プロローグ 蘿蔔美咲2
「ッ!!」
目が醒めると同時に私は飛び起きた。
咄嗟に辺りを見回す。すると、けたたましい音を出し続けている目覚ましが目に入った。すぐに黙らせる。
「…朝」
カーテンの隙間から漏れ出た朝日が私の起き抜けの目に突き刺さる。
目を細めながらも自分の現状を確認していく。
まず自分の体。余程夢見が悪かったのだろうか?最近ずっと見ていたのと同じ夢だった、筈だ…。
肩で息をしており、身体は寝汗でびしょびしょ。
長い髪も首筋に張り付き大変気持ち悪い。
続いて目覚ましで現在時刻を確認。
今日は月曜日6時3分、よし。
まずはシャワーだな。全てはそれからだ。
私は立ち上がってバスルームに向かった。
私の名前は蘿蔔美咲(すずしろみさき)。
高校2年、地元の高校に通っている。因みに風紀委員会所属。
「あ〜、生き返る〜」
現在シャワー中、もう終わるけど。
キュキュとバルブを閉めてバスルームからでる。その間実に3分!
手早く髪をドライヤーで乾かし、整える。
この間実に10分…シャワーよりこっちの方が長いのだ…。
「と、いけない。」
気を取り直してキッチンへ。
炊事洗濯等の家事は私が取り仕切っている。
テフロン加工のフライパン温め手早くハムを放り込み、すぐ様食パン2枚をトースターへイン。
昨日水に晒しておいたレタスを水切りしてから千切ってプチトマトと一緒に盛るとサラダの完成である。
そしてすぐさまハムを裏返し玉子を投入。うん、完璧な流れ作業だ。
と自画自賛していると
「ゔっ…ゔぅ。」
二日酔いのような声を上げながら母が起きてきた。
「飲みずぎだ…」
ホントに二日酔いだった。
「おはよう母さん。ご飯丁度出来たから座って早く食べちゃって。」
「…今日、は?」
「トーストとハムエッグ、後コーヒー。」
「和食が、いぃ〜シジミの味噌汁飲みたいぃ〜」40にもなろうというのにぶりっ子をかます母、うっざ。
「うっざ。」声に出てしまった。
「非道い!?っ〜」
自分の声が二日酔いの頭に響いたようで頭をかかえている。
「はぁ〜。」
溜息をつき戸棚からシジミのインスタント味噌汁を取り出し母の顔面に投げつけた。
「へぶっ。」
「それでも飲んでろ。」
「へ〜い」
自分で茶碗を取り出し、ケトルからお湯を注いで味噌汁を作り飲み出す母。やがて
「ふぃ〜、生き返った〜。」
と先程とは変わって生気あふれる顔つきに。そのまま用意されていた朝食をガツガツと食いだす。回復が早すぎる。恐るべしシジミの力。
「ん。」
母が顎でクイっと何かを指す。
これは、ジャムか。
「はい。」
手渡す。
「あんがと。」と受け取りジャムを焼きたての食パンにたっぷり塗りつけた。
正解の様だ。
「しかし、阿吽の呼吸ってやつよね。言わなくてもわかるって言うの?」
持つべきは愛娘!と言葉を続ける母。因みにこれの正解率は3割程である。ぶっちゃけ、直接言った方が早い。
「次からは欲しいなら言葉にしてよね。行儀悪いから。」
今後のことを考え一言注意しておく。癖がついて出先でやっちゃったらたいへんだし…、てかこれ親子の立場逆では?
「ごめんちゃい。」
テヘペロする我が母。
くっそ腹立つ。あんた今年で40でしょ年考えろ。
まあ、こんなのはいつもの事なのでこれ以上気にしない様にしよう。
「はぁ…、また千鞠先生と遅くまで飲んでたの?」
「まぁね。独り身同士気が合うのよね〜アンタと同年代の娘さんもいるし。」
うちは私が物心ついた頃から母子家庭である。父親は私が生まれる前に離婚。
そして現在、大黒柱である我が母、蘿蔔ゆかりはとあるオカルト雑誌の編集長を務めている。
一部ではかなり人気の雑誌らしいのだが、私は興味以前に霊やUMAの類いを全く信じていないのでどんな内容かは全然わからないし読んでもいない。
だが、女手一つで何一つ不自由なく私をここまで育ててくれたのだから稼ぎはかなり良いのだろう。そこだけは本当に頭が下がる。
因みに血鞠先生はその雑誌で執筆している作家さんで、自身の心霊体験を題材にしているのだとか。
母とはどうやら気というか波長があう様で(この時点でダメ人間オーラがやばい)プライベートでも飲みに行ったりする仲らしい。
「仲が良いのは良いけどお酒は程々にね、いただきます。」
ストレス発散も兼ねているだろうからこれ以上の言及はせず自分も朝食を食べ始めた。
うん、今日のハムエッグは良く出来ている。といっても焼いただけだけども。
「あ、そう言えばさ。」と唐突に母。
「何?」
「良いの?」
「だから何が?」
「今日でしょ、持ち物検査。」
「-----」
そういえばそんな話を週末に聞いたような…
いや、聞いたわ。
現在時刻を確認。現在6時45分。
風紀委員集合時間は7時。
学校まで約30分。
結論、どうあがいても絶望である。
「洗い物つけといて!帰ってから洗うから!!」
それだけ言い残し用意しておいた制服の上着を羽織ると鞄をひっ掴み家を飛び出した。それを母は
「行ってら〜」
と、少しの間見送り
「寝直そっと…昨日はサイレンがうるさくて寝られなかったのよねぇ〜。」
そうあくびをしながら呟き、部屋に引っ込んで行ったのだが私にはもう聞こえなかった。
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