外伝45話 新たな時代へと動き出す亜人国家っ!アセニア亜人連合同盟の者達っ! 2

 アースティア暦1000年 ・西暦2030年・7月上旬某日・アースティア世界・アセニア地方・アセニア亜人連合同盟勢力圏・ユグドラシル大陸・アセニア亜人連合同盟加盟国・アルブヘイム王国・首都・王都ユグドラシル市・アセニア亜人連合同盟総会議会場にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


反対されたメリーは、二種族の代表達を見詰めて考えを巡らす。


(先ずは予定通りの反応ね。)


(ジャパリンランド獣人部族連合国は、その成り立ちからアースティア世界内に措いて、いの一番にローラーナ帝国を始めとする。ヒト族至上主義の観点から迫害を受けて来た歴史が在るもの。)  


(特にユーラシナ大陸から手酷く追い散らされり、奴隷狩りに遭ったりして来た事から、ローラーナ帝国には、戦争では絶対に勝てないと洗脳するかのようにして、先祖代々子々孫々に至る現在まで、脳裏に刷り込まれる様にして刻まれてしまって居る。)


(正面切って戦うなんて論外中の論外。問題の先送りをする事で、少しでも生き延びる事を優先するのが、彼の国に取っての国是。)


(今じゃローラーナ帝国と戦って居る獣人族の同胞達は、全体の3割程度で、それも国外の部族や流浪して居る者達だけ、今この場で主戦論を説いても、相手にされないのは、最初から分かり切って居るから、始めから彼らの事は、当てにはして居ないわ)


 獣人族の現状に付いての考察が終わると、続いてドワーフ族達の考察に移るメリー。


(ドワーフ部族連合国は、四方八方に手広く商売が出来れば、それで良い商業工房工業国で、ただ単に商売をして儲けるのならば、死の商人とも言うべきやり口も厭わない。)


(武器・工芸品を高く買い取ってくれるローラーナ帝国は常客であり、お得意様。それと同じく、反帝国同盟諸国も同じくお得意様で、何方が転んでも損は無いが、あからさま反帝国同盟諸国との癒着やローラーナ帝国との敵対的な行動は避けたいのが本音。)


(あの様子から見ると、ローラーナ帝国の奴らに釘を刺されて居ると見るべきね。)


 基本的にドワーフ族達は、鉱山採掘・工房経営・工芸品生産・そして商取引きの4つから国家経済基盤が成り立って居た。




 ローラーナ帝国に反発して居る者達が多い中で、ドワーフ族達の総本山にして元締めであるドワーフ部族連合国は、中立地域として、永続的にローラーナ帝国と商売が出来れば良いし、序でに戦争が長引いてくれる事で、反帝国同盟諸国との商取引が出来る事で得られる利益も、国家としては、小遣い稼ぎくらいには、成ると思って居るのだろう。


(だが残念ね。時代の潮目は日本国とその同盟国が現れた事で変わったのよ。)


(ドワーフ部族連合国の連中は、これから見せる物を見ても、平然として居られるかしらね。)


 メリーはこの会議での主導権を確かな物とするべく、妹であり実家のサクラ・マーメリーア部族長でもあるサリー・サクラン・ブロッザムを通じて、日本政府から交渉材料となる道具を人魚族の部下達に、ある物を運ばせた。


「アルゴ殿、レオン殿が懸念して居られる事は、最もかとは思いますが、私は何も何の考えも無しに、異界国家との国交樹立を成し遂げたいとは、思っては居ませんわ。」


「実家のサクラ・マーメリーア部族長務めて居る妹のサリーから、異界より現れた二ホン国が接触して来たので、相談に乗って欲しいと言われ、久方ぶりに実家に帰省しましたが、其処では二ホン国の使節団が自国領内の亜人族地域の視察をしにやって来て居ました。」


「居合わせたのは偶然でしたが、政府に近い二ホン国省庁の官僚の方々と会談が持てた事で、彼の国の実情が少しばかりですが、この私にも日本国内に付いての実情が分かりました。」


「ですが、その実情を皆様に資料として、お手元に手渡して、私が口頭にて、ご説明をさせて頂きますと、皆様のお時間をかなり割いてしまいますので、私はある物をご用意させて頂きました。」


 人魚族の女性達が、宅急便の宅配業務等で使わて居る日本製の手押し台車を使ってプロジェクターの機材一式を運び入れ来た。


 その中にはサクラ諸島で、将来は家電量販店屋さんをするんだと、意気込み、今は大手企業家電量販店メーカーから派遣されて来た講師と勉強して居るサクラ・マーメリーア部族の女性が2名ほど、機材を設置とそれらを取り扱う為に、アセニア亜人連合同盟総会議会場へと同行して来て居た。


 サクラ諸島のサクラ・マーメリーア部族の人達は、文明社会と接触した事で、職業進路の選択肢が大幅に増えて居た。


 伝統的な暮らし文化を残しつつも、急速な都会化と言うよりも、島の町化が始まって居たのである。


 今は陸自隊員と文科省・農水省・経産省なんかを経由して派遣された技術指導員に由る職業訓練が始まって居る。


 日本政府はサクラ諸島を始めとする亜人族地域の人達の現代社会での自活と自立を無理なく出来る様に、しっかりとした支援制度を作って、公費の予算も付けて居るのであった。


 そんな電化製品の販売店に必要なスキルを身に付けた、サクラ・マーメリーア部族の女性達は、覚えたての知識で見事にプロジェクターを組み立て行く。


「何なのだそれは?」


「ふーむ、面妖な物を・・・・・」


 アルゴとレオンの二人は見た事も無い道具を組み立て行く姿を見ながら、これから何が始まるのかと、首を傾げて居た。


「メリー殿。その道具は何なのですか?」と謎の道具の正体を聞いて来たシルフエルフ族の族長であるユグノート。


「これはプロジェクターと呼ばれるものです。」


「ひょっとして、二ホン国の物なのですか?」


「はい。その通りですわ。」


「これは予め記録された絵図を壁紙に、投影させる魔力を使わない道具なのです。」


「魔力を使わない魔道具?」


「まっ、まさか・・・・・・古の古代文明、初期の転移文明に在ったと言う科学なる失われた技術か?」


 如何やらドワーフ族のアルゴは、多少なりとも科学に関する知識を持ち合わせて居るらしい。


「はい。科学文明社会は、一定期間の間、魔導文明と違って、その文明社会を支える為に膨大な地下資源を消費し続ける必要が有ります。」


「一方の魔導文明は、一方期間の間に魔鉱石等の資源を消費しますが、地精霊ノームによる大地復元のサイクルを守って文明社会を継続させて行く事を絶対の掟として居ます。」


「600年前を境として、科学文明国家が衰退し、現存する魔導文明国家との合併した科学文明国家は、その遺産を殆んど後世に残せずに、その姿を消してしまい。」


「その担い手達は、今の時代では、アースティア世界各地の諸国内で、有力な貴族や社会基盤を支えて居る商家や工房商家など言った、有力者として、今も生き残って居ります。」


「ですが、その過去の栄光と技術力を覚えて居る者は、今や少数と聞き及んで居ります。」


「その通りじゃ、ワシも実物の道具を見るのは初めてだ。古代伝説では、遥か天空の彼方に在る星の海を渡る船も、実際に在ったと聞く。」


「最も古代文明の生き残り文明国家に、止めの一撃を与え、衰退させた原因である邪神戦争後は、一部の国々が魔導船として改修して、今もなお使い続けて居るだけじゃがな。」


アルゴの歴史講釈が終わると、プロジェクターの準備が整った。


「これからお見せするのは、二ホン国内の姿を写し取って記録したものです。


「音声も合わせて聞こえ流れますので、驚かれるかも知れませんが、何らご心配には及びませんので、そのままご視聴下さいませ。」


 会議室内はカーテンが閉じられ、魔鉱石を使用した電灯が消えて、辺りはやや暗くなる。


 会議室に集まった各国の代表達と政府幹部らは、スクリーンに注目が集まり、プロジェクターから映し出された映像に見入ってしまう。


 其処には、異世界国家群の代表各と目される二ホン国の実状が鮮明に映し出された。


 CG映像を交えた二ホン国の国土が映し出され、首都東京の先進的な風景が流された。


 摩天楼の如く天に向かって建てられた高層ビル群の中に一際目立つスカイツリー。


 その高さが、全長634メートルと説明されると、多くの者達が驚愕の声を上げていた。


 道路を埋め尽くす自動車、高速で走り去る新幹線、一度に何万トンもの貨物を運び、地の果てへと品物を届ける事の出来る巨大な貨物船や日本各地の巨大湾港。


 逸早く目的地へと向かえる超音速旅客機に、一日中忙しなく数秒で数百億が取引が出きるという金融機関。


 この世界では苦労して収穫する農作物や畜産、漁業、狩猟等の食料品を効率よく手にする事の出来る技術力と物流網。


 そして・・・・・・・・ローラーナ帝国よりも優れ、600年以上もの昔に存在していたと言う科学文明の粋を集めた軍事力。


 空を目にも止まらない速さで飛び回るジェット戦闘機。


 地を這いまわり、確実に敵を仕留める戦車達や機械科車両軍の一大行進っ!!


そして、空母機動部隊を中心とした海軍の大艦隊。

 


 メリーがアセニア亜人連合同盟に加盟して居る全種族達に見せたかった理由が、このプロジェクターの映像を見せる事で、どんな物でも一目で理解できる要素が、盛りだくさんのてんこ盛りであった。


 やがて映像の最後には、現日本国総理大臣である安元宏孝による挨拶と東京サミットへの招待と天皇陛下からの友好を結びたいとのメッセージで締め括られた。 


「・・・・・・・以上が、二ホン国と言う国に付いてと成ります。ご視聴ありがとうございました。」


「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」


 映像が終わり、会議室内の一同は声を詰まらせてしまう。


 それだけインパクトが強過ぎる内容であった。


そんな中で沈黙を破ったのが竜人族の長達であった


「わたくしはメリーさんの提案に賛成します。」と賛成に一票を投じたのは、青龍帝アミリア・ブルーアクーアドラグリアである。


「アミリアの姉御が決めたのなら、アタイは文句はねぇぜ。それにエリン姉ぇが、二ホンに肩入れして居るって聞くしな。」とぶっきらぼうに賛成したのは、黄龍雷帝のエクレール・サンダース・ドラグリアである。


「アミリア姉さんエリン姉さんが良いと判断したのならば、二ホン国なる人族の国は良い所なのでしょう。私は問題ありません。」と淡々と賛成したのは緑風龍帝リーファ・フォレストウィンド・ドラグリア。


 竜人族達はエリンとメリーからの根回しが在った為に、賛成側に回った。


「我ら巨人族、ギガンテス連邦も賛成に回るぞっ!!」と賛成側に一票を入れたのは、ファンタジー系の巨人族とSF系の巨人族達の連合国であギガンテス連邦首席代表と成って居るミリアリア・メルトラウンであった。


 巨人族達が住まうギガンテス連邦は、ユグドラシル大陸の東側から300キロ地点に在るギガンテス亜大陸に在る巨人族の国家。


 その代表であるミリアリアは、ガテン系ボディビルダ―の様な肉体美を持った爽やかな感じのロングストレートヘアーの女性代表であった。


 その身体付きは、『ダンベル何キロ持てる?』とか、思わず『ナイスバルクっ!!』と言ってしまうかも知れない。


 そのミリアリアの祖先は、その昔に巨神戦争へと突入する切っ掛けと成ったSF系の巨人族の血を引くゼントラーメルート巨人族の出身者である。


 今は種族が近いこの世界固有の亜人巨人族と国家を作り、平和に暮らして居る人達で、今も宇宙科学の文物を所持して居るとの噂話も在るが、それを見た者は居ないと言う。


 この会議に参加する為に、某巨大要塞型宇宙戦艦が登場するSFアニメの宇宙人の様に、この世界の巨人族達は、ゼントラーメルート巨人族の技術力で人間体サイズへと変身して来て居た。


これで人魚族の票数を鰭て5票である。


 妖精族・ホビット族・翼人族・少数魔族らは、議決権投票の棄権を表明し、その立場の中立を宣言する。


 また、この地域に住まう少数の魔族は、南部の旧宗主国であるデモニュクス帝国・魔族連合との関係が在る為。


 日本国との交渉は前向きに検討したいと表明した為に、賛成に側に回る。


 これで六票となった。


 残りはエルフ族・獣人族等の各種部族と政府票等からなる多数票だ。


 多数の種部族が乱立して居る場合は、規定として中央政府票が二票と見なされ、各部族票が一票を投じる事に成って居る。

 

 此れには人魚族の票も含まれて居るので、多数派工作が問われて来る。


 ダークエルフ族、イフリートエルフ族、ウンディーネエルフ族らは賛成に回り、シルフエルフ族は、中立棄権となる。


ノームエルフ族はドワーフ族との付き合いから反対票に投じる事と成った。


 アルブヘイム王国政府票は棄権を表明する。


 これは議長国である為に、何方にも肩入れはしないとの理由からであった。


 これで賛成9票・反対4票・棄権が6票となる。


 人魚族は各地方の代表達が投票権を選任されて居るので、全部で12地域の票と人魚族王族政府代表であるメリー2票を入れると14票と成る。


これで賛成が23票と成った。

 

 だがこれで安心しては為らない。


 ある意味、種部族が乱立して居る獣人族のジャパリンランド獣人部族連合国は、浮動票の坩堝と言われて居り、その時の情勢により、コロコロと態度が変わると言われて居る。


 ジャパリンランド獣人部族連合国政府代表票を持って居るレオンが二票を入れられるので、後は同胞達が、どのような決断を下すのか次第では、この会議に措ける重要なキーパーソンとなる投票と成る。


 53地域の代表達が態度表明する中で賛成が28票、反対が27票と成った。


 よってメリーから出された日本国を始めとする異世界国家群との国交樹立に向けた国交開設交渉計画案は、賛成51票・反対31票・棄権7票と成り、賛成多数で可決と成った。


「賛成多数であるな。メリー殿。議会採決は二ホン国を始めとする異界国家群との国交樹立に向けた交渉を行う事を我がアセニア亜人連合同盟総会議会は議決する事とする。」


「付いてはメリー殿は、異界国家群との交渉の為に、二ホン国が提案している東京サミットへと平和外交使節団代表として行って貰いたい。」


「分かりました。確かにお引き受けしますわ。」と元々その積りであったメリーは、議長であるアルブヘイム王国・エルフ族連合の今代の国王に就任して居るシルフエルフ族の族長、ユグノート・シルフィードの要請を快諾する。


 総会議会では、この議決決定を決まった事をエルフ・ドワーフ・獣人・人魚・龍人・妖精・ホビット・巨人・翼人・魔族等の亜人族の代表達が、拍手で讃えた。


 これはアセニア亜人連合同盟総会議会設立時の取り決めで、議会で決まった事は、どの代表も承知・不承知であろうとも、根に持つことなく拍手で称えるとされて居る。



 メリーは対ローラーナ帝国との外交政策で、強力な盾と矛を手に入れる事と成る。


 世界情勢はまた一つ、新たな動きを見せ、アセニア亜人連合同盟は日本国で開かれる予定の東京サミットへと向かう事が取り決められたのであった。

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