第3話 カオサンロード
ぼったくりのタクシーから降り立ち、初めてのタイ王国、カオサンロードに着いた。
時刻は21時くらいだっただろう、300m程の道の両脇を埋める屋台やバー、大音量で鳴り響くクラブミュージック。そうだ、これが僕の思うタイそのものだった。
ノープランな旅だったので、まずは宿を探す事にする。初めての僕はカオサンロードに面しているホテルを探し始めた。これも今となっては横道だったり寺裏だったりに安い宿はいくらでもあるのだが、右も左も文字通りわからないので目に入ったところに空き部屋があるか聞きにいく。
何軒か断られ、やっと一泊800Bの宿をに辿り着けた。これも貧乏バックパッカーの僕は高いなぁと思いながらも初の宿を取れたことに安堵した。
今思うとまぁまぁな宿だった。広いし綺麗だ。お湯のシャワーも出る。荷物を下ろしシャワーを浴び、高鳴る胸を抑えられずにカオサンロードへ飛び出す。
とりあえずは夕飯だ。今でも同じなのだが僕は旅先でチェーン店と高そうなレストラン、観光客向けの店には極力入らない事にしている。旅とは経験なので、なるべく地元の人々と同じ物を食べ、同じ空気を共有する事にしている。したがって初のタイでもまずは屋台だ。と言っても観光地のカオサン地元民なんて皆無だ。屋台も外国人しかいない。
とりあえず適当にクイッティアオ(タイ風ラーメン)や春巻きでお腹を満たす。味は普通も普通で拍子抜けだ。元来、お酒はあまり強くないし、1人では飲まないのだけれどタイの気候や気持ちがそうさせたのかチャーンビール(ローカルに人気のビール、安い)なんかも飲んでしまった。
小うるさい音楽がガンガンかかる中に1人屋台でビールを飲む。そこに声がかかった。
「Hey! friend! your japan?」
女の子なら良かったのだが、声の主は歳は同じくらいの男だった。
「Hello.I'm japan.」
無視するのも悪いなと答えてしまった。2人でビールを飲みながら少し話した。
コイツの名前はイブラヒム、エジプト人。後で調べた事だが、イブラヒムってのは預言者の名前でエジプトで人気があるらしい。そして、世界で一番ウザいと言われてるのもエジプト人だったのだ。それは後にわかる事となる。
少し話し、電話番号を交換した。イブラヒムは近くのゲストハウスに泊まっているらしかった。明日の昼に電話するよ!と言い僕らは別れた。
時間ももう2時は過ぎただろう、ホテルに帰る事にして歩いてすぐのホテルまで戻った。
ホテルのエントランスに女性が立っている。
この女性こそ、僕がタイで初めて出会った立ちんぼだった。
これも後に知ったのだが、カオサンロードにはタイで男性が期待するエロは皆無なのだ。健全なエロが欲しければスクンビットへ。
僕はタイならどこでもエロがあると思ってたが、カオサンロードは昔からレディボーイ(オカマ)が溢れていた。あえて、レディボーイを抱くためにファラン(白人)がカオサンロードへ来ると言う形が出来ているらしい。健全な日本人な僕は興味がないけれど。
立ちんぼの女性に声をかけられて、話を聞いてみる事にした。初めてで神経も昂っているし、気も大きくなっていた。だから何かしたかったんだ。日本人としては健全な思考だろう。
健全なはずの僕がその何年後にタイでレディボーイを2人くらい抱いてしまうのだが、それはまた別の話。
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