第26話大金ゲットとお買い物




「それじゃ、お金を用意したいんだけど、流石に一度に全額は払えないわぁ。とりあえず半分はお渡しするわねぇ」


「うん、それでいいよ」


 さすがに即金で払える額ではないのだろう。


「残りはギルドから下ろしてくるからちょっと待っててちょうだぁい」 


 ニスマジはクネクネとしなを作って話の続きをする。

 クネクネしないと話せない体質なのかな?


 なんかそれを見て鳩を思い出した。

 鳩も首振らないと歩けないっぽくない?

 歩く時はなんか前後に首振ってるもんね。


「別にそれでいいけど。商品は全額揃ってからでいい?」

「当たり前じゃない。じゃないとダメよ、中には持ち逃げする悪い人だっているんだから。はい、とりあえず金貨500枚渡しておくわ」


 じゃらりと音をたてて布袋を渡される。



「私。本当は悪い人でこのまま持ち逃げしちゃうかもよ?」


 わざとらしく口角を上げて「にやり」としてみる。


「はいはい。 わたしはこれでも高ランクの商人なのよぉ。一応人を見る目はあるつもりよぉ。 それにねぇ――――」


 ニスマジはユーアの頭を軽く撫でる。


「それに、あなたはユーアちゃんのお姉ちゃんみたいなものでしょう? そのユーアちゃんがあなたの事を信用してるのは端からみてもわかるわぁ」


「なるほど。 ニスマジはわかってるねっ!」

「まあねぇっ!」


 ニスマジは子供のユーアをずいぶん信用しているようだ。

 普段のユーアの行いがいいせいなのだろう。

 その流れで私を信用したという事だろう。


 ユーアが素直でいい子に育ってお姉ちゃんは嬉しいよっ!



「それじゃ、ちょっと行って来るわねぇ~」

「あ、この店で買い物してていいよね?」

「もちろん、構わないわぁ、むしろお願いするわ。何かあったら店番に聞いてちょうだぁい」


 そう言ってニスマジはギルドに向かって出て行った。




「さて、何から揃えようかなぁ」


 私は店内を見渡す。

 本当に種類が多い。


 日用品全般から始まり、金物、寝具、家具、衣類、貴金属、食品、など多種多様に揃ってる。専門店には敵わないだろうけど、選り好みをしなければ充分な品揃えだった。


 さすがに武器は置いていなかった。武器屋はきっと別なのだろう。

 2階にはマジックアイテムなるものもあるらしい。


「それじゃ、ユーア、あの家に必要なものを揃えていくからユーアも一緒に選んでちょうだいね」

「はい!わかりました、スミカお姉ちゃんっ!」

「あと、何か必要な物に気付いたら教えてね」

「はいっ!」



 先ずは、寝具コーナーに向かう。


 ゲーム内アイテムのシュラフでもいいんだけど

 やっぱり布団で寝たいしね。


「ユーア、これなんかどう?」


 とりあえず一番高いフワフワの布団を勧めてみる。


「ええっ!高すぎるよ、スミカお姉ちゃん!、昨日のお布団じゃダメなの?」

「んーー、別にいいんだけど、いつまでもあの布団で寝るのはちょっとね。それに……」

「それに?」

「柔らかく、大きな布団があったら、ゆったりに入れるでしょう?」


「えっ!?」


 なんだか手をお腹の前に組んで、モジモジしている。



「…………ミカお姉ちゃんが、……言う…なら…」

「え?」

「スミカお姉ちゃんが、そう言うならそれでいいですっ!」

「それじゃ、決まりねっ!」


 よし、陥落成功!


「次は?」

「スミカお姉ちゃん、食器とか何もなかったですよ?」


 ああ、そうだった食器棚はあるけど空っぽだったんだ。


「あと、ボクのタオルは破けてたけど、どうしましょう?」

「ああ、それも買うつもりだったから大丈夫だよ」


 私たちは、次に食器類やタオル類。鍋やフライパンなど多めに購入する。

 もちろんユーアとお揃いの色違いのコップも忘れない。


「さて、次は――――」


 なんて見回していたら、ギルドに行っていたニスマジが帰ってきた。



「はぁい、お待たせしちゃってゴメンねぇ、残りのお金取ってきたわぁ」


 クネクネ近づいてきてお金を渡してきた。


「ありがとう。それじゃ品物はカウンターに出せばいい?」

「それは、ちょっとあれだわぁ。 地下売り場の奥に倉庫があるから、そこまで来てもらえるかしらぁ」


「地下にも売り場があるの?」


 私は意外な事を聞いて、そう聞き返す。


「そうなのぉ。地下は冒険者向けの商品を置いてあるわぁ。1階に厳つい冒険者たちがいたら、普通の人が入りづらいじゃないのぉ」


「………………そう?」


 いやいやっ!充分入りづらいでしょうぉっ!! 

 冒険者うんぬんより、店頭にいたコスプレ変〇達は一体何!!


「あ、あれねぇ、周りが似たようなお店なんだもん、やはりインパクトが大事なのよねぇ」

「ふ、ふうん……!?」


 あれ?

 心を読まれた?

 それともまた声に出してた?


「おかげで、結構人気があるのよ、一部の人たちには」

「……………………ふう~~ん」


 それ絶対、そういう趣味な人達だよね!?

 違う世界の人たちだよねっ!!


 そう言っても私じゃないよっ!!

 異世界の話だよ!



 私たち三人は地下の冒険者向け売り場を横切り奥に進んでいく。



「あれ?冒険者向けって言ってたけど武器とかはないんだ」


 ちょっと見渡してニスマジに聞いてみる。


「流石に武器までを置いちゃうと、色々揉め事が起きちゃうのよぉ、大人の事情ってやつかしらぁ。だからうちはどっちかと言うと浅く広くライトな商品を置いているのよ」


「ふーん、色々と面倒なんだね。あっ!マジックバッグだっけ? あれも置いてあるの? あれば欲しいんだけど」


「あらあなた。かなり良いもの持ってそうじゃないの?」

「私が欲しいんじゃなくて、ユーアに買って持たせたいんだよ」


「えっ!? ボクですかっ!!」


 急に振られたユーアは目を見開いてびっくりしている。


「ま、待ってスミカお姉ちゃん! あんな高いもの持てないよぉ!!」


 顔と一緒に小さい手をぶんぶんと振っている。


「そうよぉ、そんな高いものユーアちゃんみたいな子供が持っていたら変なのに狙われるわよぉ。ユーアちゃんの言う通りよぉ」


「うっ」


「そうだよスミカお姉ちゃん! 危ないよぉっ!」


「ううっ」


 二人がかりで猛反対してくる。


「だったら、小さいのはないの?見た目ユーアが持っている布袋みたいなので」


 私はそれならばと、妥協案を提示する。


「ああ、それならマジックポーチがあるわね。 大きさはユーアちゃんの袋よりは少し小さいけど。だから容量はそれなりね」


「ニスマジさんっ!!」


 裏切られたユーアは少し涙目だ。


「だったら、布袋の中にそのマジックポーチだっけ? を入れて縫い合わせればいいんじゃない?これなら外からはわからないし。一応知らない人の前で使うには注意が必要だけど」


「なるほどぉ! それならいいわね。なら早速、ちょっとぉっ!」


 ニスマジはこの売り場にいる店員を呼びつけて説明している。

 その後すぐ店員は去っていった。


「あれ、ユーアの布袋を使うんでしょう?渡さないで行っちゃったけど」

「そうなんだけど、布袋はもっと頑丈な新しいものにするからいいのよ。もちろんこの分はサービスしちゃうわぁ」

「それはありがとうね。ユーアも喜ぶと思う」


 「ねっ!」てユーアを見てみるとあわあわモードだった。


「ユーアちゃんは、いいお姉ちゃんに出会ったわね。スミカちゃんがいなかったら、わたしが貰ってあげたのに~~」


「………………やめて」


 いい事言ってる気がするけど犯罪の匂いしかしない。

 あなたみたいなガチムキが言うとね。


「スミカお姉ちゃんは優しくて、とてもいいひとですっ!!」


 ユーアはニスマジの言葉に正気に戻って返事をしていた。



 ニスマジを先頭に地下の倉庫の中に入ってきた。


 倉庫の割には、何故か他にも部屋があって4人掛けのテーブルセットが置いてあり、書棚もある。ちょっとした商談室みたいなものだろう。



「ここは、あまり大ぴらに出来ない商談をする所なのよぉ。だからカギもわたししか持ってないのぉ~」


「ふーん、そうなんだ。それで何処に出せばいい」


「それじゃこっちの倉庫に出してちょうだい。こっちの倉庫もわたし以外入れないとこだから」


 更に奥の倉庫に行ってアイテムボックスより、スティックタイプとドリンクタイプのレーションを千個づつ出した。



「これで買い取り成立ねぇ。後はなんか約束があるって言ってたじゃなぁい」

「あっ」


 そうだった大事なことだったのにすっかり忘れていた。



「ちょっと特殊なアイテムだから、仕入れ先は秘密にして欲しいんだよ。あとあと出所を探られて、面倒になっても嫌だから」


 私は神妙な表情でニスマジにそう告げる。


「あらぁ、そんな事なの。商人は信用が第一だから心配しないで、絶対に口外しないわぁ!」


「そうありがとう。頼んだねっ!」


 ユーアの事といいニスマジはかなり信用できそうだった。

 見た目は残念だけど。



「また、面白いのあったら持ってくるよ」

「そう、期待しちゃうわぁ! あ、それとわたしの店でかなり買い物してくれたんだって」

「まあ、必要なものがたくさんあったからね、ここなんでもあったし」

「ふふっ、ありがとう。また買い物にきてよね。あ、ユーアちゃんのマジックポーチは1階に預けてあるから、帰りに店番にきいてちょうだいな」


「わかった。またくるよ」


 私たちは1階に戻り、購入したものを片っ端からアイテムボックスに収納していく。ユーアのマジックポーチの代金も支払ってきた。


 全ての用事を済ませてユーアと二人外に出る。

 だけど店頭は速足で駆け抜ける。


 だってまだいるんだもん、あの三人。


「それじゃ次はね?」

「はいどこでしょう? スミカお姉ちゃんっ!」


 次の行き先は決めてある。


 ユーアの姿を見て何が似合うかなって考えていたから。


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