外伝特別編 孤独な輸入雑貨雑貨代理店主の長い日々 2

アースティア暦1000年・西暦2030年・5月24日・午後15時35分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸東側地方・西太平洋地域・地球海洋諸国連合同盟勢力圏・日本列島・日本国・北陸地方・新潟県・新潟市・新潟港近くのビジネスホテルにて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 東京都・江東区内の某所にて、個人輸入雑貨代理店を営んで居る中高年の男たる重松五郎は、雑貨店とは名ばかりに近い感じで、仲卸バイヤー様な仕事して居る個人営業商店の店主である。


 本来は国内外のアンティーク雑貨を取り扱うのが本業なのだが、長年培って来た人脈の広さと、仲卸業者として腕前を買われて、扱う物が多岐に渡ってしまい。


 今や何でも屋に近い仕事人と化してしまって居た重松五郎。


 彼は同業者である鳴滝浩治が経営して居る個人輸入雑貨代理店・鳴滝カンパニーからの下請けの依頼を受けて、依頼を受けてから十日後に、様々な打ち合わせや品物の搬入作業の為に現地入りを果たし、新潟港近くのビジネスホテルで仕事をして居た。


「はい、はい。そうで御座いますか?はい、ありがとうございました。それでは、失礼を致します・・・・・・」


「ふぅー、新潟県の手工芸品関連と石川県の伝統工芸品、富山県の薬品に付いては、これで発注完了だ。」


「後は近隣の伝統菓子やありがちな大手メーカーのお菓子類か、伝統菓子は手間が掛かるからな。東京に居た時に発注済みにして置いた。」


「最初は作る事を賞味保存期間の事で渋られたが、魔法で如何にか成ると説明したが、余りにも突拍子も無い話で断れられる始末だったが、経産省と各自治体経由で話が通ると、断って来た菓子店達は、あっと言う間に『発注の方は、どれ位か?』と聞いて来て居たな。」


「俺でもダメだったのに、一体どうやったんだろうな。官庁の人達は?」


 五郎は首を傾げる話だったが、彼が担当することに成った新潟県を中心とした近隣に店舗を構える伝統菓子店等は、最初五郎からの電話での話を懐疑的に成って聞いた為に、取り引き話を断る店が多く居た。


 個人輸入雑貨代理店・鳴滝カンパニーがリストアップした異世界の国々紹介したい日本国伝統のお菓子と言うテーマにピッタリなお店のリスト一覧を五郎の手元へとメールで送信したデータに基づいて片っ端から電話を掛けたが、何処も梨のつぶての塩対応。


 どの店からも、とても冷たい対応が多く見られた。


 実はこれには理由が有った。


 ぶっちゃけて言えば、何処も経営に余裕が無いのに、そんな所へ下手をすれば大量の在庫を抱える可能性が有るのに、その話を聞いた天主たちは、見知らぬ事も無い個人営業代理店主から電話掛けて来たら、警戒心から詐欺師か損しかない商売話だと思い込んで、断ってしまったらしいと言うのが事の顛末だったりする。


 それが一転してのは、五郎が鳴滝に駄目だったと報告をした後だった。


 鳴滝は「ああ、それなら平気だ。そうなる事を見越して、経産省経由で手を回して置いた」と聞くと、それから暫くしてから、五郎のスマホとパソコンのメールがパンク寸前に成るくらいの返事が返って来た。


 五郎は嬉しい悲鳴を上げながら、仕事をこなして行く。


 それらの対応が落ち着く頃を見計らって上越新幹線に飛び乗り、新潟県へと赴いたという訳だった。



「まぁ、それはそれとして、大手メーカーの方は明日届く筈。こっちは経産省経由で話が回って居るから、搬入作業が始まる前に確認すれば良い。」


「しかしなぁ~、とうとう本当に何屋をして居るのかすら、怪しく成って来たな。俺の店は・・・・・」


 自分でも前から分かって居た事だが、自身が人が良い性格のせいで、客に断ると言う事をしなかった不始末と言うか、放置して居たツケが、今さら自分を助ける事に成ろうとは、『人生は何が起こるか分からないなぁ~』と思う五郎だった。


 それに今の新潟市と新潟港は、特需に沸いて居た。


 突如として現れた空中船の来航で、新潟市は一時期の混乱は見られた物の。


 今や町おこしにしようと言う動きも見られるくらいに、異世界の空挺魔導艦を相手の商売が盛んだった。


 地元を含めたテレビ局や新聞社にその他雑誌社の取材が来るように成って居た。


 フローレイティア輸送商船商会は、 三葉重工・三葉造船重工・カワカミ重工・上州十字星重工業株式会社(現スバル星重工)。


 モトダ技研工業・常陸那珂製作所・・・・等々を含めた日本国が誇る数多くの重工業と造船会社と航空機関連の会社は、日本政府の要請を受けて名乗り上げていた大手工業メーカー各社は、機材や技術者を新潟港に派遣し、造船所ドッグでフローレイティア第二商船艦隊30隻の内、新潟港には10隻が停泊して急ピッチ改修工事が行われて居た。


 残りは福岡市の博多港と広島県の呉市の呉港で改修工事を受けて居る。


 その間の時間を使って、フローレイティア輸送商船商会の社員らは、日本での商業活動に勤しんで居た。


「あっ!?そうだった。今日は新潟県庁の産業労働部に打ち合わせ会議に出向かないと行けなかった。」


 五郎はやり掛けの仕事を手早く片付け、身支度を整えると、新潟県庁へと飛び出て行った。


 幸いな事に、予約していたタクシーが時間通りに来ていた為に、会議に送れずに済みそうであった。



 アースティア暦1000年・西暦2030年・5月24日・午後16時11分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸東側地方・西太平洋地域・地球海洋諸国連合同盟勢力圏・日本列島・日本国・新潟県・新潟市・新潟県庁にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



五郎がホテルから出発してから凡そ30分後のこと、彼は新潟県庁へと到着する。



 急いで県庁の正面玄関を入って打ち合わせが予定されて居る会議室へと急ごうと、庁舎内へと飛び入る。


「いやー、待ってたよ、重松くん。」


 突如として近寄って来た、やや大柄な初老の男性が五郎の手を握り待ち兼ねて居たと言いつつ、更には大歓迎だと声を掛けて来た。


「えっ?!(誰だっけ?)」と五郎は首を傾げる。


 本当に知らない人だった。


 五郎はポカンとした顔に一瞬だけなった顔を直ぐに切り替え、冷静を装いながら彼は回りを見渡すと、どうやら地元出身者の名士らしい事が分かる。


 

(はて?この人・・・・・・県会議員か市会議員の人かな?)


(オイオイ、止めてくれよ。アポ無しサプライズでの出迎えは・・・・・)


(全く鳴滝の奴、この事を知って居るのか?俺は聞いて無いぞっ!!)


 五郎は心の中で抗議の声を上げて居たが、目の前の人物が何所の誰かすら分からないので、取り敢えずは黙って居た。


 因みに鳴滝と言う男は、五郎に依頼する仕事に限って、必ずしも面倒くさい人物が居る所へと行くように仕向けて居るのが定番と成って居た。


 今回も毎度お馴染みなパターンであると察した五郎は、黙って成り行きに任せるしか無かったのだった。


「林家知事、重松さんが困って居ますよ。」と秘書らしき人物が声を掛けて、林家知事と呼ぶ人物が興奮して居るのを宥めて来た。


「ああ、それは済まなかった。この新潟が転移災害の影響で困窮してしまって、大変な不景気な状態に成ってしまって居る。」


「其処に彼の様な中小企業の営業マンが乗り込んで、如何にかしよう奮闘して居る事に、想わず感動してしまってね。」


「嬉しくて、ついつい興奮してしまったんだよ。」


(えええええええぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーっ!?何時の間にか、そんな大きな話に成って居るんだよおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーっ!!)


 ちゃらーんと言いそうな感じの落語家と良く似た感じの雰囲気をして居る林家金平・新潟県知事は、五郎が新潟県を中心とした仲卸業者としてやって居る仕事の活動の事を景気が低迷して居る地方自治体を救う起爆剤だと思って居る様だった。


「いやー、君の名は鳴滝くんから聞いて居る。きっと我が新潟県だけでなく、全国の地方再生に尽力するやり手だとね。」


「ああ、そうですか、鳴滝がですね。(鳴滝の奴っ!!毎度の事ながら、覚えて居ろよなああああぁぁぁぁーーーーーっ!!!)」と営業スマイルで、鳴滝に対する恨み節を心の中で呟く五郎。



 如何やら鳴滝が、林家知事に対して、五郎の仕事振りの事や色々と厄介な仕事でも出きると、五郎の事に付いての紹介話を誇張して言いふらして居るらしい。


「ともかく、今回の一件では、本当に助かって居るんだよ。今回、打ち合わせ会議には、石川県知事と富山県知事からも、とても期待して居るから、くれぐれも君に宜しくと言われて居てね。」


「分かりましたお任せください。(くそっ!!あいつっ!隣とその向こうの近所にまで手を回して居るなっ!)」


「林家知事、そろそろ会議のお時間です。」


「ああ、そうだっな。それで重松くん。この仕事を頑張ってくれたまえ。」


林家知事に見送られ、五郎は会議室へと向かったのだった。



「重松さん、お待ちして居りました。」


「今日はよろしくお願いします。」と五郎も挨拶を返した。


「皆さん、この方が重松五郎さん。我々の救世主です。」


「「「「「おおおおおぉぉぉぉぉぉーーーーーーーっ!!」」」」」


 会議室へとやって来ると、産業労働部に所属する県庁職員達や取り引き話を引き受けた、五郎が担当する事に成って居る各地域の商工会議所の代表幹部達が、次々と挨拶をしながら名刺を手渡して行く。


(ホンと、此処まで持ち上げらると、麻痺して来るもんだ。)


(それに100人を超えて来ると、誰がだれだかが分からなくなる。)


 営業の挨拶で面倒くさいのは、顔と名前である。


 まぁ、これはどんな職業でも同じでは有るが、一番に面倒くさい事でも有るが、ある程度は把握して置きたいと五郎は必死で覚えようとするが、半分程度が限界だったりする。


「それでは会議を始めます。」


「全体の流れてとして・・・・・・・・・・・・・」



 司会進行役の新潟県庁・産業労働部に所属する県庁職員が話始めて行く。


 五郎は聞き逃しが無い様に、大事な会議内容を後で聞き直す事も考慮して、録音機を作動させた。


(ふぅー、どうも挨拶をって奴は、どうも苦手なんだよなぁ~)


(それも複数人を相手にするのは、特に・・・ふぁぁぁ~、あっ!?イケないっ!!)


(昨夜の資料整理の疲れが急に来て、眠気が・・・・・・・・)


 コックリ、コックリとしながら五郎は居眠りを始めてしまう。


 人の長話って奴は、酷く眠気を誘うのは、良く有る話。


 うたた寝を始めた五郎は、暫し夢の中へ・・・・・・・・・・・・・・・・



数時間後・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「重松さん。重松さん。重松さんってばっ!!」



「・・・・んん、うーん・・・・・はっ?!」


「あれ?」


「終わりましたよ。如何やら会議終盤でダウンしてしまったらしいですね。」


「えっ?!それは申し訳ない。本当に済みませんでした。」


「いえいえ、それはそれでご多忙と言う事ですね。いやー流石は東京の方は身体がくたくたに成るまで働いて居りますからな。本当に働き物ですなぁ~」


「ええ、まぁ・・・・・・(って、ええええぇぇぇぇーっ?!)」


 うっかりして、やってしまったと思って反省をして居た五郎が、辺りを見回すと、うたた寝をして居る人達がちらほらと見受けられて居た。


「どうやら皆さんも今回の取り引きを成功させる為に、大変なご苦労を為さって居る様子で、この通りですよ。」


(うっそーっ!!)と心の中で叫んでしまう位に五郎も呆れてしまう。


 その後の県庁職員の話を聞く限り、会議は何とか終わったらしく、五郎は暑苦しい林家知事と県庁職員に県議会議員の皆様に万歳三唱で見送られて、新潟県庁を後にした。


のだが・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「ああ、そう言えば、忙しさにかまけて、今日の昼飯、抜いて立ってけ。」


「そう思いだしたら、何だか急に・・・・腹が・・・減って来た・・・・・・・・・」


 忙しさにかまけて、空腹な事を思い出した五郎の腹の虫は、急に食べ物を寄こせと大合唱で騒ぎ出したようである。


「ヨシ、飯にしょう。」


「今日は何を食べようか?」


 五郎は宿泊して居るビジネスホテルには戻らず、その足で新潟市内の飲食店街へ向かうのであった。

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