第115話シャウトする赤い少女
「ああああっ! アタシの練習場がっ! ちょっとあなたたちっ! 勝手に人の場所に変なの建てないでよっ! アタシが最初に見付けた場所なんだからねっ!!」
「??」
「えっ」
「――――――」
「誰だあれっ?」
私たちが振り向いた先には、腰に手を当て仁王立ちする少女がいた。
その少女は私たちに向かって怒鳴り声で叫ぶ、その言動に見合う程のちょっとキツメの上がった眉と瞳。髪もその気性を表すように真っ赤なセミロング。
それでも美少女と呼べる程、幼くも整った顔つきだが、私たちを睨む鋭い視線と、大きく開かれた口が美少女の要素を若干、台無しにしていた。
『誰なんだろ? この子。口調はあれにして、服装は結構いい物を身に着けているし、いいとこの、うん?よく見たら結構手直ししてる跡があるね。身長と体つきは私と同じくらいか、な? え、グヌヌっ!!』
私たちに鋭い視線のまま睨みつける少女は、
意外にも華奢な体つきの割に大層なものを持っていた。
ナゴナタ姉妹には遠く及ばないが、赤いローブ風の服装の上からも、きっかりと女性らしい部分を強調していた。
『クッ、ま、まあいい、今はそんな事よりも、この子の正体が先だよね。ってあれ? よく見たら強気な態度の割には――――』
若干震えていない?
その赤い髪の少女は、表情と視線こそ鋭く威圧的だが、前の空いたローブらしい服からのぞく白い足は「カクカク」と細かく振るえていた。
更によく見ると、視線も私たちを見ているようで微妙に定まってないし、目の端には光るものが見えた。
『そりゃそうか、ナゴナタ姉妹も含めて、私みたいな大人もいるし、更に従魔の首輪をつけてるとは言えシルバーウルフ(仮)の大きな魔物もいるし、ちょっと可哀想かも。なんか驚かせちゃって』
「ねえ? 赤い髪のあなた、私たちは――――――」
「あれ? ラブナちゃんどうしたの? こんなところで」
「えっ? ラブナ、ちゃん?」
その少女に声を掛けようと思ったら、ハラミの背に乗ったままのユーアが、その少女に話しかけた。どうやら顔見知りのようだ。
「ユ、ユーアっ! あ、あなたなのっ!? な、なんでこんなエロいお姉さんと、お遊戯の衣装の子供といるのっ! って、言うか、その乗ってる魔物は一体何なのっ!? そしてアタシの練習場でなにやってるのよっ!」
ユーアに話しかけられ、余計に情報が増えたせいで、色々と慌てる少女。
「ラ、ラブナちゃんっ! 少し落ち着いてね? ちゃんと説明するからね?」
「そ、そう、なら早く説明してよっ! 一体何なのよこの状況はっ!」
「わ、わかったから泣かないでっ!」
「べ、別にユーアに会えて安心して泣いてなんかないわよっ! ちょっとだけホっとしただけだからっ! 怖かったとかじゃないからっ! そこんとこ勘違いしないでよねっ!」
ビッとユーアを指さし、言い訳がましく叫ぶ。
「お、お姉さま? この失礼な子供はユーアちゃんの?」
「なんだか、うるさいのが来たなぁ」
それを見て、呆れる姉妹の二人。
『う~ん、知り合いなのはわかる。けど、随分と失礼な少女だよね?』
姉妹の二人には「エロい」って言って、私の事は子供なの?
なに? 『お遊戯の衣装』て。 これコスプレじゃないんだよ?
初対面の大人に言うことじゃないよ。
この子かなり失礼な子だよ。
「ね、ねぇ、スミカお姉ちゃん。ボク、ラブナちゃんとお話してから行くから、先にナゴタさんたちにお家を案内して上げて?」
チラチラと見ているだけの私たちに見かねて、ユーアがそう話す。
「うん、それはいいんだけど、あの子は知り合いなんだよね?」
「はいそうです。孤児院の子です。ボクよりお姉さんです」
「う~んわかった。一応何かあったら嫌だから、ハラミも一緒でね?」
「ラブナちゃんは危ない人じゃないけど…… うん、わかりましたっ!」
「そういうわけだから、ハラミもユーアを見ててあげてね?」
『わうっ!』
ユーアと一緒にハラミも撫でる。
「それと落ち着いたら中に連れて来るといいよ。ユーアの知り合いなら自己紹介もしたいしね。それにあの子がこの場所を使ってたみたいな話だったし、その事も聞いてみたいから」
「はいっ! ちゃんとお話したら、ラブナちゃん連れて行くねっ!」
トテテッ
ハラミから降りて、ユーアは赤い少女に近づいていく。
その後ろをハラミもついていく。
「ナゴタ、ゴナタ、そう言う訳だから、私たちは先に家の中に入ってようか」
「はい、わかりましたお姉さま」
「うん、わかったよっ! お姉ぇ」
((あのね、ラブナちゃんねっ! このハラミはね?――――))
((はあっ!? そんなわけないじゃないっ! だったら―――――))
ユーアが手振り身振りで、小さい手を振り回して一生懸命説明している。
仲が良くも見えないけど、ユーアを含め、あの赤い子も自分を出して話をしている様だ。
それにユーアもあわあわしてても笑顔だし、あの子もわかりずらいけどユーアを前にしたら表情が柔らかくなったように見える。
『ふふ、なんだかんだで、あの子もユーアの事気に入ってるんじゃないの。なら心配ないかな? 何かあっても、ユーアを大好きなハラミが守るだろうし』
二人の子供らしいやり取りを見ながら、レストエリアの中に入っていった。
――
「それにしましても、この家は本当にすごい技術の物がたくさんありますねっ。こんな素晴らしい家を、私たち姉妹に用意してくださるなんて、私たち姉妹は幸せですっ! お姉さまっ!」
「うんっ! 本当に凄いよなっ! 買ったらいくらするか想像できないよっ! というか、こんなの売ってるのかな? この大陸に」
姉妹の二人は未だその感動と衝撃から抜け出せないようで、
しきりに見たり触れたりしていた。
私はそんな二人を眺めながら、
『ふふっ、こんなに喜んでくれて良かったよ。姉妹の二人には、これから普通の生活もして欲しいし、何より私も気に入ってるしね』
キャッキャしている、仲の良い姉妹を見ながら感慨深く思った。
すると、
バアンッ!!
「ちょっとっ! あなたたちっ! ユーアになんて危ない事させてんのよっ!」
「ちょ、ちょっとラブナちゃんっ! ボク、危なくなんかなかったよぉ、ラブナちゃん、ちゃんと聞いてよぉ~~」
扉が勢いよく開いた音がしたと思ったら、また怒鳴り声を上げるラブナちゃんと、その後ろからユーアが入って来た。
「………………はぁっ」
「一体今度は何ですかっ! あの子は。私が礼儀を教えないとダメですね」
「またまたうるさくなってきたなぁ。ユーアちゃんも大変だなっ!」
私はそれを見て溜息を。
姉妹の二人は若干の怒りと呆れの目で見ていた。
◆◆
ここは、とある大陸の南方に位置する、小さな島の施設の中。
「なあ? マカスから聞いたんだけどよ。テスト段階の、あの、何だっけ? あの腕輪の名前。能力を爆発的にあげて、しかも行動をプログラムできるって、あの何とかリングの3個の信号が途絶えたんだろうよ?」
「ははっ! 耳が早いね、さすが『シスターズ』の一員だ。伊達にそこのリーダやってないよね?」
「…………っていちいち茶化すなよ。っで、本当の話なんだよな? その大陸で3つとも行方が分からなくなったってのはよぉ」
「うん、まあそうだけど。あまり心配しなくてもいいんじゃないかな? あくまでもプロトタイプの物だったし。どこかで故障して、信号がロストしただけだと思うよ? 僕は」
「でもよ、マカスが言うのにはよ、そんな簡単に壊れる代物ではないって話だぜ? 何者かに破壊されたって可能性はないのかよ? 何ならその大陸に、序列の低いシスターズを一人調査に送るがよ」
「う~~ん、ならお願いしようかな? タチアカの言う通りに。憂いは早いうちに絶った方が良いって事だもんね? それじゃそんな感じでお願いするよ」
「ああ、わかったよ。この件はこちらで捜査を進めるよ。それじゃ何かわかったらよ、また連絡に来るから。それとそっちでも他の線で何かわかったらアタイに知らせてくれ。またよ」
「うん、またねっ!」
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