第174話SS 澄香のゲームオーバー その3.5


簡単なあらすじ


今回のお話は、ゲーム時代の澄香のお話です。

大切な何かを失った直後と、失う前が混在します。

澄香の強さの原点ともなったそんなお話です。


※不定期に差し込んで行きますが何卒宜しくお願い致します。





「お姉ちゃん後ろっ! と、上っ!!」


「わかったよ清美っ! クッ、一体何体倒せばっ!」



 清美の叫んだ場所の空間が揺らぎ始め、次々と黒い人型の機械兵が現われる。


 顕現される前に叩きたかったが間に合わなかった。

 流石に数が多すぎる。


 何故なら、



 私と清美はさっきまで1万程の黒い兵士に囲まれていたからだ。



 ただ助かるのは一度に襲って来る数が決まっているらしいこと。

 その数は凡そ200体ずつ。


 だから私は清美を守りながら戦えている。


 これが2倍3倍の数が押し寄せてきたら守り切れなかった。



「――もう5.000体近く倒してるんじゃないの!一体ここのクリア条件ってもしかして全滅っ?だったらあと半分っ!!」


 清美に言われた後方の敵には、デトネイトブーツで蹴りを当て爆殺し、真上には大型のバタフライソードを振り上げ二等分する。



「ふぅ、これで200体。ようやく小休止できるね」



 黒い機械兵の数は驚異的だったが、200体を倒すと囲んでいる動きが停止する。

 そのインターバルが1分間。


 なぜプレイヤーにそんな有利な時間が設定されてるかは謎だった。


 私はその時間を回復と、装備の確認の時間に充てていた。



『――う~~ん。回復関係はまだまだ余裕がある。けど、爆発系と実弾系。それとエネルギー系が心許ないんだよね。前半で飛ばし過ぎちゃったから』



 なので殲滅スピードは落ちるけど、私は途中から物理武器中心で戦っている。

 最後の最後で必要になる恐れがあるから。



 『バタフライソード』


 これはその名前から想像できる通り、バタフライナイフの大型版。

 その全長は私の2倍くらいあるけど、伸ばしたら更に長い。


 これをヌンチャクのように柄で殴ってもいいし、ソードの部分で切り裂く事も出来る。伸ばして振り回してもOKだ。



 『デトネイトブーツ』


 蹴った相手を爆発させる事が出来るブーツ。

 その威力は蹴った強弱で変化する。


 今相手している人型の機械兵なら当てるだけで爆殺できる。

 蹴りの威力を上げれば、他を巻き込んで爆散させる事も可能だ。



 私はドリンクレーションを口に含みながらそう確認を終える。



「澄香お姉ちゃぁ――んっ!」

「おっと」


 清美がタタタッと駆けてきて、私にダイブしてきたのでそれを受け止める。


「お姉ちゃん大丈夫?ボクあまり役に立てなくてゴメンね…………」


 そう言って私の胸に埋めた顔を上げ、悲し気に言う。


「ううん、清美が敵の現れる位置を教えてくれたり、動きを止めてくれるから随分と楽になってると思うよ?だからそんな顔しないで」


 私はそんな妹の清美を撫でながら慰める。


「そ、そうなの?ボクお姉ちゃんのお役に立ってるの?」

「うん、断然助かってるよ。だからもっとガンガン撃っていいからね」

「うんわかったっ!ボクもっと頑張るよっ!」

「そうそう、その調子でクリアしちゃおうよっ!」

「うんっ!」


 私の言葉が少しは清美に自信を与えたようで良かった。


『実際に、清美の先読みにも似た鋭い洞察力があったからこそ先んじて攻撃も出来たし、囲まれることも少なかった。それにスタンボーガンでの腕前も上がってたしで、本当に助かっているよ』


 笑顔が戻った清美を見てそう思う。


「それにしても何で一気に襲ってこないんだろね? わざわざワープしてくる意味がわからないよぉ……」

「うーん、それは私にもわからないなぁ。今回初めて受けたクエストだから」


 と、清美の言葉に意識を戻し問いかけに返事はするが、その質問の答えを私は持ち合わせていなかった。清美に話した通りに初のクエストだからだ。



■■■■



「清美。このクエスト受けてみない?」



 私は泊まりに来ていた清美に声を掛ける。

 今はちょうどお風呂から上がってきたところだ。


 入るときは姉妹一緒だったけど、私はシャワーオンリーなので、清美より先に上がって待っていた。清美はしっかりとお風呂に浸かって100まで数えていたけど。


「うん、いいよ」


 清美は調べているPCの画面も見ずに返事をする。


「あのさ、このアクセサリーなんだけど、効果が清美の武器と相性がいいと思うんだよね?クエストは私も手伝うからさ」


「そうなの?ならそれでいいよお姉ちゃん」


 と、相変わらず画面を見ている気配のない背後の清美に声を掛ける。


「って、ちゃんとクエスト内容とか、アイテムの効果とかキチンと見なよ?」

「ええっ!いいよぉ。だってお姉ちゃんが一緒に行ってくれるんでしょ?」

「うん、それは勿論そうなんだけど。でもね一人前になるのにはね――――」

「うん。わかったよお姉ちゃんっ! それで?」

「………………なんでパンツ履いてないの?」

「だって、パジャマは持ってきたけど、下着は忘れてきちゃったんだもん」

「うーーん、私のがあるけど…………ちょっと待ってて」


 私は首にバスタオルを掛けただけの、清美を見ながら席を立つ。


『にしても、私に似ず、あちこちストレートだよね?凹凸もあまりないし』


 そして清美の小さな体を見てサイズが合わなそうだと気付く。



『あ、でも少しは胸が大きくなってきてはいるんだね? でも12歳だからそんなものか。まぁ、私が清美の歳の時にはもうスポブラしてたけどね。成長が早くてさ』



 私はそう思いながら、手に取ったパンツを清美に渡す。


「はい、清美。緩いとは思うけど、その上からパジャマ履いちゃいなよ?さすがにノーパンでパジャマはおかしいし、風邪ひいてもあれだから」


「うん、ありがとうお姉ちゃんっ!」


 と立ち上がり、足を上げ下着を履きだす。


 私はその間に、飲み物の準備をする。

 清美はお風呂でたくさん汗をかいてたみたいだし。

 水分補給をね。


「ねぇ、お姉ちゃん」

「うん、何?」


 私は冷蔵庫を開けながら清美に返事を返す。

泊まりに来ることは知っていたから、清美の好きな物は前もって買っておいた。



「………………お姉ちゃんのパンツ。サイズピッタリなんだけど」

「……………………マジ?」

「う、うん。大丈夫だと思うよ?これでも」


「……………………」

「……………………」


「………………あはは」

「??」


「あははははっ。それは私が小学生の時のだったよっ!良かったねちょうど昔のがあって。それはあげるから、そのまま履いて行っていいからねっ」


「え、これ10年以上も前のパンツなのっ!? それにお姉ちゃんは小学生の時に黒のレースのパンツ履いてたの?早くないの?お母さんに怒られなかったのぉ?」


「へ?」

「……………………」


「あ、ああ。うっかりしてたよっ!それは間違って買ったサイズだったんだよっだから気にしないでいいからねっ!私のはもっと大きいからさっ」

「う、うん、ありがとうお姉ちゃん」


 と何とかこの場を誤魔化して、妹の清美とゲーム内に入るのであった。

 清美の装備に最適なアイテムを目指して。


 それにしても……


『わ、私のお尻が小さいんじゃなくて、清美が大きいんだよね?成長してるんだよね?そうだよねきっと……』


 隣の清美の小さなお尻をジト目で見ながらそう思った。


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