第148話フタされて、あたフタする幼女
「んなっ! 何がどうしたのじゃっ! わしの土龍の首がぁっ!」
ナジメは不測の事態に叫びながらも、土龍の顔から跳躍し退避する。
「まだまだぁっ!」
私は落下に任せながらも、更に巨大な三角錐を5機展開し、それを頭のない土龍に振り下ろしていく。
「んっ!」
ズバンッ――! ×5
その攻撃で、土龍は5つの輪切りとなり崩れ落ちる。
ナジメの魔法の効果が消えたのだろう。
「うなっ! お主一体どこにっ!? そ、空からかっ!?」
すかさず頭上の私を見付けて、驚愕の声を上げる。
私はそれに答えずに、土管ほどの円柱を展開して、跳躍しているナジメに叩きつける。
「ぶっ飛べぇっ!」
ゴガァァ――ンッッ!!!!
「んがはぁっ!!」
ナジメはそれを防ぐ間もなく直撃し、
ドゴォォ―ンッッ!!
盛大に地面に叩きつけられるが、
「き、効かぬのじゃっ!」
殆どダメージを負ってないナジメがすぐさま立ち上がる。
『これでも効いてなさそうだね。どれだけ頑丈なの?』
タタッ――
ナジメの様子を見ながら近くに着地し、すぐさま追撃の為に速度を上げる。
「は、早いっ! でもわしにはこの魔法と能力があるのじゃっ! そう簡単にやられたりしないのじゃっ!」
シュ ――ンッ
今の私の速さはナゴタを超えた速さで移動している。
その速度でナジメの背後を取り、スキルを振りかざす。
それでも、
ガギィンッ!
ナジメは私が攻撃を仕掛ける前に土壁を出現させ、私の攻撃を通さない。
「ならっ!」
「うがっ!」
ナジメの真下から視覚化したスキルを展開し、ナジメを空中にカチ上げる。
その隙に、ナジメがいなくなった地面に、保護色にした透明壁スキルを展開する。
この訓練場の地面を薄っすらと覆うくらいの、表面にだけ展開した。
それにより、
「無駄じゃっ! 今更こんな攻撃が効くわけなかろうがっ!『土路泥』」
ナジメは空中で態勢を整えながらも、地面に沼地を作成する。
ぬかるんだ大地で、私の速度を塞ぐつもりだろう。
だが私は何の影響もなく地面に立っている。
「うん? どうしたの。得意の土魔法が出来ないみたいだけど」
「な、何でわしの魔法が発動せぬっ! なら、今度は『土葬』」
「全然何も起きないけど」
「うなっ! 何故じゃっ! 確かに発動はしている筈じゃっ! 現に魔力がっ!」
土葬が何の効果のある呪文か分からないが、ナジメの言う通りに発動はしているだろう。
ただそれが見えないだけ。そして出れないだけ。
「も、もう一回『土葬』じゃっ! はぁ!? こ、こんな筈じゃ…… なら『土鍋』『泥人形』『土槍』」
得意の魔法が顕現しない事に混乱し、ガムシャラに唱え始めるが、
シ――――――ン
何の効果も出なかった。
「な、何故じゃ~っ!」
わたわたと頭を抱えながら、浮いていた空中から地面に着地する。
タンッ
「はぁっ? これはお主かやったのかっ! この地面は?」
すぐさまその違和感に気付く。
「うん、そうだよ。ここまで推測通りとは思わなかったけど」
ナジメの質問に答えて、手持ちの円柱で地面を叩く。
ガンッガンッ と。
それはとても土で固められた地面から出る音ではない。
「お、お主のそれは魔法なのかっ? 見た事がないのじゃっ!」
「うん、一応私は魔法使いで登録しているからね」
私はナジメの土魔法を最初から観察していて気付いたことがあった。
それはナジメの土魔法は、必ず地面から出現していた事。
土の球も、土の沼も土の龍も全てが同じだった。
だったらその出所を塞いでしまえばいい。
私の透明壁スキルで、ここらの地面に蓋をして。
『思い付きで試したけどうまくいったね。これで私のスキルは魔法も通さない事もわかったし』
なので実際はナジメの魔法は発動している。このスキルの壁の真下では。
ただそれが地上に出れないだけ。
見えないだけ。
たったそれだけの事だ。
「それじゃ、ここからは私が一方的にナジメに打ち込むけど大丈夫でしょう? ナジメはその能力で頑丈なんだから。それとも降参する?」
鋭く尖った円錐の、長い槍状のスキルを周囲に5機を展開する。
国旗など大きな旗を吊るすポールくらいだろうか。
その一つを私は手に取り、ナジメに向かって構える。
「わ、わしが降参なぞするわけがなかろっ、うがっ!」
ナジメが言い終わる前に、槍を手加減なしに投擲するが、
「ガンッ」と音を立てて、その槍は弾かれる。
「………………」
ヒュンッ
続いて残り4機も渾身の力でナジメに向かって投げるが、
ガガガガンッ!
これも全てナジメの体に当って弾かれる。
「…………本当に頑丈なんだね。そんなにちびっこいのに」
無傷のナジメの体を見て、素直に称賛する。
「だから言ったのじゃっ! わしの能力を破ったのは人間にはいないのじゃっ! いくら攻撃しても無駄なのじゃっ! お主が疲れた時が最後なのじゃっ!」
それを聞いたナジメは「ふふんっ!」と鼻息交じりにふんぞり返っている。
「でも得意の魔法を封じられて、よくそんな余裕があるね? それとも他に何か攻撃方法があるの? とっておきの何かとか」
「あるにはあるが、今のお主には当たる気がせんのじゃっ。まぁ、魔法も原因がわかれば使えないわけではないが、観客にケガ人が出る恐れがあるしのう。ならもうこの勝負はわしの能力が破られるか、お主が破るかの勝負になるのじゃ。それでいい―――― って、お主地面の魔法を解いたなっ!?」
そう言って、ナジメは地面に視線を落とす。
地に足が付いているのは、戦いで荒れた地面だった。
これでナジメの魔法も普通に使えるだろう。
「そりゃそうでしょう? 元々こんな方法で勝とうなんて思ってないんだから。それと勝手にルールを決めないでくれる? 能力を破るか破られるかなんてルールじゃなかった。どっちかが気絶するか、降参させるって話だったよね? だったら私はナジメを徹底的に追い詰めて、それで降参させるから。私に泣いて懇願させて見せるから当初の予定通りにね」
私たちはそう言葉を交わし、再度距離を取る。
「うははっ! 本当にお主は面白いのぉっ! せっかくのに勝機をなしにするとはのぉっ! わしに勝てる見込みが減ってしまったというのに」
「ううん、別にそんなのはいいよ。私がハンデなんて気に入らなかっただけだし。だからあなたは全力で掛かってきなよ。その方があと腐れないし私も満足するから」
ヒラヒラと手を振って挑発する。
「ふむ、なら遠慮なしに使わせてもらうのじゃっ!」
「好きにしたらいいよ。どうせ結果は変わらないから」
そう言い合い、ナジメは組んでいた腕を降ろし、私は両手にスキルを展開して、仕切り直しとばかりに、お互いに睨み合う。
それはこの戦いがまだまだ続く、長期戦の様相だった。
『ふふ、いいね。そろそろな感じするし。立て続けの高ランクとの戦闘だし』
長期戦。
それは私が望む理想の展開なのだから。
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