第27話ボクッ娘少女に服を買ってあげるみたいです
「さて、と」
ユーアを見ながら次の行き先を告げる。
「それじゃユーア。次は服飾屋さんに案内してくれる? なるべくユーアが好きな服が売っているところがいいかも」
「え、ボクが好きな服ですか? わかりましたっ!」
「うん、お願いね」
前を歩くユーアの後ろ姿をみながら、私は妄想を膨らませる。
『ユーアは何が似合うかなぁ?』 なんて。
先ずはお決まりの白のワンピース。
これは鉄板。
しかもノースリーブで胸元に小さいリボン。
ユーアの白い手足や首筋の匂いを嗅ぎたくなっちゃうかも。
それと高い高いもいいよね?
さて、次は?
無邪気で活発に見えるオーバーオール。
これも捨てがたい。
ユーアはシルバーっぽい髪色のナチュラルボブヘアー。
だからボーイッシュっぽいのも似合うかもしれない。
インナーはおへそ上の丈のピチT。
横からのチラリズムが最高ぉっ!!
後ろから頬ずりしてもいいかなっ?
更に次は?
意表をついてここは男ワイシャツを?
いや、着ぐるみ? 古式メイド?
『むむむっ~~~~』
ユーアに似合う可愛い私の好みの服のつもりが
途中からコスプレに妄想してしまう。
「着いたよっ! スミカお姉ちゃん」
「えっ!?」
早いっ!
ユーア早すぎるよっ!
お姉ちゃんの空気読もうよぉ~っ!!
「どうしたの? スミカお姉ちゃん?」
「な、何でもないよ? ごくろうさまねっ!」
まあ、いいか。
色々着せ変えして、私好みの可愛いの探せば。
何て思い直して案内してもらったお店を眺める。
「あれ? ここって……」
「うん、そうですよ」
『ノコアシ商店』じゃん!?
さっき来たばっかりだよっ!
ほら、またあの三人の変〇がいるよ!
「ユーアっ! ここノコアシ商店じゃん? 他に行こうよっ!」
「え、ここボクの好きな服売ってるよぉ?」
「いや、それはそうだけど。 いや、そうじゃなくて! なんかこうあるでしょう? お姫様みたいな
「スミカお姉ちゃん、みんな
「だって、ユーアは可愛い服とか欲しくないの? お姉ちゃんが今日のご褒美にプレゼントしちゃうよっ! 良いお店案内してくれたからねっ!」
私は
着せ替えがぁっ!
高い高いがぁっ!
「ありがとうスミカお姉ちゃんっ! でもボクは冒険者だから、なるべく動きやすい服が欲しいなっ! お値段も高くないのがいいんだっ!」
「そ、そうなんだっ!」
ユーアの目はキラキラと純粋に感謝している目だ。
『うう……』
そんなユーアに、何て
でも思い返すとユーアはそういう子だった。
親切や感謝は受け取るけど己には優しくない子供だった。
「――――そうだね。 それじゃここでまた買い物しようか。ユーアの好きな服いっぱい選んでいいからね? あまり遠慮しないでね」
「は、はい、わかりました」
私は自分の欲望を押し込んでユーアの意見を尊重する。
「あ、でも、お姉ちゃんにもユーアの服選ばせてね?」
「はいっ! スミカお姉ちゃん、お願いしますっ!」
これだけは絶対に譲れない。
そうしてユーアは足取り軽くウキウキと。
私は足取り重くトボトボと。
再びノコアシ商店に入るのだった。
※
「いらっしゃぁい、あらぁ? スミカちゃんとユーアちゃんじゃない。どうしたの忘れものぉ?」
店員と話をしていたニスマジが私たちに気付いて挨拶する。
「ユーア先に行って欲しいの選んでちょうだい? 何着でもいいからね。私もニスマジと話したらすぐに行くからね」
「はいスミカお姉ちゃんっ!」
タタタッと、ユーアはニスマジに挨拶をして小走りで向かう。
私はニスマジに話しかける。
「忘れ物って言えばそうだね。 洋服を一式買いに来たんだよ。はぁ」
「あら、そうなの? でもうちにはスミカちゃんが気に入るような可愛い服はあまりないわよぉ?そもそもそういう服あまり見かけないしねぇ」
私の服装を見ながらそう話をする。
「違うよ。私のじゃなくてユーアの洋服だよ。はぁ~」
「ユーアちゃんに?」
「そう。だから良いもの買ってあげたいのに、ここに来ちゃったんだよね」
「う~ん、でもぉユーアちゃんってそういうの好きじゃないでしょ?」
「だよね。でもたまには贅沢させてもって思うんだけどね。はぁ~。それに私が気に入った服も着てもらいたいし」
私は知らず知らずの内に溜息を漏らす。
「なるほどねぇ。それはご愁傷様っていうかぁ、わたしもダメだったし」
「えっ!?」
何か怖い事聞いたんだけど?
ニスマジが幼女にコスプレをっ!?
「まぁ、それがユーアちゃんだからねぇ。あの娘は仕方ないわよぉ」
「うわっ」
今度は私が慰められているの?
このガチムキ変人が私のような少女をっ!
「うん、まあ、それはわかっていたんだけど。ユーアも自分自身に優しくっていうか、わがまま言ってもいいんじゃないかと思ったんだけどね」
私はしみじみと呟く。
「う~ん、今はまだ今のままでいいと思うわよぉ。 スミカちゃんがユーアちゃんの事をわかっているんだから」
「そうだね、今はまだ大丈夫だよね。私もいるんだし」
まあ、ニスマジの言う通りかもしれない。
「そうよぉ、もし何かあったら、わたしにも相談してよねぇ。わたしもユーアちゃん好きだからぁ。それにスミカちゃんも同じくらい好きだからぁ」
「うん。ま、まあ、ありがとね。その時はよろしくね」
「まぁかせなさい!」
ニスマジは私が思ってた以上にユーアを心配してくれていた。
それは素直にうれしい。
だから今はまだユーアの性質は保留にしておこう。
自分を軽く見るその考えを。
※
私はユーアを探して服飾の売り場に着いた。
「ユーアお待たせ」
「スミカお姉ちゃん?」
ユーアは3着の服を選び終わっていた。
だけど伏し見がちな目で私を迎え入れた。
「…………スミカお姉ちゃん選びました。 でも本当にいいんですか? ボクなんかにスミカお姉ちゃんの大切なお金またいっぱい使っちゃって……」
私がいない間に何か思うところがあったのだろう。
自信なさげに呟くように話す。
そんなユーアに私は――
「ボクなんかって…………違うよユーア。 ユーアだから私はプレゼントしたいの。ユーアだから買ってあげたいの。ユーアだから喜んで欲しいの。だから受け取ってね?」
ユーアを優しく抱きしめながら耳元でそう話す。
「う、うん、本当にありがとうスミカお姉ちゃん。 ボク…は…うれしい……で…す…こん…なに……スミカお姉ちゃん…………うううっ」
ユーアは私の胸の中で嗚咽を漏らす。
小さな肩が震えている。
今まで碌な家も食事も、ましてや衣服なんて買えなかったのだろう。
森の中も素足で歩いてたぐらいだ。
こんな小さな体なのにずっと苦労してきた。
「よしよし。これからはきれいな服も着て一杯お洒落もしようね?」
「うん、うん、ありがとう、ボク嬉しいです……ううっ」
私は震えるユーアを優しく撫でる。
小さい体を強く抱きしめる。
私が守る存在はこんなにも小さくて脆い。
それでも私には大きな力をくれる。
そんなユーアを心から救いたいと思った。
※
泣いちゃったユーアを慰めた後。
私はユーアの服を選んだ。当初の予定通りに。
「ユーア。 これでいい?」
「は、はいっ!」
それは白のワンピースで胸元に小さいリボン付きだ。
これで高い高いはゲットだ。
ユーアが許してくれればだけど。
それと他にはユーアの服をさらに購入したり、私とユーアの肌着や、ユーアの靴と靴下を、それぞれかなりの量を買い込んで店を後にした。
時間はまだ午前中。
「ねぇユーア。 少しお腹空かない? ギルドは午後からだから食糧購入するついでに、何処かでお昼にしようよ。そういうお店に案内してくれる?」
異世界の食事はまだ口にしていないことに気付いた。
「わかりましたスミカお姉ちゃんっ!ボクが案内しますねっ!!」
「うん、よろしくね。ユーア」
元気を取り戻したユーアは更に元気になっていた。
ユーアはやっぱり笑顔が一番だねっ!
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