第3話 帝国一の美女
「フフフ、このクレープというものは初めて食べましたがとても美味しいです」
「だろ? こっちのチョコバナナクレープも食べてみるか? ほら」
俺はイチゴのクレープを満面の笑みを浮かべながら頬張るラウラに、食べていたクレープを差し出した。
「あ……はい」
ラウラは頬を染めながら、俺が差し出したクレープをバナナごとパクリと口に含んだ。
そんなラウラの口もとを隣で俺は凝視していた。
なんつうエロイ唇だ。あの唇でバナナを……店員に丸ごと入れてもらった甲斐があったな。
6月になりだいぶ暖かくなってきた頃。
軍の再編に日本領の統治など相変わらず忙しい日々を送っていた俺は、なんとか時間を作りラウラと東京へデートに来ていた。
ラウラもアメリカ領を得て俺なんかよりかなり忙しいはずなんだけど、東日本を管理していたシュヴァインの豚をアメリカに戻すことができたこと。そして内乱で死んだ配下の者を俺が生き返らせたことで、なんとか余裕ができたといっていた。それで先月から約束の月に一度のデートを再開しているというわけだ。
もちろんお互いに幻身のネックレスで姿を変えている。俺は鼻を高くして口もともいじり、我ながらかなりのイケメン顔になったと思う。
家を出る時にティナにはブサイクになったと言われたが、街を歩いていると若い女性とすれ違う度に振り返られる。俺はこれがイケメンの感じる視線。これが持つ者の心境かと感動すらしていた。
ラウラは燃えるような赤い髪を金髪にしただけだ。しかし普段来ている派手なチャイナドレス姿ではなく、俺が先月鹿児島でデートした時に買ってあげたジーンズとホワイトジャケットに、ベージュのカットソーのインナーとパンプス姿だ。
街を歩く人たちはラウラの美しさに振り返るが、まさかこんなラフな格好をしている女性が最近まで東日本を管理していたハマール公爵だとは思っていないようだ。メイクも清楚というか、おとなしめだしな。
買ってあげた時はラウラはいい歳してこんな格好をと恥ずかしがっていたが、俺が綺麗だよというとすごく嬉しそうな顔をしてはにかんだ。見た目はまだまだ30くらいだし、色気があっていいと思うんだよな。ラウラならたとえ見た目が40くらいになったとしても俺は全然イケる。なんというかこのエロさというか魔性の魅力というか、それがたまんないんだよ。ほんとオリビアといいリリアといい、魔族の女性は不思議な魅力を持っているよな。
しかしまさかこんな穏やかなデートをラウラとする事になるとは……内乱前じゃ考えられなかったな。
もう何度も感じたことだがラウラは変わった。いや、豹変した。以前のように桜島の飛行場に着くなり銀扇を振り上げ半狂乱で俺に斬りかかってくることも、その後俺に魔力を抜かれ尻を叩かれて歓喜の雄叫びを上げる事も無くなった。
今じゃ飛空艦からしずしすと降りてきて、頬を染めながら俺の前にゆっくり歩いてくる。俺も驚いたが、それ以上に護衛の女騎士たちが驚いていたのは印象的だった。これまで散々自分たちの主の痴態を目の当たりにしてきたからな。みんな何があったのかと一斉に俺に聞いてきたよ。そんなの俺が知りたいくらいなんだけど。
でも俺は今のラウラの方がいい。なによりまともに話ができるのはデカい。魔導通信でもメールでも、統治の仕方とか帝国の内部情報とか、軍の運用法など今まで以上にスムーズに話せるんだ。ノーパンノーブラのラウラの裸が見れなくなったのは残念だけど、下着をしっかり着けて胸もとを隠している今のラウラの方が魅力的に見えるのは不思議だ。
「お、おいしかったです……バナナ」
バナナを食べ終わったラウラが、うつむきながら唇を舌でぺろりとなめ回しながら言った。
「うっ……そ、そうか」
俺はラウラの舌の動きに刺激を受け、ズボンの位置を調整しながらそう答えた。
「わ、私の……いちごも食べてください」
ラウラは頬を染めながら食べかけのクレープを俺に差し出してきた。
「あ、ああ……うん、美味しいな」
俺はそれを一口食べてラウラに美味しかったと伝えた。
「あ、生クリームが口に……」
ラウラはそういって指を伸ばし、俺の口もとに付いていた生クリームをすくい上げた。
「ん? ああ、ありがとう……うっ」
そしてラウラは恥ずかしそうに指に付いた生クリームをパクリと口に含んだ。
俺は指をくわえるラウラの唇を凝視し、またズボンの位置を調整した。
くっ……頬を染めながらエロイ唇で白い物を……魔性……まさに魔性の女の所業。
「アクツ様の味がします。あ、私ったらはしたない」
「そ、そんなことないさ」
お前が今まで俺の前でしてきたことに比べれば全然。
「そ、それよりもアメリカの統治はどうだ? あそこの住民は少しは落ち着いたか? 」
「はい。かなりの数を見せしめにしましたし、重税も課しました。刑罰用のダンジョンも増やしましたので、もう二度と逆らおうなどとは思わないでしょう。フフフ、一時の感情で反乱を起こすなんて、本当にチキュウの人族は愚かですね」
ラウラはそれまでの少女のような笑みから一転、酷薄な笑みを浮かべ俺にそう答えた。
「あっ! ですがアクツ様は別です! 強くて優しくてまるで白馬にまたがった王子様のような素晴らしい男性です」
と思ったら慌てたように俺をべた褒めしてきた。
白馬の王子様って……ついこの間、嫉妬に狂った仁科や飯塚たちに白濁の魔王様と呼ばれたばかりなんだけど。
「そ、そうか。それは光栄……かな。さて、もうすぐ映画の時間だ。そろそろ移動しよう」
「はい。フフフ、ずっと見たかった映画なんです。チキュウの人族は恋愛映画を作る才能だけは素晴らしいですね」
「そうかな? 俺はあんまり見ないからわかんないや。ははは……」
官能系なら詳しいんだけどな。
それから俺とラウラは映画を一緒に観たあと、幻身のネックレスで正装した姿に変え高級ホテルのラウンジで夜景を見ながらお酒を飲んでいた。
「とても楽しい一日でした。映画もとても良かったです」
向かいに座っているラウラが、胸もとにワイングラスを持ち嬉しそうに言う。
「俺も楽しかったよ」
「こんな200歳を超えた私が相手でもですか? 」
「はぁ……そういうのもうやめないか? ラウラは綺麗なんだからもっと前みたいに自信を持てよ」
俺は前回のデートから度々年齢のことを口にするラウラにいい加減うんざりしていた。
「私は綺麗なんかでは……年をとっている上に汚れ……いえ、なんでもありません」
「?? なんでそんなに年を気にするんだ? 見た目は俺の実年齢と変わらないだろ。確かに今の俺はダンジョンアイテムのおかげで十代後半くらいの見た目だけど、もう30になるしな」
親父みたいにハゲるのが怖くて時戻りの秘薬を飲んだとは言えないが、飲んでなかったらラウラとそう見た目は変わらなかったはずだ。
「でも……」
「だからもうやめろって。ほら、プレゼントだ。開けてみろ」
俺はまたネガティブなことを言おうとしているラウラに、前回のデートのあとに用意した小箱を差し出した。
「え? 私にですか? 」
ラウラは驚きつつも差し出された小箱を受け取り、頬を緩ませながらそっと開けた。
「!? 金色のポーションに赤い指輪……これってあの時陛下に渡した……」
「そうだよ。時戻りの秘薬に2等級の停滞の指輪だ。ほら、これでラウラも二十歳だ。俺と変わらないだろ? 」
前回のデートのあとにティナとオリビアに相談して、いつも無条件に俺の味方をしてくれているラウラに秘薬と指輪をあげようということになった。
個人的にもラウラがまともな時に統治や軍事面で色々世話になっているし、フォースターも外交面で困った時はラウラの命令を受けた部下に相談している。今後も世話になりそうだし、マルスと同じく長生きしてもらおうというわけだ。
本当は今のままでもいいんだけど、本人が年のことを気にしているからな。肉体年齢が10年も若返れば以前のように自信が戻るだろう。
「こんな神話級のアイテムを……私のために……こんな私の……アクツ様……いえ、ありがとうございます。すごく嬉しいです」
ラウラは一瞬嬉しそうな顔をして、何かまた思い悩んでいる表情に戻ったと思ったらまた笑顔になった。
「これからも世話になるしな。それで若返ったらもう年齢のことは言うなよ? 前みたいに自信いっぱいのラウラに戻ってくれ」
俺はラウラの表情の移り変わりに疑問を覚えながらも、前向きに受け取ることにして元気を出すように言った。
「はい……もう言いません」
「ははっ、なら良かった。さて、飲もう」
俺はそう言ってワイングラスを手に持ち、ラウラと二度目の乾杯をした。
そのあとはゲートキーで一緒に悪魔城に帰り、ラウラはメレスの部屋に泊まってから翌日にアメリカへと帰っていった。
その時には既に若返っており、その姿を見た俺たちは皆が一様に驚いていた。
若返ったラウラは帝国一と言われても納得できるほどの美貌だったからだ。
そんなラウラが恥ずかしそうにしながら俺に手を振り、飛空艦へと乗り込んでいく姿にしばらく目を奪われていた。
「……今まで変態な面が目立ちすぎてアレな人という印象しか無かったけど、ハマール公爵ってすごい美人よね」
「はい。本当に綺麗でした……」
どうやら見惚れていたのは俺だけでは無かったようで、一緒に見送りに来ていたティナとオリビアが飛び立つ飛空艦を見ながらボソリと話し出した。
「あの変態公爵があんな顔をするとか反則だろ」
「ですです。同じ女性でも胸がドキドキしてしまいましたです」
「フフッ、懐かしいわ。私が幼い頃のハマールだったわ」
ティナたちに続きリズにシーナにメレスもそれぞれが感想を話していた。
「これはアレね。絶対に無いと思っていたけど、ありそうね」
「ええ、コウさんを見る目は間違いなくそういった目でした」
「私もそう思うわ。でもハマールは何か悩んでるようなの。それが何かはわからないけど」
「兎はコウさんのお仕置き枠を奪われないならなんでもいいです」
「いやちょっと待てよみんな。あのハマールだぜ!? 半裸でコウを追いかけていたあのハマールだぜ!? 」
「ほんと、何があったのかしら。内乱の後からよね? コウ、何か身に覚えある? 」
「え? いや、特に。なんか帝都で助けた辺りから変なんだよな。いや、まともになったと言うべきか……」
俺はティナになぜラウラの性格が変わったのか聞かれたが、まったく身に覚えが無かった。
確かにラウラからの好意は、これまでのあのドM的な物とは違う。手を握っただけで真っ赤になるラウラとか、中身が別人としか思えない。昨晩もティナたちと露天風呂に入る時に、リズが冗談交じりで一緒に入るかって誘ったら顔を真っ赤にして断ってきたし。内乱前は呼ばなくても全裸で入って来ようとしてたのにな。もう何が何だかわからん。
「うーん。白馬の王子様効果かしら? 」
「あのハマールがそんな乙女かぁ? 」
「兎にはハマールさんの目は乙女に見えましたです。前みたいにギラついてなかったです」
「あのハマールが……信じられないわね」
「私も幼い頃から知っていますがメレス様と同じく信じられません」
「でもコウを見る目が……」
「いやいやいや、あれはコウが油断するのをだな……」
「兎は……」
それから家に帰るまで、恋人たちはあーでもないこうでも無いと話し合っていた。
まあ、なるようになるだろ。それにしてもラウラの胸。昨日よりも大きくなった気がする。お尻も心なしか上を向いていた気がする。若返ったラウラのスタイルやばいな。アレで女性としか付き合ったことが無いって。なんか昔にあったのかな。
俺は言い合う恋人たちの横で、時折見せるラウラの暗い顔を思い出しては色々と考えていたのだった。
♢♢♢♢♢
「よう沖田。エルミアとはうまくやってるか? 」
《はい。おかげさまで公私ともに絞られています》
「おお~、良かったじゃないか。エルフは本気で好きな相手には底なしに求めてくるからな。子供ができにくい分、そうして好きな人の子種を求めるんだってよ。男冥利に尽きるだろ。また朝までおっき君送っておくから気持ちに応えてやれ」
ラウラとのデートの翌日。
俺は朝から南日本総督の沖田騎士爵の魔導通信による報告を執務室で受けていた。
相変わらずのイケメンだが、頬は痩けている。車椅子に乗って沖田が桜島にやってきた時よりも不健康そうだ。総督の激務とエルミアの相手で相当身体を酷使しているようだ。
まあ大丈夫だ。死んでも生き返らせてやるから。
いやぁ、クラウスといい沖田といい、俺の代わりに領地の統治をしてくれて感謝感謝。ほんと助かるよ。
「ありがとうございます。助かります。アレがなかったら私はとっくに仲間の元へ旅立っていたと思います。エルミアは夜になると途端に甘えてき……ガッ! 」
「あ~監視されてたみたいだな。悪いな話を振っちゃって」
俺は沖田の目の前のコップの水がいきなり沖田の顔を殴りつけたのを見て、エルミアがウンディーネに監視させていたのだろうと察した。
「いたた……まさかウンディーネがいたなんて。私はどうやらエルミアに信用ないみたいですね」
「まあエルミアと初めて結ばれた時に、あまりの嬉しさにペラペラしゃべってたからな。その辺の信用はないんじゃないか? それより今日は何か報告があるんだろ? 」
「あれは失態でした。あ、はい。実は北海道の魔獣系の中級ダンジョンから灰狼と、秋田にある鬼系初級ダンジョンからゴブリンが出てきました」
「またか……それで討伐はしたんだろうな? 」
俺は沖田からの報告に、頭を抱えた。
最近になって世界中でダンジョンから魔物が出てくる事案が発生している。
以前ティナにダンジョンから魔物が出てくることはないと聞いていたんだが、それはティナたちがいた世界の話だ。地球ではまれにダンジョンから魔物が出てくることがある。
なぜかというと地球の方が魔素が濃いからだ。それにより今までダンジョン以外では生きられなかった魔物が外に出ても大丈夫と思ったのか、ちょこちょこと出てくるようになった。
まあオズボードの所にいたオークも、数ヶ月生きていたらしいからな。ある意味あれで俺の危機感は刺激されたよ。
しかしそれもここまで頻繁ではなかった。
誰のせいかと聞かれれば何千年も攻略者がいなかった古代ダンジョンを二つも攻略し、溜まっていた魔素を全て吐き出させた俺のせいなんだろう。
ダンジョンを攻略したら魔物が出てくるとか。とことん呪ってくれるよな。
「はい。警備をしていた探索者協会……あ、トレジャーハンターギルドが、魔物が出てきたところを討伐致しました」
「ははっ、まだ名前を変えたばかりだからな。まあ処理したならいい。柵とネットを張って常に2パーティを張り付かせておいてくれ」
東日本の探索者協会はトレジャーハンターギルドに改名させた。南日本のデビルバスターズギルドの下位組織という扱いだ。今後南日本でダンジョン探索をする新人は、全員がこのトレジャーハンターギルドに加入することになる。デビルバスターズギルドはC-ランクとなり、さらにギルド貢献度が高い者が入れるようになる。
以前からデビルバスターズに入っていた者は、貢献度の審査なしでランクさえ規定に達すれば加入できることになっている。まあこうでもしないとリズとシーナがパンクしちゃうんだ。だからデビルバスターズは高ランク専用のギルドということにした。
もちろん全員がデビルバスターズに入りたいと思えるように特典が満載だ。魔石や素材の換金率もいいし、予約制だが飛空輸送艦をいつでも使うことができ、日本全国どのダンジョンにも行ける。そして毎年貢献度ランクイベントがあり、豪華景品を手に入れるチャンスがある。さらに死ねば優先的に蘇生を受けれるし、欠損系の怪我の治療も優先的に受けられる。どっちもかなりの高額な費用が掛かるけどな。
それに何よりもデビルバスターズでBランク以上になると、重婚が認められる。ただ、一人増やすごとに金貨30枚。まあ日本円で1億円くらいかな。それを保証金として公爵家に預けないといけない。これは本人が死んだ時に遺族に支払われる。ダンジョンに潜っていれば遺体が残らない死に方をする事もあるからな。ハーレム作りたいなら妻と子供のために財産を残して死ねということだ。
この制度を発表した時の元日本人の反響は凄かったな。今でもSNS上の話題を独占しているよ。発表した翌日から、魔石の納品量はうなぎ登りだ。みんなやる気になってくれてうれしいよ。ぶっちゃけ金貨30枚くらいBランクになって必死に潜ればさ、2年も掛からず貯められるからな。一応無理して死んで蘇生をしてもらったとしても、高額な蘇生費用が掛かる上にランクも下がるとはいってある。多分あの熱狂振りじゃ耳に入ってないと思うけど。
まあそんな感じでダンジョンはこの二つの組織で攻略をしていく事になったわけだ。
「はい。パーティを常時張り付かせ一匹も街には行かせません。ですが他の大陸の領は、先日の帝国の混乱で魔物を外に出してしまったところがあると聞きました。飛行系の魔物が隣の大陸から来ないよう、警戒が必要かもしれません」
「それは問題ない。飛空艦艦隊の訓練は台湾を中心に日本海側で行っているからな。空中の魔力反応を見落とすことは無いと思う」
新設した飛空艦艦隊で毎日のように訓練をしている。大陸から魔物が飛んでくれば喜んで的にするだろう。
「そうでしたか。それなら安心ですね。あ、魔導科学研究所の建設ですが、鹿児島県霧島市の自衛隊跡地に建設することに決まりました」
「お、早いな。日本の科学者には期待してる。特に光学迷彩とかな。絶対に魔帝より強い兵器を作れると信じてるよ」
よし、魔導技師と科学者は押さえてある。あとは科学と魔導技術を融合させた兵器を作れば、万が一元地球国家が力を得ることがあっても安泰だ。時間は掛かるだろうけど、ここは投資を惜しんだら駄目だ。
「今まで禁止されていた魔導技術の研究ができるということで、科学者たちは家族ごと移住してくるほどやる気に満ちてますよ」
「まあ鹿児島県以外では研究は許さないけどな。科学者に俺と契約してもらうことをしっかり伝えてくれ」
他領に技術を売る奴が出てこないとも限らないからな。
「はい。そのように伝えておきます。ではまたご連絡します」
「ああ、またな」
俺は沖田に手を上げて魔導通信を切った。
一応これで軍事研究は可能になった。しかしライムーン伯爵、いや侯爵になったんだったか? 彼が一族をかくまったお礼として弟子の魔導技師を派遣してくれて助かった。他の技師には全員に逃げられたからな。
問題はライムーン侯爵か……なんなんだよあいつ。この間、礼を言いに来たのはいいけど、首が鱗でビックリしたのなんって。なんでも竜の因子を自分の身体に埋め込んだらしい。それで長時間拷問に耐えてたら元に戻れなくなったとか言ってた。『今度から竜神族と名乗りマース! 』とかやたらハイテンションだったな。というか自分の身体を魔物化しようとするとか、控えめに言って頭おかしいだろ。
案の定、メスを手に持って俺のスキルの分析させてくださーいとか寄ってきたから、魔力抜いてぶっ飛ばして帰した。
研究所には魔帝と何か作ってるみたいだから来ないとは思うけど、変なのと知り合っちゃったよな。帝国本土の隣領も、例の魔帝をさらに脳筋にしたひ孫がローエンシュラム公爵となって治めることになったみたいだ。なんか俺に会いたい会いたいうるさいらしい。断ってるけど。
はぁ~、俺の周りって変なのばっか寄ってくるよな。やっぱこの腰の魔神の呪いせいなのか? これ予告なく光るから、隠すの大変なんだよ。これから暖かくなってくるってのによ。なんとかしないとなこれ……
せっかくスケスケの湯着を用意したのに、このままじゃいつまでも雪華騎士たちと露天風呂に入れなくなる。それに夏に一緒に海にも行けない。ヤバイ! マジでなんとかしないと!
俺は楽しい夏が近づいている事に危機感を覚え、魔神の加護をどうにかして剥がす方法を考えるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます