外伝特別編 孤独な輸入雑貨雑貨代理店主の長い日々 5

 アースティア暦1000年・西暦2030年・6月5日・午前9時15分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸東側地方・西太平洋地域・地球海洋諸国連合同盟勢力圏・日本列島・日本国・北陸地方・新潟県・南魚沼市・塩沢町周辺にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 江東区の個人輸入雑貨代理店・重松輸入雑貨商会の主、重松五郎は、オローシャ帝国内のフローレイティア州に本拠地を置いて居る武装輸送船商会、フローレイティア輸送商船商会との大口取り引きも、いよいよ大詰めの終盤に差し掛かって居た。


「ううっ、うーん。」


 上越線の塩沢駅で電車を下車した重松五郎は、電車で固くなった身体を解すべく、大きな背伸びをした。


「良い空気だなぁ・・・・流石は南魚沼市だ。飯も美味いし、温泉も在る。何より都会の喧騒の騒がしさと違ってとても長閑な所だなぁ・・・・・・・」


「ふっ、今日の仕事は午前中だけだし、午後からの予定も無いしな。こんな時位は、少しくらいならのんびりとしても良いだろう。」


「あのー、この後は・・・・・・」と聞いて来たのは、フローレイティア輸送商船商会内で第二商船艦隊の商隊長とフローレイティア輸送商船商会新潟県出張所の所長を任されて要る人物のリゼットであった。


「ああ、すみません。ついつい、一人で仕事先に来ている様な感じでしたので、いつもの様に独り言を言ってました。」


 五郎はリゼットの呼びかけ声に気が付き、慌てて我に返った。


 何時もなら旅先で、駅や空港で何をしようかと独り言を喋って居る事が多かったので、先ほどついつい日頃の癖が出てしまったらしい。


「そうなんですか?確かに、旅先の目的到着までの合間時間や到着後にどうしようかと考えてしまうと成ると、知らず知らずのうちに、独り言を言ってしまうかも知れませんね。」


「話は逸れましたが、此処から何処へ向かうんですが?」


 

 今日の五郎とリゼットの二人は、デートに来ている訳では無い。


 勿論、そんな関係では無い。只のビジネスパートナーとして同行して来て居る。


 この二人は、南魚沼市周辺の伝統工芸品である塩沢紬と本塩沢と呼ばれる織物生地の商談に来ていた。


 リゼットも、県内の幾つかの地域を直接見て回る事で、商会本部への報告も詳細にレポートを作り、書類を通じて伝えられる。


 また、現物を直に見て触る事で、サンプル品やカタログだけでは見られない掘り出し物を発掘したいと言う思惑もあった。


「はい。これからスマホでタクシーを呼んで、地元商工会議所へと向かいます。」


「其処で塩沢紬と本塩沢の工房組合の幹部の人達が待って居ますから、今から其処へと向かいます。」


「分かりました。」


「あっ、確か・・・この辺りでは、魚沼産コシヒカリを使用した釜めしの店が在ったっけ。」


 五郎はグルメマニアで、地元で評判の美味しいや、旅先で偶々立ち寄った飲食店での食事をするのが趣味で、この辺りに評判の良い店が在ったの思い出した様だった。


「どうでしょうか、お昼過ぎには、打ち合わせが終わりますから、この仕事が終わった後に、釜めし屋でお昼を食べたら、近くに在る温泉にでも浸かって、それから新潟市に戻ると言うのは?」


「良いですね。お付き合いしますよ。この近辺はコシヒカリと言うブランド米のお米が、とても美味しいとも、良い温泉がたくさん在るとも聞いて居ますから、是非とも行きたいですね。」


「それに午後からは私の方も、急ぎの予定も有りませんで、丁度良いですしね。」


「分かりました。では行きましょうか。」


 五郎はタクシーを呼んで、リゼットと共に地元の地元商工会議所へと向かう。



 其処で五郎達はと言うと・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチっ!!パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチっ!!パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチっ!!パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチっ!!


(えええええぇぇぇぇぇーーーーっ!!!また・・・・これかぁっ!!)



「お待ちして居りました。重松さん。リゼットさん。私は塩沢紬組合長の中江です。」


「本塩沢組合の組合長、国恵です。」


「「お二人とも、どうぞ此方へ・・・・・・」」


「はい・・・・・」


「いやー、林家知事からお話を伺って居ります。」


「此方としても、このお話は非常に助かります。」


「何でも重松さんは、やり手の仲卸業者だとか、この未曾有の危機の中で、重松さんは、お国から依頼されたお仕事をバリバリとこなす、スーパービジネスマンなお方だとか。」


「我々の様な地方の工房経営業者とは違いますね。」


「いえいえ、そんな事は・・・・・・・・・・・・」


(ううっ、何処へ行ってもこんなばかり、もう誰かっ!!如何にかしてくれよおおおおおぉぉぉぉぉ、トホホ・・・・・・・・)


「やはり、重松さん本当に凄い人なんですね。」と生真面目で責任感の強いクールな性格をして居るリゼットは、目を輝かせて五郎の事を褒め称えていた。


(やっぱり、やり辛い。)とリゼットからの言葉も、チクチクと心に痛々しい程にこそばゆい言葉が響き渡る為か、非常にやり難いと心の中で呟く五郎であった。


 何せ、半分が取り引きを持ち掛けたり、取り引き先の地域の人が勝手に話をドンドン大きく誇張された話である為に、彼は仕事が非常にやり難いと感じていたからであった。


 五郎の会社は、一人経営の輸入雑貨代理店であり、それ関連の仕事を請け負って居る内に、余計な仕事を引き受けて行く形で、気が付けば仲卸業者兼リフォーム業者を含めた何でも屋に成って居たりする。


 また、去年の夏頃の話では、中学校時代の同級生であり、クラス委員長をして居た知人女性から、勤め先の地方高校で、講師をして欲しいと頼まれ、その高校の見出しポスターに書かれて居たのは、自分と似て顔をして居る似顔絵と世界を又に駆けるグローバルなスーパービジネスマンッ!!重松五郎っ!!語ると書かれて居た事に呆れてしまう事が有ったりする。


 そんな五郎の苦悩は、これからも続くのだろう。


 その後、 集まった一同は地元商工会議所内の会議室内で、塩沢紬と本塩沢各組合会が用意したサンプルを見せると、リゼットは真剣な表情で、一つ一つ見て触って品物を出来具合を確かめて行った。


「「・・・・・・・・・・・・・・・・」」リゼットは真剣な表情を見詰める商工会議所の組合長の二人は、唾をゴクリとのみこみ、緊張の瞬間を見守って居た。



 二人は是非とも契約を獲得したいと思って居たからだった。




「・・・・・・・・・・・決めました。全種類を下さい。」


「「「「「「「「「「・・・・・・・」」」」」」」」」」


「お支払いは、越後新潟銀行さんからで良いですか?」


「はい。それは・・・構いませんが・・・・・・・」


「では金額は・・・・・・・・」


 日本での商売を始めると決めた際に、フローレイティア輸送商船商会は、寄港地近くの銀行や東京大手銀行とのメインバンク契約を結んで居るので、金貨や金塊、それに宝石類が日本円との両替えが出来る様に成って居るので、商会幹部の社員であるリゼットは、小切手が何所でも切れる様に成って居た。


 

 フローレイティア輸送商船商会は、東京都の大手銀行で、東京都千代田区に本店を置く、三葉グループの三葉UFJフィナンシャル・グループ傘下の都市銀行の三葉UFJ銀行と新潟市を地盤に周辺地域に展開している地元銀行である越後新潟銀行とメインバンク契約を結んで居る。


 同時に新潟県を中心とした地方銀行の事で、地域に根差した経営をして居り、石川県・富山県・長野県北部・群馬県・山形県等に支店を措いて居る地方銀行とも業務提携を結んで居る。


 この話を持ち掛けられた、両者はこう思った「新世界の大陸に流通している金貨・銀貨・銅貨・宝石・希少金属類(金銀銅)等を逸早く入手して、新しい経済基盤を築けるチャンスだっ!!」と考え、フローレイティア輸送商船商会と契約締結に、扱ぎ付けた。



 この二つの銀行は、逸早く次の流れに乗る為に、フローレイティア輸送商船商会と契約したという実績を宣伝材料にして、もっともっと海外企業と契約を他社に先駆けて多く獲得する為の同盟とも言えたダッグ提携であった。



 リゼットは塩沢紬と本塩沢各組合会に対して、トンデモない金額を提示した。



 「「「「「おおおおおぉぉぉぉぉぉーーーーーーーっ!!」」」」」と言う組合会員達の声が会議室内に響き渡る。


 組合員達と職人さん達は、一緒に成って涙を流しながら、大いに喜んだと言う。



「重松五郎さんとリゼット・ダッカーヒルンさん。ばんざーーーい-----っ!!」


「ばんざーーーい-----っ!!」


「ばんざーーーい-----っ!!」


「ばんざーーーい-----っ!!」


「ばんざーーーい-----っ!!」


「ばんざーーーい-----っ!!」


「ばんざーーーい-----っ!!」


「ばんざーーーい-----っ!!」


「ばんざーーーい-----っ!!」



この様に見送りの時は、組合会の皆様に万歳三唱で見送られてしまう二人。


(大袈裟な気がするが、まさか地方の職人さん達が、此処まで困って居たとはな)


(まぁ、これで少しはマシに成ってくれる事を祈るばかり・・・・・・・あっ、そう言えば、そろそろお昼だっけ?)


(そう思ったら急に・・・・腹が・・・・減って・・・・来たな。)


 五郎は飯の事に成ると急に態度か急変する。


 空腹を満たす為に積極的に飯屋へと急ぐ事を優先して居まうからだ。


「リゼットさん。そろそろ昼にしましょう。」


「もう、そんな時間ですか?」


 二人はタクシーに乗って予定していた昼食先である釜炊きめし屋・コメ熊太郎へと向かった。



 アースティア暦1000年・西暦2030年・6月5日・午前12時45分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸東側地方・西太平洋地域・地球海洋諸国連合同盟勢力圏・日本列島・日本国・北陸地方・新潟県・南魚沼市・塩沢町周辺・釜炊きめし屋・コメ熊太郎にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 釜炊きめし屋・コメ熊太郎とは、塩沢町の国道沿いに在る魚沼産コシヒカリを使ったお米をわざわざ釜土で炊いたご飯中心とした様々なセットメニューで頂くという贅沢さと美味しさで評判の地元でも有名なお店である。


 これを食べに行べく、遠方からも足を運んで来るのだから、その味は確かなものと言えよう。


 五郎も仕事で近くにやって来ると、必ず立ち寄る一軒でも有るのだ。


「いらっしゃいませーっ!!何名さまでしょうか?」


「二名です。」


「それでは、お好きな席へどうぞ。」


 釜炊きめし屋・コメ熊太郎にやって来た二人は、川魚を焼く場所として使われ居る囲炉裏があるロビーへとやって来ると、店員が現れて好きな席へと言われたので、あぐらに慣れて居ないだろうとリゼットを気遣ってテーブル席へと案内して貰った。


 テーブル席からは、南方向には田畑が広がって居て、中々の長閑な風景が場を和ませてくれている。


「農村の民家を改装して、そのまま使うレストランなんて、聞いた事がありません。」


「そうなんでか?」


「ええ、これは我が国でも商売に成るかも知れません。」とリゼットは、商売繫盛に成りそうな種だと、釜炊きめし屋・コメ熊太郎の古い古民家形式のレストランを絶賛し、とても気にったらしい。



 五郎は料理を注文するべく、メニューを開く。



(うーん。久しぶりだし、何を食おうか・・・・・・)


(悩むなぁーー・・・・・・)


(川魚を使った焼き魚は絶対に外せない。これは決まりだとして、問題はメインディッシュのおかずを如何するかだっ!!)


(んん?!トンカツかぁ、確かに釜めしで、トンカツは美味いけど、うーんでもなぉ、トンカツは東京でも良く食べられるし、うーん。)


(いや、焦るな五郎。じつくりとメニュー見極めるんだ。)


(今の俺は何を食いたいんだ?俺の腹は何腹なんだ・・・・・・)


(・・・・・おっ?山菜とキノコ釜めしセット。味噌汁と鹿肉のメンチカツかぁ、これ良い。)


(鹿肉は都心でも中々食べられない代物だ。豚のトンカツをそのま食べよりは良いだろう。)


(ヨシっ!!決めた。)


「重松さんは決まりましたか?私は舞茸の釜めしと和牛ステーキセットにしましたけど。」


「はい。決まりました。」


「すいみませーんっ!!」


「山菜とキノコ釜めしセット。味噌汁と鹿肉のメンチカツと、後はヤマメの塩焼き、それと舞茸の釜めしと和牛ステーキセットをお願いします。」


「畏まりました。」


「楽しみですね。」


「ええ。」


 その後、二人は出て来た料理を堪能し、ビジネス関連の話嗚雑談を交えたお話しをしながら食事楽しんだ後に、温泉で仕事の疲れを癒したから新潟市へと戻つて行ったのである。 



アースティア暦1000年・西暦2030年・6月7日・午前10時30分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸東側地方・西太平洋地域・地球海洋諸国連合同盟勢力圏・日本列島・日本国・新潟県・新潟市・新潟港・フローレイティア輸送商船商会新潟県出張所にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 


 南魚沼市の一件から二日が経ったある日のこと、五郎はリゼットに呼び出された。


「ええっ!!出発するんですか?」


「すみません。本国と商会本部からの要請で、別件が入ったみたいなんです。」


「重松さんにも間も無く日本政府からお知らせが来ると思いますが、極秘事項扱いなので、今は詳細をお伝え出来ないんですよ。」


「では、この後は?」


「引継ぎの者達が来る予定ですので、そちらと引き続きお仕事をお願いします。私はフローレイティア輸送商船商会新潟県出張所では在りますが、第二商船艦隊の商隊の商隊長でも在るので、商会本部からの要請の有った別件を片付けてから、再びこの日本に戻って来る予定ですので・・・・・・」


「分かりました。では、引継ぎの準備を進めますね。」


「よろしくお願いいたします。」



 その翌日、五郎はリゼットを港で見送りに来ていた。


 供に過ごした時間が長かったので、せめて見送りをとの気遣いであった。



「宇宙戦艦ヤ●トってこんな感じだっ様な?」



 「さらば地球よ・・・」と言いたくなる光景で、フローレイティア第二商船艦隊の空挺魔導艦隊は、ブラキュリオス湖畔紛争の後の物資不足を解消させる為に、日本政府からの要請で、補強物資が満載された状態で、西へと旅立って行ったのであった。


 五郎は手振りながら、若かりし頃に見たSF映画を思い出しながら、リゼットを見送ったのであった。

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