第45話SS大豆少女は蝶のお姉さんに出会いました に


 今話も大豆工房の一人娘のメルウちゃん視点のお話になります。

 

 何故この親子がこの街にお店を出したかのお話と

 お父さんが元気になる過程のお話になります。


 (2/2)




 『蝶』の衣装を着ていたきれいな人は『スミカ』お姉さん。

 わたしと同じ年くらいの可愛い女の子が『ユーア』お姉さん。


 わたしは最初ユーアお姉さんの事を『ユーアちゃん』て呼ぼうとしたんだけど、12歳ってきいてびっくりしたの。


 しかも冒険者だなんてすごいのっ!

 わたしとあまり変わらない背丈なのに。



 ユーアお姉さんは、わたしが商品が売れた喜びで泣いちゃった時に慰めてくれたの。そして、お店の商品をいっぱい買ってくれたスミカお姉さんにお願いしてくれたの。


「大丈夫だよメルウちゃんっ! お薬あればお父さんもよくなるよっ!」


 ってわたしを抱きしめてくれたの。


「それに、ここの食べ物がいっぱい売れるようにボクもお店手伝うよっ! だからお願いスミカお姉ちゃんっ!」


 ユーアお姉さんはわたしとお父さんの為に、スミカお姉さんにお願いしてくれたの。


 それを聞いたスミカお姉さんは、


「ユーアとメルウちゃん、スミカお姉ちゃんに任せなさい」


 そう言って、明日手伝いに来てくれる約束をしてくれたの。


 しかも、お父さんのお薬までくれたの。



 ありがとうスミカお姉さんにユーアお姉さん。





 そして次の日。

 今日がお姉さん二人がお手伝いしてくれる約束の日なの。



「おう、それじゃいくかメルウよ。お前には苦労掛けたがもう大丈夫だッ! ガハハッ!!」


 お父さんは昨日までケガで動けなかったのが嘘のように、お店に並べる商品を張り切って荷台に積んでいるの。


「うん、お父さんっ! だけど治ったばかりだから無理はしないでなの」


「わかっているが、商品を大量に買ってくれて、俺を助けてくれた人が手伝いにきてくれるんだろ? 流石に少しは無理させてくれよメルウ。ガハハハハッ!!」


「う~わかったの。でも危なかったらわたしが止めるのっ!」

「ガハハハハッ!わかった、わかったッ! それでいいッ!!」





 わたしは昨日、お店が終わってから新しい薬を買って

 お父さんが待っている家に帰ったの。


 お父さんは私が帰ると、無理をして体を起こして



「お帰り、メルウ。今日はどうだ――――」


「売れたのっ! お父さんっ!」

「おお、そうかッ! 枝豆も、もやしも結構売れたんだなッ!」

「ち、違うのっ! そうじゃないの!!」


 やっぱりお父さんは勘違いしているの。

 いつも売れてる商品が多く売れたって思っているの。


 だって、それはそうだもん。

 それがずっと普通だったから。


 でも今日は――――



「お父さんが作った味噌や醤油、納豆まで全部売れたのっ! お母さんが好きだったお父さんの大豆商品が全部売れたのっ!」


 わたしは大きな声で、そうお父さんに伝えたの。


「え、メルウ、今、味噌も醤油も納豆も全部売れたって言ったのか?」

「うん、全部なのっ! 二人のお姉さんが全部買ってくれたのっ!!」

「……………………」

「ほら、だからお父さんのお薬も買えたのっ!」


 わたしは、買ってきた薬をお父さんに見せるの。


「あ、あとね、味噌とか買ってくれたお姉さんがくれた薬もあるのっ! しかも明日お店を手伝ってくれるって言ってたのっ!」

「…………そうか」

「お父さん?」

「そうか………… やっと売れたか…… メルウ、こっちにきてくれ」


 お父さんは、俯きながらわたしを呼ぶの。


「なに? お父さんケガが痛いの? 今日はお薬あるか――――」


「メルウッ!」


 ガバッ


「きゃっ!?」


「よくやったメルウッ! 一人で今までよく頑張ったッ! 俺がこんなケガしたばかりに、まだ小さいお前にまで苦労を掛けたッ! お前は、お前はッ! 俺の自慢の娘だッ!」


 わたしはもの凄く強い力で、泣いているお父さんに抱きしめられたの。


「うんうん、良かったの、良かったの、本当に良かったの、うううっ」



 わたしはお父さんの腕の中でまた泣いちゃったの。

 本当に良かったの――――





「…………はい、お父さんお薬なの」


 わたしは涙を拭いてお父さんにお薬を渡します。


「…………おう、ありがとなッ! メルウ買ってきてもらって悪いが、先にそっちの薬使ってくれねえかっ?」


 お父さんは、そう言ってスミカお姉さんに貰ったお薬を指差すの。


「はいなの」

「おう、これがお前の会った嬢ちゃんたちがくれた薬なんだろ? なんだか知らねえが、この薬は普通じゃねえ気がするんだ。その二人もそうだが、これも信じてみてぇんだ」


 お父さんは見た事のない容器に入った薬を使います。


 すると――


「な、なんだこれは――――っっ!!」


 お父さんの悲鳴が家中に響きます。


「お、お父さんっ大丈夫っ! ――――って、あれっ?」


 薬を使ったお父さんのケガが、みるみる内に治っていくの。


「な、何なんだこれはッ! ケガというケガが一瞬で全部治っちまったッ! し、信じられねえ、何て効果の高い薬だッ!」


 そう言ってお父さんはベッドから起き上がり、体や手や足をぐるぐる動かしてみるの。変な方向に曲がっていた手の添木も取ってぐるぐる回しているの。


「…………ほ、本当に信じられねえッ! ど、どこも痛くねえ。完全に治っている…… これなら今からでも仕事できそうだッ!!」


 お父さんはそう言って、わたしを抱き上げたの。


「よ――しッ! メルウっ! 明日はその恩人がくるんだろう? 俺はもう大丈夫だッ! だから俺も明日はその嬢ちゃんたちに礼を言いたいッ! な、だからいいだろうッ!」


「うん、わかったのっ! だから降ろしてなの、目が回るのっ!」


 お父さんは笑顔で、わたしを抱き上げたままぐるぐると回るの。


「ガハハッ! いいじゃねえかっ! こうやってお前を抱き上げるのも久し振りなんだっ! ガハハハハッ!」


「お父さんっ! それいつの話なのっ? わたしが小さいときの話なのっ! だから降ろしてなのっ! 目が回るのぉっ!!」





 そうして次の日になって、わたしはお父さんと一緒にお姉さんたちを待つの。



「あっ! スミカお姉さんとユーアお姉さん、おはようですのっ!」


 わたしは蝶の衣装のお姉さんと、わたしと同じくらいの背丈で冒険者のユーアお姉さんに元気よく挨拶をしたの。


 お父さんも挨拶とお礼もしたけど、スミカお姉さんに怒られていたの。


 ユーアお姉さんの背中を強く叩いたからなの。

 しかも、スミカお姉さんは『Cランク冒険者』だって言ってたの。


 それにはお父さんもびっくりして、お礼とごめんなさいを一緒にしてたの。



 そしてスミカお姉さんの考えた作戦を実行するために、わたしたちは頑張ります。


 お店が開くとスミカお姉さんとユーアお姉さんの知り合いの人がきたり、ユーアお姉さんが来てくれるようにお願いした冒険者の人もいっぱいきたの。


 その中に冒険者ギルドの偉い人も二人来ていたけど、スミカお姉さんとユーアお姉さんは仲良くお話していたの。


 何でそんな偉い人と知り合いなんだろう?


 お昼をずっと過ぎて、お客さんもたくさん増えてきて、みんなお父さんの作った大豆食品を美味しそうに食べてくれたの。



 そしてわたしとユーアお姉さんは『ネコ』になりました…………



 何でもスミカお姉さんが言うには、もう一味が足りなくて『いんぱくと』が欲しかったんだって。だからネコの衣装を用意したみたいなの。


 その後はスミカお姉さんもネコになって、わたしたち3人はスミカお姉さんの魔法でちょっと浮いた空から大声で売り込みしたの。


 それでも人が足りないところは、ギルドの偉い人が助けてくれたりもしたの。



 スミカお姉さんは、お父さんの味噌も醤油も納豆も全部買ってくれて、お父さんの為にすごい薬くれたり、お店を手伝ってくれたり、わたしたちを浮かせたり、突然家を出したり、ギルドの偉い人とも仲がいいし、ランクCの冒険者だし、それと蝶の格好もしてるし…………



 本当に二人のお姉さんは一体何者なんだろう?



 何て時々考えちゃうけど、本当はどうでもいいのっ!



 スミカお姉さんもユーアお姉さんも悪い人でもいいのっ!

 きっとお父さんもそう思ってるのっ!


 だって、わたしのお父さんを助けてくれたのも、お父さんの商品が売れているのも、二人のお姉さんのおかげなんだもんっ!


 それに今だって、売れ過ぎちゃって少なくなった商品の在庫を取りに、わたしを抱いて倉庫まで急いでくれているの。



 だから二人がどんな人だって関係ないのっ!

 わたしとお父さんは絶対に絶対に二人の味方なのっ!!



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