外伝41話 ミンフィル王国東南諸国同盟編 魔神賢王と呼ばれた男 12

アースティア暦1000年 ・西暦2030年・6月7日・午後13時45分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸東南部・レノア地方・セラルーノ半島地方・セラルーノ半島沿岸沖合・セラルーノ王国・アギュウスト海沖海域にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 一方の原子力空母・ジョージ・ワシントンとドワイト・D・アイゼンハワーを含めた護衛艦隊12隻と補給艦7隻と強襲母艦が2隻から成るアメリカ合衆国海軍艦隊や爆撃機隊。


 それらの艦隊や航空隊は、ゾルモン要塞への奇襲攻撃作戦に参加する為に、ザタン・アタック作戦・欧州諸島連合国・フォークランド諸島方面司令部が置かれる事と成った、EU諸島・フォークランド諸島の首都であるスタンリー港とマウント・プレザント空軍基地へと向かって居た。


 原子力空母・ジョージ・ワシントンに乗り込んで居たアメリカ合衆国海軍・欧州諸島連合国派遣艦隊の司令官のブレックス・フォーラム中将と副司令官のヘンケン・ベッケバウナー少将等は、セラルーノ半島地方を統治して居るセラルーノ王国の沖合いを通過しようとして居た。


「ふむ。あれがセラルーノ半島か?」


「はい。日本国の交援省による調査結果により、レノア地方・ミンフィル地方辺り一帯の地理に付いては、凡そ地形図が手に入りましたので、あそこがセラルーノ半島地方のセラルーノ王国の在る地域に間違いないかと・・・・・・」


 やや老けて見えてしまう副司令官のヘンケン少将は、揉み上げから顎周り髭を立派な髭を蓄えた風貌の司令官であるブレックス中将からの質問に、手にして居た地図を見ながら淡々と答えた。


「やれやれ、トンデモナイ事態と成ってしまったが、ハワイや日本国を始めとした地球世界の同胞達が居るだけマシと考えるしかない。」


「だが、世界が変わろうとも、我らの仕事は上の命令に従って淡々と仕事をこなすまでだ。」


「はっ!」


 この世界に転移してしまったアメリカ合衆国軍は、小笠原諸島から南東へ3000キロの位置にアリューシャン列島、ハワイ諸島と周辺諸島、ミッドウェー諸島、ウェーク島、マリアナ諸島のアメリカ領が転移とている。


 陸海空軍と海兵隊を含めた200万の軍勢と共に異世界に転移している。


 艦船は100隻以上も在るらしいとの事である。


 アースティア世界に転移後は、ハワイを拠点に無人の島を保有を宣言し、開拓を進めて居る。


 今は余っている軍を他国に在る米軍基地に派遣したり、予備軍として派遣したりして、地球転移系国家群の勢力圏を守ろうと、各国と供に協力態勢を敷いて居た。


 要するに異世界アースティアの世界情勢が混迷を極めて居るせいで、解散と除隊が出来ない正規軍の傭兵派遣とも言うべき苦肉の策であった。


「北東部上空に飛行物体の飛来っ!!数は20っ!!」と原子力空母・ジョージ・ワシントンのレーダー担当官であるコールマン中尉が通信を入れて来た。



「んん??」とヘンケン少将は、報告を聞いて咄嗟に双眼鏡を通信報告の在った方角に目をやった。


「あれは・・・・・・飛龍(ワイバーン)ですな。種類は判り兼ねますが・・・・・」


「飛龍(ワイバーン)だと?」とブレックス中将も双眼鏡を覗き込む。



「おおっ!!正にファンタジー世界だな。それにしても随分と身なりの良さそうな格好だな?」


「そうですね。恐らくはセラルーノ王国の飛龍(ワイバーン)で、定期的な哨戒警備中なのでしょう。特段に珍しい事では在りません。我が国を含めてやって居る事ですので・・・・」


「それに、どうやら此方に興味が在る様子だな。あれは・・・この近辺を哨戒中で、セラルーノ王国軍ならば何れは同盟国に成るやも知れん。」


「チョッとお茶にでもご招待してみようか?」


「ブレックス中将殿。このような状況である時に、宜しいのですか?」


「構わんよ。軍の機密情報を開示する訳でもないのだ。それにあの身形なら、高貴なご令嬢やも知れん。」


「この辺りを離れるホンの僅かな時間を当艦内で、お茶を楽しんで貰うだけさ、それに我が合衆国の外交的にも、彼の小国に渡りを付けて置くのも一興と言う物だよ。」


「了解しました。」



 そんな感じでブレックス中将は、セラルーノ王国軍の飛龍部隊と思わしき部隊の仕官達を原子力空母・ジョージ・ワシントンへと招待する事にした。


 軍人が政治に口を挟むのは筋違いに見えるかも知れないが、この場合は将来の友好国と成り得る仕官らとの交流接点を築く為と言う形での体裁を取れる形なので、単なる個人的な招待と言う事に成るのだろう。


 因みに、この時点でのアメリカ合衆国では、飛龍と言う物。


 ワイバーンをまじかで見た事が在る者は少ないのであった。



 ブレックス中将は、好奇心と今後の為に通りすがりの仕官達と交流を図ろうとするものでも在るのだった。



 司令官の命令を受けた原子力空母・ジョージ・ワシントン内の哨戒ヘリ部隊の4名の者達は、哨戒ヘリに乗り込むと甲板から離陸して行く。




 それらは、パタパタパタパタパタパタパタパタパタパタパタパタパタパタパタパタパタパタパタパタとローター音が響き渡りながら大空ーと飛び立った哨戒ヘリコプターは、ラピスが率いて居るセラルーノ王国・水竜騎士団へと近付いて来て居く。


「姫様っ!!」と配下の一人が大きく叫ぶと、巨大な空母から発艦してやって来た謎の飛行物体の動きに警戒態勢を取った。


「大丈夫。あれは敵対な行動では無いようです。」



 パタパタパタパタパタパタパタパタパタパタパタパタパタパタパタパタパタパタパタパタとローター音が響き渡りながら飛行物体に乗り込んだ者達は突如として大きな声を発して来た。


「初めまして、我らはアメリカ合衆国海軍艦隊の者です。」


「其方はセラルーノ王国軍の哨戒部隊と見受けられます。」



「その通りですっ!!私がこの部隊であるセラルーノ王国・水竜騎士団の団長であるセラルーノ王国の第一王女、ラピリオス・サハリンラードと申します。ラピスとお呼び下さって構いません。」


「これはこれは、セラルーノ王国の王女殿下で、在らせられましたかっ!!」


「実は当艦隊の司令官であるブレックス・フォーラム中将閣下が、暫しの間、原子力空母・ジョージ・ワシントンでお茶会にご招待し、是非とも持て成しをしたいと申して居れます。」


「それは私が王女だからでしょうか?」


「違います。王女殿下が部隊を率いてご飛行とは、我が司令官であるブレックス中将閣下も当艦隊も存じ上げては居りませんでした。」


「この招待は、噂に聞くセラルーノ王国の方々と交流をしたいとのブレックス中将閣下からの申し出であり、例えその相手が一般仕官であってもご招待をした事でしょうし、王女殿下を狙ってのご招待ではありません。」


「この事は、本当に只の偶然と思って頂いて構いません。」


「分かりました。ご招待をお受けしますっ!!」


「了解しました。先に戻ってお待ちしております。」と言って哨戒ヘリは立ち去って行った。


「姫様っ!宜しいのですか?」


「構いません。単純に好意からなのと好奇心から来る招待なのでしょう。」


「それにアメリカ合衆国なる転移国家の名は、コヨミ皇国の紅葉から送られた手紙にも書いて在る事です。」


「相手の素性も、ハッキリとして居ますから安心して構いません。」


「それに今後の外交にも関わる事柄にも成る筈です。無下に断わるのも、招待する相手側には、失礼に当たります。」


 心配する部下には、裏が取れて居る相手だから問題と伝え、彼女達は原子力空母ジョージ・ワシントンへと向かうのであった。



 同日・アメリカ合衆国海軍・欧州諸島連合国派遣艦隊旗艦・原子力空母・ジョージ・ワシントン艦長公室にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 通りすがりの隣国の仕官達を招待しようと気まぐれに思い付いたアメリカ合衆国海軍・欧州諸島連合国派遣艦隊の司令官のブレックス・フォーラム中将は、艦内に招待を伝えに言った仕官達が帰還すると、招待をした相手の素性を聞いてびっくり仰天な事が明らかと成った。


「何と?それは驚かせる。まさかセラルーノ王国のプリンセスが当艦に参られるとはな。」


「ブレックス中将、先ほどのお茶会ですが・・・・・士官室で気さくにと予定して居りましたが・・・・・」と副司令官のヘンケン・ベッケバウナー少将が困った顔で言う。


「ふむ。一国の姫君をむさ苦しく、簡素な士官室へとご招待をしたと在っては我が国の名折れと言う物。」


「ヘンケン少将、予定変更だ。プリンセスを艦長公室へとお通しする。」


「分かりました。直ぐに予定変更の胸を給養員の仕官達に、伝えて置きます。」


 こうしてチョッとした歓迎会に近いお茶会を開く事と成ったブレックス中将らは、いそいそと準備を進めて行くのであった。



それから15分後・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 セラルーノ王国の第一王女であるラピリオス・サハリンラードこと、ラピスに率いられたセラルーノ王国・水竜騎士団と近衛女騎士から成る20名の騎士達は、原子力空母・ジョージ・ワシントンの航空科に所属する仕官達の誘導を受けて甲板に着陸する。


 欧州諸島連合国派遣艦隊は、帝国勢力側に対する準警戒態勢を敷いて居る中で、最低限の仕官達が集まり、ラピス達を歓迎した。


「捧げえええええぇぇぇぇぇーーーーーーっ!銃っ!!」と海軍大佐が、声を張り上げて叫んだ。


 すると軍装を整えた仕官達は、小銃を綺麗に揃えて構える。


「突然の当艦隊へのご招待を受けて頂いて、誠に光栄であります。私が当艦隊の司令官であるブレックス・フォーラム中将です。」


「ご招待を感謝します、ブレックス・フォーラム中将閣下殿。私がセラルーノ王国の第一王女であるラピリオス・サハリンラードです。ラピスとお呼び下さい。」


 二人は互いに差し出した手を握り合い軽く握手をする。


「それでは艦内にご案内しましょう。艦内は大変に狭い所も在りますので、足元や天井などのヶ所に、ご注意ください。」


 ブレックス中将を先頭にして、ラピスも近衛騎士を2名が後に続くが、その艦内では暴れ回るのも難しいと思われる通路が続いていた。



 航空母艦とは何か?


 それは戦闘機を含めた航空機を艦載し、運搬しつつ、目的の洋上にて、味方の艦隊と共に敵と戦う事を前提として造られた船の事である。


 その中身は一つの町と言っても差し支えない。



 日本では考えられないが、艦内には病院だけでなく、売店・法律事務・教会・艦内広報のテレビ局に、新聞すら発行しているし、とても複合施設が充実して居る。


 日本の海上自衛隊が誇るヘリコプター搭載型護衛艦のいずもやひゅうが等と比べると、根本的に中身が違い過ぎる。


 ・・・・とは言っても、日本のヘリコプター搭載型護衛艦の内装は、仕事をするのにスッキリとした造りで有るのに対して、アメリカの空母は長い遠征や国外基地での活動に必要不可欠な施設が在る造りなので、比べ過ぎても、それは仕方がないと言える。


 だが、ラピス達はアメリカ合衆国海軍の空母の内装を見せて貰える範囲で見学させて貰い。

 その充実した艦内の環境と性能に舌を巻いてしまう。


 そうした見学ツアーを終えて、艦長公室へと入ると身綺麗に整えられた席へと通されたラピス達は、ブレックス中将等と共に席に着いて行った。


「如何だったでしょうか?」


「はい。何と申したら良いのでしょうか。単純な言葉では言い表せない、素晴らしい軍艦をお持ちですね。」


「そう言ってお褒めの言葉を貰えるとは、幸いであります。」


「所でこの艦隊は西へと向かって居られると先ほど聞きましたが、機密に触れない範囲でその目的を教えては貰えないでしょうか?」


「ええ、構いませんよ。実は我々は西に転移して来ている同盟国の支援に向かう途中なのです。」


「同盟国?」と?マークが浮かんでいるかの様に首を傾げるラピス。


 彼女は最新の国際情報を得ているが、詳しい事柄に付いては、一地方の王国と言う事もあり、西側に何が起きて居る事は知り得ていなかったし、紅葉も其処まで詳しくは手紙には書いて送っては居なかったのであった。


「此処から数千キロ先の洋上に転移して来て居る我々が居た地球世界のヨーロッパ地方に在った国々が寄り合って立ち上げた欧州諸島連合国と言う連合体国家の事です。」とヘンケン少将は補足説明をした。



「ではローラーナ帝国と?」とラピスは聞き返す。


 ブレックス中将はゾルモン要塞軍団艦隊と戦う為の大作戦であるザタン・アタック作戦の漏洩が無い様にする為、作戦遂行に差し支えない範囲で答える事にする。



「いえいえ、地球世界から転移して来て居る諸国の間では、ローラーナ帝国と本格的に戦争へと突入する予定は今の所はありません。」


「ですが・・・・・・今回の我々アメリカ合衆国海軍艦隊の派遣は、ローラーナ帝国・ゾルモン要塞やカリフア大陸方面軍に対する牽制と防衛も兼ねて居ります。」


「当艦隊が任地に居ると言う事は、彼の帝国も、そう簡単には、東へと手を出す事が出来なく成るでしょう。」


「そうですか・・・・・」とホッとするラピス。


 ローラーナ帝国が、西方バルバッサ帝国同盟の一角であるカレールーナ帝国とその傘下国らと共に、直ぐにでも大軍を率いて攻め掛かって来ると言う事態は、暫くの間は出来なく成ったと思ったからである。


「そろそろお茶とお菓子が来たようですね。」


 そんな事を思って居る内に、この艦隊側が用意していたお茶とお菓子がやって来た様である。


 ラピス達は出されたお茶とケーキを始めとするお菓子を食べ、改めて丁寧にお礼を言ってから歓談へと戻る。


それから40分ほど、両者は和やかなムードと共に時間が過ぎて行くのであった。

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