第8話 横浜ダンジョン制圧
「ウジャウジャと……『滅魔』! ティナ! 二頭ほど残してグローリーの隊を連れて先に行ってくれ! 横浜のダンジョンと街にいる魔物は俺ともうすぐ来る獣王連隊で制圧する! 新宿と池袋はニート連隊が先に降下してるようだから巻き込まないようにな! 」
佐藤君と別れ横浜駅が見えると、避難所である駅ビルや周囲のデパートの前にゴブリンとオークの群れがいたので視界に映る全ての魔物へ滅魔を放った。
それにより街の路上にいたゴブリンとオークは全て一瞬にして絶命した。それを見届けた俺は念話を通してティナに先に行くように指示をした。
その際に真っ先に飛空輸送艦で出発したニート連隊に対し、誤ってブレスを吐かないよう注意するようにとも。
《あら? 三田さんたちはもう着いたの? かなり飛ばしてきたのに追い抜けなかったみたいね。わかったわ。『ファロス《気高き女狩人》』行くわよ! 》
《ルオォォォン! 》
ティナはさっそく名前を付けた風竜王と共に、後方のグローリーの隊を引き連れ超低空飛行で竜に咆哮させながら新宿方面へと向かっていた。
精霊連隊長のアイナノアはリズと一緒に岡山に向かわせている。もちろんリズの監視のためだ。岡山のダンジョンは市街地から少し離れている場所にあるから大丈夫だとは思うけど、山も近いから念のためだ。
山に逃げた人もいるだろうからな。魔物から逃げてホッとしている所に山火事が起きたら目も当てられない。
しかし一番最初に向かわせた御庭番衆たちはともかく、遅れて出発した三田たちはどんだけ飛ばしたんだ? いくら高速揚陸艦に乗せたとはいえ、戦闘機並みの速度の竜で追いつけないとは思わなかった。
いや、マジで速いわこの竜。風精霊のエルフを乗せて正解だったな。ダンジョンの装備をしている俺たちは別として、風の精霊がシールドを張って騎手を守らなかったらここまで速度は出せなかっただろう。
ティナを見送りながらそんな事を考えていると、結界で守っているのに吹き飛ばされると言ってずっと俺の腕にしがみついていたカーラが前方を指さした。
「コウ、ダンジョンが見えてきたわよ。リリア? いつまで顔面を蒼白にさせているのよ。そんなに怖いならエスティナのドラゴンに乗り換える? 」
「ううっ……だ、大丈夫です……光殿がネクロマンサーでも私は離れません……い、一緒に戦います」
「ごめんなリリア、予定が狂っちゃってさ。目を瞑っていていいから我慢してな」
俺はさっき佐藤君のところでゾンビを作ってからというもの、怯えまくっているリリアの肩を抱いて謝った。
全部火竜に乗って行ったリズが悪いんだ。俺は悪くない。ゾンビ製作は必要な事なんだ。
そんな風に罪悪感を誤魔化していると、駅のすぐ近くにある横浜中級ダンジョンの上空に辿り着いた。
俺は残った二頭の風竜に乗るエルフに一人は初級ダンジョンに向かい出てくるゴブリンを殲滅するように言い、もう一人は周囲を咆哮しながら回るようよう命令した。
俺の命令を聞いた二人はすぐにそれぞれの役割を果たすために移動した。
二人の乗る風竜をみおくった俺は、真下にあるダンジョンへ視線を向けた。
そこは崩壊したダンジョンの壁と多くのトレジャーハンターたちの遺体。そしてそれを踏みつけながら、次から次へとダンジョンから出てくるオークで溢れかえっていた。
ダンジョンの壁の外にも、数え切れないほどの人間の死体が転がっている。その中には服を剥かれ息たえた若い女性の遺体も所々に点在していた。
その惨状を作った張本人であるオークたちは、ヴリトラの存在に気づいたのか全員がこちらを見上げたまま固まっていた。
「チッ、好き放題してくれたなぁ豚ども! 咆哮しろヴリトラ! 」
《ヴオォォォォン! 》
「恐怖に包まれたまま死ね! 『滅魔』! カーラ! 」
俺はヴリトラの咆哮により腰が抜け、その場にへたり込んだダンジョン前と壁の外にいた数百体のオークへ滅魔を放ち一瞬で絶命させた。そしてカーラへと声を掛けた。
「まかせて。『死者操術』! ダンジョンへ戻りなさい! そしてその身が朽ち果てるまで戦いなさい! 」
「ヒッ!? 『浄……」
「ハイハイ、リリアは目を瞑ってな? それにしても凄いな……俺より機敏に動いてる。俺も練習しなきゃな」
カーラによってゾンビ化したオークへ浄化のスキルを発動しようとしたリリアを抱きしめ、俺の胸で目隠しをした。
そして冥族になって得たカーラの種族魔法により起き上がり、ダンジョンへと機敏に歩き出したオークの動きを見て感心した。
「コウみたいに一度に何百匹も操れないわ。せいぜい五十匹がいいところよ。それに……ええそうね……魔力の消費も激しいわ」
「そんなに消費する物なのか? まあそこは俺の譲渡のスキルで無限に使えるから心配ないよ。ほら、減った分の魔力を補充するから手を出して」
「ありがとう。でも胸の魔石に近い方が早いわ。だからこっちにお願い」
俺がカーラに手を出すように言うと彼女は着ていたローブの前を開け、ワンピースの胸もとを大きく開いた。そしてCカップほどの形の良い真っ白な胸の谷間を俺へと見せた。
「え? あ、うん。それじゃ……『譲渡』 」
一瞬俺は驚いたが、こんなチャンスはそうそうないと思い、カーラの左乳房に手を当て譲渡のスキルを発動した。
あれ? そんなに減っていない? 補充する必要はなかったかな? でもカーラも補充して欲しいって言ってたしいいか。
「あっ……ん……コウの魔力が私の中に……熱い……んんっ……」
「そ、そうかな? 」
なんだ? 妙に卑猥な言葉に聞こえるな。最近どうもカーラの様子がおかしいんだよな。この間二人で飲みに行った時なんて、いつもと違って服もメイクもバッチリで凄く色っぽかったし。
そういえば最近カーラは研究室の床で下着姿のまま寝なくなったな。やっとカーラも普通の女性になったってことか? もうあのおっぱいやお尻が透けているエッチな下着姿を見れなくなったのはちょっと寂しいけど、喜ぶべきことなんだよな。残念だけど。
「んっ……もう私のここ……コウでいっぱいよ。もう一度発動するからしばらくこのままでお願い。そうね、もっと魔力が入りやすいように胸全体に手を添えてくれる? 」
「あ、ああ……」
俺は熱のこもった目で俺の手に手を重ね、ぐっと自分の胸に押し付けるカーラに導かれるまま、紫色のブラの中に手を入れた。そしてその柔らかくて張りのある乳房を手のひらの中に収めた。
「光殿? あの……固く……」
「な、なんでもない。ほら、またゾンビが現れるぞ、目を瞑って」
股間が元気になったことに気付いたのか、顔を上げたリリアになんでもないと言って空いている手でリリアを胸に再び抱き寄せた。
「フフッ、コウなら揉んでもいいのよ? 」
「じょ、譲渡のためだからそんなことはしないよ」
「そう……(コウってハーレム作ってる割には変なところで堅いのよね……鈍感なのかしら? )」
「え? 今なんて言ったの? 」
なんだ? 小声でよく聞こえなかった。
「なんでもないわ。いくわよ。『死者操術』 」
俺がなんて言ったのか聞き返すと、カーラは笑みを浮かべながら種族魔法を発動した。それにより数十体のオークがゾンビとなり、カーラの命令によってダンジョンの中へと戻っていった。そして俺は再びカーラへと魔力を譲渡した。
それを数回繰り返したところで、俺は後方から飛空揚陸艦の艦隊がやってくることに気付いた。
「カーラ、これくらいでいいだろう。リリア、もうゾンビはいないから大丈夫だよ。それと……『弥七。横浜にいる御庭番衆から、これから降下してくる獣王連隊に散った魔物の情報を伝えてくれ』 」
俺は弥七へ念話で先に来て潜伏しているはずの御庭番衆から、ケイト率いる第二獣王連隊に市内に散った魔物の居場所を伝えるよう命令した。
《御意! 静音らが潜伏しておりますので報告させます》
「静音がいるのかよ……」
いや、オリビアを呼び寄せたからいるのはわかってたけどさ。よりにもよってなんで横浜にいんだよ。
《突然聖地がどうのと叫びだし、勝手に数人のくノ一を連れ秋葉原へ向かおうとしていたゆえ危険を感じ横浜に向かわせました》
「そういうことか……秋葉原はこれからティナたちが竜を向かわせるだろうし、お台場の結界の塔の防衛隊も向かっているから大丈夫だろう。あそこは初級ダンジョンだしな」
静音たちを行かせたら人間より同人誌を置いているショップを守りそうだからな。弥七の判断は正しい。
「さて、とりあえず地上に降りるか」
弥七との念話を切った俺は、魔物がいなくなりスッキリしたダンジョン前にヴリトラを降ろし伏せの姿勢で待機させた。すると後方からやってきた飛空揚陸艦が到着し、周囲の公園や大通りに乗り捨てられた乗用車の上へと次々と着陸していった。
そして着陸した揚陸艦の後方のハッチが開き、ケイトを筆頭に獣人たちが次々と揚陸艦から降りてきた。
ケイトたちは静音たちから情報を得たのだろう。抜刀し初級ダンジョンのある方向と街中へと散っていった。その彼女たちの上空では、風竜が咆哮しながら飛び回っている。
「よし、横浜はもうこれで大丈夫だろう。あ〜静音、いるか? 」
「はっ! ここに! 」
俺が静音の名を呼ぶと、ヴリトラの影から静音を筆頭にお馴染みの顔ぶれが膝をついた姿勢で現れた。
腐ノ一だ。
「テレビ局とラジオ局に連絡してくれ。そこで俺から領民に向けて悪魔や竜の事とか色々説明するから、送信する動画に映像を切り替えるように言ってくれ。あとM−tubuでライブを……っと、確かさっきから回線がパンクしてるんだったか。まあネットはいいや。動画はスマホで撮るから撮影の準備を頼む」
「御意。すぐに手配いたします」
静音はそう言って仲間の腐ノ一たちと各方面へ電話をかけ始めた。
「あら? ドラゴンのこと伝えていなかったの? 」
するとカーラが意外そうな顔でそう話しかけてきた。
「そういえばどこにも知らせていませんでしたね」
リリアもカーラに続き顎に指を当て、思い出すかのような表情でそう口にした。
「ああ、すっかり忘れてたよ。そりゃいきなり竜が現れたらびっくりするよな」
さっき佐藤君の反応を見るまで、竜がいきなり現れたら領民がパニックになるかもしれないことをすっかり失念していた。せめて沖田に一報くらい入れておくべきだったな。
後で怒られそうだけど、リズとアルディスさんも岡山と神戸に着いてから30分くらいしか経過していないだろうし誤差の範囲ということにしよう。
「フフフ、出発はドタバタしていたし、コウは早く助けに行くことしか考えてなかったものね。仕方ないわ」
「そうです光殿はドラゴンの用意と使役と忙しかったのですから」
「ありがとう。まあ遅くなったけど戦っている者たちへの士気を上げるためにもやる必要はあるしね。これから掃討戦もあるし」
そう優しくフォローしてくれた二人に答えると、ヴリトラの足もとで電話をしていた静音がこちらを見上げ口を開いた。
「御屋形様。そういうことでしたら、今のお召し物ではいささか迫力に欠けるかと」
「この革鎧のことか? そうか? 」
伝説級だし黒竜の革鎧でかっこいいと思うんだけどな。これ以外だと神話級の防具の『防魔の鎧』。あのやたら青白く光る魔鉄のハーフプレイトアーマーのことなんだけど、あれしかない。でもあれをダンジョン以外で着て人前に出るのはちょっと恥ずかしい。なんか勇者コスプレしているみたいだし。
「はっ! 鎧もそうですが、御屋形様はお若いうえにかなりの美形でございます。そのうえお顔はとてもお優しそうに見えます。実際とてもお優しいのですが、そのせいでお顔に現れてしまうのでしょう」
「うん、続けて」
俺はダークエルフの価値観とはいえ、美女に容姿のことを褒められて気分が良くなり話を続けるように促した。
「ありがとうございます。そのようなお優しいお顔をした方が領民を鼓舞したとして、どれほどの効果が現れましょう? ドラゴンの存在で一定の効果は現れるでしょう。しかしお優しい御屋形様に甘え、戦わず傍観する者もいるやもしれません」
「うーん……まあ竜がいるならって思う奴もいるかもしれないな」
自分一人戦わなくても、竜がいるならなんとかなるだろうと思う輩が出てきてもおかしくはないか。
「はい。であるならばです。ここは心を鬼にして領民に御屋形様は恐ろしいお方だと、命令に背く者はそれ相応の対価を払うことになると知らしめる必要があるのではと思うのです」
「俺に領民を脅せってこと? それはちょっとなぁ」
ただでさえ軍とギルド員に行っている刑の内容が漏れて怖がられてるしなぁ。当然SNSで漏らした奴を再度ダンジョンに放り込んだけど。それでも一度広まった噂はそうそう消えない。俺だって女性や子供に怖がられて傷ついていないわけじゃないんだ。
「御屋形様。この未曾有の災害を乗り越えるためです。今は御屋形様を恐れたとしても、いずれ領民は御屋形様の真のお心を知り涙を流すことでしょう。私にお任せ頂ければ、御屋形様が特に領民を脅す必要はございません。私たちが用意したお召し物に着替えていただけるだけで全て上手くいきます」
「着替えるだけで? まあそれだけでいいなら……」
なんか威厳が出る服でも持っているのかね?
確かに俺の顔は威厳とかないからよく舐められるしな。
まあ静音がここまで自信を持ってるなら着替えてやるか。
「はっ! では我らに全てお任せください。失礼いたします! 」
静音は一瞬口元を緩ませたと思ったら慌てたように下を向き、周囲で聞き耳を立てていた腐ノ一たちを呼びヴリトラの上へと登ってきた。
そして俺の背後でマジックポーチから何かを取り出し、数人がかりで俺に着せ始めたと思ったら、腐ノ一の一人が急にメイク道具を取り出し俺の顔に何かを塗り始めた。
一体何をされているのか不安になったので、鏡を取り出して確認しようとしたその時。背後にいた腐ノ一の一人が俺の前にスッと立ち、胸をはだけさせ巨大な乳房を露出させた。
俺は彼女の胸に視線が釘付けとなり、ピクリとも動くことができなかった。
デカイ……それに褐色の肌にピンクの……って違う! なんだ? いったい俺は何を着せられてどんなメイクをされてるんだ?
カーラ、リリア。何か言ってくれよ。ん? なんで下を向いてるんだ? あれ? 肩が揺れて……もしかして笑ってる?
おい静音! 本当に大丈夫なんだろうな!?
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