外伝37話 ミンフィル王国東南諸国同盟編 魔神賢王と呼ばれた男 8
アースティア暦998年 ・7月28日・午後16時11分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸東南部・レノア地方北西部・クララ地方・クララ平原地方・クララ王国・王都コーチン・ステナント市・王城・コーチン・ステナント城にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
クララ地方事変戦役を引き起こし、クララ地方を我が物にせんと画策するユーラシナ大陸東南部・レノア地方の雄であるカレールーナ帝国。
その思惑に踊らされ様として居るクララ地方の4ヶ国と、何とかして欲しいと頼まれしまったユーゴとミンフィル王国は、ナカハラドラス部族国の部族総長たるバルセー・ロナダイン部族総長が隣国の内乱によるクーデターの影響を受けて、ジーク・クララ・クオッシュ第一王子が率いるジーク・新クララ国王政府軍による国土拡大政策作戦の一環に由る侵略行為を受けてしまった。
その事から、バルセー・ロナダイン部族総長は、レノア地方東南諸国商業連盟条約に基づく援軍要請を頼みたいとの要請が、ユーゴの下へと齎された。
これに対してユーゴは、ジーク・新クララ王政府軍に対抗するべく、ニルカーナ・クララ・クオッシュ第一王女が率いる正当王位派閥勢力の者達の軍勢であるニルカーナ王太女正統政府軍と同盟を宣言すると言う事にして、縁も所縁も無いニーナ王女から助けて欲しいと言う嘆願を聞き入れる事に成ってしまう。
その方がこの戦いを裏で糸を引いて居るカレールーナ帝国との直接対決を避ける言い訳にも出来るような逃げ道を確保した形での出兵であった。
これならば、ユーゴとミンフィル王国は、ナカハラドラス部族国の部族総長たるバルセー・ロナダイン部族総長から援兵を頼まれただけと言って、ニーナが率いるニルカーナ王太女正統政府軍とは、何の関係も無いと言いつつも、戦略的観点からニルカーナ王太女正統政府軍と渋々同盟を結んだと公言も出来るという、何とも言葉遊びの様な言い訳を言いつつの援軍出兵であった。
その事を受けたジーク王子は、ナカハラドラス部族国へと遠征させて居た軍勢を王都とへ引き上げさせた。
彼はミンフィル王国軍・ナカハラドラス部族国・ニルカーナ王太女正統政府軍・レノア地方東南諸国商業連盟条約に加盟する軍を併せた15万の軍勢が、東西から王都・コーチン・ステナント市へと進発して来て居ると言う報せを聞いての撤退であった。
ジーク王子は王城・コーチン・ステナント城にて、これ等の軍勢を迎え撃つ軍議を開いて、軍幹部らと渋い顔付きで話して居た。
「糞がああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーっ!!」と苛立ちを隠せないジーク王子。
彼は会議開始早々に、怒り狂ってしまった。
それも其の筈、彼の手持ちの軍勢は、どんなに搔き集めたとしても、精々5万5千人が良いところ。
それに対して、レノア地方東南諸国商業連盟条約軍と、彼らが勝手に呼称して居る軍勢は、彼らから見れば、約2倍も在る大軍勢である。
これらと正面からマトモに平原で戦ったら、武器や兵器を含めた某有名な武将無双ゲームの様なチート戦法でも無い限りは、彼等の勝利は絶望的と言わざるを得ないと言えた。
「成り上がり簒奪王ごときが、この俺に歯向かうだけに飽き足らず、この俺の姉であるニーナをかどわかして、その軍勢を傘下に置き、この国までも奪い取ろう言うのかっ!!」
ジーク王子の話は飛躍し過ぎて居る。
ユーゴは其処までの事を考えてすら居ない筈である。
それに女垂らしでもないので、彼の言葉は、怒りから来るムカつきに由る所が大きい、悪態染みた暴言であった。
「落ち着いて下さい殿下っ!!」
「そうですっ!!此処は冷静に戦局を見極めながら・・・・・・・・・」
「だったら知恵を絞れっ!!知恵をっ!!モタモタしして居ると、あの簒奪王とニーナとの間に子共が出来てしまうぞっ!!」
「そうなれば、この国はあの簒奪王ユーゴの直轄領地となり、何れは公爵家と言う形でクララ・クオッシュ家の血を引く子供が跡取りに成るぞっ!!」
「そうなったら、我々は本当に只の反乱軍でしかなく成るっ!!」
「そんな事は決して・・・・・・・・・・・・」と部下や彼に近しい派閥の貴族諸侯達らは口々に言うが、本当に根拠の無い言葉でしか無いと言い返すのは憚られてしまう。
自分達もジーク王子を祀り上げて、其処から美味い汁を啜ろうと目論んだ張本人であるからして、この場で逆らえば、その立場を失うからだ。
「兎に角、殿下っ!!此処はカレールーナ帝国に使者を送り、援軍要請を打診してみては、如何でしょうか?」
「・・・・・此処は背に腹は代えられぬ。城をレノア地方東南諸国商業連盟条約軍に囲まれる前に、使者を送るのだっ!!」
「はっ!!」
ジーク王子は、この危機から脱する為に、背に腹は代えられぬとして、ジーク王子に対して、様々な援助をして貰って居るカレールーナ帝国に使者を送り、援軍を出して貰える様に頼み込む決断を下したのだった。
アースティア暦998年 ・8月12日・午前8時33分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸東南部・レノア地方北西部・クララ地方・クララ平原地方・クララ王国・王都コーチン・ステナント市・レノア地方東南諸国商業連盟条約軍各戦線にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
一方のユーゴ達側にも動きが見られた。
偶然にもジーク・新クララ王政府軍と同じく、周辺諸国からもレノア地方東南諸国商業連盟条約軍と勝手に呼ばれて居た軍勢を二手に分かれて、軍勢を進発させて居た。
ミンフィル王国軍を盟主とするナカハラドラス部族国・ニルカーナ王太女正統政府軍。
それらに加えて、これまでにレノア地方東南諸国商業連盟条約に加盟した条約締結加盟国であるセラルーノ王国・レノア中央都市国家連合軍2万人『クラ市国(都市国家) ラクサ市共和国(都市国家)を含む』連合軍は、ミンフィル王国の大将軍であるルシス・ファーン大将軍が率いる5万人。
ラピリオス・サハリンラード王女が率いるセラルーノ王国軍5千人。
レノア中央都市国家連合軍2万人。
ニルカーナ王太女正統政府軍1万人の軍勢がレノア中央都市国家連合の在るクララ地方の南回りから突き進み。
ユーゴが率いるミンフィル王国本隊軍5万人とナカハラドラス部族国1万5千にが、ウィーロ連峰山脈を突き抜け、更にはナカハラドラス山脈地帯を抜けて行く街道を東周りに突き進むと言った、二方向から王都・コーチン・ステナント市へと軍勢が迫って来て居た。
兵数はやや多いが敵軍と比べれば寡兵少数であるクララ王国新王政府軍は、平原での決戦はなるべく避けて、地理的に有利である王都・コーチン・ステナント市内での決戦を選んだ為に、レノア地方東南諸国商業連盟条約軍は、敵側からの散発的な攻撃を受けるだけ、進軍速度が緩む事は無かった。
ジーク王子とジーク・新クララ王政府軍の両者達は、カレールーナ帝国から支援か又は援軍を待つ事で起死回生逆転勝ちを狙って居たが、確実性も勝てる根拠も無い形での籠城戦は無謀としか言いようがなく、確実に負け戦と成る事が決定的と成ってしまう悪手。
ジーク王子とジーク・新クララ王政府軍の幹部達は、無計画に勝つ為だけに動くしか出来ない無能達であった言えた。
ユーゴ達は、進軍開始から15日後の昼頃には、王都・コーチン・ステナント市を取り囲んで居て、翌朝には攻城戦の準備が整って居た。
コーチン・ステナント城は、クララ湖から南に20キロ地点に在る王都・コーチン・ステナント市の中心地に聳え立つクオッシュ山と言う岩山を繰り抜いて築かれた山城で、その周りの平野周辺に岩を削って城郭と都市が築かれて居た。
レノア地方東南諸国商業連盟条約軍は、その都市を取り囲む様にして造られた城壁と相対しながら包囲しつつ、高台と成って居る城壁と同等の高さを誇った岩山の崖から魔導弓兵部隊を配置させ、敵方の動きを探りつつも、城壁の防衛部隊を無力化する積りの様だった。
ミンフィル王国の大将軍たるミルシス・ファーンは、連鎖剣なる鞭状に伸び縮みする剣を鞘から抜き出して、右手で高く掲げた。
それを見た各前線の先方隊・隊長は、王都・コーチン・ステナントの南正城門に対して、攻撃命令を下した。
「合図だっ!!者共っ!!掛かれえええええぇぇぇぇぇーーーーーーーっ!!」
「「「「「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーーっ!!!!」」」」」」」」」」
破城槌の縄を持った屈強な猛者達と金槌を持った筋肉隆々の力自慢の兵士達等が、頑丈な木材と鉄で造られて居る城門を打ち砕く噛んと攻め立てる様相は、地球世界の中世ヨーロッパ時代の戦争を彷彿させる光景を目の当たりして居るとも言えるだろう。
「近付けさせるなっ!!やれえええええぇぇぇぇぇーーーーーーっ!!」
王都・コーチン・ステナント市とコーチン・ステナント城を取り囲む石壁の上には、クララ王国新王政府軍の数千の防衛部隊が展開し、弓兵部隊が近付く敵を撃ち抜かんと狙いを定めて居た。
「「「「「「「「「「・・・・・・・・・・・・・」」」」」」」」」」
数多のクララ王国新王政府軍の弓兵達がミンフィル王国軍の先方部隊に狙いを定めた。
その時である。
スパパパパパパパーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンンッ!!
「何いいいいいぃぃぃぃぃーーーーーーーーーーーっ!!」
「何処からだっ!!」
「敵方っ!!全方位からですっ!!」
スパパパパパパパーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンンッ!!
「これはっ!!魔導弓兵かっ!!」
スパパパパパパパーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンンッ!!
スパパパパパパパーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンンッ!!
スパパパパパパパーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンンッ!!
マルーシャ・ルネーノ大佐が率いるミンフィル王国軍魔導弓兵隊は、周辺地域の高台から、700メートルの飛距離を撃ち抜いて見せた。
魔導弓騎士が扱う魔導弓とは、通常の弓矢と違って、魔法で何らかの魔法力を付与させた矢を撃ち放つか、マジックアローを打ち込む弓矢術の事である。
鉄砲が無い世界で、これほどの距離をピンポイントに目標地点を撃ち貫く飛び道具は存在し得ないだろう。
「ふっ!!これでヨシっ!!」
「ルーシャ隊長っ!!敵目標の殲滅を確認しましたっ!!」
「ご苦労っ!!敵が別の手段で味方を狙って来た場合は、即時殲滅せよとの陛下からのご命令だっ!!怪しいと見たなら、誰であろうと遠慮なく撃ち抜けっ!!」
「はっ!!」
ミンフィル王国軍魔導弓兵隊の隊長マルーシャ・ルネーノ大佐こと、 ルーシャは容赦なく苛烈に敵の遠距離攻撃部隊の殲滅に専念し、これを達成して行くのであった。
「そーれっ!!そーれっ!!そーれっ!!そーれっ!!そーれっ!!そーれっ!!そーれっ!!」
「そーれっ!!そーれっ!!そーれっ!!そーれっ!!そーれっ!!そーれっ!!そーれっ!!」
「そーれっ!!そーれっ!!そーれっ!!そーれっ!!そーれっ!!そーれっ!!そーれっ!!」
「そーれっ!!そーれっ!!そーれっ!!そーれっ!!そーれっ!!そーれっ!!そーれっ!!」
「そーれっ!!そーれっ!!そーれっ!!そーれっ!!そーれっ!!そーれっ!!そーれっ!!」
屈強な猛者たちは、何度も何度も硬い城門に破城槌をぶつけて、城門をこじ開けようと、果敢に攻めて行く。
その近くで、通用門を叩き割ろうとしている金槌を持った筋肉隆々の兵士の姿が在った。
「そーれっ!!そーれっ!!そーれっ!!そーれっ!!そーれっ!!そーれっ!!そーれっ!!」
「そーれっ!!そーれっ!!そーれっ!!そーれっ!!そーれっ!!そーれっ!!そーれっ!!」
「そーれっ!!そーれっ!!そーれっ!!そーれっ!!そーれっ!!そーれっ!!そーれっ!!」
「そーれっ!!そーれっ!!そーれっ!!そーれっ!!そーれっ!!そーれっ!!そーれっ!!」
「そーれっ!!そーれっ!!そーれっ!!そーれっ!!そーれっ!!そーれっ!!そーれっ!!」
「んん?おおっ!!ヒビが入って来たぞ!!そーれっ!!もう一押しっ!!」
「そーれっ!!そーれっ!!そーれっ!!そーれっ!!そーれっ!!そーれっ!!そーれっ!!」
「そーれっ!!そーれっ!!そーれっ!!そーれっ!!そーれっ!!そーれっ!!そーれっ!!」
「そーれっ!!そーれっ!!そーれっ!!そーれっ!!そーれっ!!そーれっ!!そーれっ!!」
「そーれっ!!そーれっ!!そーれっ!!そーれっ!!そーれっ!!そーれっ!!そーれっ!!」
「そーれっ!!そーれっ!!そーれっ!!そーれっ!!そーれっ!!そーれっ!!そーれっ!!」
「そーれっ!!もういっちょおおおおおぉぉぉぉぉーーーーーーーっ!!!!」
その一言が叫ばれた時である。
城門はメリメリと音を立てて都市の内側へと倒れて行くと、立て籠もって居た敵軍の将兵達をね巻き込んで盛大に倒れて行った。
「城門っ!!打ち破ったりいいいいいぃぃぃぃぃーーーーーーーーーーーっ!!!!」
「「「「「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーーっ!!!!」」」」」」」」」」
城門を打ち破りし、猛者達の雄叫びが木霊したっ!!
「今だっ!!市内に突撃せよおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!」
「「「「「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーーっ!!!!」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーーっ!!!!」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーーっ!!!!」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーーっ!!!!」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーーっ!!!!」」」」」」」」」」
前線の指揮を任せられたリネット・アスト近衛騎士団副団長は、南正城門へと突撃命令を下した。
一方その頃、西ではセラルーノ王国・レノア中央都市国家連合の連合軍が、西正城門を打ち破り、東では東正城門をナカハラドラス部族国・ミンフィル王国 ・ニルカーナ派閥軍から成る5ヶ国連合軍が城門を打ち破って市内へと攻め入って来た。
この戦いは、いよいよ攻城戦へと突入して行くのであった。
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