第144話SS 澄香のゲームオーバー その2
簡単なあらすじ
今回のお話は、ゲーム時代の澄香のお話です。
大切な何かを失った直後と、失う前が混在します。
澄香の強さの原点ともなったそんなお話です。
「今だよお姉ちゃんっ!」
「オッケー」
清美の合図で飛び出し、大型の人型機械兵の足元にすぐさま踏み込む。
体長は凡そ5メートルくらいだろう。
『グガガッ』
大型の機械兵は清美のスタンボーガン一発で、未だに動くことができない。
四肢の末端部分が辛うじて動かせてるくらいだ。
私はそれを確認しながら「タンッ」と機械兵の頭付近まで跳躍する。
ズバッ
ズバババババババッ!!!!
跳躍の落下に身を任せながら、大型機械兵の関節部分を両手のナイフで切り刻んでいく。そのナイフは現代で言うと「ボウイナイフ」より大型の鉈のような形状の物だ。
『ガガッ――』
機械兵は「プスプス」とそのまま前のめりに体を傾け、
ズズゥ――――ンッ!!
その巨体を地面に沈ませた。
「これでラスト一機だねっ!」
ザシュッ!
地面に伏している最後の機械兵の首を刎ねる。
そしてその体は白い粒子となって消えて行った。
「凄いよっ! お姉ちゃんっ!」
「清美。もうずいぶんと扱いに慣れたんじゃない?」
「タタタッ」と近寄ってくる妹に声を掛ける。
「うん、お姉ちゃんがたくさん教えてくれたからだよっ!」
ガバッ
そんな清美は嬉しそうに私に抱き着いてきてそう話す。
「それはそうなんだけど上達が早いよね? もしかして一人で練習してたとか」
胸に抱き着いて、上目遣いで見上げて来る清美を撫でる。
「うん、実はこっそり練習してたのNPC相手に。でもその時にPKの人たちに会っちゃったんだ。何とか逃げられたけど怖かったなぁ
伏し目がちになって、少し怯えたように話す。
ムギュッ
「って、痛いっ! 痛いよお姉ちゃんっ!」
「あ、ゴメンゴメンっ!」
話を聞いて、知らず知らず撫でている手に力が入ってしまった。
そんな私に頭をさすり、清美が痛みを訴えていた。
「……ねえ、清美。それって何処で襲われたの? それと何処のチーム? 名前は? 特徴は? 人数は ? 武器は? それから――――』
「ちょ、ちょっと待ってよっ! そんなこと聞いてどうするの?」
「そんなの決まってるじゃない。そいつらの躾に行くんだよ。清美に二度と手を出さないように徹底的になぶって何度も回復して、幾度も斬り付けてやるんだよ。泣いて懇願するまで」
今度は優しく撫でながらそう話す。
まだまだ分かっていない連中が多すぎるから。
「へ? なんで? ボクちゃんと逃げて来たんだよ?」
清美は意味がわからないと言った、困惑した表情で見上げる。
「うん、大丈夫。清美は何も心配しないでゲームを楽しみなよ。降りかかる火の粉は、私が全力で振り払ってあげるから」
「えっ! それ全然大丈夫じゃないよっ! みんなボク見たら逃げ――――」
「いいから、全部お姉ちゃんに任せなさいっ! それとこれからはそんな相手に会ったら、マーキングしておいてね? 個人だろうとチームだろうと躾に行くから」
「えええええ――――っ!!」
□ □ □ □ □ □
ザッザッザッ
ただひたすらにエリアを歩いていく。
そして辿り着いた最初の思い出。
「…………あの時の清美の顔ったら」
あの時の清美を思い出して軽く口元を緩める。
「確かここだったよね? そんな話をしたところは。なら――――」
ウィ――ンッウィ――ンッウィ――ンッ!
ウィ――ンッウィ――ンッウィ――ンッ!
『ガガガッ』『ガガガッ』『ガガガッ』
『ガガガッ』『ガガガッ』『ガガガッ』
5メートルを超える人型の武装した機械兵が出現した。
こんなところもあの時と同じだった。
「そりゃそうか。毎回同じところに現れるんだから。それに――――」
私は特殊警棒型のトンファーを両手に構える。
「――――もう何万体も倒してきた相手だしね」
ズガガガガガガガガガッ!!!!×6
機械兵6体は、私を認識した後で即座に攻撃を仕掛けてくる。
私は狙いが定まらないように、左右にステップしながら接近する。
カカカカカカカンッ!!!!
それでも避けきれない弾は、両手のトンファーで弾いていく。
トンッ
「一体目」
ブンッ!
ガゴォンッ!!
跳躍しながらトンファーの一撃で、最初の一体目の頭部を破壊する。
そのままその一体を足場にして宙を舞う。
「二体目・三体目」
その跳躍のまますれ違いざまに二体の頭部も破壊する。
ズガガガガガガガガガッ!!!!×3
残りの3体が銃を乱射してくるが、更に上に跳躍してこれを躱す。
「これで最後」
私は手元の『ハンドグレネード【リモート式】』の起動ボタンを押す。
これは2体目の跳躍の時、残り3体の付近に仕掛けていたものだ。
カチッ
ドゴォォォ―――――ンッッッ!!!!
『グガガッ!!』×3
その爆発で残り3体もこの場から消滅した。
「ふぅ――――――」
ザッザッザッ
私はそれを見届けた後でまた歩みを進める。
何時間、何日、何年かかるかわからない。
「――――――」
ザッザッザッ
それでも私は宛てもなく歩いて行く。
それが今の私には必要ことだと信じて。
それに、私の旅は始まったばかりなのだから。
全てを――――するための旅が。
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