第164話とんでもなく年長者だけど妹?



 一先ずはユーアとラブナはナジメとハラミが付いて行く事で決定した。


 甚だ不本意だけど……。


 と、言う事で、私と姉妹の二人は街に行くことに。

 ユーアとラブナたちは貴族街に行く事で落ち着いた。


 私は姉妹に付き合ってニスマジのお店に。


 ユーアたちはナジメのお屋敷にいる子供たちの様子を見に。



「で、ナジメ何か大事な話があるんでしょう?」


 私はユーアたちとお屋敷の話をしているナジメにそう促した。

ナゴタたちを呼んだのは、そもそもナジメから話があるとの事だったから。


「う、うむ。そうじゃな。そうじゃったな……」


 ナジメは別に忘れたわけではないと思うが、言いにくそうに言葉尻を窄める。


「ナジメ。何も不安がらないでいいよ。ここには、何も聞かないでナジメを乏しめる人はいないから。だから話してくれる?」


「う、うむ。じゃがしかし、わしの勝手な個人の……」


 私が話し出す切っ掛けを作ったのにも関わらず、それでも言い淀んでいる。


「ナジメ――――」


「ナジメちゃん。もしかして何か困ってるの? ボクだけじゃ力になれないけどお話してよ。ナジメちゃんには孤児院の子たちもお世話になってるから、ボクも何か力になりたいんだ。だからね」


 ユーアはナジメの両手を握って、優しく諭すように先を促してくれる。

 それを聞いたシスターズの面々は、


「ナジメ、あんた何か相談に来たの?ならさっさと話しなさいよっ!アタシはナジメの事良く知らないけど子供が困ってるんだから聞いてあげるっ!ここは年上のアタシが力を貸してあげるっ!」


「ナジメ。何を悩んでいるのか分かりませんが、お姉さまが認めるあなたを、私たちは見捨てたりしないわ。だから話をしてみない?」


「そうだぞナジメっ!話聞かないとこっちもモヤモヤするんだよ?もしかしたらすぐに解決するかも知れないんだからなっ!お姉ぇもいるし」


「お、お主たち……」


 ラブナ、ナゴタとゴナタもユーアの後に続きナジメに近寄り小さな手を取る。


「ねえ分かったでしょ?ここにはナジメの味方しかいないって。もし私たちを気遣っての事なら余計なお世話だよ?私たちは何が何でもナジメから話を聞いて、そしてそれに協力する気満々だから」


「ね、ねぇねまで、そんな――――」


「それに空で言ったよね?私はナジメのお姉ちゃんになったって。だから何でも頼りなよ。妹を守るのがお姉ちゃんの務めなんだからさ。妹に頼られる姉も嬉しいものなんだよ。だからね?ナーちゃんっ!」


 私はナジメの頭を撫でながら諭す。


 ナジメは最初に私に撫でられた時、姉を思い出したと言っていた。

 小さいナジメを守ってくれた優しい姉と。


「う、あ、ねぇ、ねっ、わちは、わちは、ねぇねを救いたかったんじゃ、でも小さかったわちは弱くて何も出来んかった、恐くて守れなかった。それでも、そんなわちを助けてくれると言うのか?」


 ナジメは自重気味に何処かたどたどしく言葉を繋ぐ。


『わち』というのはきっと幼少の頃のナジメの事だろう。


「ナジメ違うよそうじゃない。ちゃんとお姉ちゃんにお願いして」


 私は少し涙ぐむナジメにハッキリとそう告げる。

 きちんとした言葉で伝えて欲しいと。


「わ、わちを助けて欲しいのじゃっ!」

「うん」


「手を貸して欲しいのじゃっ!」

「うん」


「お、お願いじゃねぇねっ!」

「よく言えたねナーちゃんっ!!」


 私は「ドン」と自分の胸を叩く。そして、


「全部お姉ちゃんに任せなさいっ!」


 私はナジメの涙を拭って胸を張り笑顔でそう答えた。


「よし、それじゃお姉ちゃんは頑張っちゃうからねっ!皆もよろしくねっ!」


「はいっ!スミカお姉ちゃん!ボクも偉くても妹みたいなナジメちゃんを手伝います!」

「ナジメはまだ小さいんだから、ここは姉のアタシの出番なのよっ!」

「ふふ、ゴナタ以外の姉になった気分で少しわくわくします」

「ワタシもお姉ちゃんみたいなもんかぁ!お姉ぇみたいに頑張るぞっ!」


 シスターズの皆も後に続いてナジメを励ますように大声を上げる。


 それを目尻を濡らしたまま聞いたナジメは――――


「み、みんなありがとうなのじゃ、わ、わしは嬉しいのじゃっ!出会ったばかりのわしにこんなにも力を貸すと言ってくれるなんて……」


 ナジメはここでいったん話を止め溢れ出た涙を指で拭う。


「じゃが、多少言いずらいのじゃが、わ、わしはまだ何も訳を話しておらぬ……それなのに良いのか?」


「あっ」


『そ、そう言えば話の内容全く聞いてないじゃないっ!これで私たちが手を出せない国絡みとか貴族関係だったらどうしよう……』


 私がそんな事を考えているうちにナジメの話は続いていく。


「そ、それとじゃな、皆がわしの事を子供と思っておるようじゃが、わしは――」


『あ――今のタイミングでそれ言うんだ……』



「わしは――――こう見えても106歳なんじゃよ……」


 ナジメはかなり言いずらそうにモジモジしながらそう言った。

 


「へ、ひゃ、ひゃくろくさいって何歳ですかっ??」

「ひゃくぅっ!? な、何の冗談よっ!そんな長生きしてる人間なんて聞いたことないわよっ!」


「ナ、ナジメもしかしてあなたは……」

「なななっ!どう見ても子供じゃん、何だってそんな冗談言うのさっ!」


 そんな突然の告白に、一同は目を見開きナジメを見つめる。


「い、いや、そう言われても、わしは元Aランク冒険者じゃぞ?それでも最低12歳以上じゃとわかるじゃろうて?しかもわし領主なんじゃぞ?」


 そんな皆の反応に焦り出して早口で捲し立てるナジメだった。



※※※※



 それが一段落した頃。


 果実水で喉を潤したナジメは語り始めるのであった。


 ナジメの願いと幼少の頃の――――



 悲惨で悲壮で悲痛な昔話を



 

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