境界の守り人
木ノ下サリィ
死を呼ぶ救急車
プロローグ 蘿蔔美咲
(またこの夢か。)
そうはっきり彼女は認識した。
この一週間同じ夢を見ている。
いつもと変わらない自室でベッドに横たわって天井を見つめている。
身体は目線以外はピクリとも動かせない。まるで金縛り。
(でも、このまま何があるわけでもないのよね。)
目が醒めるまでずっとこのまま。
初めてこの夢を見た時はそれこそ慌てたものだが、今となっては慣れたものだ。ぼーっとしてればいずれ目が覚めて終わりなのだから。
(夢分析だと何ていわれるかな?)
目覚めるまで暇なのでいつもの様に、取り留めの無いことを考えて時間を潰そうとした。
ふと、その時
--------ぅ
(…あれ?)
音が聞こえた気がした。
----ぃ----ぅ
(気のせいじゃない。)
ぴぃ-----ぅ
徐々に近づいて来ている。
ぴぃぃぃぽぅぅぅぅ
(救急車の、音、っ……!!)
音が何かわかった途端、何故だかわからないが背筋が凍り恐怖が湧き上がって来た。
(あ、あぁ…)
ただの救急車が家の横を通り過ぎただけ。
そう思いたかった。だが
ぴぃぃぽぉぉぉぉぉぅ
何故こんなに
ぴぃいぃぽぉおぉうぅ
心が不安になるのか。
(まずい)
ぴぃぃぽぅぅぅぅぴぃぃぽぅぅぅぅ
(このままだと、まずい…!)
自分の体の奥底が危険だと特大の警鐘を鳴らしている。慌てて身体をなんとか動かそうとするが
(なんで、動かないのよ!?このままじゃ私…!!)
音が近づいてくる。
ぴぃぃぽうぅ ぴぃぃぽうぅ
ぴぃぃぽうぅ ぴぃぃぽうぅ
もう家の近くだ。
(もうダメだ……)
と、彼女が諦めかけたその時。
-----ジリリリリ-----
無機質なベルがサイレンをかき消した。目覚ましの音だ。同時に景色が自分から遠ざかる感覚、目覚める予兆。
(助かった…)
ほうと心の中で息を吐く。しかし直ぐにまた思い至る。
(今日は助かった、でも)
次は?
恐怖と不安を抱きながら彼女の意識は浮上した。
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