43話 ロリババア龍大帝様の気まぐれ旅 2

アースティア暦1000年・6月2日・午後13時05分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸・ユーラシナ大陸中央部地方・・ドラグリア山脈・ドラグリア山脈高原地方南部・山脈丘陵地帯・ドラグリア白龍大帝国・バラウール大要塞にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



この国の国境近くに在るドラグリア山脈は、ドラグリア白龍大帝国と言う国に取って防波堤にして最後の要塞でも在る山脈地帯。



 その山脈地帯の中には、無数の網目構造の地下空洞と渓谷を利用して作られた大秘密要塞基地に相当する砦や城塞がたくさん在るのだ。




 その要塞群には、人間に化ける時に使う更衣室と成って居る場所も在るのだった。



 今回の様な野生種の龍を集めて偵察飛行する場合にも使用される事も有る。



 但し、竜人族の中には、変身する姿を見られるのを隠す者等も居る。



 これは変身前の容姿を隠す意味も込められて居て、特に隠密行動を取って居る者は、素性を秘匿する必要が有るからだった。


 正体がばれたら個人的な一大事と成る為、こうした所に秘密裏に姿を変え得る為の場所を確保して置く必要が有った。


 変身関連の事柄に付いては、エリン本人は秘匿はしていない。


 隠密任務に付いて居る以外の者達は、公然と戦うのがドラグリア白龍大帝国の戦士とされて居るからだ。



 このバラウール大要塞は、ドラグリア山脈の中央に位置し、松や杉等の木々と険しい地形に隠れ、その洞窟を巧みに刳り貫いて作られて居る大要塞だ。


 その出入り口は、隠れる様にして、北側からの入り口や南の方角には、龍化した時の出入り口と空挺戦艦が出入りする物、人化して出て行く時の秘密の抜け道までと、その使用用途は様々であった。


 主要な入り口は 入り口は北に在り、その見た目は城その物なのだが、仮にも別荘と便宜上は言うが、完全に建前に過ぎないだろう。


 国内外へと発信して居る表向き理由としては、便宜上、大帝皇族の別荘と言う事に成って居る。


 此処に近付くには、数カ所の検問と許可状。


 そして、竜人族の特徴の確認と身分証が居るとされて居る。



 警備のセキュリティチェックが、とても厳しいので、敵国の間者の突破は先ず無理だろうと思われる。



 バラウール大要塞を訪れたエリンは、表向きは休暇を名目にして、別荘と証する城内に入った。



 此処は別荘ともされて居る建物、戦時には要塞に変わると国の重要な書類には記載されて居る場所でも在る。



 エリン達一行は、建物に入ると荷物を部屋に置く。



 そして、巨大な龍へと変身する為に、建物の地下へと降りて行った。


 地下には無数の通路と要塞としての機能に必要な施設、要塞に勤務している者達の個室の部屋が幾つも掘られて居る。



 エリン達は、特に大きな刳り貫かれて居る洞窟へと個々に別れて入って行く。


 其処は、龍に変身する為の専用の部屋であった。



この大きな部屋から外へと続く通路を出ると、白竜人の近しい龍族して、眷属の白龍族を中心として、様々な階級の龍族達が暮らす谷間へと出る事が出きる。



 此処から外に出れば、野性の龍と見分けが尽き難く成り、国境から南を警戒・監視が容易であるからだった。



その洞窟部屋の手前には、個別のロッカーが設置された更衣室がある。


 この更衣室で変身する為に必要な準備をする。



 と言っても服を全て脱ぐだけなのだが。此処で竜人族の変身に付いてある程度説明しておく。


 彼らの変身と言うのは、元々は擬態行為であった。


 竜人族は、魔力が高く元素物質を高次元で操ると言う特殊な能力を有する種族であるのだ。


 竜人族以外にも、この様な能力を扱える種族は存在するが、今は竜人族に付いてだけを話して置く。



 竜人族が他種族との交流をせずに、只の龍族として暮していた頃の話である。


 遥か天空を飛び回り、高山や環境の厳しい地域が生息域であった頃は、狩りをするか木の実や自然界で取れる餌で事足りていた頃である。




 それが、ある日の事である。



 山へとやって来た下界の人種が、龍族が縄張りとする地域へと進出をし始めると、ヒト族と龍族との激しい争いが生まれた。



 両種族の争いは、日増しに拡大して行った。



 その争いの結果、縄張り争いに人が勝った。



 それは何故か、文明を築き、大きな国家と言う組織を持って居た事が勝利の一因と成って居たからである。




この事を一部の龍族の者達は、人化変身と言う方法で情報を入手して居た。



 それまで龍族は、狙われない為に、或いは、偵察の為に、人化変身能力を使って来て居たが、この一部の勇気ある龍族の行いが、彼らの進化の歴史を劇的に変化させる事に成る。


 人間族を含む多数のヒト族達に取って、龍族と言うのは蛮族扱いであり、人類種の歴史で言う所の原人扱いをされて居た。


 そんな龍族に、ある考えが生まれたのである。


「我々も国家を、文明を持とう」と思い至ったのであった。


その為に彼らは、死に物狂いで完璧に姿を変える特訓をした。



 だが、どう言う訳か一部の部族の男だけは中途半端に化けてしまうのである。


 困った彼らは、女達を下界に送り込んで人間の血と知識技術を手に入れようと考えた。



 完璧に変身した女達ならば、他のヒト族達からも怪しまれずに、ヒト族の国家に潜入出きるし、行きずりの男の子供を身籠って帰郷も可能と判断を下したのである。



 それが凡そ1000年くらい前の出来事である。この時より龍族の中から竜人族への進化が始まったのであった。



 これより後は、世代を重ねる事により産卵して居た彼らの祖先は、ヒト族との交わりにより、妊娠が可能となる臓器を手に入れ始めたのであった。



 それだけでは無く、独自の進化を進み、龍と人の両方の能力を持った種族と成り、人の姿で徐々に暮らす様に成って行きつつ、遂に700年前には、国家の樹立が始まり出したのであった。



 これが龍族と竜人族との枝分かれをした歴史の概要である。


 龍族と竜人族は、共通の祖先と個々に枝分かれした部族が在って、各部族の肌の色が一色の色をして居るのだ。


 その色別に呼び方が有って、それらを色竜人と色龍族と呼称されて居る。



 この二つの種族らは、この世界の各地で、国や部族分かれて暮らして居るのだった。


 


その国家の一つが、ドラグリア白龍大帝国と言う訳であるが、この進化には欠点が有った。



 産卵を辞め、妊娠と人種の姿と文明を手に入れた対価として。生物として重要な欠点に・・・・・・・・



 それは何かと言うと、彼らは物凄く寿命が長い。


 それに加えて、気がとても長いので、非常にのんびりとした性格であり、戦いとも成ると気性も激しい所も有る性格をして居た。


 その種族的な気質のせいで、婚期が遅れると言う欠点が待って居た。


 即ち繁殖率が下がるのである。



 竜人族として、一度に産む子供人数は1から3人と言われて居る。



 これが龍族の産卵で有れば、20から30以上あったであろうと言われて居る。


 今でも卵を産もうと思えば可能だが、すっかり文明人と化した彼らは病院や自宅での出産が当たり前となり、今さら原始時代のやり方をやりたくないと思って居た。



 そして、現在は戦争の影響で種族が徐々に減りつつあり、人口減少に拍車が掛かって居る状態が続いて居た。



此処から話を現在に戻し、説明の続きをする。



 さて、皆は幻想世界の生命体が、変身能力を発現する時の解釈は、どう思って居るのだろうか?



 その一例として、龍族から枝分かれした竜人族、各地に散らばる色竜人族とも総じて呼ばれて居る。



 その一派がエリン達のドラグリア白龍大帝国に住まう白竜人族なのだ。


 完璧な龍化と人化の変身能力を持って居るのは、竜人族では基本は全てなのだが、高位龍族や色竜人族の女性のみである。


 何故かと言われても、ぶっちゃけ分らないとしか言いようがない。


 遺伝子の神秘万歳、生命の神秘、いい加減な世界設定とか色々と言い方も有るが、この世界の誰もが知らないし、分らないのだ。


・・・と言うか当事者である竜人族達も特に気にして居ない。



 一部の学者が人族に取り入る為に進化したとか言っても居るが、その真実は定かではない。


 ひょっとしたら、彼らを含めた特殊な亜人族の遺伝子は器用なのか、はたまた不器用と言う冗談すら言える位に謎なのだ。



変身する時に身に着けて居る物は、一応は脱ぐ事に成って居る。


 龍人族は魔力を使って元素粒子を巧みに操り、細胞や物質を変化させられる力を持って居る。



 細胞と物質を変化できる力を持った種族は限られて居る。



 龍人から龍化する時に身に着けて居る物は、鱗の皮膚へと変化する様に成って居る。


 この時に身に着けて居た物が、強固な鎧ならその分の防御力は上がる様に成る。


 その昔、今とは逆に変身した時代は、皮膚を服に変化させる事も有ったが、その服が酷く傷を負うと皮膚まで傷を付けると言う問題が出た事もあった。



 今は必要に応じて鎧等を身に着けて居るが、不要な時は身に着けていない素っ裸な格好で出歩いて居る事と成る。



 身に着けたくない理由は、物質を変化させるのも彼らに取っては負担となる事に有るからだった。



 其処で特に必要が場合は、龍化への変身時には、素っ裸と言う格好を取って居た。



 そんな理由が有るので、この様な施設の場所の出入りで、全ての男性の出入りが禁止と成って居た。



さて、エリンとユキカゼと30名の供回りを連れて、ニホン海軍の視察と言う名の見物へと向う事になる。


 そうそう、この事に関して各部署には、お忍びの視察旅行で通して居るのであった。



 その理由はとても苦しいが、それでも強引に通して居るのだった。


 同行する部下らが、先に部屋に入室するのを見送ると、居残った二人は話す。特にエリンは楽しそうである。




「かかっっ!!!久し振りじゃのう。この血が騒ぐ感覚は、くくくっ、久々に全力が出せるのじゃっ!!」



 エリンは普段、強すぎる力と溢れ出る魔力を押さえ付ける為に幼女風の姿を取って居る。



 もし、彼女が本気を出したら、大きな国の首都は灰燼に帰す事だろう。



「はぁ~、わたしは、龍化するのは、余り好きじゃ無いのだがな。」



 竜人は長い年月を掛けて文化的に成って居る。



 今や龍化を進んでするのは、軍人か武に才有る者だけであった。


 龍に成ったら、成ったで、人によっては本能的に暴れまわる者も居るらしい。


 それ故に女の竜人は、幼少の頃から龍の姿を扱う鍛錬に励むのだが、現在、男性の人口が下がって居る事もあり、見合いや恋愛する相手と言うのが人間に成っており、年を追う事に人間との婚姻関係が増加傾向に有った。



 まぁ、例え人間相手でも竜人族の子を産む事は出来る。


 この国では女が強いとされて居た。



 ユキカゼも含めて化物じみた姿を晒すのは、婚期を余計に遅らせると考えて居るの者が多いのだ。



 竜人族は、同族を相手には一回きりの結婚が多いのだが、人相手・・・・人間等に限ってだが、何度も結婚する事が有る。


 ユキカゼは580歳、政務と軍務に追われて結婚の経験が無かった。


 龍族と竜人族の寿命は長い。数百年から最大で3千年は生きられるとも言われて居るが、個人差が有るので、こうだと言う寿命の決まりはないし、計測された事も無いので、ハッキリとした事実は分からない。



 しかし、肉体的な衰えが来ない限り結婚の機会は十分に有るが、間も無く600歳を迎えるユキカゼが、一度も結婚の経験が無く、婚期が遅れると焦って嘆くのも無理はないのだ。



「つべこべ言うておる暇が、有ったらさっさと行くぞいっ!!!」



 エリンが指定された部屋へと消えて行くと、彼女も案内された部屋へと入った。


 部屋に入るとユキカゼは更衣室で服を脱ぎ、一つ向こうの広い部屋へと出た。



「すぅ、はぁ~、すぅ、はぁ~、すぅ、はぁ~、すぅ、はぁ~・・・・・・・・・・・・・・」



深呼吸で息を整え、龍化後の姿をイメージし、全身の細胞に命じる。



そして、全身に対して一気に力を込めて力み込む。


 この感覚を例えるなら、とある世界の宇宙戦闘民族が、金ぴかに光ってパワーアップすると言う感じに近いだろう。




「くっくくっ、くがあぁっ。がああっがっ・・・はああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーっ!!!」



 彼女の肉体の全てに血管が浮き出て居る。


 全身の筋肉と体が膨張し身長を徐々に大きくして行く。



「ぐっ、ぐぐぐっ、ぐがああぁぁぁぁぁーーーーーっ!!!」



熱い、熱い、熱い。全身の皮膚や肉が焼けるような熱さを感じる。


 白い肌は真っ白な鱗に変化し、頭髪が抜け落ちて行くか短く引いて行く感覚が感じられる。


 人間らしい顔立ちは消え龍らしい顔立ちに成って行く。


 体が前のめりの姿勢に成りつつ、柔らかな女性らしい体つきは、全て筋肉質な鱗の持つ別の姿へと変わり、手と足に鋭く尖った爪に変化して太く成って行くのだ。



「ぐあああぁぁぁっ、がががっ、があああああああ、クガガガガッッ、ギャオオオオーーーーン。」



雄たけびと同時に角が伸び尻尾が生え、背には翼が生え伸びて、それを高らかに広げると、其処には鋭い幅と爪、巨大な身体を持った全長が30メートルを越す龍が居た。



「はぁ、はあ、はぁ、ふぅーっ。何年ぶりだろう。この格好に成ってしまえば確かに疼く、でも気乗りがしないのはわたしの性格か・・・・・・・・・行くか。」



洞窟に女性らしい口調と野太い声の独り言が、静かに室内に響き渡って居た。


  ユキカゼは、翼を目一杯に広げて暗がりの洞窟を出口の方向へと飛び出す、青い空へと羽ばたき、南の外へと続く道だ。


 やがて一筋の光が見えて来る。



 その先には、真っ白な色をした数百の下級龍族達と同じ祖先を持った白龍族が飛んで居た。


 その中に変身を終えた護衛の白竜騎士団の白竜騎士達と一際大きく真っ白な白龍が飛んで居た。



「ユキカゼ遅いぞっ!!!貴様が最後だ。変身に何分掛かって居るのじゃ!!!」



「しょうがないじゃないっ!私は久し振りの龍化だったのよっ!」



「そう言えばお前は、政庁勤務に成ってから殆んど前線に出で居ないのう。」


「まあ良い。それで皆の者、久方ぶりの視察なのじゃっ!景気付けに雄たけびを上げろおおおぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーーッ!!」


「「「「「グオアァァァァァーーーーオオオオオオォォォォォォォォーーーーーーーーーーーンンッ!!」」」」」


同行する白龍騎士らは、エリンの号令で、出発前の景気付けの気合い入れと称した咆哮を上げた。



 エリンが先頭を切って飛んで行くと、白龍騎士と周りの野生の白龍族らは、付き従い供に南へと飛び去って行くのであった。

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