第130話再戦!ナゴタ猛攻!苦戦?無双少女





『ワァァァァァッッッッ!!!!――――――』



「おおっ! やっと出てきたぞっ! この街の英雄とシスターズの双子姉妹っ!」

「何でも、あの双子はBランク冒険者なんだってなっ!」

「ああ、そいでスミカちゃんはCランクらしい」

「お、おいっ! ならこの街の英雄のスミカちゃんは勝てないんじゃねえか?」

「まあ、すでにある部分では圧倒的に負けてるがな、しかし実力は?」

「確かに圧倒的に負けてるなぁ、あの部分は」

「うん、そうだな」

「ああ、これは」

「「「絶対に勝てないっ!!」」」



 私と姉妹のナゴタとゴナタが練習場に姿を現すと、一際大きな歓声に包まれた。

 何となくムカつく声が聞こえた気がしたけど、とりあえずは今は無視する。



「スミカ嬢。この街の観客たちには英雄とシスターズのデモンストレーションって伝えてある。それと冒険者の奴らには、この模擬戦でナゴナタ姉妹がスミカ嬢の配下に置かれると説明してある。もし姉妹がこれ以降問題を起こしても、スミカ嬢がそれを抑えられる実力があるかどうか見極めろとも言ってあるぜ。これでいいんだろォ?」


 歓声に包まれている私たちに近付き、ルーギルがそう伝えて来る。


「うん、それでいいよ。ありがとね、ルーギル」

「はい、私たちも異論有りません」

「うん、うんっ!」


「そうかァ、なんか今更こんな事言うのもあれだがよォ、もういいんじゃねえか? スミカ嬢のパーティーってだけでよォ」


「いいえ、それでは誰も安心できませんし、私たちが納得できません。私たちはここで全力を出して、お姉さまに打ちのめされないと意味がありません」


「そうだぞっ! ルーギル。それでそれをここの冒険者に見て貰うんだ。お姉ぇの強さと、ワタシたち姉妹のみっともない敗北を。それで終わりなんだよなっ!」


「そうか、ならもう止めねえッ。思う存分やられて来いッ! そんでスッキリしてこいよォ! もしそれでもダメってんならァ……、いや、クレハンの考えと、嬢ちゃんの実力があれば、もしもは無えなァ。しかもその後はよ――――クククッ!」


 そう言ってルーギルは私たちのすぐそばに立つ。

 しかも何か、意味深な含み笑いまでして。


「あれ? ルーギルが代表で見届け人みたいなのやるの?」


 私たちを見て離れないルーギルに尋ねる。


「ああ、そんな感じだァ、それと三人同時でやるのかァ?」

「ううん、違うよ。え~と、ナゴタからだよね? 確か」


 すぐ横にいるナゴタに聞いてみる。


「はいそうです、お姉さま。私から手合せさせていただきます」


「そうかァ。ならゴナタはあっちで観戦してろ。おいクレハンッ!」


「はい、ギルド長。ゴナタさんこちらで見ていましょう。ご案内します」

「うん、わかったっ!」


 2戦目に戦うゴナタはクレハンに付いてここを離れて行った。

 そしてここには、私と姉のナゴタが残された。



「あのルーギル。いくら見届け人でも、私とお姉さまの戦いを間近で見てたら、あなたも巻き込まれますよ? ゴナタの脇にいた方がいいんじゃないですか?」


 ルーギルを心配してか、ナゴタが声を掛けていた。


「ああ、そのつもりだァ。ただ開始の号令だけして、すぐさま引っ込むつもりだァ。だから安心して戦えよォ」


「ああ、なんだ最初からそのつもりだったんだ」


「当たり前だろォッ。俺はまだ死にたくねえしなァ。それにその方が派手に出来んだろォ? スミカ嬢もナゴタもなァ」


「うん、まあそうだけど」

「はい、私もその方が気が散らなくて」


「…………本当は俺も混じりてえって少しは思うけどなァ、よし、それじゃ始めるかァ!」



 そう言って、ルーギルは私たちから少し離れて腕を上げる。



「スミカお姉ちゃんとナゴタさん頑張ってっ! でもケガしないでねっ!」

「スミ姉、ナゴ師匠っ! もう派手に見せつけてやんなさいよっ!」

『わう~~~~ん!!』

「ナゴ姉ちゃんもお姉ぇも頑張れっ!」



 ルーギルが下がり、模擬戦の始まる雰囲気を感じ取ったのであろうか。

 いち早くバタフライシスターズのメンバーが、私とナゴタに声援を上げていた。



「よッしゃァッ! 英雄スミカと、Bランク冒険者ナゴタの試合を開始するッ!!」


 ルーギルがそう叫び、バッと上げていた腕を大きく下げる。開始の合図だ。



「よし、それじゃやろうか? ナゴタ」

「はい、よろしくお願いします。お姉さま」


 私とナゴタは真正面で対峙する。



 ナゴタはマジックバッグから愛用の武器を出して構えている。


 その武器は、ナゴタの身長を超える槍の様で両方に刃が付いている両剣と呼ばれる武器だ。


 中距離と近距離、そして突く切る薙ぎるの攻撃が出来る、ナゴタの愛用の武器。


「?」


 と、ここで今まで聞こえていた歓声が、いつも間にか無くなっていたのに私はふと気付く。

 さっきまでの騒音が嘘のように、辺りが静まり返っていた。


 それは、


『――――ああ、そういうことかぁ』


 それを見て私は納得する。


 ナゴタは私を見て微笑み、そしてその柔らかい微笑みの中に鋭い殺気が混じっていたからだ。


 そのナゴタから放たれた殺気に呑まれて、歓客も大人しくなったのであろう。

 それほどの物をナゴタから感じた。



『よし、それでいいよナゴタ。そうじゃなくちゃ意味がないからね』


 私は舌なめずりをし、ナゴタを見つめる。


『これは5層までいかないとキツイかな? スキルは使わないって決めてるし』



「それじゃ、お姉さま全力でいかせていたただきますっ!」


 シュッ


 そう言ってナゴタは私の視界から消えた。

 ナゴタの能力なら、ラブナみたく予告しても意味がない。


『そりゃそうだよ。ご丁寧によーいドンって言われても、もう目の前にいないんだから』


 スッ スッ スッ スッ 


 私の周りから、微かに音が聞こえる。

 ナゴタが得意としている超高速移動だろう。



「――――――そこォッ!」

「くっ!?」


 私は真後ろに蹴りを放つ。


 ガッ


 足裏に固い感触の物を捉える。

 そこには両剣を垂直に構えて、私の蹴りを受け止めたままのナゴタが現れた。


「ナゴタ前にも言ったけど、攻撃パターンが単調だよ?」

「……ええ、もちろんわかってますよ。だから――――」

「え?」


 ガガッ!


「ととっ!!」


 次なるナゴタの攻撃を避けきれず、咄嗟に両手でガードする。

 私が放った蹴りは、地面に深々と突き刺さった両剣を捉えていただけだった。


「っ!?」


 そしてナゴタは武器を捨て、その長い足で蹴りの2連撃を放ってきた。


「痛つっ! やるねっ!」


 ビリビリッと塞いだ腕に衝撃が伝わるが、構わず反撃に出る為に動きに集中する。


『真横から? いや違う、後ろ? はフェイント、じゃないっ! 全方位っ!?』


 ガッガッ ガガガガガガッッッッッ―――――!!!!

 ズガガガガガガガガガガガッッッッッ―――――!!!!


 ナゴタは私の周りを超高速、超至近距離で、拳打、蹴り、掌底、裏拳、膝、肘、はたまた、頭突きをも加えて乱打してくる。

 私を中心に竜巻のように私を巻き込み攻撃をしてくる。


「んっ、くっ!」


 その暴風のような凄まじい数の攻撃を、ギリギリで捌き、躱し、防いでいく。

 ギリギリで直撃は受けてない。けれど、



『お、おおおっ! 何かよく見えねえが、英雄スミカが防戦一方だぞっ!』

『な、なんて速さだ、試合が始まってから殆ど姿が見えねえぞっ!』

『あ、ああ、それでもスミカは何とか防いでいるように見えるが……』

『こ、これが、Bランクの実力なのかっ! さすがに英雄でも無理か!?』


 周りからの大声のヤジが何と無しに耳に入ってくるが、今はそれに意識を割いてる場合じゃない。



『こ、これじゃ反撃できないっ! それに手を出したらそこを狙われるっ!』


 私は防戦一方になりながら、何かないかと考える。



『ステップして距離を? いやこれも追走されて同じ状況になるだけ……』



 ならどうする?


 この竜巻のような攻撃の包囲網から抜け出すには――――



「う、くくっ!」


 私はナゴタが起こした、その竜巻の中心から抜け出せずにいた。



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