第2話 魅了された阿久津
「さすがにこの時間はほとんど人がいないな」
そんなことをつぶやきながら、俺は中央通りから外壁沿いの繁華街を低空で飛んでいた。
『キャーーー! 』
「ん? 女性の悲鳴? 」
すると進行方向から女性の悲鳴のようなものが耳に入った。
俺は急降下し声が聞こえた方へと向かった。すると酒場の近くの路地裏で、三人の男たちに囲まれているオレンジ色の長い髪の女性が視界に映った。
酔っぱらいに絡まれてるのか。
そう思った俺は女性と男たちの間に着地し、男たちを睨みつけた。
「何をしている! 俺の領都で女性を襲うとかいい度胸じゃねえか」
「なっ!? アクツ!? 」
「ヒッ!? 悪魔! なんでこんなところに!? 」
「やばい! 逃げろ! 」
「誰が悪魔だ! 『風刃』! 」
『『『ギャッ! 』』』
人の顔を見るなり速攻で逃げようとする男たちの足を風の刃で切り裂いた。
「守衛が来るまでそこで悶えてろ」
俺は両足を押さえ転げ回る男たちにそう告げたあと、襲われていた女性の方へ身体を向けた。すると彼女は勢いよく俺に抱きついてきた。
「ううっ……ありがとうございます。いきなり襲われて」
そう泣きながら俺の胸に顔を埋める彼女のブラウスははだけており、スカートはまるでスリットが入っているように引き裂かれていた。
昼間っから女性を襲おうなんて、こんなに治安が乱れてたのかよ。この男たちは問答無用でダンジョン送りにしてやる。それと領館以外の守衛隊は全員ダンジョンで再訓練だな。
「間に合ってよかった。あの男たちはダンジョンに放り込むからもう二度と会うことはないよ。だから安心してくれ」
俺は腹部に押し付けられている、彼女の豊満な胸の谷間を凝視しながらそう答えた。
うおっ! すげー爆乳だな。それにめちゃくちゃいい匂いがする。なんか興奮してきたぞ?
ん? なんだこの魔力……
「君は……」
俺は彼女の身体から発せられる魔力が帝国人のそれと違う感じがして、彼女を引き離そうとした。
すると俺の胸に顔を埋めていた彼女はビクリと身体を強張らせたあと、ゆっくりを顔を上げた。
顔を上げた彼女は少し幼さが残るがとんでもなく美しかった。そんな彼女の美貌に一瞬見とれていると、彼女の目が突然ピンク色に光りだし‥‥‥
――繁華街 路地裏 サキュバス族 カリーナ家三女 ルリア・カリーナ――
危なかった……私の身体に興奮して股間を硬くしていたと思ったら、いきなり雰囲気が変わるんだもん。もしかして勘づいたのかと思ってとっさに魅了を発動しちゃったわ。
せっかく魔人のなり損ないの男たちを魅了して襲わせて、運命的な出会いの演出をしたのに台無しね。でもこうしてアクツを呼び寄せることができたしまあいいわ。
そんなことを考えながらアクツから離れようとした時だった。
「あの……いま目がピンクに光ったのは……」
ええ!? 魅了が掛かってない!?
私の目を見て普通に驚いているアクツに私は焦った。
くっ! なら今度は全力の魔力でもう一度!
私は驚いているアクツにもう一度、今度は全力で魅了を発動した。
「ん? また……あっ……」
今度はアクツは私の目を凝視したまま固まった。
掛かった……わよね?
私はアクツから離れ、彼の顔の前で手を左右に振った。
アクツの目は私の手の振りに反応することなく一点を見めている。
うん、大丈夫。第一段階は成功している。
ふぅ、それにしてもさすがはドラゴンを操る男ね。さっきの男たちとは大違いだわ。でもまあいいわ。これでこの男は私の傀儡になったも同然だもの。一応運命的な出会いはしたし、きっと私に一目惚れしているはず。あとは私の身体を使ってさらに深く魅了を掛ければカンペキね!
さて、それじゃあアクツにベッドに案内してもらおうかしら?
「ふふふ、アクツ公爵様? 私、貴方に一目惚れしてしまいましたの。どこかゆっくり二人きりでいられる場所に案内してくださらない? 」
「はい」
アクツはそう返事をしたあと、どこからか豪華な装飾がされた金色の鍵を取り出した。そして目の前の空間に差し込んだと思ったら、突然黄金に輝く門が現れた。
「えっ? なに!? なんで門が!? きゃっ!? 」
私が突然現れた門に混乱していると、アクツは私をお姫様抱っこをして門の中へと入っていった。
そして門を潜ると目の前には青い海と砂浜が広がっており、その近くには大きな屋敷が建っていた。
「え? 海? こ、ここは……」
なんで海が? さっきまで繁華街にいたのに。
「日本にある別荘です」
「ニホンて……」
うそ……門を潜ったらニホンに来たっていうの? でも魅了に掛かっているアクツが私に嘘を付くはずがない。ということは、あの鍵は遠くの場所に移動できる魔道具?
凄い……この魔道具があれば、1年でこの世界を征服するのも余裕ね。この男を完全に落とせばこの魔道具が私の物に……
私はとんでもない魔道具を目にし、がぜんやる気が出たのだった。
「ではあちらの家へ」
「ええ、そうそう。私のことはルリア様と呼びなさい」
「はい。ルリア様」
「ふふふ、いい子ね」
もう完全に私の言いなりね。ちょっと強く掛けすぎちゃったかしら? さすがサキュバス族でお母様に次ぐ魔力を持つ私よね。自分の才能が怖いわ。
でもこの調子なら最終段階までは簡単にいけるわね。
ふふふ、待ってなさいアクツ。私の房中術で虜にしてあ・げ・る♪
☆☆☆☆☆☆
「わぁ! この世界にも温泉があるのね! 」
屋敷に入るとまずはお風呂で汗を流したかったから、アクツにお風呂場へ案内させたの。そしたらそこには木でできた大きな露天風呂があるんですもの。思わず興奮しちゃったわ。
まさかこの世界にも温泉があるなんて思ってもみなかった。
私たちサキュバス族は魔界一の綺麗好きだから、各家に温泉が引き込まれているのよね。
この世界を征服したらこのニホンをもらおうかしら? 魔人を滅ぼしこの世界を征服すれば、魔王様も始祖ヴィヴィアーヌ様も認めてくれるはず。そしたらこのニホンにある温泉を回りながら、悠々自適の生活を送れるわね。お姉様たちも喜んでくれるはず。
「ふふふ、アクツ。服を脱ぎなさい。一緒に入るわよ。私が気持ちよくしてあげる」
私はそう言って着ていた服を脱ぎ捨てた。
「ムフッ、はい」
アクツもものすごい速さで服を脱ぎ捨てている。
ふふふ、もう股間を硬くしちゃってるわ。私のこの完璧な身体を見て興奮してるのね。
それにしてもこれが本物の男の人のアレなのね。張り型よりも大きいわね。張り型はインキュバスの一番大きいのをモデルに作ったって言っていたけど、ニンゲンのサイズはそれより大きいってこと? どうりで繁殖力が高いわけね。鼻も低いし、まるで魔人とオークの子みたいね。
こんな男に私の初めてを……いえ、この男の利用価値は凄まじいわ。なんといってもドラゴンとゾンビが大量に手に入るんですもの。それにあの遠くに移動できる魔道具。あんな物を持っているんだから、きっともっと凄い魔道具もあるはず。それを全て手に入れられるなら、私の最初の相手としては合格ね。
あ〜今からお姉様たちにドヤるのが楽しみだわ。
「ルリア様? 」
「あ、ごめんなさい。考え事をしてたわ。ふふふ、我慢できないのね? いいわ、そこに腰掛けて。私の口で綺麗にしてあげる」
私はアクツの股間を撫でながら、浴槽に腰掛けるよう言った。
するとアクツは嬉しそうに小走りで浴槽に向かい腰掛けた。そんな欲望に忠実なアクツを少しかわいいと思いながら、私は彼の前でひざまずき、幼い頃から練習しお母様に褒められた舌技を披露した。
「あ……うっ! 」
「あら? もう? ふふふ」
3分もしないうちに果てて私の口の中に放出したアクツに、私は上目遣いで微笑んだ。
早いわね。いえ、私のテクニックが凄いのね。なんだか自身がついてきたわ。
「アクツ。次はそこで寝そべりなさい。私の身体で洗ってあげる」
「はいっ! 」
ふふふ、口だけでもう私の虜ね。でもまだまだよ。もっと私に夢中にさせてあげる♪
それから寝そべるアクツの身体を私の全身で洗ってあげた。アクツは私の胸と舌に責められて二回も果てたわ。
でもさすがに本番を前にこれ以上はマズイと思って、二人で湯に浸って休憩させてあげたわ。
そして温泉から出た私たちはバスローブを羽織り、リビングで水分を補給してから二階の部屋へ向かった。
アクツだけ何か小瓶のようなものを飲んでいたけどあれは何かしら?
なんだか変な匂いがしたし、美味しそうじゃなかったし別にいいか。
それから二階の部屋に入った私は、大きなベッドにアクツを寝かせた。
「ねえアクツ。私が欲しい? 」
バスローブを脱ぎ捨たあと、仰向けに寝るアクツにまたがった私は両胸を揉みしだきながらそう問いかけた。
「は、はひっ! 」
ふふっ、もう辛抱たまらないって感じね。
でもいよいよ本番ね。張り型とは違う本物の男の人のアレ……ちゃんとできるかしら? ううん、あれだけ練習したんだものきっと上手くできるわ。そうよ、頑張るのよルリア。
私は初めての本番に不安になりそうな自分を叱咤しつつも、アクツには余裕があるように微笑んだ。
「ふふふ、もう元気になってるのね。いいわ、今まで経験したことのない快楽を与えてあげる。もう私なしでは生きられないほどに……」
私はそう言ってアクツのアレを握り私の中へと導いた。
「うくっ……」
「ふふっ、気持ちいいの? 」
「はい」
「凄いでしょ私の中。なんでこんなに凄いか知りたい? 」
私は腰をゆっくりと動かしながらアクツの両頬を挟み、あまりの快楽に完全に無防備になっているアクツに再度魅了を掛け問いかけた。
「……はい」
「それはね……私がサキュバスだからよ」
もうアクツは逃げられないと確信した私は、幻影魔法を解いてサキュバスの姿へと戻りながらそう答えた。
あ~やっぱりこの姿が一番楽だわ。
私は側頭部にある二本の角を撫で、翼を大きく広げながら開放感に浸っていた。
うん、アクツは驚いているけど抵抗する素振りはないわね。ちゃんと第二段階の魅了が掛かっている証拠ね。
ふふふ、もう私からは逃げられないわよ? 極限まで搾り取ってあげる。
私はアクツの精力を全て吸い取るため、一気に腰の動きを加速させた。
☆☆☆☆☆☆
「ん……ハァハァハァ……これで……ええ!? まだなの!? 」
私はアクツの上で疲労していた。
身体は汗でびっしょりで、3時間以上動き続けたことで腰にも痛みを感じ始めていた。
おかしい……もう20回以上は吸い取っているのにまだ元気になるなんて。
アクツの顔も全然やつれてない。それどころかもっともっとと腰を浮かせて私を求めている。
いくらなんでもおかしすぎる。普通短時間にこんなに出せばオークだって衰弱するはずよ。
「ルリア様? 」
「ちょ、ちょっと休憩させて。疲れたわ」
私はアクツの上から離れ、隣に寝そべった。するとアクツがどこからか飲み物を取り出し私に差し出してくれた。
「あ……ありがとう。優しいのね。うん、よく冷えていておいしい」
ずいぶん気が利くじゃない。私の命令に従うだけだと思ってたのに不意を突かれたわ。
「ルリア様はお疲れのようですので今度は俺が……」
「え? そんな、いいわよ。私が最後まで吸い取……なにそのピンク色の玉」
私はアクツがまたどこからか取り出した、ピンク色の楕円形の物体に首を傾げた。
なに? 今度はなんの魔道具?
「これはこうして……」
アクツは首をかしげる私の股間に、右手で持ったその物体をあてた。そしてアクツが反対側の指を動かしたと思ったら、私の股間に今まで感じたことのない快感が走った。
「え? あっ、あああああ!! 」
私は初めて感じる快感に盛大に腰を浮かせてしまった。
なにこれなにこれ!? 震えてる!? あのピンクの物体が震えてるの!?
私は股間に感じる快感と、優しく乳房を舐めるアクツにあっという間に達してしまった。
「あ、あひっ! うくっ……んんっ……ハァハァハァ……な、何をしたの」
「まだ何も」
アクツはそう答えると、今度は紫色の張り型を取り出した。
でもそれは私の知る木製の張り型ではなく、とても大きくそして無数のイボイボが付いていた。
「ま、まさかそれも……」
「震えて動きます」
「い、いやっ! やめて! 怖い! 」
そんな大きくてイボイボが付いてる張り型が震えながら動くなんて! そんなのを入れられたら私は!
「大丈夫です。気持ちいいですから」
アクツはそう言って身をよじり逃げようとする私を押さえ、半ば強引に張り型を私の中に突っ込んだ。
なんで!? なんで私のいうことが聞けないの!? 魅了は成功したはずなのに!
「イキます」
「ダメ! やめて! 命令よ! やめ……あひぃぃぃぃ!! 」
突然私の中で回転し始めた張り型が与える快感に、私は頭が真っ白になった。
こ、こんなの……知らない……
☆☆☆☆☆☆
「う……ん……」
何度目かの失神から目覚めると、アクツが欲望にまみれた顔で私の身体を貪っていた。
ベッドの回りには目隠しの布と手枷と鳥の羽。そして様々な形と大きさをした張り型の魔道具が散らばっている。その一つ一つが私に未知の快感を与えた物だ。
アクツは私がその道具で達する度に覆いかぶり、そしてひっくり返しながら何度も何度も私の身体を求めた。
そして今も私のお腹の上で必死に腰を振っている。
快感で身体に力が入らない私の耳には、気持ちいい、気持ちいいと。サキュバスサイコー! というアクツの言葉だけが聞こえてきていた。
そしてそれから数十分ほどした頃。
「うっ……はぁはぁ……あ゛〜〜もう一滴も出ない! 疲れた〜」
40? いや50回目だろうか? 私を後ろから責め、奥深くで吐き出したアクツは隣でバタリとうつ伏せに倒れ込んだ。
「あひっ……ひっ……」
そんなアクツの横で私はお尻を高々とあげたまま痙攣し、口からは変な声を出していた。
お、終わり? あの快楽地獄からやっと開放されたの?
男と寝ることがこんなにハードだったなんて……いえ、そんなはずないわ。お姉様や配下の者たちの話では、こんな回数をこなす男がいるなんて一人もいなかった。ましてやあんな魔道具のことも。
つまりこの男が特殊。
な、なんて男……まさに性獣……快楽耐性訓練を受けている私をここまで追い込むなんて。
でも今がアクツを隷属させるチャンス。アクツの身体には私の魔力がこれでもかって充満しているはずだし、あれだけ私の身体に夢中だったんだから100%成功するわ。残った魔力を全て魅了に使えばこの男を私の下僕にできる。
うん、衰弱している今がチャンスよ。
そう決意した私はなんとか立ち上がろうとしたが、腰が抜けて力が入らない。
私は立ち上がることを諦めお尻を高々と突き上げた体勢のまま、腕を隣に寝そべるアクツの頭に伸ばしこちらに向けさせた。
「ん? まだしたいの? あと一回くらいならできそうだけど……」
「しないわよ! あんたどんだけエロいのよ! もういいわ! 隷属しなさい! 『魅了』! 」
私はまだ余力があるアクツに戦慄しながらも残っている全魔力を使い、最終段階の魅了を発動した。
「……ハッ!? 俺はいったいなにを!? くっ! 『滅魔』! 」
「え? あ……な……に……? からだ……が……」
突然なにかに気付いたアクツが、私に向かって叫んだ。
すると私の身体から一瞬で力が抜けていき、ピクリとも動けなくなった。
ゆ、指さえも動かない……何が起こったの?
さっきのアクツの言葉……まさか私の魅了が解かれた? そんな……全て順調だったのに……隷属できると思ったのに……どう……して……
額の汗を拭いながら私を見下ろしているアクツを見上げながら、私はなぜ失敗したのかわからずただただ混乱していた。
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