第68話双子姉妹襲来
※今話はユーア視点のお話になります。
澄香がこの場所には留守なので。
スミカお姉ちゃんがいない中、何かあったらボクが戦わないと――
ボクは急いでマジックポーチを取りに家の中に戻ります。
その中にはスミカお姉ちゃんから貰ったボクの武器
『ハンドボウガン』と『スタンアロー』を収納しているからです。
「ボクはまだまだ未熟だけど、何かあったら動けなくする事はできるんだ! あの人たちが、暴れたらボクがっ!」
マジックポーチを胸に抱いて、お外に急いで駆けていきます。
『でも、なんでスミカお姉ちゃんはいないの? あの人たちはスミカお姉ちゃんの魔法で中に入れないはずなのに、どうして? もしかしてスミカお姉ちゃんに何か――――』
ブルブルと頭を振って、そんな考えを頭から無くします。
スミカお姉ちゃんに『何か』なんて絶対にないから。
スミカお姉ちゃんの事はボクが一番知っているんだから。
お外に出ると、まだルーギルさんたちがナゴタさんとゴナタさんと話をしています。危ない事にはなっていなくて安心したけど、あまりいい雰囲気ではないです。
ボクはハンドボーガンを出して、念のために準備しておきます。
いつでも止められるように。
「で、なんだってお前らはここにいるんだァ? それにどうやって?」
「いちいちうるさいなぁ。なんで弱いお前なんかに教えなくちゃならないんだよっ! そうだよねナゴ姉ちゃんっ!!」
『ナゴ姉ちゃん』と呼ばれた女の人は金色の髪で、スミカお姉ちゃんと同じくらいの年齢か、ちょっとだけ年上に見えました。
美人な人だとは思うけど、目がちょっと吊り上がってて少し怖い人です。
服装はスミカお姉ちゃんよりは可愛くないけど、真っ青なドレスみたいなのを着ていました。
「そうね。弱いあなたになんて用はないわ。それとも実力で私たちに聞いてみる? 少しは強くなったのかしら。ゴナちゃん、試してみる?」
「フフフッ」と口に手を当てて、お上品な感じに見えます。
でもその口はボクには歪んでいるように見えました。
『ゴナちゃん』と呼ばれた女の人は、ナゴ姉ちゃんと同じ顔でした。
それでも髪はメルウちゃんと似てて、おさげをもっと上で、耳の上あたりから結っている感じです。
服装はボクと同じように袖の短い服。
そして赤い半ズボンを履いていました。
「うんそうだねナゴ姉ちゃんっ! それじゃルーギル行くぞっ!」
腰のポーチから大きなハンマーの様な武器を出します。
その人の身長よりも大きいです。
その武器の先っぽは片方がお肉を叩くみたいな平らな形だったけど、もう片方は、杭のように先が尖がっていました。
「お前があれからどれくらい強くなったのか見てやるよっ! 少しでもワタシを満足させられたら教えてやる。それでいいよね? ナゴ姉ちゃんっ!」
「ええ、それでいいわ。それじゃ私はその間の時間つぶしとして、クレハンとでも遊ぼうかしら? あなたも前よりは変わったか試してあげるわ」
怖い笑顔を浮かべて、腰のポーチから長さが身長よりも長い槍みたいなものを出します。でもその槍は持つところが真ん中にあって、両方が刃になっていました。
「ちッ、やっぱりコイツらは面倒くせえッ! クレハンこれ使えッ!」
クレハンさんに何か投げて渡します。
「あ、ありがとうございます! それでは早速試してみます」
ゴクゴクと受け取ったそれを飲み干します。
「ぐぐっ! 中々にきついですね。でも、これは――」
「ああ、最初だけキツイんだけどよォ、後は――」
そう言った後、もの凄い速さでお互いの相手に走って行きます。
「ハッ?」
「えッ!」
「その分だけ強くなっからよォ!」
「その分だけ強くなりますからねっ!」
そしてお互いの武器を出して驚くナゴタ、ゴナタさんに切りつけていきます。さっき飲んだのはスミカお姉ちゃんから貰った『ぶーすとあっぷ』てアイテムです。
ガガッ!
ルーギルさんの2本の剣。
それとゴナタさんの大きなハンマーがぶつかります。
ガキンッ!ガキンッ!
クレハンさんの2本の短剣。
それとナゴタさんのその変わった槍が交わります。
「はぁっ!? コイツってこんなに早かったっけ? それに力も前より強くなってるじゃんっ!」
「ええ、そうね。こっちのクレハンも、スピードもパワーも、かなり上がっているわね」
二人の強さにびっくりして驚いたような声を上げます。
ガンガンッ、ガガ、ガガガッ!ガキッ。
「ハハッ! そうだろォ! ちょっとズルしちまってるがこれなら認めるんじゃねえかァ! オレたちの強さをなァッ!!」
ルーギルさんは2本の剣をもの凄い速さと力で、ゴナタさんのハンマーに叩きつけていきます。
ゴナタさんはとっても大きなハンマーで攻撃を防いでいきます。
「ぐぐっ! 確かに中々強くなったな。でも――」
そう呟いたゴナタさんの体が一瞬だけ光った様に見えました。
ガキンッ!ガキンッ!
ガキンッ!ガキンッ!
「あら、中々に速くて威力のある攻撃だこと」
「ええ、あなたの様な強者に褒められて、わたしも光栄ですが、まだまだこれからですよっ!」
ナゴタさんは素早く動いては、斬り付けてくるクレハンさんの攻撃をその槍みたいなものを回転させて軽々と防いでいる様にみえます。
「でもまだまだ私には届かないわよ。もう少しなんとかならないの?」
「ははっ! これでも精いっぱいなんですがね! では――」
そう言った後、クレハンさんは後ろにジャンプして少し距離を離しました。そしてその手には、スミカお姉ちゃんから借りた刃がもの凄い速さで飛び出すナイフを持っていました。
「これならどうですかっ!」
そのナイフの刃がナゴタさんに向かって飛んでいきます。
「おっとっ」
でもその攻撃は当たりませんでした。
あんな速いナイフなのに少しだけ体を横にして避けていました。
「かかりましたねっ! それは囮ですっ!」
ナゴタさんが避けた動きを見て、もの凄い速さで斬り付けます。
「あっ」
『これはきっと避けられない』とボクは思いました。
でも、こういうのはスミカお姉ちゃんに言わせたら
『フラグ』っというやつなんでしょうか。
ナゴタさんの体が薄く光ったと思ったら姿が一瞬で消えて
「ぐわァッ!」
先に斬り付けた筈のクレハンさんが、逆に背中を斬りつけられていたから。
「クレハンさんっ!!」
ボクは苦しそうに蹲ってしまったクレハンさんに叫びます。
「ガハアァッッ!!」
ドゴォ!
「ルーギルさんっ!!」
短い悲鳴の後。今度はルーギルさんが10メートル以上も飛ばされて、家の壁に強く叩きつけられていました。
「うぐぐッ!!」
それでもルーギルさんは、立ち上がって二つの剣を構えています。
でももの凄く辛そうに見えました。
「わははっ! やっぱり大した事なかったぞっ! ちょっとスキルを使ったらこれだもんなぁ!!」
「そうね。こっちも少し期待したけど、まだまだだったわ。前よりはかなりマシになったけど。それでもほんの少しだけだったわ」
そう言ってハンマーを肩に担ぎ直し
苦しそうな表情のルーギルさんの方へ。
もう一人はその変わった槍を振り上げて
蹲っているクレハンさんに向けて歩き出しました。
「それじゃ、止めはさせないから、大ケガでも負ってもらおうかなっ! これで少しは大人しくなると思うんだよなっ!」
「そうね、もうちょっと痛めつけておきましょうか?」
そう言って持っている武器をその二人に振り下ろします。
「ボクが、そんな事させないっ!!」
ボクはその二人に向けてスタン効果のある矢を発射します。
「おっとっ!!」
「危ないわねっ!?」
でも二人には簡単に避けられてしまいました。
「え? この小さい奴も冒険者なのか? 弱そうだなぁ」
「いるのは分かっていたけど弱そうだから無視していたけど」
そう言いながら「クル」とボクの方に振り向きます。
「ううっ」
「ならワタシたちがその強さをテストしてやろうぜっ! ナゴ姉ちゃん」
「ええそうね。死なない程度に訓練も兼ねて相手してみましょうか」
そしてボクに近付いてきます。
そのきれいなお顔を歪めて。
ボクよりずっと大きな武器を構えて。
『こ、恐いよっ! で、でもボクは、ボクにはっ!』
ボクはスミカお姉ちゃんから貰った武器を強く握りしめました。
少しだけ怖くなくなりました。
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