外伝50話 動き出すデモニュクス帝国・魔族連合国編 5

 アースティア歴1000年・西暦2030年・5月13日・午後13時15分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸東側地方・西太平洋地域・地球海洋諸国連合同盟勢力圏・日本列島・日本国・関東地方・千葉県・成田市・成田国際空港にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 


 バンコクを飛び立った デモニュクス帝国・魔族連合国内でも、上位の地位に位置して居るエルザとリリエの二人の含む、吸血鬼族とサキュバス族のチームで編成された6名から成る秘密諜報部隊の一行たちらは、間もなく日本国へと到着しようとして居た。



「『ピンポンッ!!!』本日は大日本航空旅客機へのご利用を頂き誠に有り難う御座いました。」


「当機のは間も無く、着陸予定の日本国・成田空港・第2ターミナルの5番ゲートへの到着と成って居ります。降りる際には、お忘れ物の無い様にお願い申しげます。」


「うーんんっ!!やっと着いたあああああぁぁぁぁぁーーーーーっ!!」


 大日本航空機株式会社の成田-バンコク間を繋ぐ850便の客室乗務員の一人である木暮美空に化けて居るリリエは、旅客機の狭苦しい座席での息苦しさから、目的地への到着の報せを聞いて、お客様が居るのも構わず、地の自分が出てしまい、ついつい思わず、大きく背伸びをしてしまった。


「ちょっとっ!美空っ!お客様の前よっ!」


「はっ!?・・・ごめんなさい。」


 エルザは、親友であるリリエの気の緩んだ行動を借り物の偽名で、呼びかける様なして、彼女の事を窘めた。


 隠密行動中である為に、周囲から怪しまれる様な不自然な行動や言動を言ったり取ったりする事は、借りて居る姿本人に直接的に迷惑を掛ける様な事はしては成らない。


 それがデモニュクス帝国・魔族連合国内での隠密行動を取って居る諜報者達に課せられた法律上の義務付けられて居るである。


 それなので拘束を解く際には、入れ替わった期間の記憶を魔法を使って本人達にコピーさせ、有る程度は、その後の日常生活の支障が無い様に、差し支えの無い様にして、本人へと私生活を返して居る。


 それに関しても、齟齬が無い様に借りて居る本人達も、気を使わなければ成らない。



 まぁ、それでもルーズなサキュバス族は、化けるのは得意だが、性格がズボラで、大らかな性格が災いして、思わぬ行動を取る事が多い。


 このフライト中は、吸血鬼族の者達が監視して居ないと、乗客へのサービス品であるジュースやお酒に手を出そうとしたり、魔法を使って、一人きりに成った客や乗務員の男性や機長達にまで、艶事的な意味でのつまみ食いと言う手を出そうとする始末。


 特に機内は、密室で、彼女達が、特に警戒して居る監視カメラが、無い場所でもある。


 墜落事故に成る様なヘマさえしなければ、転移災害の影響で、ファーストクラスの席の利用率は低く。


 この便のファーストクラスの席は、その殆んどが誰も居ないガラガラな場所なので、その気に成れば降りる空港の到着までには、二人くらいの男は喰えた筈である。


「ねえ、お兄さん、あっちであたしとお話しませか?そ・れ・と良い事を・・・・ねっ・・・」ってな具合にチャーム魔法で誘えば、魔法への抵抗力の手段も無い地球人の男ならば、あっと言う間にサキュバス族の毒牙に掛かるだろう。


 それをベシャリと手を叩いて、我慢を強いる監視をして居たのが、エルザとその吸血鬼族の部下達だった。



 機内放送から15分後、飛行機は無事に着陸し、6人は成田国際空港へと到着した。


 旅客機を後にしたエルザ達は、記憶知識を頼りに、大日本航空機株式会社の成田空港事業所の事務所へと向かう。


 大日本航空機株式会社・成田空港事業所とは?


 成田空港と近隣地域に在る事業所を拠点とする支店事業所の事で、簡単に言えば、受付業務や営業や整備班とその業務関係事業部。


 往来する社員達の寝床や勤務の管理等々と言った物と成って居る。


 その福利厚生の一環と業務上の都合から、本人達が希望すれば、成田空港近くの男子専用宿泊所と女子専用宿泊所と言う社員寮を兼ねた宿直寮が、空港近くの敷地に建てられて居て、其処を通いの住まいとする事が可能と成って居る。



 借りている野田絵里子達のスケジュール表では、2時間半の休憩を挟んで再びバンコクへと向かうらしい。


 今日は後3回ほどのフライトの勤務予定が有るらしく、今日の最終便を終えての宿舎は、成田市内の女子社員寮らしいが、このまま何もしないままにバンコクへのとんぼ返りは時間の無駄だと言える。


 エルザ達は、直ぐにでも姿を乗り換える相手を探し出す必要があった。


 だが、その前に客室乗務員としての仕事をこなさないと行けない。



 成田空港事業所の事務所へとやって来たエルザ達は、ふと目線の視界に入ったある者達が来て居るのを目掛けた。


「ただいま戻りました。梶間所長。」


「おっ?!野田君か?今戻って来た様だね?お仕事、ご苦労様。次のフライトまでゆっくり休んでくれ。」



 40歳の小太りの管理職をして居る成田空港事業所の所長である梶間忠夫が、一仕事を終えた、野田絵里子達の事を明るく出迎えてくれた。

 

「所で梶間さん、今日は何か在りましたか?」


「んん?ああ、君たちは空を飛び回って居るから、偶々聞く機会が無かったのかな?」


 エルザは野田絵里子としての記憶にも無かった事なので、初めて見る服装のとある6人組の女性達が居る事に、疑問に思ったらしい。


「まぁ、この手の話は不意に来る事だしね。此方としても、やって居る仕事が仕事だからね。」


「スケジュール調整の都合も在るから、空いた時にしか受け付けないからね。」


 エルザが疑問に感じたのは、事務所内の来客用の席に、人間族として年齢が年若い女性・・・・・・それも女子高生の6人組の子達が座って居る事だった。


 野田絵里子としての知識を吸収して居るので、職場に未成年者である学生が居るのは、とても不自然だと思ったから来る質問を梶間ぶつけて見たのであった。


「こんな異世界を超えるなんて災害に遭ってしまった時期でも、あの子たちの様な若者達の将来に向けてのアピールは必要だ。」


「我が社も将来は大きく飛躍するかも知れない。何せ、この転移災害で、競合相手だった多くの航空会社が激減した・・・と言うよりは消え減っただけなのかな?」


「まぁ何方にしてもライバルと成る様な欧米諸国や隣国様な国々の旅客機会社は無いからね。」


「それに文科省や都道府県の教育委員会からの要請で、将来なりたい職業や見て見たい会社なんて言われてる企業の普段の姿なんかを積極的に、公開して欲しいなんてお達しも来てしまったからね。」


「更に人員不足も見越して居るから、我が社としても、将来的に社員をもっともっと増やして行くと言う方針を固めて居るんだよ。」



「そんな理由から千葉や東京に茨城も含めて、関東地方近隣地域の学校から職場体験や社会見学会を開いて行くと言う事に成ったのだが、これが思いの外、希望する学校も個人希望者と言うのが多くてね。」


「そんな感じで、先にも述べたが、文科省からの要請で行われても居る。職場体験や社会見学会の一環として、今日は東京都の聖マリアンナ女子高等学校からの職場体験レポートでの見学会で、家の事務所に、女子高生達が来て居るんだよ。」


「そうなんですか?」とリリエが受け返す。


 そんな事は如何でも良いと思って、ついつい口走った感じでの空返事であった。


「初々しいですね。私たちにも、あんな頃がありましたわ。」


 素っ頓狂なボケた言葉を発してしまったリリエのフォローを素早くするエルザは、咄嗟の機転で女子高生時代を思い出すと言って、その場の会話を上手く誤魔化した。


「所で野田君。」


「何でしょう。すまないが20分ほど、あの子達の相手をしてくれないか?」


「私ですか?どうしてでしょうか?」


「実はな、現役の客室乗務員の現場の体験談を話すと言う事に成って居たのだが、それを担当する筈だった者が急遽、スケジュール調整の都合で、別の仕事で、これからシンガポールへと飛ばなければ、いけなく成ってしまったのだ。」


「其処で誰か代わりを探して居る所なんだが、君が頼まれてくれんか?そんなには時間は取らせないから。」


「なぁに、次のフライトは、代わりを入れさせる。断ると言うなら、他に当てが在るが、どうかな?」と梶間は、絵里子達の休憩時間を含めたスケジュール調整をしてくれるので、女子高生達の相手をして欲しいと頼み込んで来た。


「ええ、そう言う事でしたならば、喜んでお引き受けを致しますわ。」


「将来、あの子達が、私達の後輩たちに成るかも知れませんものね。」


 エルザは満面の笑みで答えるが、当然ながら本音の方は、ラッキーと思って居た。


 女子高生達と一部屋で一緒に成れば、そのまま彼女達を襲って、その姿を借りる等と言う事は、エルザ達には造作もない事だからだ。


 エルザはキャリーバッグをロッカールームに置くと、第三会議室で待って居る聖マリアンナ女子高等学校からの職場体験レポート見学会で、やって来た女子高生達の下へと向かった。


 ワイワイ、ガヤガヤと話す声が聞こえて来る会議室のドアの前で、エルザ達は頷き合う。

 

意を決してドアノブに手を掛けて、カチャリとドアを開けて中へと入って行く。


「失礼しますっ!!」と声がすると、女子高生達は一斉に私語を止めて、姿勢を正して、講師達である大日本航空機株式会社の成田空港事業所所属の客室乗務員である絵里子達が入り込むのを待つ。


「「「「「「こんにちはっ!よろしくお願いいたしますっ!」」」」」」


 会議室に入室したエルザ達は定位置に立ち、壇上を挟んで女子生徒達と向かい合うと、女子高生達は一斉に挨拶をして来た。



 エルザ達の入室と同時に挨拶をして来る事から見ても、本当に教育の行き届いた規律の良い子達である。



 エルザ達の方は、やや、びっくりしたが元気の良い挨拶だった。


「懐かしいですわ。私もあの子達の様な頃が在りましたわね・・・・・・・・」と思わず学生時代の事を思い出すエルザ。


 聖マリアンナ女子高等学校は私立学校で、中学校から大学までを一貫してエスカレーター式で進学できるお嬢様学校でも有るが、一般入試も受けられる。



 明治初期にキリスト教系の宣教師等が寄付金で開校した歴史ある女学校であった。



 学費はやや高いが、在学中の生徒たちと言うのは、とても知性と気品溢れる淑女を社会へと排出すると評判で有名な所でも在る。


 今日は女性が大いに活躍して居る職場との一つであり、此処に来た子達が、レポート課題として取り上げた航空会社客室乗務員の活躍と題した見学先として、大日本航空機株式会社を職場レポート見学会先として選んだ生徒達がやって来ていた。


 会議室の壇上を挟んで6人が向かい合い、代表である野田絵里子の姿を取ってるエルサが講師代表として挨拶を始めた。



「はい、こんにちはっ!」


「大変に元気の良い生徒さん達ですね。職場では何よりも挨拶は大切です。職場の人達にも、お客様にもです。」


「聖マリアンナ女子高等学校の1年生の皆さん。」


「改めまして、こんにちは、そして初めまして、今日は数ある職場の中から当社、大日本航空機株式会社・成田空港事業所に来て頂いて、有り難う御座います。」


「私は皆さんの講師をさせて頂きます、第6班のチーフリーダーを務める野田絵里子と申します。」


「短い間ですが、今日は宜しくお願いします。」


 女性生徒さん達は真剣な表情で、野田絵里子に化けて居るエルザの挨拶を聞き入って居た。


「今日は特別に、将来は有望な皆さんの為に、職場の体験談を話すのは、私一人の予定でしたが、今日は予定内容を変更いたしまして、幅広いお話をお聞かせしようと、私の職場の同僚の皆さんも一緒にお話をさせて頂きます。」


 そう、女子高生達への講義は、本当は絵里子一人で良い筈だった。


 だが、エルザは所長である梶間に対して、吸血鬼族特有の力であるブラッディアイと傍らに居るリリエ達サキュバス族が得意として居る魅了魔法のチャームを用いて、そっと囁く。


 前途ある将来有望な若者達の為に、第6班の6人で講義がしたいとね。


 そんな事をされた梶間は、何も知らないまま意識誘導され、只々頷くしか無かったのである。



「それでは皆様に、ご挨拶を・・・・・・」とエルザに促され、自己紹介の挨拶も兼ねて借りて居る姿の名前を名乗って、次に聖マリアンナ女子高等学校の1年生の子達も名前を名乗って行った。


 

 自己紹介を終えると再びエルザが講義の為に壇上を挟んで話を始めた。


「それでは、これから講義の本題を始めたいと思います。」


「「「「「「・・・・・・・・・・・・」」」」」」


 いよいよ本番と成ると聞いた女子生徒達は、益々講師であるエルザの立ち姿を目を輝かせて見詰めた。


(ふふっ、こんな真剣な眼差しで見つめられては、何だかこの子達を我が国の国益の為に利用してしまうのが悪い気がしますわ。)


(ですが、これは貴女達の将来・・・・我が国と日本国の友好の為にも成りますの。ごめんなさいですの。)



 エルザは純真な心の眼で見つめられ、これから目の前の居る女の子達の姿を利用する為に借り受ける事に対して、罪悪感を覚えてしまう。


(エルザ・・・・)


(分かって居ますわ)


「それで正面に居る私達に注目して下さい。」


「はい。」


「人の話を聞くには、相手の目を良く見て聞くのが基本です。」


 最もらしい事を言ってエルザ達は、魔術を掛ける相手をより良く掛かる様にするべく、女子生徒達の視線を更に自分達へと誘導させた。


「それでは・・・・・・」


 エルザは最後に「(ごめんなさいですわね。)」とボソッと謝罪の言葉を呟いて女の子達に術を掛けて意識を奪った。


 その後に女子生徒達はパタパタと座って居た席の目の前に置かれた机にうつ伏せに成って倒れ込んで行く。


「さぁ、手早く、やりますわよっ!!」



 念話魔法と言う魔法を用いて、どの子に成るのかを決めて置いた彼女達は、手早く目当ての女の子の下へ向かい、それぞれの方法で相手の姿を写し取った。



 エルザは聖川恵梨香と言う、この場に居る女子生徒達の中では背が高く、スマートですらりとした背格好であり、艶やかな黒髪のロングストレートヘアーで明るそうな顔立ちをした女の子で、この見学会メンバー中で、班長をして居るとても利発そうな子を選んだ。


 率先してグループ集団を率いて居る事が、エルザの琴線に触れたらしく、彼女の姿と身分を借りたいと思ったらかだった。


 エルザは恵梨香の右首筋に牙を立てて生き血を啜る。


「キシャアアアアアアアアァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーっ!!」


 多少の奇声やガタゴト等の物音は、サイレンスと言う防音魔法や人払い魔法に加え、鍵はロックと言う魔法で閉じられ、例えマスターキーや強引な方法を用いたとしても扉は開かない様にして有るので、決して外からエルザ達の居る会議室へは入る事が出来ない様にしていた。


 解除の方法は魔法を掛けた相手よりも高位の腕前と魔力を有する魔術師が解除魔法ディスペルの魔法を掛けなければ成らない。



「じゅるるっ、じるるっ・・・うんんっ・・・・・」


 生き血を啜り、エルザの姿が段々と野田絵里子の熟した大人の女性から、やや幼く成った顔立ちのモノへと変化が始まり、背丈も160センチから153センチまで縮んで行く。


 バストサイズも87センチから、更に萎んで83センチへと変貌して行く。


 30歳を過ぎて少しだけ目立って居た手足やお腹周り脂肪も無く成り、ほっそりとした背丈を持った身体付きへと成り代わり、肌荒れが目立って来た顔や手足の皮膚も瑞々しさが、とても際立って居た。


「んぐっんぐつ、ごくごく・・・・・・ふうっ・・・・・・ペロリ・・・・」



 最後にボブショートヘアースタイルだった髪型はサラサラしたロングストレートヘアーへと生え伸びた瞬間に首筋から口を離して、最後に髪を整えるべく右手で掻き分けて行った。


「はぁはぁはぁ、ふぅーっ・・・・・・ううっ、うーーーん。」


「流石に変身してまで、素体とした本人の具合の悪い部分まで真似するのは堪えますわ。」


 どうやらエルザは野田絵里子の代謝的に衰えた所の部分まで、余計な再現したせいで、年を取った人間に良く在る様な肩こりや肌荒れ等を起こす様な症状に壁々して居るらしい。


 エルザの様な吸血鬼族には、その様な悩みは無いから、その様な症状に悩まされるのは、正直言って余計に面倒くさいらしいのだ。



 エルザの変身が終わる頃には、他の者達もそれぞれの相手から姿を映し終え居た。


 リリエは、童顔とショートカットヘアースタイルと小柄な背丈と体型のロリ巨乳な風貌を持った女子高生である金本奏多と言う女の子に、変身して居た。


「えへへ、やっぱりバストは最低限これくらい豊満で無いとねえええぇぇぇーーーーーっ!!」


 リリエが日本に来る際に化けて居た木暮美空は、ショートカットヘアーして居るAカップであった為に、サキュバス族の彼女に取っては不満の在るボデイスタイルだった。


 金本奏多は身長が147センチの背丈と小柄な体型で童顔のDカップのバストサイズを誇って居たので、背丈は足りないが、その若い年の割には、スリーサイズ周りの発育が良い女の子であった。


 それからエルザ達は、客室乗務員としての制服を脱ぎ捨て、女子高生達が着て居た服装を脱がして行き、彼女達はブレザー制服の服装へと着替えた。


 そして・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「・・・・・・ううっ、ううーん・・・・・はっ?」


 バンコクで拘束され、意識を失って居た野田絵里子達は、意識を徐々に取り戻して、約1日ぶりに目覚めた。


「野田絵里子さん。」


 絵里子の目の前には、見覚えの無い女高生達が立って居た。


「えっ?」


「本日は有り難う御座いました。」


「「「「「有り難う御座いましたっ!!」」」」」


「えっ?えっえっ?」


 大声で謎の女子高生達に、お礼を言われて居る事に困惑して居る絵里子達。


「では失礼します。」


「「「「「失礼しますっ!!」」」」」


 此処での見学と講義の日程を終え、講師たちに挨拶を済ませた女子高生達はさっさと会議室の外へと出て行ってしまった。


「えっと・・・・・・・・」


「野田先輩っ!一体、私達は・・・・・・」


「ううっ、何だか頭の中に、霧が掛かって居る様なモヤモヤとする感じがするわね。」


「はい。今まで私達は何を・・・・・・・・・・・」


 同じ定期便に乗って働く第6班の後輩の一人が、今何が起きて居るのが分からずに、年長者てある絵里子に疑問をぶつけて聞いて見て居た。



「・・・・・あっ、そうよ。バンコクから帰った私達は、確か梶間さんから、聖マリアンナ女子高等学校からの職場体験レポート見学会の講師を頼まれたんだったわ。」


「ああ、そうでしたね。」と納得する同僚が、思わずポンと手を叩いて居た。


「でも絵里子さん。さっきまで私達は・・・・・・」



「バンコクから仕事帰りで、きっと疲れて居たんでしょうね。ちょっだけ意識が飛んでしまった様だわ。」


「ですね。あの子達には、みっともない所を見られてしまいましたね。」


 等々と魔法でコピーされた記憶と意識が飛んで居た記憶の帳尻なんかを合わせて行く6人。


 有る程度の帳尻が合わせ終わると、自分達はちゃんと仕事をこなして、女高生達の講師を立派に務めたと言う結論に至る。


 だが、最後は失敗したなぁ・・・・と猛省する部分が有った事も付け加えて置く。


 人間の記憶とは、所詮はそんなモノである。


 古くなったり、咄嗟に記憶した記憶と言うのは、有る程度は改ざんされて、どうでも良い感じに仕上がって行くのであった。



 こうして、エルザ達は、日本国の首都である東京都への潜入に、悠々と成功したのである。


 このあと彼女達は東京駅で解散し、それぞれの人物から抜き取った記憶から潜伏先とする自宅へと入り込むべく、東京へと向かうのであった。

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