外伝特別編 孤独な輸入雑貨雑貨代理店主の長い日々 4
アースティア暦1000年・西暦2030年・5月25日・午前10時30分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸東側地方・西太平洋地域・地球海洋諸国連合同盟勢力圏・日本列島・日本国・北陸地方・新潟県・新潟市・新潟港・フローレイティア輸送商船商会新潟県出張所にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
五郎とリゼットとの商談は尚も続き、カタログの内容は富山県のページへと捲られて行った。
日本人なら富山の薬売りと言う言葉を耳にする事が昔から有るだろうが、その伝統から医薬品の製造・販売が盛んな土地柄である。
製薬業は景気後退や高齢化社会の進行度合いに強く、ジェネリックブームの恩恵もあり、どんな時代の不況下の中でも安定している産業の一つだ。
五郎は日ごろの取引での付き合いで、富山の知り合いの製薬会社の社長や薬局チーン企業に務めている関係者たちの伝手で、処方せんを必要としない物や厚労省の管理下で輸出しても良い判断した薬品産物を生産して居る富山県を本拠地とする製薬会社の医薬品のカタログも別途の書類を取り寄せてリゼットに手渡して居た。
主に売り出す予定なのは、厚生省が輸出を認可した漢方薬や家庭薬品に分類される医薬品にあたる物が、今回売り出し許可が得られた品々をカタログに載せて居る。
簡単に分かり易く説明すると、一般的な町中に在るドラッグストア等の薬局店で売りに出されて居る品々と思って貰えれば良い。
オマケに化粧品すら、そのルートである程度の割引価格品を融通して貰えるらしいので、この取引に対する各メーカーの本気度が伺えた。
他にも高岡漆器、高岡銅器、越中和紙、庄川挽物木地等と言った伝統工芸品の生産地でも有る事付け加えて置く。
最後は新潟県の伝統工芸品である。
羽越しな布(うえつしなふ)
主な生産地は村上市等の地域で、主要製品は帯、タペストリー、小物等である。
価格も帯・220000円~、トートバッグ・7000円~、ポーチ 4500円~と成って居る。
新潟県の村上市、山形県の鶴岡市との県境の山里に措いて、シナノキ、オオバボダイジュ等の樹皮から採れる繊維で糸を作り、布状に織り上げたもので、ざっくりとした手触りと落ち着きのある風合いが特徴で、古くから地域住民の暮らしの中に育まれ来た伝統工芸品である。
村上木彫堆朱(むらかみきぼりついしゅ)は、村上市周辺で作られて居る伝統工芸品で、主な製品は茶器、花器、菓子器等であり、江戸時代に江戸から伝えられた技法を基にして生産して居る物だ。
朴(ほお)・栃(とち)・桂(かつら)などの木地に繊細な彫刻を施し、その彫刻をより引き立たせる為に、天然の漆のみを使って塗り重ねるという独特の塗りの技法を用いて居る。
代表的な堆朱は朱の上塗りを艶消しに仕上げ、落ち着いた肌合いが特徴な一品である。。
組合からの紹介文には「組合員による村上木彫堆朱を一堂に展示即売して居ます。館内には、お手軽にご使用いただけるお箸や、装身具を始めとして、茶托や菓子器などの実用品も多数取り揃えて居ますので、是非、この機会にお取引きを頂けましたら幸いです。」と書かれて居た。
製品の価格表の一覧も載せられ、茶托4寸5枚組・牡丹唐草・35,000円~から、鉄鉢型菓子鉢8寸・牡丹 19500円~から、朝顔型菓子鉢8寸 牡丹 13500円~からと書かれて居る。
その下に異世界人には珍しいと思われる新潟・白根仏壇(にいがた・しろねぶつだん)と言いう仏壇の産地からの取り引き先の紹介が載せられて居た。
新潟市周辺で仏壇を伝統工芸品とする生産地からのちょっと変わった紹介文が掲載されて居た。
それは仏壇の産地なのに「小物入」「ブローチ」「錦鯉蒔絵の箸置き」「彫金茶釜蓋置き」「蒔絵ネイルチップ」「蒔絵入小物(ライター、栓抜き等)」と言った木彫り技術を応用した小物作りの生産をして居る事であった。
この事にリゼットは興味が魅かれたのか、サンプルを届けて欲しいと言う事に成った。
使者を祭る祭壇を作る技術を以って作られた小物雑貨と言うのが、どんな物かと言うのに興味がそそられたのだろう。
新潟漆器(にいがたしっき)は新潟市・加茂市等で作られて居る伝統的な漆器製品で、膳・茶びつ・箸で、その始まりは江戸時代の初めに漆器作りが始まったとされて居る。
新潟漆器の特徴は、多彩な「塗り」だと言う。
特に竹塗りは下地の際に錆で竹の節等を作り、その上に色漆で竹の肌や模様をつけるという他の産地では見られない珍しい塗りで、本物の竹と見間違えるほどらしい。
今は伝統的な技術を継承しつつ、ステーショナリーやアクセサリー等、新たな商品開発に積極的に取り組むとともに、新規顧客獲得のため、地元専門学校や酒造会社等、異業種の団体と連携し、新潟漆器を使った食事やライフスタイルの提案を行って居ると言う。
名刺入れは13000円~から、8寸盆青銅竹塗は10000円~から、箸(竹塗、箱入)は3000円から書かれて居る。
加茂桐簞笥(かもきりたんす)は加茂市周辺で作られて居る桐箪笥の事で、加茂産地で桐簞笥が造られるように成ったのは、およそ220年以上前の天明年間の頃と言われており、江戸時代の末期に加茂桐簞笥として、全国に名を馳せ事と成った。
桐の木肌のぬくもり、絹に例えられる白い艶や柾目(まさめ)の色合いは、家具の最高級品の名に相応しい物と言えよう。
桐の美しさ等を生かしつつ、洋のインテリアにマッチしたテレビボードやソファ等、現代人のライフスタイルに合った商品を開発し、近年ではフランスのメゾン・エ・オブジェ、ドイツのアンビエンテ等、ヨーロッパ地域への販路開拓も積極的に行って居る。
伝統的総桐たんす 和たんすは50万円~100万円から、伝統的総桐たんす 小袖たんすは40万円~60万円から、モダン桐家具 チェストは40万円~60万円から成って居る。
日本でも最上級の木材を使ったタンスだと言うので、リゼットは西側諸国の上流階級に売り込むには打って付けだと判断。
この世界の各国等で見られるインテリア関連の品々から見れば、シンプルな見た目だが、細かい所にまで丁寧に作られた部分と機能性の高さに舌を巻くと言える部分が多く見られた。
五郎を通じて即決で、今ある在庫分を全て買い取りたいと連絡して欲しいと頼んだ。
「えっ?!今直ぐにですか?」
「支払いの事ならご心配無く。足りなければ近隣諸国の支店から搔き集めますから、直ぐにお願いしますっ!!」
「分かりました。」
五郎は自分が フローレイティア輸送商船商会との取り引きを担当すると伝えて有る加茂桐簞笥を扱って居る各製造元や組合に連絡をして見る。
(流石に今のご時世で、高級家具の桐箪笥が、そんなに数が在るとは思えないが・・・・・・・・・)と思いつつ、スマホで連絡を入れて行く。
すると予想外の反応が返って来た。
「ありがとうございますっ!!ありがとうございますっ!!直ぐにでも、市内で余って居る全ての在庫を新潟港へと届けさせますからっ!!」
「そうです・・・ええ、ええ、分かりました。では・・・・・・・・・・」
「直ぐに準備するそうです。」
「それは良かった。」
連絡を入れた加茂市内の製造元や組合から、泣いて喜ぶ声がスマホ溢れ聞こえていた。
中では万歳三唱を叫ぶ声の歓声が聞こえて居たりする所も有ったりする。
何でも転移災害の影響で、地球世界各地と細々と取り引きをして居たが、料金を払って貰った分とそうで無い品物の在庫で溢れ、中途半端に造り込んで居た物も如何するのかと思い悩んで居た所らしい。
其処へ異世界の商会からの大量注文が舞い込み、加茂市内の桐箪笥業者の皆様は大喜びと成った様である。
この様にして、フローレイティア輸送商船商会が買い付けたい見込んだ新潟県内の織物や鍛冶製品等の伝統工芸品の注文が相次ぎ、新潟県内はちょっとしたプチバブルと成ったのである。
この事は現新潟県県知事林家金平(はしやきんぺい)の耳にも入ると、大いに喜んだと言う。
林家地知事は「やはり、私の目に狂いは無かった。重松くんは、我が新潟県の救世主だっ!!」と言って名誉新潟県民賞と言う賞状と魚沼産コシヒカリ1年分贈呈する事を県議会で決めたらしい。
後に新潟県とオローシャ帝国 ・フローレイティア州領は、この経済交流が切っ掛けで、姉妹県州提携が決まり、互いの交流が盛んと成って行く事に成って、益々の経済関係の結び付きを強めて行く切っ掛けと成った出来事であった。
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