第192話お留守番組の少女と幼女たち
※この物語は作者の創作の世界になります。
他の作品の設定や、現実の倫理観とは
異なる場合がありますので予めご了承ください。
澄香たちがゴマチの父親アマジと邂逅している一方。
レストエリアではこの騒動の渦中の人物
ゴマチが目を覚ましていた。
「う~ん、あれ?俺はまた何で……」
「あ、ゴマチちゃん目が覚めたんだねっ!大丈夫?」
「おお、ゴマチっ!わしを覚えておるか?ナジメじゃ。お主大丈夫か?」
「あんた何でユーアを襲ったのよっ!ユーアがいくら大丈夫だって言っても信じられないわっ!ねえ?どうなのっ!!それと体はっ?」
ゴマチは起き上がりキョロキョロを周りを見回す。
そんなゴマチに、ユーアとナジメとラブナは一様に声を掛ける。
ユーアは体への心配を、ナジメは自身の状況確認を、ラブナはユーアを襲った件での憤りを、それぞれをゴマチにぶつけていた。
各々の気持ちはそれぞれ違ってはいたが、
ゴマチへの気遣いは一緒だった。
それはユーアから、ゴマチが再度気を失った事を聞いたのと。
それとゴマチの境遇と、ユーアがゴマチに対して何も危惧していない事が誘因となっていた。
「へ?あ、な、何でナジメ?それとお前は…………だ、誰だっ!?」
ゴマチは最初にユーアそしてナジメを視界に入れ、最後のラブナで視線を停止する。その目は驚きよりも怯える目に近かったが。
だってそれはそうだろう。
ユーアとナジメはゴマチに寄り添うようにしているのに対して、
「ワタシの事はどうだっていいのよっ!それよりも質問に答えなさいよっ!」
と、ビッと指を突き付けての、いつもの仁王立ちスタイルであったからだ。
「な、何だいきなりお前はっ!!」
「何だ、じゃないわよっ!さっさと質問に答えなさいっ!じゃないとワタシの魔法が炸裂するわよっ!そのキレイな顔が焼け焦げるわよっ!」
そんなゴマチに怒りを露わにするラブナ。
「ちょ、ちょっとラブナちゃん止めてよぉっ!」
「ラブナ、ユーアが大丈夫じゃと言っておったろう?だから矛を収めるのじゃ。色々聞きたい事があるのじゃからな」
「ふんっ わかったわよっ!」
ユーアとナジメの制止の声でラブナは表情を崩したが、それでもゴマチを見る視線は鋭かった。ユーアの言うことを信じてはいたが、それと感情は別だった。
「ま、魔法? 赤い姉ちゃんは魔法を使えるのかっ!?」
怯えの表情から一転、ゴマチはラブナの「ワタシの魔法発言」に興味を示す。
「わ、悪いっ?それと赤い姉ちゃんって何よっ!」
「だって、コートも髪も赤いだろ?それよりも魔法の事だよっ!」
「ワ、ワタシは魔法使いなのよっ!ってそれよりあんた―――」
「って事は赤い姉ちゃんも――――」
「わ、わかったからいちいち近いのよっ!もっと離れなさいよっ!」
「ぼ、冒険者なのか?ユーアやナジメと一緒の!」
「そ、そうよっ!まだなり立てだけどっ!!ってそれよりいい加減――」
何故か立場が逆転してしまい、グイグイと迫るゴマチに困惑するラブナ。
「ラブナちゃんもう仲良くなったんだねっ!」
「うむ。うむ」
どうやらナジメの情報通りに、ゴマチは冒険者に憧れてるみたいだ。
「ち、違うわよユーアこの子が勝手にっ!ワタシはユーアとスミ姉ぇを」
「赤い姉ちゃんっ!魔法見せてくれよっ!お願いだよっ!!」
それも魔法使いに対して、非常に興味があるようだった。
※※※※
「なるほどのぉ。お主の祖父のロアジムを救った冒険者が、凄腕の魔法使いじゃったと。しかもお主ぐらいの年齢か、若しくは更に幼い少女じゃったとは。ふむぅ。いや、でも、しかし――」
ゴマチの話を聞き終えたナジメが、胸の前で腕を組み何やら唸っている。
「ナジメはその魔法使いの冒険者知ってるの?Aランクらしいけど」
それを見てラブナがナジメに声を掛ける。
「そうじゃな。直接会ったことはないが、Aランクの幼い魔法使いがいるとは聞いておる。しかしそれを知ったのはここ数年じゃぞ?恐らくロアジムの話は十数年は前の話じゃ。じゃからわしが思いついた冒険者とは別人じゃな。とうに成人しておるじゃろうし」
「ふーんそうなんだ。それじゃ別人じゃない?」
それに対し、ラブナはさほど興味がなさそうに答える。
何となく、会話の流れの成り行きで聞いただけのようだった。
「まぁ、確実にそうじゃろうな。それよりも今は――」
「そうね、そんな事は今はどうでもいいでしょ。それよりも――」
そんなラブナの返しにナジメも特に気にすることなく、二人の視線は小さい少女二人に向けられる。それはもちろん……
「それじゃゴマチちゃんも冒険者になりたいんだっ!」
「うん、そうなんだよっ!でも親父がうるさいんだよっ!俺の事興味ないくせにそれだけは口出ししてくるんだよっ!」
「お父さんが、何で?」
「それは多分、死んだ母ちゃんが関係してるんだと思う。親父はハッキリ言わないけど……。じゃなきゃあんな――――」
そう言いゴマチはそっぽを向き小さな拳を強く握る。
それを見れば、両親、そして冒険者に対しても何か思うところがあると分かる。拳だけじゃなく、口元にも小さな肩にも力が入っているからだ。
「ゴマチちゃん……」
「それよりもお主。反省が足らんのじゃないか?」
「そうよっ!ゴマチだっけ?ユーアにもっと謝んなさいよねっ!」
そんな心配をするユーアを他所に声を荒げる、見た目幼女と赤い少女。
「う、それは……ごめん……なさい……うううっ」
「そんなんじゃ足りないわっ!全裸で土下座くらいしなさいよねっ!それでチャラにしてあげるわっ!!」
「は、裸で、土下座だってっ!?俺がか?」
「それぐらい当たり前じゃないっ!ワタシのユーアを危険な目に合わせたんだから。それにスミ姉もそう言ってたわよねっ?ユーア!」
「うっ、あの蝶の姉ちゃんが……ぐ、うううっ、な、なら」
ラブナに煽られたゴマチは、それを聞いてパジャマの裾を捲り上げる。
白いお腹と小さなおへそがチラリと見える。
「ラブナちゃんっ!スミカお姉ちゃんはそんな事言わないよぉっ!だからもう止めなよぉっ!仲良くしてよさっきみたいにっ!」
「そうじゃぞラブナ。ねぇねが留守なのとゴマチが気を失ってたのを良い事に、適当な事を言うでない。それにねぇねの話じゃと、襲った男たちはユーアを連れさらうだけの依頼だったではないか。それもゴマチの話とも一致しておる」
「でもそれじゃワタシの気が晴れ――――」
「じゃから危険だったとしても、ユーアがゴマチの話し相手になるだけの事だったのじゃ。やり方は不器用を通り越して、強引過ぎる気もするがのう」
「わ、わかったわよっ!今のはワタシの気が済まなかっただけの事なのよっ!だ、だからユーアもそんな目でワタシを見ないでよぉ!」
被害者のユーア当人とナジメにも言われたラブナは、ユーアの頬が「ぷくぅ」と膨らんでいる事に気付き慌てる。それは珍しくボクっ娘が怒っているからだった。
※※※
何のことはない。
この俺っ娘少女は冒険者のユーアと仲良くしたかっただけだった。
大好きな祖父からユーアの話を聞いて。
その激しい性格故、近い年頃の子供も、ましてや友人と呼べる者もいなかったこの少女は、友達になる方法など知らなかった。
この騒動の発端は、そんなコミュ章の少女から始まった出来事だった。
ただその火種が大きくなっている事に、この4人はまだ知らなかった。
「ただいま。ユーア。あれ?ゴマチ起きたんだ」
「お邪魔しますユーアちゃん。それとゴマチさん?」
「こんばんはだなっ!ユーアちゃん。それとゴマチっ?」
そして戻って来た澄香たちの話を聞いた4人は炎上した事の大きさに驚くのであった。
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