第31話 Kiss





 モンドレット子爵領から東へと飛行し1時間ほどが経過しただろうか?

 恐らく隣のどこかの貴族の領地に入ったのだろう。高速で移動する俺を魔力レーダーみたいなのが捕捉したのかわからないが、1機の戦闘機が目の前に立ちふさがった。


 あの地球の戦闘機の翼を短くし、機体を丸くしたようなフォルムは基地で見たのと同じだ。確かヴェルム改だったか?


 そのヴェルム改は俺の姿を確認したのちに、両翼の下部に設置されている魔銃に魔力を収束させた。


「邪魔だ! 『滅魔』! 」


 俺が魔銃と機体後部の燃料タンクへ向けてスキルを放つと戦闘機はバランスを崩し、そのまま制御を失い地上へと落下していった。


 そしてその途中で機体から二つの座席が飛び出し、パラシュートが展開された。

 どうやらこういうところは地球の戦闘機を真似たようだ。


 それから数分して一気に数十機の戦闘機が地上から垂直離陸し、まるでUFOのような複雑な動きをしながらこちらへと向かってきた。

 そして機体の前方には魔力による壁のようなものが展開されていた。


 あれが魔力障壁か……透明でまったく見えないが、俺には魔力の塊が展開されているのがわかる。

 しかし無駄な動きをしてるな。どんなにちょろちょろと動こうが、俺の視界に映りさえすれば滅魔は発動できる。


 お前らは俺の『瞳の中の処刑領域』から逃れることはできない。

 なにが起こったかわからないままその機体を棺桶にして死ね!


「堕ちろ! カトンボ! 『滅魔』! 」


 俺は視界に映る全ての戦闘機を範囲指定し、操縦する魔族の魔石を含む範囲内にある全ての魔力を吸収し大気に放出した。


 こんなもの、距離がある分ヴェロキラプトルの大群よりたいしたことない。そして経験値もショボい。


 俺は同時に機体の制御を失い墜落していく数十機の戦闘機の真上を通過し、その身に次々と入ってくる魔族の魂を感じながら東へとただ真っ直ぐ突き進んだ。


 それからさらに1時間ほど飛行しただろうか? その間に地上からの対空砲や戦闘機が次々と襲い掛かってきたが、地上から飛んでくる魔力の塊は全て滅魔で消し去り、戦闘機は敵の射程範囲に入る前に全て墜落させていった。


 どうやら飛空戦艦と呼ばれるものは占領地に出払っていて、この領地には無いようだ。


 そしてとうとう俺がティナたちにべったりと付けた、追跡のスキルの感知範囲へと入った。


「いた! もう少し南か! 動いてる! 生きてる! 間に合ったんだ! ティナ! リズ! シーナ! 今行くぞ! 」


 俺は脳内に映し出されるゆっくりと移動している反応に嬉しくなり、これ以上速度が上がらないにもかかわらず飛翔のスキルに追加で魔力を注いだ。


 そして10分ほどで俺の探知のスキルにもティナたち自身の魔力が引っ掛かった。

 そしてそれと同時に数百機にも及ぶ戦闘機と飛空戦艦らしき巨大な飛空艇が、ティナたちのいる場所を塞ぐように展開した。


 俺はすぐさまスキルを放とうとするが、それよりも早く飛空戦艦の前方に設置されている二門の砲塔から、薄っすらと白い巨大な魔力の塊が撃ち出された。


「どいつもこいつも邪魔をするなぁ! 『滅魔』! 堕ちろデカブツ! 『滅魔』! 」


 俺は、俺へと向かってくる巨大な魔力の塊を滅魔で消滅させ、そしてそのまま戦闘機と飛空戦艦に向けて全力の滅魔を放った。


 俺は崩れ落ちるように一斉に墜落していく戦闘機の群れと飛空戦艦の合間を、結界を張りながらただ真っ直ぐ進んだ。その間俺の身体には膨大な数だが、一つ一つはヴェロキラプトル程度のショボい魂が次々と入ってきていた。


 そしてついに視界にティナたちを捉えた。


「ティナ! リズ! シーナ! 」


 俺は地上を鷹の目で見た。

 するとそこには軍の訓練場らしき場所の真ん中で、泣きながら俺を見上げるティナたち3人がいた。


 そして次にティナたちの前で剣を抜いている6人の兵士、そしてその周辺を囲んでいる数千にも及ぶ兵士たちを見た時に、今まさに処刑が行われようとしていたことを察した。


「こ・の・クソどもがぁぁぁぁ! 俺の大切な子たちになにしようとしてんだぁ! 滅べ! 魔族! 『滅魔』! 」


 俺はティナたち以外、グラウンド上にいる全ての魔族に対し全力の滅魔を放った。







 ♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢






 ーー テルミナ帝国 南西部 コビール侯爵領 領軍駐屯地 地下牢 水精霊の湖のエスティナ ーー





「出ろ、命令だ 」


「…………」


「ケッ! 」


「ふええ……」


「そのまま立ち止まらず訓練場へ向かえ。命令だ」


 私たちは侯爵のSランク護衛6人のうちの4人に前後を挟まれて地下牢を出た。


 昨晩処刑を告知されてからはリズとシーナと3人でずっと泣いていた。

 処刑されることに対してじゃない。こんなことは奴隷にはよくあることだし、私も何度もその光景を目にした。


 それはリズもシーナも同じ。だからみんないつかは自分もこうなると覚悟はしていたわ。むしろあの古代ダンジョンで死んでいたはずの私たちが、ここまで生きていられたことが奇跡よ。


 私たちが悲しかったのは、もしかしたらもう一度会えると思っていたコウと会えなくなるから……


 あの古代ダンジョンでコウに出会わなければ、あの時死んでいればこんな悲しい思いをすることはなかった。


 でもコウと出会えたことで本当の自由を満喫することができた。

 コウが側にいるだけで毎日毎日とても楽しかった。

 コウがいるおかげで恋をすることができた。


 でも私たちはコウと別れる選択をしたの。

 私たちには帝国に残した大事な人たちがいる。生きている以上帝国に戻らないと、もし見つかった時にその大事な人たちに迷惑が掛かる。


 そしてコウのやろうとしていることの邪魔にもなる。

 だからこれは運命なの。仕方のないことなの。


 それでももう一度コウと会いたかった。

 私はリズとシーナにコウが好きでどうしようもないんだって泣きながら話した。

 あの強がりで照れ屋のリズも泣きながらコウと会いたいって、またふざけあいたいって、強くて優しいコウが好きで好きで仕方ないんだってずっと言ってた。


 シーナはコウに飼って欲しかったとか、コウのものになりたかったとか少し特殊なことを言ってたけど、それでも一生分の涙を流しているんじゃないかっていうくらい泣いていた。


 私たち3人はあの古代ダンジョンでコウと出会い一緒に生活をしていくうちに、コウの優しさと強さにどうしようもなく魅了されていたの。


 すごくえっちだけど滅多に怒らなくてとことん私たちに優しくて、いつも大事な時に私たちを守ってくれるコウが私たちは大好きになっていたの。


 古代ダンジョンでの最後の別れの時に、私も含めてみんなちゃんとコウが好きって言えなかったことを悔やんでいたわ。


 こうなることは予想できたけど、それでも私たちも好きだって、コウと両思いだってちゃんと伝えておけば良かった。


 もう今さらよね……




 あれからウンディーネは帰ってきていない。

 契約は切れてないし渡した魔力はかなり多いから大丈夫だとは思うけど……

 ウンディーネにも最後に私と契約してくれてありがとうって、精霊界に戻っても私を忘れないでねって言いたかった。

 ほんとにどこに行ったのかしら?



「グラウンドの中央に行き等間隔で立っていろ。命令だ」


「くっ……」


「お〜お〜、いい見せもんだな。暇なやつらだ」


「ふええ……こんなに人が……ふえええ……」


 私たちは命令された通り訓練場の中央へと歩いて行きそこで立ち止まった。

 この訓練場は兵士たちが模擬戦をよくやる場所で、周囲は2mほどの壁で囲われその上には簡易的な観覧席がある。


 リズが言ったように侯爵から召集されたとはいえ、そこには2千人近くの兵士たちが男女問わず座っていて、全員が私たちをニヤついた目で見ていた。

 あちこちで私たちに自害するなよとか、漏らすなよなどからかう声が聞こえてくる。


 悔しい……一矢報いてやりたい。けどここで抵抗すれば里やシーナの妹に迷惑が掛かるかもしれない。


 侯爵は絶大な権力を持っているわ。いくら保護地区とはいえ、侯爵なら里にいる子供たちに危害を加えることができる。


 シーナの妹も、リズの施設の後輩たちも侯爵ならどうにでもできてしまう。

 私たちがすべきはおとなしくここで処刑されること。

 私たちさえ死ねば全てが丸く収まる。


 それでも……

 私は正面にある二階建ての建物を睨みつけた。

 そこにはでっぷりと太った赤髪の侯爵と、憔悴した様子の馬鹿令嬢が私たちを見下ろしていた。


 馬鹿令嬢は私と目が合うと憎しみに満ちた顔で睨み返してきた。

 私はその様子を見てフッと笑ってやった。


 ふふふ、相当怒られたみたいね。ざまぁだわ。

 一緒に処刑されるはずのあの男がいないのをみると、尋問の内容に侯爵が激昂してその場で殺したのかもしれないわね。

 まあ馬鹿令嬢の部屋に行ったのは、一回や二回じゃないものね。


 2等級ポーションで純潔を取り戻さない限りは、もうなんとか殿下との結婚は無理ね。

 滅多に市場に出ない2等級ポーションを待ってたら手遅れになるから、どこかの貴族に嫁ぐことになるかもしれないわね。結婚してから発覚するより良かったじゃない。感謝して欲しいわ。


 でも結婚してから発覚してたら、いったいどうするつもりだったのかしらあの馬鹿女。


 あら? どうやら処刑人が来たようね。

 さっきのSランク護衛4人と新人が2人かしら?


「下等種、そのままじっとしてろよ? 平均A-ランクか、ノーリスクで得られるにはまあまあだな。オイ、 新入り」


「はっ! 」


「はい! 」


「侯爵さまのお心遣いだ。お前たちにやらせてやる。A-ランクだ。神の子孫の権限を行使し己の力としろ」


「はっ! ありがとうございます! 」


「ありがとうございます! 」


 神の子孫の権限ねえ……獣人を殺す時によく耳にするけどなんなのかしら?

 それよりこんな新兵に斬らせるのやめて欲しいわ……これは楽に死ねそうもないわね。

 ひと思いに首を突いてくれないかしら……


 それからしばらくして侯爵からの訓示があった。

 私たちを処刑する理由? そんなもの一言もないわ。高位貴族がエルフと獣人を処刑する理由なんて必要ないもの。


 処刑とは関係ないことを長々と話してるわ。

 馬鹿令嬢? まだ私を睨んでるわよ。自業自得なのに逆恨みもいいところよね。


 勝手に奴隷にして飽きたら売るか贈答品にするか殺すか。

 私たちはそういう存在。

 そうして数千年帝国で飼われてきた。


 数百年前に1人だけ物好きなどこかの高位貴族に気に入られて愛し合ったという、うちの里のエルフがいたらしいわ。でも私はこんな屑ばかりの帝国人なんて死んでもごめんだわ。


「チッ! やっぱ最後にコウと会いたかったぜ。アイツのドーテー奪ってやりゃよかっ……た……くぅ……」


「うえっ……えぐっ……ゴウざん……ゴウざん……うざぎはゴウざんがだいずぎで……うえっ……飼ってほじぐで……うえっ……」


「リズ、シーナ。泣いたらアイツらを喜ばせるだけよ」


 そう、私は水精霊の湖のエスティナ。

 誇り高きエルフがこれ以上、人族の理不尽に屈した姿をみせてやるもんですか。

 声ひとつあげないで死んでやるわ。


「ティナ……そうだな……処刑人にへっぴり腰って言って死んでやるさ」


「う、うざぎも……ゴウざんをずっど想っでじにまずぅ……」


 リズ、シーナ。助けてあげられなくてごめんなさい。

 せめて2人を精霊界に連れていけるよう……そこで私たちがまた友達でいられるように、死んだあとに精霊神様にお願いしてみるわ。


 だから今世ではごめんなさい。3人で精霊となってコウを見守りましょうね。



 そして侯爵の長い話が終わり、とうとう処刑の開始の合図がされようとしていたその時。


 ウーウーウーウー


 ウーウーウーウー


 突然基地中にサイレンが鳴り響いた。


「なんだと! 空襲警報だと!? 」


「管制室! こちら訓練場! なにがあった! 」


《 こちら基地防空管制室。1体の空飛ぶ悪魔デビルらしき物体が基地に接近。隣接するカサンド伯爵領の空軍が壊滅したとの連絡あり。よって空襲警報を発動した。これは訓練ではない。敵はその姿形から恐らく悪魔だ。現在マニュアルに従い空軍を全出撃させた。陸上部隊は侯爵様の指示待ちだ 》


「馬鹿なっ! デビルだと! あり得ない! この世界にそんな……しかもそれほどの個体が……」


 なに? 悪魔? 伝説の魔物がなぜ? この世界にもともといたの? ならなぜ今になって?

 侯爵がもの凄い慌ててるわ。本当に悪魔が存在するということ?

 観覧席の兵士たちも動揺しているわ。侯爵はまったく指示を出す気配はない。

 あの怯えよう……悪魔を知っている?


 ダンジョンによって魔界から唯一召喚されない悪魔種。

 その種類は数多く、そして強大な力を持つと言われている。

 伝説では魔界からテルミナ大陸に現れて暴れまわったなんてのはあるけど、その悪魔を侯爵は知っている?


「なんだなんだぁ? 悪魔だぁ? んな伝説の生き物がいるわきゃねーだろ! ばっかじゃねえの? 」


「あぐまはゴウざんだげでずぅ。ゴウざん……うえっ……ゴウざーーーーん! 」


「ふふっ、そうね。私たちにとって悪魔はあの時のコウだけよね。それにしてもカサンド伯爵の空軍を壊滅させるなんて尋常じゃないわね」




 それからすぐに空軍が緊急離陸して西の空に展開した。そしてすぐに飛空戦艦が主砲を放った。


 え!? いきなり主砲を!? やっぱりそれほどの存在だというの?

 あの主砲に耐えられる存在なんていな……え? 消えた? え? え? な、なんで? 突然墜落をし……あ……ああ……あれは……あの影は……


 飛空戦艦が西の空に巨大な魔力の塊である主砲を放ったと思ったら、その途中で突然消滅した。


 そして次の瞬間何百機と展開していた戦闘機も、巨大な飛空戦艦ですらも突然糸の切れた操り人形のように崩れ落ち墜落していった。


 一瞬私はなにが起こったのかわからなかった。

 でもその崩れ落ちる戦闘機の合間を飛ぶ黒い影が目に入り、私はずっと我慢していた涙が溢れ出した。

 あの影はあの時の……見忘れるはずもない私の大好きな人の……


「な、なんだよ……全滅したのか? いったいなにが……お、おい! あの影! ま、まさか! 『探知』 ! 『探知』! 」


「『だがの目』! あ……ああ……見えまず……ぎ、ぎごえまず……わだぢだぢの名前を……ざげんでまず……ゴウざん! 」


「コウ……ばか……なんで……帝国を敵にしてまで……私たちを助けに……」


「コウだ! コウの魔力だ! 間違いない! あのばっがやろう……ううっ……あたしたちを助けるために……帝国と戦って……ばか……やろう……」


「ゴウざーーーーん! うざぎはごごでず! 」


 コウ……なんてことを……こうならないように私たちは黙っていたのに……コウ……


 コウが……こっちに真っ直ぐ……ああ……あのジョークグッズだって言ってた仮面をしている……


 顔を隠してるつもりなのね……帝国に喧嘩を売ってるのに……相変わらず変なところで臆病なんだから……

 あれじゃ誰がどう見ても悪魔じゃない。


 ああ……コウがもうすぐ上に……コウ! もうなんでもいい! このまま死んだっていい! コウに会いたかったの! また会いたかったの!


 私が真上で滞空するコウを見つめていると、コウはマスクの上からでもわかるほど怒っていた。

 あの温厚なコウがこんなに怒ってる姿なんて初めて見た……私たちのために……


 そしてコウは訓練場に手をかざし叫んだ。


「こ・の・魔族どもがぁぁぁぁ! 俺の大切な子たちになにしようとしてんだぁ! 滅べ! 魔族! 『滅魔』! 」


 魔族? いえそれよりも滅魔? いつもの無詠唱で放っている麻痺のスキルじゃない?


 え? な、なによこれ……


 私はコウに大切な子たちと言われ嬉しい気持ちになりながらも、初めてテルミナの言葉でコウが言ったスキル名に困惑していた。


 それはコウがそのスキルを放った途端に処刑人のみならず、観覧席にいた全ての兵士たちが崩れ落ちたから。


 それはまるで突然心臓が止まり生命活動を停止したようにも見えて……


「汚物は焼却してやるよ! 『灼熱地獄インフェルノ 』 『灼熱地獄』 」


 それからコウは地上に降り立ち、火属性の上級スキルを観覧席全体に放った。



 そして高く舞い上がる炎に照らされゆっくりと私たちのところへ歩いてきたコウは、私たちの背後の建物に目をやりなにか呟いたあと。


「『滅魔』 ……ティナ、リズ、シーナ。約束通り迎えにきたよ。もう二度と離れない。いや、離さない。これからはずっと側にいて欲しい」


 マスクを取り私たちの隷属の首輪をあの時のように外し、いつも通りの優しい顔で私たちにもう離さないと言った。


 そんなコウを見た私たちは一斉にコウへと駆け寄り、コウを力の限り抱きしめた。


「コウ! 」


「うあぁぁぁ! コウ! 」


「ゴウざん! 」


「ウンディーネが知らせてくれたんだ。辛い思いをさせてごめん。もう二度と辛い思いはさせない。俺がティナたちに降りかかる理不尽を全てぶっ潰してやるから。俺が3人を守るから」


「コウ! ばかっ! ううっ……私たちなんかのために帝国に喧嘩を売って! ばかっ! コウ! 大好き! ばかっ! ひっく……ばかぁ…… 」


 初めて男の人に守るって言われて、でも帝国に逆らったことでコウが心配で……

 私は嬉しいやら情けないやら愛おしいやら感情がもうぐちゃぐちゃで……


「コウ……うぐっ……コウ……好きだ……コウ……もうどこへも……いくな……コウ……」


「ゴウざーーーーん! えぐっ……ゴウざんにうさぎのずべでを……捧げまずぅ……好ぎなんでずぅ……優じいゴウざんがぁ〜……えぐっ……だからもうどごへもいがないでぇ……」


「ありがとう。俺もみんなが大好きだ。だからもう離さない。二度と離れない」


 泣いて抱きつく私たちをコウは優しく引き剥がし、私たちの目を見て好きだと離さないと言ってくれた。

 そんなコウに私は胸が苦しくなり……自然と唇を重ねていた。


 私とのキスが終わるとリズとシーナともキスをして、今度はコウから私たち3人を抱きしめてくれた。


 ああ……安心する……コウならあらゆる理不尽から私たちを守ってくれる。不思議とそう思えるの。


 やっぱり私はコウがいないと駄目みたい。


 もう二度と離れたくない。


 コウ……大好きよ。





 **********


 29話訂正

 魔物の魂は『ダメージを与えた』一定の範囲にいる全ての人種に均等に配分されます。

 ダメージを与えなかった者には配分されません。

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