第165話ナジメとクロ
このお話はナジメの幼少の頃のお話です。
時間軸では本編の100年近く前のお話です。
※残酷な表現や人権に関わるお話があります。
苦手な方はご遠慮ください。
※過去の話と、現在とが交互に進んでいきます。
予めご了承ください。
――――遠い昔、わしたち姉妹は浮いた存在だった。
蚊帳の外。爪弾き。仲間外れ。異端児。
言い方は色々あるが、要するに、
迫害されていた。
※※※
「ねぇねはわちが守るんじゃっ!」
わちは木の影から飛びだし、持っていた小さな枝でねぇねを囲む奴らに大きくブンブンと振り回す。
「このぉっ!ねぇねから離れるのじゃっ!!」
「はぁ?その髪の色はコイツも混血か?だったら一緒にやっちまおうぜっ!この村には混血児はいらないっ!そんな異端児なんか匿っていたら他の集落の奴らに何言われるか!」
「な、何じゃとっ!わちたちが何をしたのじゃっ!それに村長と長老は許してくれたのじゃっ!何故にわちたちを追い立てるのじゃっ!」
「ナ、ナーちゃん、逃げましょうっ!」
ねぇねとわちを囲んでいるのは、この村のドワーフの子供だった。
そしてねぇねとわちはドワーフと犬猿のエルフとの間に生まれた子供だった。
ドワーフとエルフの混血。
その為にわちたちは両種族より追い立てられていた。
そして落ち着いた先がこの両親が眠っている土地だった。
ドワーフとエルフの不仲はわちが生まれる数百年前から続いている。
その発端の出来事はとうの昔の話だが、それでも尚、両種族は反目しあっている。
現にわちと姉のクロが子供たちに村八分にされている。
このくだらない両種族の争いはいつまで続くのか?
そこに終わりがあるのか、ないのか?
それに意味はあるのか?
わちたちに未来はあるのか?
どれ程根が深くとも今を生きるわちたち姉妹には関係ない。
わち達が両種族の争いの発端者でも、要因でもない。
そしてわち達と同じ境遇の者は他の大陸にも大勢いる。
大なり小なり似たような目にもあっている。
わち達もその中のほんの一つに過ぎなかった。
※※※※
『――かなり根が深そうな話だね。そういったのは何処も似たようなものか……』
現代でも同じような事で苦手意識を持っている人種や国がある。
それは戦争だったり、政治的だったり、生理的だったりとハッキリしてるものや、抽象的なものまである。
ただ要因が分かっていて、それがとうの昔の話だとしても一度生まれた負の感情は中々消せない。
『まぁ、外国人が他の国で事件を起こしたら、その本人じゃなくて、国そのものを批判する人もいるしね。仕方ないとは言いたくないけど、納得はしたくないよね?』
「ふーん、ドワーフとエルフってそんなに仲が悪いんだ」
私はナジメの話が一旦終わり、場が静まる中そう聞いてみた。
「そうですねお姉さま。自然を愛するエルフと、自然を資源とするドワーフとは根本的に相反していますから。それに過去のドワーフ達が発端で、エルフと起きた戦争もあったらしいですし……」
「それでも今は昔ほどじゃないと思うけどなっ。今の国王さまはドワーフともエルフとも仲がいいって話だし」
「そうじゃな。この国の国王さまはどちらかというと、そう言った種族間のいざこざを解決すべく動いているとわしも聞いたことがある。確かに、わし達が幼少の頃よりは過ごしやすくなったと言えるのじゃ。
それでもまだ手の届かぬ小さな集落では起きてはいるがのう」
聡明なナゴタに続き、ゴナタとナジメもそれぞれに知っている事を教えてくれる。
「ナジメちゃんって、ドワーフさんとエルフさんの子供なんだねっ!」
「へぇ、この辺りじゃ人間以外あまり見なかったけど、ナジメあんたちょっとカッコいいわよっ!何か特別な存在みたいでっ!これからも頑張んなさいよねっ!!」
「わわ、ちょっとやめるのじゃっ!あちこち触るでないっ!」
ナジメの長寿の秘密を聞いたユーアとラブナは、ナジメを囲み小さな体の至る所を触っている。それを眺めてると、人族はあまり気にしてないようにも見える。
『元々ユーアはそう言った事は気にしないだろうけど、ラブナは自分を重ねたって感じかな?それに私たちはドワーフでもエルフでもないから、その意識が低いってのもあるんだろうけど』
「それでも、わしはねぇねを守ろうと頑張っていたのじゃ。体の弱い姉が無理をしてでもわしを守ってくれたようにな」
二人が満喫したのを見計らって、ナジメが話を続ける為に口を開く。
※※※※
「わははっ!全然効かんのじゃっ!わちがねぇねを守るのじゃっ!」
「ナ、ナーちゃんっ!?」
わちは生まれつき体の弱いねぇねと違って、他の者より頑丈だった。
だからわちは矢面に立って、ねぇねを出来る限り守ってきた。
わちに守られるねぇねは、わちに読み書きと一般教養。
そして優しさと温もりを与えれくれたから。
――――だからわちは姉のクロを、ねぇねを守る。
「な、なんだこいつっ!全然怯まないぞっ!?」
「いててっ! 殴ったこっちが痛いぞっ!?」
「はぁっ!?棒が折れちまったぞっ!!」
「もういいじゃろっ!わちは強いんじゃっ!だから諦めるのじゃっ!」
そしてわちと同じくらいの子供の攻撃は殆ど痛くなかった。
こんな強い体に産んでくれた両親に感謝した。
ねぇねを守れる力があるのが誇らしかった。
だだそれは――――
ドワーフのある人物が現れるまでだった。
その邂逅でわちの特殊能力「小さな守護者 Litttle Guardian」が初めて発現した瞬間だった。
それはわちの慢心が生んだ当時は忌みなる能力だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます