第169話澄香とユーア別離の時?
「それじゃスミカお姉ちゃんっ。もうボクたちは――――」
「ユ、ユーアっ!お姉ちゃんを置いて行かないでっ!私を捨てないでっ!ユーアの言うことなんでも聞くからっ!毎日高級お肉食べさせてあげるからっ!私はその為に働くからぁっ!それと秘伝のバストアップ体操も教えるからぁっ!だからユーア私を嫌いにならないで、何処にも行かないでぇ!」
私はユーアをギュッと胸に抱いて懇願するように叫ぶ。
「えっ!?えっ?本当に良いのスミカお姉ちゃんっお肉っ!」
おおっ、中々の感触のようだ。これならユーアを引き止められるかもっ?
さすがお肉大好きユーアだ。
秘伝のバストアップ体操は興味なさそうだったのに……
お姉ちゃん、そこは少し心配しちゃうよ?
そろそろ気にするお年頃じゃないの?
まぁユーアの女子力が上がったら上がったで、更に心配になるんだけどね。
余計な羽虫が寄ってくる恐れがあるから。
「はぁ、全く何やってんのよスミ姉。ユーアも付き合ってないでさっさと行くわよっ!ナジメがまた眠そうにしてるし」
「むにゃむにゃ」
「う、うん、わかったよ。ラブナちゃん。それじゃボクたち行ってくるねっ!スミカお姉ちゃんっ」
そう言ってユーアとラブナ。そしてナジメを乗せたハラミが離れて行く。
「あ、ああああっ!ユーア何かあったら信号弾上げなよっ!持ってるよね? それと回復ポーション一式と閃光弾もっ!」
私から離れて行くユーアに大声で叫ぶ。
お姉ちゃんは妹が視界の範囲にいないと心配なのだ。
「はい、大丈夫ですスミカお姉ちゃんっ!全部持ってます!!」
「はぁ、スミ姉の過保護ぶりが一々面倒だわっ!それもアタシ以上に。ハラミさっさと速度上げなさいよ?じゃないといつまでも進めないわっ!」
『わう』
ヒュンッ
「あああ、ユーアがぁっ!あんな遠くにぃっ!」
ラブナの言う事を聞いてハラミが速度を上げて遠ざかって行く。
ナジメのお屋敷に向かって。
そして小さくなる三人を見つめて伸ばしたままの手を下げる。
それと一緒に私の視線も下がってしまう。
「ユーア……」
「お、お姉さま、そろそろ私たちも行きましょう。ナジメのお話と、それと大会の話も長くなってしまったので」
「うん、うんっ!」
「で、でもユーアが――――」
「お姉さまユーアちゃんなら大丈夫ですよっ!ナジメもハラミもいますし、それにユーアちゃんも強いのですから。きっと無事に帰ってきますよっ!」
「そうだぞ、スミ姉ぇっ!ラブナだってあれで結構強いと思うんだっ!そこら辺の男たちなら絶対に返り討ちにするって」
「そ、そうなんだけど。何か嫌な予感がするんだよね。乙女の勘って奴?ユーアを守る戦力には心配してないんだけど、それ以外にね――――」
確かにナゴタとゴナタと私が思う通りユーアを悪漢からを守る布陣は完璧だ。
なんせ、守り特化の小さな守護者もいるし、シルバーウルフのハラミもいるし。
『それと、ユーアはきっと敵意や害意ある者に敏感だろうし』
と未だに把握していないユーアの力の事を考えてみる。
だからそこまで心配する事でもない筈だと。
だけど、何かが引っ掛かる。
『…………私何かフラグ立ててないよね?』
※※※※※※
私たち三人はユーアを見送った後、商店街を目指して歩いている。
「それじゃ先にニスマジのお店…………を案内するよ。そこなら食器も布団も色々売ってるから」
私は、あの怪しい店の名前を思い出せずに姉妹にそう告げる。
うーん、店名何だっけかな?
「ニスマジさんっていう方のお店なんですか? そこにはマジックポーチなどの魔法アイテムも置いていますか?」
「うん、置いてるよ。でもナゴタとゴナタは二人ともいいの持ってるんじゃないの? ああ、予備にもう一個欲しいんだね?乙女は荷物が多いからね」
ナゴタの質問に私はそう考え答える。
女性、特に冒険者ともなれば、毎夜宿屋などに宿泊できるわけでもない。
となれば着替えも肌着も多く持ち歩くだろうし、それにタオルだって多めに持ち歩きたいだろう。水辺があれば体を清める事もあるだろうし。
ナゴタなんかは特に身なりがきれいな事もあり、更に荷物は多いだろうと予想できる。その為に予備のマジックポーチなる収納アイテムが必要なのだろうと。
「えっ?お姉さまそういう事ではなく、ゴナちゃんと相談してラブナに買ってあげる予定なんです。私たちからのパーティー加入のお祝いとして」
「うん、そうなんだスミ姉ぇ!それとラブナは寝る時に、あのウサギのぬいぐるみがないと寝れないって言うんだ。家の中ではいいんだけど、野営にそれを持ってくのはかさ張るからってのも理由の一つなんだよなっ!」
「ふ~~ん、あのラブナにそんな子供っぽい所があったなんてね。何か意外かも」
「そうですね、でもあのぬいぐるみはラブナの宝物みたいですよ?」
「うん、何か大好きな人に貰ったって言ってたしなっ!」
「大好きな人?両親とか兄弟とか、そんな感じの人かな?」
「う~~ん、どうなんでしょうね? ラブナはその辺り話したがらないので何とも言えないですが、恐らくそうだと思います」
「ワタシもそう思うなっ!まさかあの年とあの性格で好きな人がいるとは思えないしなっ!」
「はははっ!それはラブナに悪いってゴナタ~」
「そうですよゴナちゃん。ラブナは性格はなしにして整った顔していますから、何処かにラブナを気に入る人もいるかもしれませんよ?」
「うん、そうだなっ。でも逆にラブナから誰かを好きになるってのは想像できないかも『ア、アタシが好きになってあげてるんだから、あなたもアタシを好きになりなさいよねっ!』なんて言いそうだしなっ!」
とゴナタがラブナの口調を似せて真似をする。もちろん仁王立ちで。
「わはははははっ!微妙に似てるよゴナタっ!!」
「くふふふふふっ、本当にそんな事言いそうな感じがしますね」
「そうだろっ!」
私たち3人はそんな女子会トーク全開のまま一軒のお店の前に到着した。
「さぁ、ここがニスマジのお店の『ノコアシ商店』だよっ!」
私はやっと思い出した店名のノコアシ商店の前で二人にそう説明する。
「はい?ノコアシ商店ですか?何処に看板が出ているんでしょうか?お姉さま」
「うん、お姉ぇ名前間違ってるぞっ?」
「へっ? 違うって? だって最近来たばっかだよ?」
私はナゴタとゴナタの指摘に看板を確認しようと後ろを振り向く。
それを見てゴナタが先に看板の名前を読みあげる。
「何か看板に『黒蝶姉妹商店』て書いてあるんだけどっ!」
「へっ?」
えええええええええっっっ!!!!
どういうことっ!?
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