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次の日、学校に行くとパトカーが来ていた。

人だかりが学校の門に出来ていて、どうにか中に入る。


"ねぇ、プールで生徒が死んでたって本当?"

"なんか学校あんまり来なかった子らしいよ"

"制服のまま浮いてて、なんか羽根?みたいなのが散らばってたらしい"

"何それ怖っ!"


生徒たちの話に耳を傾けると、容易に想像できた。でも、信じられなかった。あまりにも、天使ちゃんと聞こえてきた話が合致していたから。

プールに向かって走った。 人だかりを掻き分けて掻き分けて、警察の人も振り切って、中に入った。


「っ……天使、ちゃん……?」


目の前には、昨日の制服姿のまま、羽根と一緒にぷかぷか浮かぶ天使ちゃん。

身体の力が抜けていくのがわかった。


「君!勝手に入っちゃダメだろ!」


大人に抱えられて、外に出される。


「あの子、多分虐待されててっ!!昨日も連絡あって!だからっ……だから……!!」 

「話は後で聞くから」


頭の中はぐちゃぐちゃで、昨日の事がグルグル巡って、自分でも何を言ってるのかわけがわからないし吐き気がした。


----いきたないなぁ……----


君は一体どういう意味で言ったんだろう。

行きたくないなぁ?生きたくないなぁ?

どっちの意味だったんだろうか。

もしかしたら、彼女なりのSOSだったのかもしれない。


「彼女の顔を最後に見せて貰えませんか……!お願いします!」


何度も頭を下げて、担架で運ばれる彼女の顔を見ることが許された。


「天使になれずにプールに落ちるなんてやっぱ人魚だったんかもな……」


昨日の彼女の言葉を思い出しながら、彼女の濡れた頭を撫でた。


「綺麗だね……」




彼女は本当に翼を折られた天使だったのかもしれない。



fin.

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天使になれなかったあの子。 @omajinai__

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