42話 ロリババア龍大帝様の気まぐれ旅 1

アースティア暦1000年・6月2日・早朝未明・アースティア世界・ユーラシナ大陸・ユーラシナ大陸中央部地方・ドラグリア山脈高原地方・ドラグリア白龍大帝国・首都ハイリッピン市・白龍大帝城にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



この日、ドラグリア白龍大帝国の大帝たるエリノア・ドラグリアこと、通称名エリンは、南方の国々に潜伏させて居る諜報部隊から送られて来た、各国々の情勢の定期報告を聞いて居た。



 諜報部隊は、他の亜人族と竜人族の一部の種族に備わって居る人の姿への変身能力を駆使して諜報活動を行って居る。


 その中で白竜人族こと、ホワイト・シャイニードラグリア族は、最強の種族と謳われる色竜人族の一角の一種部族の一つ。


 色竜人とは、世界各所に居構えている色を持った肌の竜人族達の総称で、白龍帝・赤龍帝・黒龍帝・黄龍雷帝、紫龍帝・緑風龍帝・青龍帝と様々な色彩の竜人族が居り、白竜人の長たるエリンもその一人である。


 リナも修行時代に色竜人族の長達に酷い目に会っている。


 何れの種族も完璧な人型への変身が出きるのは女だでけである。


 そんな高位の竜人族と共に有るのが、高位龍族であるが、中でも色龍族は色竜人に近い様々な肌色の付いた上位種の龍達の総称で、自分達よりも更に高位種たる色竜人達に従う群れも有るらしい。


 高位龍族とは、主に自然溢れる地方で野生に近い暮らしをしている上位龍種族の事である。


 それ以外は下級龍種とされ、知能はある程度有れども、身体的な能力はやや低い。


 それでも各種の人族からすれば、身体的な能力は上である。


 龍人族は、龍族から枝分かれして進化した種族で、人間の様な歴史を辿った亜人達の事である。


 そんな彼らの力を持ってすれば、完璧な人化変身する事など造作も無い事なのである。


この事は公には知られて居る事でも有るのだが、世界の共通間の暗黙のルールでは、儀礼的な場所や国境審査等を含む場所では、半獣半人で居るのが決まりで有るとされ、相手に対する誠意を示す為の礼儀と成って居た。


 これは変身能力を持っている他種族も似た様な決まりが在ったりする。


 


 さて白龍大帝の地位にあるエリンは、帝国が世界制覇の大戦を開始した年の生まれで、齢600歳の竜人族の大帝である。


 他の国で言えば、皇帝の地位に当たる。



 その普段の姿は、どう見ても幼女でしかなかった。



 その言い方も言い過ぎであるかも知れないが、どう見ても『幼女』である。



 ロリコン趣味のいや、紳士の諸君には、思わず崇拝してしまう位の可愛らしい幼女姿と威厳に満ちた「なのじゃ」口調のロリババアなのである。


 見た目は中学生位の背丈と言いたいが・・・・本当にギリギリの背格好である。大きな胸も無い、括れた腰もない尻も大きくない。



 本当の姿は、ボンキュッボンの肉体美を持った絶世の美女なのだ。



 普段の姿を見て居る自国民と諸国の人々から陰口で、ロリババアと言われて居たが、普段から幼女姿格好なのは、強力な力を抑える為だと本人は、公言して言って居た。



 エリンは諜報活動をしている女諜報員から南部諸国の報告・・・特にコヨミ皇国の情勢を詳しく聞いて居た。



 因みに、ドラグリア白龍大帝国に住まう部族の事を白竜人族と言うが、この白竜人族で完璧な人化変身が、可能なのは何故か女性だけである。


 他の竜人族も何故か女性が、人化を得意として居た。



「南方・西方・東方諸国の情勢報告は以上です。詳細は提出した報告書をご覧下さい。」



「ご苦労であった、下がって良いぞ。」



「はっ!」



  配下を見送ると、近くに居る直臣らと受けた報告と報告書の中身に付いての話が始まる。



 その相手は、この国の総司令官を意味するドラグリア白龍大帝国軍・統合将軍にして、ドラグリア白龍大帝国・国軍総務省を兼務するエリンの親友たるユキカゼ・コーキンが執務室に残り、コヨミ皇国に来たと言う鋼鉄の艦隊と鋼鉄の車の軍隊の報告を精査し始める。



「かかかっ!!彼のコヨミ皇国内が、何やら面白い事に成っとる様じゃのう。」



「面白がって居る場合か、今の状況では、敵か味方か分らないのだろう?」



 キツイ、ツリ目を更にキツくした目で睨むユキカゼ。



 だが、そんな程度では動じないエリンは、満面の笑みでニヤニヤと笑いながら報告書を読んで居た。



(あ~あ~、エリンのあの目は、新しいオモチャを見つけた時の顔付だ。)


(くくぅぅっっ!!胃がっ、胃がっ、胃がっ痛いっ!!これはきっとロクでもない事に成るぞっ!)



 目の前に居るエリンは、ユキカゼとは500年以上もの付き合いのある親友だった。



 自由奔放の性格して居るその親友の行動に、ユキカゼは、頭痛所か胃痛を起こさせる悩みの尽きない相手だった。



「おおっ!そうであった。これを受けとって居たのじゃった。」



彼女の懐から取り出したのは和紙製の手紙である。



 手紙の差出人はコヨミ皇国皇女である紅葉であった。



 それを見たユキカゼは、少々驚き目を丸くする。



「その手紙は?」



「コヨミ皇国の小娘からじゃ。」



「コヨミ皇国の紅葉様から?で、何と書かれて居るんだ?」



「それがじゃな。コヨミ皇国の近海に、異界からニホンなる国家が現れたと言うて来ておる。」


「更に南方にも、ニホンと同じ異世界から来た国々も在るらしいのじゃっ!」




「エリンっ!まさかっ!最初から知ってたのかっ?!何故それを早く言わないっ!」



 


「スマン、スマン。ツイツイうかっりして居っての。ちょっとだけ忘れて居たのじゃ!」


「忘れて居たでは・・・・・・・・」


「ごっ、コホン。それは・・・・由々しき事態では無いのですか?」



 ユキカゼは、悪戯ぽっく事態を面白がるエリンに大して怒るが、遠くでは従者や護衛の兵士が居る手前、親友としての態度から慌てて臣下としてユキカゼ戻るのだった。



「ユキカゼ、お主が懸念する様な事は起こらんっ!心配は無用じゃ!」



「何故ですか?」




「彼の国は、比較的温和な人種が治める国だと言う事が書かれて居る。」



「今は国交の交渉の最中だと言って居るのじゃっ!」



「各地の国家にも、似た様な手紙を送って根回しをしたとも書いて居る。あの小娘め、相変わらず打つ手が早いのう。」



「で、我らは如何が致しましょう?」



「そうさのう、折を見て接触するのが良いと思っておるのじゃっ!」



「ニホンとやらの判断材料は、コヨミ皇国の小娘とダバード・ロード王国の小娘の動きが活発に成って来て居るとの報告も在るからの。」



「その関係事で、面白い事が起こりそうなのじゃっ!」



(うっかりが多い割には、相変わらず耳の早い奴っ!こう言う所が癪に障るのよね。はぁ~・・・・・・・)



 ユキカゼは、いい加減な性格とうっかりがちょっだけ多い親友の『てへぺろ』な態度を見て、半ば諦めた様に心の内で溜息を付いて居た。



「それで・・・・その面白い事とは?」



 ユキカゼは、自由奔放のエリンの考えが分らず首を傾げる。



「諜報情報庁と外交省の知らせ以外で動きがあった。」



「それはダバード・ロード王国のアーヤの小娘からの手紙が来て居っての。近々パイプ・ライン大河をニホン国の海軍が遡上するらしいとの事じゃっ!」


「アーヤの小娘は、こうも言って居ってな。ワシに共にニホン行かぬかと、誘って来て居るのじゃよ。」



「えええっ!?陛下もニホンへですか?」


「アーヤ様が、ニホンへと赴くのは、外交の為と理解が出来ますが、ニホン艦隊は、ダバード・ロード王国へ何をしに行くのでしょうか?」



「詳しくは書いて居らんが・・・・もし、パイプ・ライン大河で、ニホン軍に遭遇しても迂闊な行動を取るなと書かれて居るな。」



「まぁ、バカ正直に国旗を揚げて、船を動かして居れば良いらしいぞ。」


「それとな。ニホン国旗と軍旗の絵図、ニホン国の事が書かれた二ホン国内情報案内書籍が送られて居るな。」


「どれどれ・・・・・・・・・おおっ!!これは凄いのじゃ!!!」



「たた、確かに・・・・・・・・」



送った絵図とは写真の事であり、日本政府がカタログと揶揄した本として印刷された中に載せられて居た物が送れられ来ていた。



 それを見た二人は、その内容に大変に驚いて居た。


 初めて見るフルカラー写真の絵図で、それ等を初めて見る彼女達に取って、それは衝撃的な内容であったのだ。



「ほほう・・・・この絵図は、本物をそのまま写し撮った様じゃな。」



「ええ、素晴らしい技術ですよ。これは・・・・・・」



「これを元に国中に振れを出せっ!パイプ・ライン川にて所要の有る者は、ニホン軍の呼びかけに対しては、大人しく従えとな。」



「では直に報せを出しましょう。所で先ほどの面白い事とは、ニホンの動きに付いてなのですか?」



「その通りなのじゃっ!」


「そ・こ・で・じゃ。どうじゃ、これから一緒に近くに来ると言うニホン海軍を見物せんか?」



「ななな、なっ、何ですってっ!!!艦隊の見物っっっうううぅぅぅぅーーーーーっ!?」



「そっ、そそそれはっ!如何なる考えで言って居るのですかっ!?陛下っ!!!」



「まあまあ、そういきり立つな。ユキカゼっ!」


「公然と見に行くは言うては居らんから安心せいっ!」


「それでもですっ!大帝と言う身分を弁えて下さいよおっ!!もうっ!!!」


「まぁまぁ、お忍びで行くのから平気なのじゃっ!!龍化して野生の龍族に紛れ込んでの物見遊山よ。」



「はぁ? ええええええぇぇぇぇぇーーーーーーーーーっっっっ!!??」



龍化とは、そのままの意味である。



 竜人族が、凡そ15メートル以上の龍の姿に変身する事である。


 変身後のサイズは、個人によって自在で有るが、個々人に由るサイズの変化の差も有るが、下は15メートルから上は30メートル以上のサイズも有ると言う。



 変身は個人差がある為に、一概にコレと言う決まった全長は無いとされて居る。



「なっ、なななっ!!何を考えて居るのよっ!!エリンっ!!!」


「貴女は只でさえ、敵対国から目を付けられて居るのよっ!!!例え貴女を倒せる者が居ないにしてもよっ!!!」



 余りにも無茶で大胆な行いと思ったユキカゼは動揺して、すっかり親友口調に戻ってしまって居た。



「護衛の武官も付けるから平気じゃぞっ!!政務なら妹等に任せて置けば良いのじゃっ!」



「セレノア様に政務を全部丸投げって・・・・・はぁ~、貴女って人は・・・・何を言っても無駄なのよね。」



「無駄じゃっ!それにいい加減この姿も窮屈じゃし、偶には羽を伸ばしたいのう。」


 それは文字通り羽を伸ばすと言う龍人族達共通の性質の悪い笑えないジョークを言うエリン。



「でも、ダメですってっ!!!」



 当然、ユキカゼは、どんな理由で有ろうともお忍びを却下した。



「やだやだやだーいっ!!!やだやだやだやだーーーっ!!!行きたい、行きたいっ!!!行きたいっ!!!行きたーいっ!!!」



「ユキカゼのいけずーーっ!!!もうっ!!!執務室ばかりに籠ってはかりの詰まらん政務ばかりは飽きたーーっ!!!」


「わしだって偶には、羽を伸ばしたーいーっ!!!お外行きたいーっ!!!遊びに行きたいーっ!!!」



 本音が駄々漏れで、ジタバタと動き回り駄々を捏ねる姿は、子供かゲーム風の異世界に転移してしまったと言う、何所ぞの女中堅ギルド長の言う姿と変わりない。



 こう言うときだけ子供みたいな事を言う奴は、ある意味ズルいが憎めない物だろう。



「はぁ・・・・分ったわよ。それじゃ、近衛や警備兵を集めるから大人しくしてなさい。」



「やったーっ!!!流石は大親友のユキカゼなのじゃっ!!!愛して居るのじゃぁぁーーーーーーっ!!」



こうなったら梃子でも諦めないし、言う事も聞かないエリンだ。



 仕方の無いと呆れ顔で観念したユキカゼは、各方面に色々な理由を付けて連絡を取るのであった。



 そして、その日の内にドラグリアの国境に移動したエリンら一向は皇族と女性上級軍人が主に使用する秘密要塞であるバラウール大要塞に入る。



 此処は男子禁制の場所とされて居る所であった。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る