短編 中学生アリス編お祭り

第43話 アリスと愛華のお祭り(前編)

今日は近所の神社で夏祭りがあるらしい。


最近は楽しい事があまりなかったので、日常のちょっとした変化は嬉しかったりする。


今日は愛ちゃんに誘われて夏祭りに行くんだけど、ソフィーはナナ先輩とミナミと一緒に行くらしい。


ちょっと前までなら私もそっちに行っていたと思うんだけど、最近は愛ちゃんといる時間の方が長くなってきているかも。


ソフィーも私にばっかり頼っていてはお姉さん失格かもしれないし、少しは成長してもらわなくちゃね。


ママは暗くなる前に帰ってきなさいって言っていたけど、マンガで見た夜店って言うのも気になってしまうわ。


普段の屋台と何か違いがあるのかはわからないけれど、とにかく何か良いものが買えるんじゃないかと思うわ。


それにしても、愛ちゃんはまだ来ないのかなぁ。


いつもならすぐに遊びに来るはずなのに、今日はいつもよりゆっくりなのね。


今日はマサ君もどこかに出かけてるみたいだし、愛ちゃんに一杯癒してもらわなくちゃね。


そんなことを考えていたら愛ちゃんがエントランスに着いたみたいなんで、私もエントランスまで降りていかなくちゃ。


エレベーターから降りると、エントランスには見慣れない大人の女性が立っていた。


その女性は見覚えがあるような気もするけれど、どことなく愛ちゃんにも似ているような感じがしていた。


私がエレベーターからエントランスに向かうと、その女性はこちらに手を振りながら駆け寄ってきてくれた。


「遅くなってごめんねぇ。浴衣の着付けをしてもらっていたら思っていたよりも時間がかかっちゃったんだよね」


「え?愛ちゃん?大人っぽいから気付かなかったよ。着物姿も大人っぽくて素敵だね」


「ふふ、ありがとう。アリスちゃんもいつも以上に可愛いよ。アリスちゃんは浴衣着ないの?」


「私は着物とか持っていないからさ。でも、普段の愛ちゃんは可愛い女の子って感じなのに、着物を着ていると一気に大人な女性になってるね」


「アリスちゃんが良かったらお姉ちゃんが去年来ていた浴衣あるけど、着てみるぅ?」


「興味あるけど、愛ちゃんみたいに綺麗に着こなせないと思うよ」


「アリスちゃんなら可愛いから大丈夫だよ。それにぃ、アリスちゃんはスタイル良いから浴衣もばっちり似合うと思うよ」


「そう言えば、今日の愛ちゃんはお胸が窮屈そうだね」


「うん、浴衣を着る時はお胸が大きいと似合わないから大変なんだよぉ」


「そうなんだ、私も着てみたいけど時間かかりそうだからやめておくよ」


「大丈夫だって、うちのお母さんは着付けとか得意だからすぐに終わるよ」


ん?着付けが得意だからすぐ終わるのに愛ちゃんは時間がかかったって、もしかしてあの立派なアレのせいなのかな?


「それにぃ、お母さんもアリスちゃんに浴衣着て欲しいって言ってたんだよ」


「うん、そこまで言うなら着てみたいかも。私、着物って着たこと無いんだよね」


「良かった、お母さんもお姉ちゃんもアリスちゃんが浴衣を着てくれたら喜ぶよ」


「愛ちゃんみたいに大人っぽくなれるかな?」


「アリスちゃんはスタイル良いんだし、私より可愛くなると思うよ」


「着物って愛ちゃんみたいに大人っぽいやつ?」


「私は紫っぽい浴衣が好きで、この花とか可愛いと思うんだけど、お姉ちゃんのは明るい水色がグラデーションになっているやつなんで、元気なアリスちゃんにはぴったりだと思うよ」


「そうなんだ、愛ちゃんの着物は大人っぽいから、最初に見た時は大人の女性が立っているって思っちゃったよ」


「髪型も普段と違うからかもね」


「愛ちゃんは普段の可愛い姿も、今みたいに大人っぽい姿も似合っているね」


「ありがとう。アリスちゃんの浴衣姿はみんな惚れちゃうかもね」


そんなことを話していたら愛ちゃんの家に着いていた。


愛ちゃんのお母さんはすぐに着物を着せてくれる準備をしていた。


家族以外の前で着替えをする事に抵抗があったのだけれど、愛ちゃんのお母さんは私には出来ないと思うような紐の使い方で着物を着せてくれた。


途中でタオルを持ってきたので汗でも拭いてくれるのかなと思っていたら、折りたたんで私のお胸のところにあてがって、着物を着せてくれていた。


「愛華の場合と違ってアリスちゃんはスラっとしているから着せ甲斐があるわ」


愛ちゃんのお母さんはそう言ってくれていたけど、私と愛ちゃんのタオルの使いたが違うんだろうってことは、何となく気付いていた。


「ねえ、せっかくだから髪型も浴衣に似合うのにしようよぉ」


愛ちゃんがそう言いながら私の髪をセットしてくれていた。


可愛い愛ちゃんが私の髪を触っているのは何だか気恥ずかしくもあったけど、一生懸命に私を可愛くしてくれている愛ちゃんを見ると、ちょっとだけ胸がドキドキした。


「よし、出来たよぉ。アリスちゃんの髪はサラサラだからちょっと大変だったけど、綺麗にまとまったね」


そう言って鏡を見せてくれたのだけれど、鏡に映る私は出かける前に確認した姿とは全然別人のようだった。


「愛ちゃん、私も可愛くなれたかな?」


「普段も可愛いけど、浴衣姿もすごく可愛いよ」


何時も可愛い愛ちゃんにそう言われると照れてしまうけれど、何だかそれ以上に嬉しくなってしまう。


「一緒に写真撮ろうよぉ。お母さん、私とアリスちゃんを写真に撮ってよ」


愛ちゃんのお母さんが写真を撮ってくれたのだけれど、何枚か撮ってもらっている時にいつもは柔らかい愛ちゃんのお胸がカチカチに硬くなっていることに気付いた。


最初は気のせいだと思っていたのだけれど、抱き着かれたときに疑惑は革新へと変わってしまった。


「ねぇ、愛ちゃんのお胸が硬くなってない?」


「うん、浴衣を着る時は大きいと邪魔になるし、見た目も良くないから綿とかタオルを使って動かないように固定しちゃうんだよね」


「あ、そうなんだ。私もタオル使ってたよね?」


「アリスちゃんの場合は上半身に凹凸が少ないから立体的に見せるためじゃないかな?」


同じタオルでも日本人は様々な使い方が出来るんだと学んでしまった。


帰ってきて着替える時はどんな感じになっているのか、愛ちゃんの着替えをじっくり見なくちゃ。


「ねえ、着物を脱ぐときは一緒にやってもらおうよ」


「アリスちゃん、お祭りで汗もかいちゃうだろうし、浴衣を脱いだら一緒にお風呂入ろうよ。ほら、汗かいたまま洋服に着替えるのも変だしさ」


いつも私が気付かないようなところまで気を配ってくれる愛ちゃんは本当に良い友達で、とっても可愛いな。

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