第6話 長寿アイテム




 ハイハイに疲れて途中からほふく前進していた俺は、まだ不安だったのでほかに何かないか探し回った。

 すると部屋の端の方に、皮というより糸を編んで造ったようなシルクのような見た目ののバッグが落ちていた。劣化をしていないことからマジックバッグだと思った俺は、ゴキ〇リのようにカサカサとそのバッグに近づき手に取って鑑定した。



【 マジックバッグ(特級) 】



 おお! 特級!? さっきのマジックバッグにはそんな表示無かったぞ?

 これはかなり良い物なのでは?

 何か大当たりの予感がした俺は、ほかのマジックバッグとの違いを確かめるためにとりあえずポーションを取り出してみようと手を入れて念じた。


 すると俺の手にはエメラルドに光るポーションが現れた。

 これはもしかしたら……

 俺は次に何か食べれる物と念じた。すると手にパンのような感触を感じて取り出してみると、まるで焼きたてのような良い匂いのフランスパンらしき物が現れた。

 歓喜した俺は次に水筒と念じた。するとミスリルっぽい容器に革のカバーが付いた水筒が現れた。

 そしてフタを開けて匂いを嗅いでみた。


 普通の水っぽいな。よし……

 俺は水筒を口に含み少し飲んでみた。普通のおいしい水だった。

 これは間違いなさそうだ。このマジックバッグの中は時が止まってる。


 キタッ! 絶対これは高ランクで金持ちのやつの持ち物だったはず。このバッグの中身が俺を救う!


 俺はレアなスキル書が入ってますようにと願いながらバッグに手を入れ……る前にパンを食べた。

 いや、だってずっと何も食べてなかったから! もう夜10時だし! 14時間動きっぱなしだったし!


 パンだけでは足りずバッグから紙に包まれた肉の塊も出し、水を飲みながら俺は急いで食べた。ちなみに何かおかしいと水筒を鑑定したら、無限水筒とかいう名前で飲んでも飲んでも全く減らなかった。凄くね?


 そして満腹になった俺はバッグからスキル書を取り出した。

 その中に白銀の分厚いスキル書とかあって興奮したが、覚えてガッカリした。

 俺はまだ当たりがあるかもしれないと気を取り直し、そのほかのスキル書も開いて片っ端から覚えた。


 結果、覚えたスキルは銀色のスキル書の『魔力譲渡』と、水色・焦げ茶・薄茶・緑色のスキル書の『圧壊』と『地形操作』と『錬金』と『調合』だった。


 うん、全部今の俺にはハズレだったよ。

 魔力譲渡と錬金と調合はすぐに使えるけど空気で敵を押し潰す圧壊と、その名の通り地形を操作する強力そうなスキルは使用制限エリアにお入りになりました。


 魔力譲渡とかあげるほど魔力ねえしっ! あげる仲間いねえしっ! 物質にも譲渡できるらしいけど、なんのためにするのかサッパリわからん。やっぱり仲間に自分の魔力をあげる時に使うんだろう。

 強くなれば使い道がありそうだし、錬金と調合以外は今まで聞いたことのないスキルばかりだから強いんだろううけどさ。俺はいま強くならないと未来がないんだよ。


 俺はほかになにか装備が無いか思いつく限りの物を念じて取り出した。色々な種類のポーション、アクセサリー、革鎧、武器、マント、ブーツ、丈夫な服などなど。

 すると出るわ出るわでこっちの方は当たりだった。恐らくパーティ全体の予備の物なのだろう。知らないものは鑑定し、出たのはこんな感じだった。


 ポーション類


 ○ポーション2等級×5、3等級×30、4等級×40、5等級×30

 ○魔力回復ポーション3等級×20 、4等級×40

 ○解毒のポーション2等級×10、3等級×20 、4等級×40

 ○状態異常回復ポーション2等級×15、3等級×30 、4等級×60


 装備類


 ○黒竜の革鎧、黒竜のマント、黒竜のブーツ、五毒の短剣×3 、祝福の指輪(3等級)×3


 この青い液体の魔力回復ポーションてのは初めて見るし、黄色い液体の状態異常回復ポーションも知らない。恐らく日本や外国ではまだ到達していない階層とか、調合なんかでできるものなのだろう。

 ちなみにポーションは1~5等級まであるらしい。5等級が一番効果が低く、俺は5等級しか見つけたことはない。


 ネットでは3等級までしか出たという情報はなかった。もちろんどれもダンジョンの宝箱産だ。

 調合スキルがあってもレシピがないと作れないらしいし。小説みたいに教えてくれる現地人なんていないからな。なんたってダンジョンの方からこっちに来たんだ。現地人が一緒に来てなきゃ作り方なんてわかるわけないよな。


 とりあえず俺は黒竜のマントとブーツを装備することにした。名前が厨二っぽいが、名前からして耐久力ありそうだから装備するの一択だろ。黒竜の革鎧はカッコイイが、今装備している魔鉄のハーフプレイトアーマーの方が防御力高そうだからな。


 そして魔力回復ポーションを飲んで魔力を回復した後に、自分の身につけているアクセサリーと骸のマジックバッグに入れていたアクセサリーに、特級マジックバッグに入っていたアクセサリーを鑑定してみた。


 するととんでもない物が出てきた。


 ○浄化のネックレス×3

 ○停滞の指輪 3等級×3、4等級×3

 ○祝福の指輪 3等級×2、4等級×1、5等級×2

 ○護りの指輪 3等級×6


 ヤバイヤバイヤバイ! 停滞の指輪はヤバイ!この赤い宝石の指輪がそうだったとは……これはM-tubeで話題になったから知ってる。アメリカでこの指輪の5等級が上級レベルのダンジョンで見つかって、パーティが奪い合いになって壊滅した挙句に生き残った奴が権力者によって殺されたって噂でもちきりだった。

 確か5等級で老化の速度が2分の1になるとんでもアイテムだ。

 それを3等級? 4等級? 殺される……生きて帰って持ってることがバレたら俺は間違いなく殺される。


 おいおい……こんなアイテムをあの骸たちは身に付けてたって、もしかしてこのドラゴンに挑んだ人たちって勇者レベル? それが全滅? そんだけ強いドラゴンってことだよな?

 やっぱりここって相当ヤバイダンジョンのかなり深い階層なんじゃ……


 だあぁぁぁ! ストップ! 今は考えない! またあの時みたいに心が病む。

 なるようになる! 先のことは考えない! 今はこのボス部屋にしか見えないところから出ることだけを考えろ!


 くそっ! 死が近い場所で長生きのアイテムを寄越しやがって! 過去最大級の嫌がらせを受けた気分だ!


 とりあえず俺の怪我が回復していったのが、このエメラルドグリーンの石がはまっている祝福の指輪ってやつのおかげなのはわかった。

 こんな物の存在聞いたことないけどな。ポーションとの違いは即効性か? 指輪は徐々にって感じか。

 まあこの3等級のやつは付けたままでいいな。


 この白い石がはまってる護りの指輪は鑑定しても効果がわからない。鑑定の熟練度不足か……これも聞いたことないアクセサリーだけど、とりあえず付けたままでいいだろう。護ってくれよ?


 停滞の指輪は……どうせ誰も来ないだろうしこの3等級てのを付けとくか。

 最近おでこが広くなった気がしないでもないしな。

 俺は親父の頭を思い浮かべながら、そっと指輪をはめたのだった。




 よしっ! もういいだろう。やっぱり気になって仕方ない。

 宝箱を開けよう。ドラゴンが気付いたら速攻で逃げよう!


 俺はさっきからずっと『開けないの? いいもの入ってるよ? 』と問いかけてきている青白く光る宝箱へと向かっていった。いや、俺の妄想だ。


 そして宝箱の前に辿り着き、宝箱をじっと観察した。

 鍵穴がない? イメージしてたのと違うな……ドラゴンを倒したあとのご褒美だからか?

 ミミックとかほんと勘弁してくれよ?


 俺はこの人が入れそうな3つの宝箱の周囲をウロついて観察したが、特に怪しい感じはしなかった。

 これ以上時間を掛けても仕方ないので一番左端の宝箱の蓋を開けることにした。


 そーっと、そーっと……開いた! 黒と金のスキル書? ハッ!? ドラゴンは!?


 グオォォォ


 グオォォォ


 寝てるな……本当に仕掛けが無いみたいだ。よし、怖いから3つ全部開けて一気に中身を取り出そう。

 俺は3つの宝箱を一気に開けて、中にあったスキル書2冊とポーションらしきもの5本と腕輪1つと指輪3つを取り出して特級マジックバッグに入れて急いでその場を離れ、ハイハイで扉の近くまで移動した。


 ……セーフ? 大丈夫そうだ。ふぅぅぅ……ドラゴンキラーの武器とかは無かったか。

 仕方ない、スキルに期待だな。魔力はもう少しあるけど一応魔力回復ポーションを飲んでおくか。


 あれ? 回復しない? さっき飲んでからまだ10分くらいしか経過してないからか? クールタイムがあるのかね? ゲームみたいだな。とりあえず魔力は少しあるしいいか。


 俺は魔力回復ポーションにクールタイムがあることを知り、少し残念に思ったがまあそういう縛りがある物語やゲームがあるしなと納得することにした。


 さて、頼むぞ? どんな敵でも即死させるスキルとか頼む!

 俺は過去これほど神に祈ったことは無いと思うほどに祈りながら、期待値の高いスキル書を鑑定した。



【 吸魔のスキル 】


【 結界のスキル 】


 うおっ! 当た……り? とハズレ?

 黒色のスキル書の吸魔のスキルが多分、魔力の譲渡のスキルの逆バージョンで魔力吸収だろう。金色の表紙のやつは結界。結界は当たりだろう。だがドラゴンの攻撃を耐えられるほどの耐久力があるのか?

 練習しようにもできない。ドラゴンで練習とかそれはもう本番だろ。


 くうぅ。せめてアクセサリーは……この黒い腕輪は絶対防御の能力とか頼む!『鑑定』!



【 空間収納の腕輪 】



 ぐっ! 恐らく時が止まってるマジックバッグ的な物なんだろうけど! 良いものだけど! でも違うんだ、今はコレじゃない!


 まだだ! まだ俺の持ってる指輪より濃い色の指輪と、金色の液体が入ったポーションみたいなのがある!

 そんなに時の進行を遅らせたり止めたいならいっそ時間停止の指輪とか、透明人間になれる秘薬とか頼む!


 ファイナルチャンス! 『鑑定』!



【 停滞の指輪 2等級 】×2


【 時戻りの秘薬 】 ×6



 長寿セットでした……



 終わった……ここで長生きとか考えられねーんだよ。すぐそこに死神がいるんだよ。



 俺は最強のドラゴンを前にして、恐らく数百年は生きれそうな長寿セットを手に入れたのだった。


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