第187話起きてから落ちる少女


※この物語は作者の創作の世界になります。


 他の作品の設定や、現実の倫理観とは

 異なる場合がありますので予めご了承ください。





「ゴマチちゃんて11歳なんだねっ!?ボクより大きいからお姉ちゃんかなって思ってたのに、ボクがお姉ちゃんなんだねっ!」


「い、いや、1つ上でそんなに威張るなよなっ!」



 ユーアはゴマチと呼ぶ女の子と随分と仲良くなっていた。

 そして今はお互いの年齢の話になっている。



『ふふふ。まぁ、それは何となくわかってたけどね。この子は年下だって』


 ユーアは年齢の割に一般的な12歳より小さい。


 それは9歳のメルウちゃんが、ユーアとほぼ変わらない事からそう思っていた。

なので、ユーアより少し大きいゴマチはユーアより年下だろうと。


 しかも一つ年上のラブナと比べても明らかだった。

 色々なところの出っ張りが。ね。



『それにしても、随分と打ち解けてるね。さすがユーアだねっ!』


 ユーアはゴマチと言う少女とも少しの会話で仲良くなっていた。


 それはユーアの可愛らしい容姿もそうだが、屈託のない無垢な笑顔と、ころころと変わる無邪気な表情。それと全く含みを感じせない話し方。


 そう言った要素が合わさった結果、ユーアは色んな人に好かれている。

 身近だと、ラブナも然り、ナゴタとゴナタもナジメにも好かれている。


『その中に、もちろん私も入っているけどね。それと――――』



 それとルーギルが面倒見ている、外に集落を作って暮らしている『スバ』達や、黒蝶姉妹商店のニスマジに、トロノ精肉店のログマさんカジカさん夫妻。あとはよく分からない謎の『おじちゃん』。


『ああ、そう言えばハラミもユーアの事を大好きだった。魔物にも好かれるって、もう一種の才能じゃない?』


 それに冒険者たちや繁華街の人たちにも人気があり、時たま食べ物を貰って喜んでいる。私と違ってコミュ力が非常に高い妹だった。


 敵とか味方とか、人間と魔物とか、一般人とか貴族とか、そう言った立場の違い何て、ユーアには些細な事だなって、


 私は楽しそうに話すユーアを見てそう思った


『私には一生真似できないな……』

 


※※※



「は、はぁ?こ、こいつがお姉ちゃんっ!?」

「うん、ボクの自慢のお姉ちゃんなんだっ!」

「な、何で、背中に羽根生えてるんだっ!」

「きれいだよねっ!カッコイイよねっ?」


「………………」


 何やら話が盛り上がっているようで二人の話題が私に移っていた。


 特に口を出す内容でもないので、今まで通り私は黙って聞きに入る。



「カ、カッコいいかっ?これがっ!!」

「うん、ボクはそう思うよっ!」

「うっ、まぁそれはそれでいいよ。でも本当にお姉ちゃんなのか?」

「え、何で?」

「な、何でって全然似てないし、それにお姉ちゃんっぽくないだろっ?」

「どこが?」

「どこがって、そりゃあ――」


『………………』


 いつの間にかゴマチは私への恐怖より、ユーアとの会話が楽しくなったみたいで、チラチラと私を見ている。悲鳴を上げてたさっきと違い随分と慣れてきたようだ。


『そうそう、その調子で私への誤解を解いてちょうだいね、ユーア』


 なんて、他力本願でユーアに頼ってみる。



「あまりお前と背丈変わらないじゃんっ!」

「え、スミカお姉ちゃんの方が大きいよちょっとだけど。それに大人だし」

「へっ?大人って事はお前より3つは上だって事だぞっ!?」

「うん、そうだってスミカお姉ちゃん言ってたもん」

「う、嘘だろ……」


『………………』


 私の事に話が移ったのはいいが、何やら嫌な流れになってる気がする……



「嘘じゃないよ?スミカお姉ちゃんは嘘ついたことないもんっ!」

「だ、だってさ、15歳だろ成人だろ?俺の知ってる姉ちゃんはもっと」

「もっと?」

「もっと背が大きかったぞっ!それにもっと」

「もっと?」

「色々大きかったっ!」

「色々って何?」


『………………』


 色々って何?


「全体的にもそうだけど、あ、足とか、尻とかだよっ!」

「足とお尻?」


『………………』


 ああ、それは仕方ないね。私アバターだし。本物じゃないし。

 わざと小さくしてるし。ある理由で。



「ええ、別に大きくなくてもいいよぉ~っ! スミカお姉ちゃんはスミカお姉ちゃんだし、今のままが一番カッコイイしきれいだもんっ!」

「あ、でもそれ以外でも――――」



『………………♪』


 おおっ!さすがユーア良い事いうねっ!

 私はユーアにそう思われてたんだっ!


 色々小さいなんて些細な事。

 ユーアはそれを分かっている。

 女は見た目じゃないって事を。


 私は「うんうん」と内心で頷く。

 さすが最愛の妹だ。



「でもな~、俺が成人してもあれだったら正直落ち込むぞっ!」


『…………っ!』


「でも、まだ4年あるから大丈夫かな少し出てきたからなっ!あ、そう言えば似てるとこあったぞっ!」

「え、どこなの?スミカお姉ちゃんと似てるとこって?」


『ピクッ』



「お前と同じで急斜面じゃんっ!断崖絶壁じゃんっ!」

「きゅうしゃめんとぜっぺきが同じなの?それは何なの?」


『ピキッ』



「それは、胸だな」

「へ、お胸なの?」


『プチッ』



「そうだ、そこだけは瓜二…………ガクッ」

「へ、ゴマチちゃんっ!?」


 ゴマチは突然意識を失い前のめりに倒れ込む。

 それをユーアが慌てて支えそっと横たえる。



 ゴマチの倒れ方から、何者かに後方から攻撃を受けたようだ。


「っ!?」


 だが、ゴマチの後ろの空間には誰もいないし、気配も感じない。



『も、もしかしたら新たな手練れが現れた?でも雇い主を攻撃するって事は、何かゴマチはヤバい事を言った可能性が?それで口封じに依頼人をっ?って事はそれを聞いた私たちもっ!?』


 私はユーアと気を失ったゴマチを透明スキルで覆う。

 一先ずはこれで二人とも安全だ。


『よし、後は何処にいるか見つけ出して――――』



「探さなくても大丈夫だよ?スミカおねえちゃん」

「っ!!!!」


「だって、ゴマチちゃんの後ろにいるもん?」

「………………」


「こっちは分身だよね?スミカお姉ちゃん」

「!!!!っ」


「ゴマチちゃんの後ろにいるのが本物だよね?スミカお姉ちゃん」

「~~~~~~っ」


 と、ユーアの視線はゴマチの後ろの何もない空間に向いていた。

ユーアの前に立ち上がっている私を無視して。



『…………もしかして、また』


 声に出してた?しかもユーアに見抜かれた?


『………………』


 私はもう諦めて透明鱗粉を解除し、実体分身も一緒に消滅させる。


 そこには――――


『うっ』


 今まで見た事のない、まるで全ての表情を無くしたかのようなユーアがいた。


「ユ、ユーアちょっとお姉ちゃんの話を聞いてっ!」

「――――――――」


 私はそんな能面のユーアに話を聞いてもらおうと、慌てて口を開く。


 トトトトトッ


「んんんっ!、だ、誰か来たみたいだよユーアっ!」

「――――――――」


 ガララッ


「ユーアただいまっ!少し子供達の世話してたら遅くなっちゃったっ!それとナジメと一緒に帰って来たわよっ!」


「うむ、わしもハラミに乗せて貰ったのじゃ。今晩もここに泊ってもいいじゃろうか?ねぇねとユーア」


 と、勢いよく入って来たのはラブナとナジメだった。

 その後ろにはハラミもいた。きちんと足裏は拭いてもらったようだ。


「あ、ラブナちゃんお帰りっ!!それとナジメちゃんもっ!ハラミもありがとうねっ!」


 そんな二人と一匹にユーアは嬉しそうに返事を返す。


 よし、中々のタイミングだっ!

 これでユーアの機嫌が少しでも直るかも。



「うん。その子供はもしかして…………何でここにおるのじゃ?」

「え、ナジメこの子供の事知ってるの?」


 ナジメはユーアの前に横たわるゴマチを見て神妙な顔をする。


「へ、ナジメちゃん、ゴマチちゃんとお知り合いなの?」


 と、ユーアもちょっと驚いてナジメに聞き返す。


「知ってるも何も、この子供はわしの知り合いの孫じゃぞ?」


「へ、そうなの?」

「お孫さん?」


「うむ。わしの屋敷に女中を送ってくれたのがその祖父で、わしはその祖父とは昔から懇意にしておる。父親の方にはかなり疎まれてる感じじゃがな」


「………………」


 うん? 女中ってお手伝いさんみたいなのだよね?

 ナジメのお屋敷で孤児院の子たちの世話を手伝って貰っている。



 その相手って、確か―――


「この街の貴族じゃぞ。何でその孫がここにおるんじゃ?」


 と不思議そうな表情でそう話す。


「え、貴族さまっ?ゴマチちゃんって貴族さまのお孫さん?」

「………………」



 これってどんな状況なの?


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