外伝48話 動き出すデモニュクス帝国・魔族連合国編  3

アースティア歴1000年・西暦2030年・5月6日・午後21時30分・アースティア世界・ユーラシナ大陸東側地方・西太平洋地域・地球海洋諸国連合同盟勢力圏・東南アジア地方隣国・元オセアニア地域・パプアニューギニア独立国・首都・ポートモレスビー市にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




 デモニュクス帝国・魔族連合国の今現在の国内情勢は内戦状態であり、その原因と成って居のが、病で倒れた前魔皇帝である魔人族の王でも在ったルシファルダー・ザタニキア・パンデモニウムである。


 彼は デモニュクス帝国・魔族連合国に善政を敷いた賢王として多くの魔族諸侯部族から支持を獲得しつつも同時に多く信頼をも得て、300年もの長期政権を維持して来た。


 だが、それはある日突然に崩れ去ってしまう。10年前に病を患ってしまったルシファルダーは、次代の魔皇帝を指名する事無く息絶えた。


 魔皇帝に成るには、先代の魔皇帝からの指名を受けるか、魔族諸侯部族からの推薦や信任の7割を得て居るか、もしくは魔皇帝選挙によって国民投票で当選するかの何れかで決まる事に成って居るのである。


 魔皇帝指名制度の殆んど場合は、先代魔皇帝の指名引継ぎか7割の委任指名決着が着くのが多いのである。


 しかしながら、今のデモニュクス帝国・魔族連合国は、先代魔皇帝が時代の人選を指名する事無く病没した為に、今回は魔族諸侯部族からの推薦や信任の7割を得た形である人物が選ばれた。


 それは先代の魔皇帝と同じく魔人族で、彼の魔皇帝ルシファルダーと同じ血族でもある若き魔人族の世代てもあったヘレナが選ばれたが、それを快く思わない一派が反乱を起こしたり、はたまた独自路線を貫く為に新たな国家として独立宣言をして、彼女に盾突いて居るのが魔族国内の現状であった。


 そんな国内情勢である為に、新魔皇帝ヘレナは外界との交流を限定的な物へと制限を課した状態とし、国に取って最低限に必要な外国との外交交渉と貿易呑みの限っての交流に制限していた。


 それ故に、外からやって来る情報は限定された物が多く、外交と貿易権を行う権利を魔皇帝自身が認めたとされる外交易特権認可状が渡された者以外では、外国への渡航許可すら下りるのも難しいのである。


 そんな厳しい渡航制限と外交・交易制限が課された中で、ヘレナは魔皇帝派閥の一角にして、親友同士である吸血鬼族の女王にして魔族社会では公爵王家とされて居る一族の当主のエルザベート・ブラド・ツェペシュ。


 それと淫魔族の片割れでの種族であるサキュバス族の女王であり、魔族貴族諸侯社会では侯爵家の地位に在るリリエール・リリン・キュバスの二人と直近の配下4名と共に、まだまだこの異世界・アースティア世界でも、謎多き転移国家でもある日本国へと向かわせたのである。



 その目的は日本国が如何なる国で、自分達魔族に取って敵か味方なのかと、万が一に外交交渉と成って友好国と成った場合は、どう付き合って行く事が有効で、尚且つ自国に有利な利益手に居られるように成るれるのか?を探る為でもあった。


 エルザとリリエの二人は、邪神戦争後以来、最も親しくして居る隣人国であるアセニア亜人連合同盟諸国の大国たるアルブヘイム王国の最南端地域であるダークエルフ領を経由して、今はまだ地球系国家群の政府が渡航禁止として居る勢力圏線へと侵入する。


 そして、その事を誰にも気付かれる事無く、彼女達一行は、地球人勢力圏内の東端地域の国家で、元オセアニア地域でも在った、パプアニューギニア独立国の首都たるポートモレスビー市への侵入に成功する。



 其処で6人は、見た事も無い、異界国家の街並みに、戸惑い驚きながらも、地球系転移諸国へと潜入偵察をする為に、絶対不可欠な擬態変身する為に必要不可欠であり、素体姿と成る異界人の女性等を物色して行く。


 彼女達は異邦国の町を彷徨いながらも、ポートモレスビー市内の中心部に足を進めると、其処で・・・とあるホテルを見つけ出し、其処へと立ち入り居る。


 透明化魔法のイリュージョンを用いて姿を隠しつつ、擬態するのに、丁度良い年齢と見られる年若い女性を求め続けて居た所、一階のエレベーターの前で、宿泊部屋へと向かう白人系アメリカ人のOL女性の一団を見かけた。


 そして、エルザとリリエの二人は、その女達を獲物と定めて後を付け、遂に異界人の人間族の姿を手に入れる事に成功をしたのであった。



 エルザが、エリー・ペッシュと言う白人系アメリカ人のOL女性を襲い、その姿を得て拘束の魔法袋へとエリーを拘束し終えた直後の事である。


コンコンとドアをノックする音が聞こえて来る。


「来ましたわね。」


 エルザは誰に会っても良い様に、裸で有った格好からエリーの持ち物であった着替えの下着やネグリジェとカーディガンを羽織って露出を抑えた服装で、外からの客を出迎えた。


 『カチャリ』と言うドアノブを開く音を立てて、部屋のドアを開くと、ラフな寝間着を着込んで居る金髪の白人女性達が現れた。


「首尾は?」


「ええ、上々ですわ。」


 出迎えた相手が、無事にその姿を擬態変身した同胞達であると分かると、エルザは占拠した自室へと仲間達を迎え入れた。


「それにしても、リリエは相変わらず物好きですわね。その姿とボデイスタイルは・・・・・・」


 エルザは呆れ顔でダイナマイトボディ姿を手に入れたリリエを見て呆れていた。


「うふっっ!!良いでしょう、エルザ。この姿なら男達を喰い放題っ!!」


 大人びた顔付きと容姿から来る雰囲気を持ったエリノの姿が、リリエの普段使いの軽い口調で話すと、何だか台無しである。


 サキュバス族はインキュバス族と違って、子供をたくさん産む事に一途な事と、男との一夜を楽しむ事が大好きな種族なのである。


 ある意味・・・下ネタ好きで、性欲に忠実な女性達なので、性的な事柄にオープンな所が多い。


 これは本当に良い配偶者に出会うと落ち着くとされて居るが、年若いリリエは、そんな恋に出会う事なんて、まだまだ先の事の様だった。


 サキュバス族は結婚したいほど好きな相手と結ばれると、その相手が死別するまでは、浮気の虫が騒ぐことは無いと言う、独特な種族の側面を持って居る。


 詰まり、たくさん男との関係を持ちたがるのは、良い相手と出会うための品定めをしたいと言う、生態的な本能から来る物であると言えるだろう。



 インキュバス族はその逆で、イケメン系の草食男子が多い。


 種をばら撒く事より、ナンパしてその相手の反応を良く見て品定めをしてから、本番行為に及ぶのが種族生態らしいが、魅了した相手との複数の関係を持ちつつ、更に種まきをする事も有るしいので、結局は繁殖欲がサキュバス族達よりも若干劣る程度に過ぎなと言えた。



 何にしてもリリエは、サキュバス族の中でも、群を抜いて欲望に忠実な性格の一人と言う事だけは確かな様であった。


 そんな親友同士何気ない会話をしながら部屋へと入った6人は、ベッドや椅子に腰を降ろして座ると、今後の事に付いて話し始めた。


 最初に会話の口火を切ったのはエルザだった。


「さて、上手いこと擬態する姿を手に入れましたけど、此処から本番ですわ。」


 その場に居る全員が頷く。


 エルザは吸血(ブラッディ・ドレイン)能力をした際に、その相乗効果で手にしたエリーの記憶知識や職業技能を自身の脳内と肉体にコピー記憶をさせて身に着けていた。


 今ではエリーの様に振る舞うたげでなく、スマホの操作や車の運転や昔の思い出の中の出来事や身に付けている技能資格を自在に使ったり、思い出したりする事が可能と成って居た。


 リリエ達サキュバス族組の面々も似た様な特殊能力で、擬態した相手の記憶知識や職業技能を習得して居た。


 まぁ、この力には欠点が一つだけあり、覗き込まれた相手が本当に知られたくない事柄に関しては、絶対に覗き見る事が出来ない様に成って居た。


 それは自我意識が無意識にその記憶知識の部分だけ、強力なガードプロテクトブロックを掛けられて居ると説明して置く。


「さて、手にした異界人の女性達の知識から、異界国家の法律上では、外国へと渡航するには、このパスポートと言う政府発行の旅券を持ち歩かないと、外国への渡航は、絶対にダメと言う決まりと成って居るらしいですわ。」


 エルザは、サッと皆の前でエリーの顔写真の入ったパスポートを開いて見せて、異界国家の外国旅行のルールを説明する。


 この場に居る皆は擬態した相手から吸い取った記憶からその知識は知って居るが、それを踏まえて、これから如何するかの本題に入ろう言うものである。


「何だか、めんどくさそうだね。」


「ですが、外敵の侵入や防疫と言う面から見れば、この法制度は、とても有効的な手段とも言えますわ。」


「でも、あたしたちには無駄と言っても良いよねっ!違う姿に化けて、その姿の相手が持って居たパスポートを使っちゃえば検問なんて無意味だし。」


「ですが、今回の一件で、私たちのして居る事がバレれば、今後の外交交渉では不利な事に成りますわ。」


「みんなには、その辺の事は、十分に注意してくれませんと・・・・・・」


「そんなヘマをあたしがするとでも思う?」


「貴女は欲に忠実で、遊びが過ぎますわ。その辺りを心配して居ますのっ!」



「大丈夫っ!!大丈夫だってっ!!」



「はぁ~、本当に頼みますわよ。」



 エルザは親友の言動やこれまでの行動に呆れつつも、この議題の話を先へと進めた。


「パスポートを利用して他国へと進むのが、異界国家の国家同士の決まりと成って居るのは、先ほどから説明しましたわね。」


「ですが、このまま潜入偵察先の日本国へと入るのは不味いですわ。」


「我らの姿が日本人ではない事と、この身分の者達の生活の中での都合が在るからですね。」と手を上げて言うのは、エルザが引き連れている吸血鬼族の女性の一人が答えた。


「その通りですわ。この姿は借り物ですわ。借りた相手の都合が悪く成る様な事態は、絶対に避けなければ成りませんわ。」


「そして、日本国へと潜入するのなら、日本人の姿を手に入れる必要が有りますわ。」


「其処で、私たちは幾つかの国を渡りながら国外に出て居る日本人女性と接触。出来れば帰国予定の年若い成人女性たちが揃って居るか、同じ乗り物で帰路に着いて居る事が有れば、更に良いですわね。」


「その者の姿を手に入れて入れ替わり、日本国へと入国。」


「日本国内では多数の重要性の高い情報や彼の国に付いての諜報活動を実施して、帰りは似た様な手段で国外へと出国し、再び海上から空を飛びながらアセニア亜人連合同盟諸国領を経由して帰国。」


「そして、その帰国時期は、私たちの仕事の出来具合と世界情勢の様子を見ながら、帰国の時期を決めて、秘密裏に帰ると言う事に致しますわ。」


「これが私達が此れから行う日本国潜入偵察作戦の大まかな計画の概要と成りますの。」


「出発は何時にするの?」とリリエが聞く。


 如何やら今から擬態した姿を使って遊びたいと言う心の虫が騒いで、うずうずとして居るらしいから、全くこの娘にも困ったものである。


「明後日ですわ。私が擬態の為に拝借している素体のエリーさんの予定では、二日ほどバカンスを為さる予定の様ですわ。」


「じゃ・・・・・・」


 リリエはバカンスと聞いて尚更喜び、その顔がニヤリとほくそ笑んで居た。


 ああ、サキュバス族の本能が更に疼いて騒いで居るらしい。


「・・・・・派手にしないで下さるのなら、多少の事は目を瞑りますわ。」


 エルザは、サキュバス族の行動を制御する為にも、妥協したらしい。


 例えダメだと言っても駄々を捏ねられるし、隠れて遊ばれるのも問題だ。


 何処に居るのかさえ、しっかりと把握して居る方が監視と管理もし易いと妥協案である様だった。


「やったー!じゃ早速・・・・」


「お待ちなさいっ!!今夜は我慢ですわ。」


「えーっ!!」


「せめて貴女が擬態して居るエリノさんの口調や仕草が、最低限に出来る様に成ってから表に出なさいっ!」


「ええーっ!!そんなーっ!!そんなのめんどくさいよおおぉぉーーーーっ!!」


 リリエは嫌そうな顔付でエルザの外への外出条件に文句を言う。


 これはボロを出さない為の対策だった。


 少なくともタイ王国と言う国の首都であるバンコク市へと辿り着くまでに、休暇を入れて、約三日。


 

 エリー達の姿を使って乗り換える姿格好を探し出すのに、最短で四日以上は、このままの姿なのだ。


 その間に彼女達の取った行動は、エリー達がした事に成ってしまう。


 擬態裏工作活動や諜報偵察活動は、借りた身分を如何なる事が在っても守り通して、決して個人身分を傷付けないのが、彼女たちの様な者達の間では、暗黙のルールと成って居るのであった。


 借りた者は綺麗に返しましょうと言う決まり事を守らせようと、最低限の監督をするのが己の役目と自負して居たエルザであった。


 それから三日、ポートモレスビー市内では謎のグラマーでダイナマイトボディ姿の美女とその友人たちである白人女性達が、何人かの男達と街中の安ホテルで一夜を過ごして、気が付くと消えていると言う噂が立ったと言う。


 その夜の相手をした男達は、足腰が7日ほど立たなくなり、栄養失調を起こして病院で二週間ほど入院したらしい。


 リリエは諜報活動の合間にきっちりと、男遊びして楽しんだらしい。


 その際には、何時ものノリの軽い感じの口調と立ち振る舞いでは無く、男を手玉に取る上品で、母性愛に満ちた感じの大人の余裕を持った女性の立ち振る舞いを完璧に演じて、見せたと言うのだから、これは侮れなかった。



 2日後、6人は日本国へと向かう為に、その経由地であるタイ王国の首都であるバンコクへと向かったのだった。

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