第161話頑張るお姉ちゃんっ!



 ゴオォォォ――――――



「ナゴターっそこから少し離れたらそこを動かないでっ!魔法壁で覆うから!」

「わははっ!気持ちいいのじゃっ――――!!」



 私とナジメは重力に任せながら、ナゴタのいる地面に落下していく。

 ビルのような100tもの巨大スキルは孤児院に向かっていく。


「は、はい分かりましたっ!おねえさまっ」



 ナゴタが孤児院から数十メートル距離を取ったと同時に、私とナジメも地面に到着する。


 それと同時に私たち三人を透明壁スキルで覆う。


 それはスキル落下の衝撃と、孤児院から飛び散るであろう瓦礫を懸念してだ。



「それじゃ派手に破壊するよぉっ!!」


 孤児院の真上に落ちるようにスキルを操作する。


 そして50メートルを超える100tもの巨大な塊が、

 孤児院の屋根に直撃し、


 そのまま、


 ドゴオオォォッッ――――!!!!


 と何の抵抗もなく孤児院を押しつぶして、


 ズズウゥゥゥゥ――――ンッッ!!


 と孤児院の代わりに、巨大なスキルの柱がそびえたった。



「ね、ねぇねっ、これはちと――――」

「お、お姉さま、こ、これは――――えっ? ねぇねって?」


「うん、ちょっとやり過ぎたかもっ」


 私はすぐさま視覚化したままのスキルを解除する。


「う、うわわわっ! 跡形もなくなくなりおったっ!」

「さ、さすがお姉さまですねっ!」


 ここら辺は人気が少ないとはいえ、あまり目立っても後々面倒だなと考えての事だった。


 なら何で目立つように視覚化なんかしたの?


 まぁそれはあれだよ。


 ナジメが派手にと言ってたのもあるけど、それよりも色々悩みを抱えてるナジメを元気付けてやりたいと思うじゃない? 仲間としても、勿論、自称お姉さんとしてもさ。


 なんで、あれは私なりの励ましみたいなものだよ。


「みんな大丈夫?」


 私は抱いていたナジメを地面に降ろし、ナゴタにも声を掛ける。


「は、はい、大丈夫ですお姉さま。ですが、これは――――」


 ナゴタは元孤児院があった、今は巨大なクレーターが出来た土地に、目を奪われながらも返事をする。


「うん、やり過ぎたとは思ったけど、この方が余計な片付けしないでいいでしょ?この後なら建てやすいしガラクタも瓦礫も何にもないんだからさ。それにナジメだったら、この窪みも簡単に整地出来るでしょ?」


 と、私の前にいるナジメに問いかける。


 ナジメはゴナタの話だと、元々開墾が得意だって話だし。


「う、うむ、これくらいは余裕じゃ。それにしてもねぇねはわしと戦った時、やはり全部は見せていなかったんじゃなぁ? さすがわしが見込んだ者だったということじゃな……うむうむっ」


 ナジメは穿かれた大穴を眺めながらそう返事をするが、最後の方は良く聞き取れなかった。ただ満足げに何かに頷いているのは見えた。


「それじゃ、早速お願いするよ」


「よしっ!わしに任せるのじゃっ!」


 ナジメはそう言って両手を前に差し出すと地面が波打つように動き始める。


 周囲の土を巻き込みながら、クレーターの中心から地面が盛り上がり始め、そして整地された平らな地面がすぐさま出来上がる。


 この様子を見る限り、ナジメはほぼ自由に土を操れるようだった。


「うわ、さすが得意なだけあるねっ!」

「ナ、ナジメっ!凄いですよっ!」


「うふふっ、そうじゃろそうじゃろっ!」


 「ガッガッ」と私は近付いて整地された地面を蹴ってみるが、普通よりも硬度があり、異常な程平らで、測量したかのように水平だった。


「で、どのくらいで新しい孤児院は出来そうなの。1カ月くらい?」


 私はナジメの魔法に感心しながらに聞いてみる。


「そうじゃな、それくらいあれば建てられると思うのじゃ」

「う~ん、やっぱりそれくらいかかっちゃうんだね?」

「うむ。最速でもそれぐらいじゃろうな」

「ううん――――――」


 私は少し悩みながら、アイテムボックスの中を確認する。


『うん、これなら数百人超えなければ大丈夫そうかな?』


「ねぇ、孤児院にいた子供たちは何人くらいだったの? それと暫く世話してくれる人たちは?」


「ううむ、確か子供たちは30人くらいじゃったかのう。それと世話をしてるのは、わしの所のメイド2人と、知り合いから借りている女中が2人じゃな。なので合計では40人より少ないくらいじゃな? ねぇね、それを聞いてどうするのじゃ?」


 ナジメは指折り数えては、質問の意図がわからず私の顔を見る。


「それはさ、1カ月は貴族街のナジメの屋敷にいるって事だよね?子供たちは」

「それはそうじゃなぁ。他にあてもないしのう。宿に泊める訳にもいかぬし」

「あ、あのぅ、さっきから『ねぇね』って何の――――」


「そうなると、ユーアとラブナは1カ月くらいは子供たちの所に通うと思う。ユーアもラブナも子供たちの事を心配してるみたいだし」


「でもそれは、ねぇねがユーアたちを止めればいいだけの話じゃないのかのう?1カ月は我慢してくれとお願いすれば。それか回数を減らすとかじゃな」


「まぁ、それでもいいんだけど。でも私はユーアに好きな事をしてもらいたいから、その案は最初から考えてないんだよ?で、それをどうにかするのがお姉ちゃんの腕の見せ所だしね」


「腕の見せ所って、ねえねは一体何を考えておるのじゃ?」

「あ、あのお姉さまっ!『ねぇね』てお姉さまのこ――――」


「まぁ、観てなよ。あ、ちょっと二人とも離れてて」


 私は必要のない腕まくりをし、アイテムボックスよりレストエリアを出した。


「な、な、なんじゃっいきなりこのデカい家はっ!?」

「おおお、お姉さまっ!まさかこのようなものまで持ってるなんてっ!?」


 二人が驚くその先には、小隊規模(約30~60人)を収容できるレストエリアが登場したのであった。




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