わたしの未来は。

「本当に気を付けるんだよ!!」

「もう、わかったって!」


小泉に手を振って、家に帰ろうと振り返ると、そこにはよく知った姿が目に入った。


「お兄ちゃ、ん…」

「こんなとこで何しとるんっ…!」


こっちに走ってきたと思ったら、思いきや抱きしめられる。

いつものことながら苦しい。

背中を少し叩くと離れる体温。彼は息を切らしていた。


「こんなとこで、こんな時間まで何しよったん?」

「小泉と「なぁ、」


遮られた声は、いつになく低かった。


「なんでこうやって俺を困らせるん…?」


震えた声と身体、鼻をすする音で彼が泣いているとわかった。

私に依存して離れられない哀れなお兄ちゃん。

顔が良くてモテるくせに私にしか興味の無い変わったひと。

私が言うことを聞かないとすぐ情緒不安定になってしまう、愛おしい人ひと。


「お兄ちゃんもおいで」

「学校なんて、何の用なん?」

「プール、入っとったんよ」

「あほか!ただでさえ身体弱いのに…!風邪ひいてまうやろ!」

「まあまあ、こっちきて!」


彼の手を引いて、来た道を引き返す。


「小泉と、ここで遊んだんか、?」

「そうよ」


彼は私の手を引いて、自分の中に閉じ込める。


「俺、そのうち君を殺してしまうかもしらん…」


私を抱きしめる力が強くなる。

あぁ、私からの愛情しか受け取れない、不器用で可愛いひと。


「ねぇ、お兄ちゃん」

「なん、」

「そんなに苦しいなら、殺してや?」

「は?なに言って「お兄ちゃんに殺されるんなら病気で死ぬよりましやからさ、」


私は緩められた手を自分の首元へ持っていく。

ぽたぽたとこぼれる彼の涙を見ながら、締め上げられていく感覚。どんどん体内の酸素が無くなって、息が出来なくなる。

薄れる視界の中、彼の涙を拭う。


「もう、私のために、生きなくていいんよ…?」






あーあ、

これで、お兄ちゃんは私から離れられなくなってまうね?

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