけのような……』
ふとそんな事を考えてしまう。
今回の件は一見大袈裟な誘拐未遂事件に見えるが、蓋を開けてみれば、ただ単にユーアと友達になりたいだけだった。大好きな祖父がいつも話しているユーアの事が気になって。ただその方法が度を越して、現代だとニュース沙汰になってしまう程だったが。
「で、でもよぉ……蝶の姉ちゃんと……じゃなくて英雄さまと――――」
「ああ、普通に澄香って呼んでいいからね?英雄なんてこそばゆいから」
「そ、それじゃスミカ姉ちゃんたちは、親父と戦うって事だよなっ!」
「うん、そうだけど。私も姉妹たちも色々思うところあるし」
「そうですね、お姉さまの言う通りです」
「うんうん、そうだぞゴマチちゃんっ!」
「わしもじゃぞ?ゴマチよ」
「ワタシも出たかったわよっ!そしたら全員ワタシの魔法で返り討ちよっ!」
「ラブナちゃん……」
ゴマチの問いかけにシスターズ全員が答える。
あ、ハラミは寝たままだったけど。
「えーと、確かスミカ姉ちゃんはCランクだよな?」
「うん、そうだけど。何で?」
「そして双子のおっぱいはBランク?」
「………………」
「………………」
「最後のナジメは元Aランクだなっ」
「そうじゃ」
そんな唐突に私たちのランクを再確認したゴマチは、
「…………だったら親父たちには勝てないかもしれない。
ポツリと私と姉妹を見て心配気に呟くのであった。
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