第5話 イブラヒム

初めてのタイの初日が終わり、2日目の朝が来た。

昂った気持ちのせいか長くは眠れず朝の9時くらいには起床していた。やる事も決めていない旅なので、まずはコンビニへ向かう。カオサンロードにはセブンイレブンが沢山ある。宿のすぐ隣にも。水と菓子パンのようなものを買い部屋に戻り食べる。美味しくはない、今でも思うが、日本の食べ物は世界一だ、コンビニに売っている物も大概は美味しい。タイのコンビニで美味しいものは作ってくれるコーヒーとその場で焼いてくれるホットサンド、店内でグリルしているソーセージだ。皆さんにおすすめしたい。

軽く朝食をとった僕は安宿を探すためにチェックアウト、カバンを担ぎ外へ出た。朝のカオサンロードは人も屋台も少なくお店もあまりやっていない。ここで安宿は寺裏と呼ばれるエリアにあるということは調べていたので、そこへ向かう。なんて事はない歩いて5分でそのエリアへ行けた。カオサンロードの警察署からバーガーキングへ、そこの交差点を入った場所が寺裏だ。

L字になっている通りで、長さは700mくらい1階がレストランになっているゲストハウスやホテルが立ち並ぶ。値段を見ながら何件か回る、最終的に決めたのが「marryV」と言うゲストハウスだった。後で知るのだが、バックパッカーに有名な安宿だ。当時1泊200バーツ、一応個室だがエアコンは無しシャワーとトイレは共同でしかも水シャワー。贅沢を言えない貧乏な僕は深く考えずチェックイン、とりあえず3日間の滞在にした。部屋は6帖程にベッドのみの独房みたいだ。天井には大きなファンが回っていた。未だに覚えているが部屋番号は013、不吉な数字だなーなんて思いながら荷物を下ろした。

宿も決まり、寺裏を散策した。色々な店がある、カフェやレストラン、様々な屋台に古本屋。洗濯屋や少し奥の裏にはムエタイのリングがあったりマッサージ屋さんがあったりとバラエティに富んでいた。流石タイの玄関口、バックパッカーの聖地だった。

昼頃に電話が鳴った、そう昨晩知り合ったエジプト人、イブラヒムからだ。カオサンロードで会おうと言われやる事もないので待ち合わせをした。

イブラヒムに昨日はどうだった?と聞かれたので女に1500バーツ払ったと話すと高過ぎると言っていた。まぁそうだろう。

さて、イブラヒムとはカオサン滞在中はよく会って遊んでいた。エピソードは沢山あるから少しづつ書いていくのだが、まぁコイツはとりあえずアジア人女性が好きだった。それもタイではなく中国、韓国、日本。それは何故か?世界的に見て中東の男はモテない。これに尽きる。差別的かもしれないがこれは本当の話、決して悪口ではない。

イブラヒムはまだマシだったが、中東系の男性は大体太っていて、禿げている、髭もモジャモジャで体毛も濃く肌の色も褐色だ。これは世界的な美的感覚からはかけ離れている。そりゃあイケメンな中東系もいるだろうが、90%はそうなのだ。いわゆる白人女性から見ると人種的に中東系はまず眼中に無い。タイ人女性も見た目的に除外する。そうすると消去法的に中国韓国日本の女性にしか相手にされないのだろう、その3国だって別に中東系が好きなんて人は少ないだろうけど、人種的な意識は白人に比べて無いし、割と対等に話を聞いてくれるんだろう。そんな中でエジプト人のイブラヒムは歪んだ恋愛観からアジア人女性が好きという結論に達していたんだろう。

僕に話しかけて来たのも、後でわかるがアジア人女性に近づきたいからだった。

地球上で1番ウザいと言われるエジプト人。イブラヒムは様々なところで僕を辟易とさせた。

ノープラン旅なのでカオサンロードにいた僕の1日は、昼頃に起床し、周りを散歩、ランチをどこかで食べホテルに戻り仮眠や読書、その後、夜にカオサンロードに出てイブラヒムと酒をのみクラブに行くと言うのが定番となっていた。

とにかくイブラヒムは女が好きだった。クラブでアジア人女性を見れば、声をかけてくれ!あれは日本人だろ?とか、少し日本語がわかるタイ人女性が僕と話したりしてると横から何だかんだ言ったりして正直一緒にいたくなかった。

日本語のわかるタイ人女性にはあなたの友達は嫌いだ、と言われたりクラブにいたアジア人女性達は露骨にイブラヒムを避けた。一緒にいる僕も同じように見られてるみたいで恥ずかしかったし、イブラヒムに利用されている様で面白くなかった。そんな形で最初のカオサンロードには2週間ほど滞在した。その中でも、運命的な出会いは3度程あった。

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