外伝35話 ミンフィル王国東南諸国同盟編 魔神賢王と呼ばれた男 6
アースティア暦998年 ・6月20日・午前11時15分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸東南部・レノア地方・レノア地方西部・カレールーナ平原盆地地方・カレールーナ平原盆地・カレールーナ帝国 ・帝都・アリシルク市・アリシルク城にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
セラルーノ王国が、レノア地方東南諸国商業連盟条約に加盟する事と成ってから、更に三ヶ月が経過した頃の事である。
ユーラシナ大陸東南部・レノア地方の雄であるカレールーナ帝国で新たな動きが起ころうとして居た。
この国はユーラシナ大陸東南部・レノア地方・カレールーナ平原盆地を中心とした、アースティア世界に措いては、中堅クラスの国力と国土を持った帝国の一つで、南にブレジレント山脈。
北東部にガバラ山脈、その反対側に位置する北西部にはオイリオ高地大地山脈が並び、その中間点の合間にあるのがナルド大河と呼ばれる大河が流れ出て居る。
この大河は北から南西地方へと横断する様に流れるナルド大河が流れ、山脈地帯の緑と、とても良く肥えた穀倉地帯を有し、東西南北へと伸びる街道と大河を利用した貿易で、莫大な税収を得て居るが、レノア地方最大の国家であるカレールーナ帝国であった。
そして、ローラーナ帝国が盟主と成って居る西方バルバッサ帝国同盟に加盟し、世界に覇を唱えんとする帝国に忠誠を誓う事で、カレールーナ帝国は、ユーラシナ大陸東南部・レノア地方を我が物にしようと長い年月を掛けて着々と勢力圏を拡大させて居た。
その目論見は大当たりをし、ローラーナ帝国が東へと勢力圏を伸ばして行く事を見据えて、250年ほど前にローラーナ帝国と皇帝を盟主帝国とし、その傘下での国家の安定と命令権を受け入れると言う西方バルバッサ帝国同盟への加盟条約を締結。
ユーラシナ大陸東南部・レノア地方を中心とした地域周辺の切り取りと属国への統治権を認める特権を持ってして、同地の支配圏確立を目指して戦争を繰り返して来た。
だが、アースティア大戦末期に措いて、アースティア国際平和維持連合機構 (国連)に加盟し、ミンフィル王国が参加したアースティア国際平和維持連合機構軍に由るユーラシナ大陸東南地方攻略作戦により、滅亡してしまう未来が待って居るが、それはまだまだ少しだけ先のお話。
そのユーラシナ大陸東南部・レノア地方の雄たる属国帝国の首都たる帝都・アリシルク市は、帝国の庇護と自らの利権拡大に成功し、カレールーナ帝国史上最大の繁栄を謳歌して居た。
帝都・アリシルク市は、カレールーナ帝国の帝都で、中世ヨーロッパ風の様な造りをして居る街並みが広がる都市で、大理石を始めとする岩石を利用して作った皇帝城・アリシルク皇帝城と官庁街を基点に、ローマ市のような街並みが四方へと広がる大都市である。
その中心には、カレールーナ帝国の皇帝の居城たる皇帝城・アリシルク皇帝城が聳え立って居る。
皇帝城・アリシルク皇帝城とは、帝都・アリシルク市の中心にに聳え立つ大理石をふんだんに使用した巨大な居城の事で、複数の塔が立ち並び、そのど真ん中には西洋風の館御殿が皇帝一族の住まいと成って居る。
皇帝執務室では、ラガート・カレールーナ皇帝が、豪華絢爛な椅子と机を使いつつ、臣下と共に政務に勤しんで居た。
今日は先のルナック大封鎖解放戦争と呼ばれた戦争を征し、益々の繁栄と勢力圏を拡大させつつあるミンフィル王国を如何するのかを話し合って居た。
「レノア地方東南諸国商業連盟条約か・・・・・・・・・・・・」
「はい。全く以って厄介なやり方を、これでは彼の国に対して、迂闊に戦すら仕掛けれ無く成ってしまいましたな。」
ラガート皇帝は、アッシモフ・ル―ドウィン・カレールーナ帝国宰相とゲルヴァン・サリードス・カレールーナ帝国軍参謀総長と共に、対ミンフィル王国に対しての次なる打開策を模索して居た。
「全く、イリナの奴目は、厄介な男に惚れよってっ!!」
旧ミンフィル王国 の国王、ザグナード・ミンフィルに嫁がせたイリナ・カレールーナ・ラーシルズは、ラガート皇帝の次女で、先の妃であるマリーゼの忘れ形見でもあった。
カレールーナ帝国の代々の皇帝は、ユーラシナ大陸東南部・レノア地方での覇権を取る事に固執して居り、我が子の幸せなんぞは、優先順位の最下層に置かれて居た。
そんな中でイリナは、年老いた50代半ばの慰み者に成る寸前の所で、ユーゴによって婚約者を討ち取られしまうが、その場でユーゴに惚れ込み、そのままベットへ・・・・・・・・・・・・・・・・
実家を裏切って女の幸せを手に入れた事を実家の家族や親族に臣下の者達は忌々しく思うのは当然の事であろうと思う。
「確か噂では、お子が生まれるかも知れないとか・・・・・・」と不意に口にしてしまったのは、カレールーナ帝国軍部諜報局の長官であった。
「ワシはあんな卑しい蛮族の男の孫なんぞ要らんわっ!!」
ラガート皇帝は執務室の壁や天井がカタカタと音を立てしまう位の怒鳴り散らしてしまった。
何でも噂じゃ、毎日毎日、暇さえあればベットでラブラブして居るとの噂が、後を絶たないらしい。
と言っても、イリナが一方的に性行為の主導権を握られて居る為に、ユーゴは抵抗するのを止めただけだったりする。
それでも子供が出来たと言う噂は、全くの出まかせだったりする。
それ位にアツアツ夫婦と振りを国内外に噂に成るほどの熱愛プッリと言う関係が出来上がって居たからだった。
(くっ、変な所がマリーゼの奴に似て居おってっ!!)
先の妃であるマリーゼ王妃は、政略結婚で嫁いで来た地方貴族の娘だったが、ベットの上では信じられない程に男を攻め立てる豪胆な肉食美女であった。
それ故か、3人の娘を産んでから数年後、ポックリと先立ってしまう。
もしかしたら子供を産み切った事で、母親として使命を全うし、寿命が削られたのではと言う噂が立てたられたくらいに優秀で美貌が溢れる王女達を残した。
その血筋はイリナにも受け継がれて様で、強い男に身を捧ぐ事が強く優秀な子孫を残せると最初から知って居る様な感じにも見られた。
因みにフェミリア魔女王国とマジョリカ・フェミリアに付いても、此処で解説して置く。
フェミリア魔女王国とは、600年前までユーラシナ大陸東南部・レノア地方・カレールーナ平原盆地南東部に在って栄えて居たフェミリア魔女王国の末裔で、アースティア大戦が始まってから70年後のこと、カレールーナ帝国に攻め込まれ、フェミリア魔女王国の女王であったマジョリカ・フェミリアは、当時のカレールーナ帝国の皇帝であるラルバート・カレールーナに、強引に手籠めにされたと言う。
その目的には、マジョリカ・フェミリアを始めとするフェミリア魔女王国の女系にだけ備わって居る膨大な魔力をカレールーナ皇族に取り込む事であり、それを持ってしてフェミリア魔女王国の魔導技術の数々を独占する根拠とする為である。
それ以降フェミリア魔女王国の王族一族は、カレールーナ帝国の貴族家の一つであるフェミリア公爵家とされ、代々皇帝に女子を差し出す役目を担わされて居る。
マジョリカは、フェミリア魔女王国の最後の女王であった人物で、20歳でフェミリア魔女王国の後を継ぎ、23歳の時に祖国が滅亡して居るが、マジョリカ・フェミリアとフェミリア魔女王国は、邪神戦争にも参戦して居る国家で、アースティア暦395年当時、マジョリカは15歳で最終決戦に参戦し、戦果を上げた英雄の一人と成った。
しかしながら、その晩年の日々は、栄光と平和とはかけ離れた物と成ってしまった。
カレールーナ帝国が戦後の勢力拡大政策に舵を取った事で、真っ先にフェミリア魔女王国は狙われ、マジョリカ・フェミリアとフェミリア魔女王国は、抵抗を試みるが、邪神戦争での国力と軍事力の低下して居る現状では、如何に力強い能力を有するフェミリア魔女の女達と魔導技術が有ろうとも、滅亡は免れなかった。
そんなマジョリカは、カレールーナ帝国軍の捕虜と成り果て、600年前のカレールーナ帝国の皇帝であるラルバート・カレールーナに、ベットへと強引に引き吊り込まれ、夜伽の相手とされてしまう。
その夜伽では、妖艶でナイスバディ身体つきをした温和な性格をして居た淑女であったが、泣き叫び、強姦行為をされるの中で、ベットの上では信じられない程に乱れたとの逸話が残って居る。
そんな日々が7年間も続き、妾として7人の女の子を産み、その最後は最後の女子を産み落とした際、恨みの言葉を残して死んだと伝わって居る。
何時かは必ず、我が血筋を引き継ぐ魔女たちが、カレールーナ帝国と皇帝一族を滅ぼしてくれようとね。
その断末魔の死因は、乱暴な性交行為と連続出産による衰弱死とされて居る。
そのマジョリカは、カレールーナ帝国の貴族家の一つであるフェミリア公爵家の祖と成り、今でも、その子孫たちは、カレールーナ帝国の奴隷の様な扱いを皇帝一族から受けながら血筋を現代へと繋いで居る。
その一族は何れも妖艶でナイスバディ身体つきをしたベットの上では信じられない程に男を攻め立てる豪胆な肉食美女が産まれる事で有名な一族と言われて居る。
だが、この血統こそが、皮肉にも父親と実家の一族の没落の始まりを意味する事に成ろうとは、何とも皮肉な話である。
「それはさて置き、ラガート陛下。ミンフィル王国をこれ以上の国力と勢力圏の増大させる事は、我がカレールーナ帝国のユーラシナ大陸東南部・レノア地方に措ける覇者たたらんとする悲願である。レノア地方統一計画を完遂させる計画の大障害になり兼ねません。」
「ゲルヴァンっ!何か策が在るのか?」とラガート皇帝は、腹心の一人たるカレールーナ帝国軍参謀総長のゲルヴァン・サリードスに対して、何か策は無いのかと聞く。
ゲルヴァン・サリードスとは、カレールーナ帝国宰相派閥に属するカレールーナ帝国軍参謀総長で、カレールーナ帝国と宰相派閥に優位な策略と献策を練り上げる事を重視して居る人物。
ルナック大封鎖によるミンフィル王国の封鎖国作戦は、ゲルヴァンによる進言であると言われて居る。
「はっ!!クララ王国・テルリーナ部族国・フェルニー部族国等の在るクララ地方とクララ湖畔一帯の争乱を利用し、レノア地方北西部に対して軍事介入制圧をする計画を進めて居ります。」
「その地域に在る各国では、国内外に多くの山積する問題点を抱えており、対外的にも、お互いに憎み合って居ります。」
「ほう、その隙を突いて、一気に、レノア地方北西部地域を制圧し、我が帝国の勢力下に取り込もうと言うのだな?」
「その通りです。」
「中々の悪知恵だなゲルヴァン。 よしっ!!彼の小僧めが次なる手に動く前に、先手を打てっ!!」
「はっ!!必ずや良い結果を報告してご覧に入れます。」
ラガート皇帝は、腹心の一人たるゲルヴァン・カレールーナ帝国軍参謀総長の進言により、進める事に成った、レノア地方北西部に対しての国家乗っ取り計画を推し進める事と成った。
ミンフィル王国の戦いは、此処から更なる時代を動かす、戦火へと発展して行く事に成る。
アースティア暦998年 ・6月24日・午後19時15分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸東南部・レノア地方・レノア地方北西部クララ地方・テルリーナ・グルダーノ荒地平原とグルダーノ常闇森林地帯の東部地域境界線上・テルリーナ部族国・首都バビル・バビル要塞塔城にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
カレールーナ帝国軍参謀総長のゲルヴァン・サリードスは、クララ地方を中心としたレノア地方北西部をカレールーナ帝国の勢力圏とするべく行動を開始する。
同地域はクララ湖を北側に置くクララ王国を中心にして、北西部にフェルニー部族国。北東部にテルリーナ部族国。
南東部にナカハラドラス部族国。真南にレノア中央都市国家連合国。 南東部にはカレールーナ帝国の東隣国であるメガテリア公爵国に囲まれて居る。
同地は荒地平原を中心とした土地柄で、絶えず水や食料と鉱山地帯を巡っての争いが絶えない地域であった。
ゲルヴァンは、先ずは北東に在るガバラ山脈を越えて、クララ地方北東部に位置する魔族の部族国たるテルリーナ部族国へと入ると、真っ先にテルリーナ部族国総長の下へと向かった。
祖国たるカレールーナ帝国を出発してから一週間ほどで、テルリーナ部族国の首都バビル市・バビル要塞塔城へと到着する。
首都バビル市とバビル要塞塔城とは?
石造りと土壁の街並みが広がる中心都市の中に、東京タワーと同じ高さを誇る巨大な塔を中心とした巨大城塞のど真ん中に、バビル塔と呼ばれる塔が聳え立つ。テルリーナ部族国の首都都市で、タワー型の要塞城であるバビル要塞塔城は、籠城戦に使う拠点でありながらも、部族長の住まう居城である。
ゲルヴァンは、案内人に城内へと通されると、バビル塔の最上階にある謁見の間へと到着する。
其処には魔人族と悪魔族と飛天魔族とのクォーター系の魔族、俗にこの世界人々が言うテルリーナ部族達が居並ぶ中で、ショートヘアー風のヘアースタイルと羊風の角を有し、165センチほどの背丈と背中に堕天使の様な漆黒の翼を生やし、整ったナイスバディな身体つきを有して居るのが、テルリーナ部族の部族総長たるラディアーネ・テルリーナが立って居た。
「くっくっくっ、良く来たなカレールーナ帝国の若造よ。 我が名はラディアーネ・テルリーナっ!!」
「このテルリーナ部族国を治める三代目部族総長にして、やがてはクララ地方に覇を唱え、何れはアースティア世界の全土へ進出し、この世界を漆黒の闇に染める者っ!!」
「今宵、貴様が我が国に訪れたのは何様か?」と中二病と中二病セリフ全開で、カッコ良く決めたラディアは、偉そうな態度と上から目線でゲルヴァンを玉座から見下ろしていた。
(相変わらずこの頭の可笑しな魔族蛮人共は、頭の可笑しなアセリア族の聖天使騎士共の様に訳が分からんっ!!)
(本当なら進んで接触するのは面倒な事だが、その力はある意味、本物だからな。)
(成らば、あの成り上がりの魔人王への利用出来る手駒の対抗馬として、精々存分に利用してやるまでだ。)
黒々とした企みを己が峰の内に秘めつつ、ゲルヴァンは、頭の可笑しなアセリア族の聖天使騎士と揶揄され、その対極に位置する様な中二病共相手に、これと言う一手の一計を打つ。
「おおっ!!偉大なるテルリーナ部族国を治める三代目部族総長、ラディアーネ・テルリーナ部族総長殿っ!!」とゲルヴァンは、中二病風の社交辞令の挨拶から入る。
まぁ、其れぼっい台詞とポーズまでしてしまう念の入り様であるが、これが此処以外の者達に見られたのなら、大変に恥ずかしいポーズとセリフを言ってしまって居る自分に、赤面してしまうだろう。
「実は我が国、カレールーナ帝国は、貴国にクララ地方を治めて頂くたく、同盟条約のお話を持って参った次第なのです。」
「ほう、この我の力を求めてか?」
「その通りです。」とゲルヴァンは、白々しく適当に話を合わせる。
ラディア達の力を求めたのは本当なのだが、真の狙いはクララ湖を北側に置くクララ王国を中心にして、北西部にフェルニー部族国。北東部にテルリーナ部族国。
南東部にナカハラドラス部族国の4ヶ国をそれぞれを互いに争わせ、其処へカレールーナ帝国が大軍勢を率いて介入し、クララ地方を我が物にする事が彼の真の狙いだったりする。
その中でも一番に厄介なのが、核兵器並みに町一つ消し炭にしてしまう魔法力を有した魔族、テルリーナ部族だった。
ゲルヴァンは、彼等を一時的な味方に引き入れる事で、クララ地方を統一して奪い取る先兵とする事で、同地域の戦いをカレールーナ帝国が有利に事を進めて行ける様に事に在った。
後は適当にあしらいつつ、弱り切った所を襲えば、如何なる力と身体能力を有する魔族でも一網打尽にしてしまう事が出きると彼は見込んで居た。
「我が主たるラガート皇帝陛下は、偉大なるテルリーナ部族国を治める三代目部族総長、ラディアーネ・テルリーナ部族総長殿とは戦いは、やるだけ無駄だとお考えであり、寧ろ積極的にお味方をして、クララ地方を統一早めて貰おうとのお考えなのです。」
一応、彼の言葉に関しては、嘘は言って居ない。
但し、相手との会話の相互理解に、チョッとした齟齬が有るくらいだ。
「ほほう、それは良い心掛けであるっ!!」
「其処でなのですが、行き成り同盟条約を結んで欲しいと言って、ご信用を得らないでしようから、此処で耳寄りな情報をお伝えします。」
「何なのだ、その耳寄りな情報とな?」
ラディアはギロリとゲルヴァンを見詰めた。
「実は最近に成って我が国のカレールーナ帝国軍部諜報局に入って来た情報なのですが、ミンフィル王国がレノア地方東南諸国商業連盟条約と言う商業交易を通じた連盟条約をレノア地方各地の国々と結んで居るそうなのですが、それは表向きの話。」
「その実は、軍事同盟条約と言うのが実態の姿であるらしく、彼の国は虎視眈々と、このクララ地方を狙って居るとのこと。」
「その証拠に南東部のドワーフ族の国家、ナカハラドラス部族国と条約を結んだとの事です。」
「それは本当か?」
「はい。」
「連盟条約を結んだ国々では、ミンフィル王国との貿易と資金と物資援助を受けた事で、着々と軍備が整いつつあるとの情報が掴んで居ります。」
ゲルヴァンは巧みな話術と共に、真実の中に、ホンの少しの嘘を混ぜ加える事で、真実味を増させた、尤もらしい作り話を聞かせる事で、相手の信用を勝ち取る策に長けていた。
まぁ、現代社会風に言えば、鼠興商法の詐欺師のやり口も同然とも言うべき手口で、頭の可笑しな人達に取っては、簡単に引っ掛かってしまう方法でもあった。
「だがなゲルヴァン。ここ最近、クララ地方それぞれ各国は別段に戦が少ない。」
「我が部族国でも、周辺国との戦は小康状態と成ってしまって来て居るのだ。」
「それは大変ですっ!!詰まりは、偉大なるテルリーナ部族との力量差が、ミンフィル王国の策略に由って、縮められて来ている証拠。」
「一刻も早く打開策の手を打たなければ、テルリーナ部族の敗戦を濃厚と成ってしまいますっ!!」
「何だとっ!!そんな事が有って堪るものかっ!!我が部族は世界最強っ!!どんな相手で有ろうとも負けはせんっ!!」
ラディアと部族の魔族達は声高に粋がるが、これはハッタリ好きな為に出で来る口からの出まかせだった。
其処へゲルヴァンが仕掛けさせた策の効果を伺わせる情報を聞いた報せを持ったテルリーナ部族の戦士が謁見の間に緊急の報せを持って現れた。
「申し上げますっ!只今入った報せ由れば、フェルニー部族国との国境付近の防備に建てられたログット砦にて、フェルニー部族国軍が攻め掛かって来たとの報せが入りました。」
「何だとっ!!」
「しまったっ!!遅かったかっ!!」とゲルヴァンは、白々しくわざとらしい台詞を言って、更に入って来た報せに真実味を増させた。
「おのれっ!!このままでは済まさんぞっ!!卑しい黒肌の耳長共めっ!!」
「ゲルヴァンよ。我が部族国と貴国との同盟条約の話は、フェルニー部族国軍を追い散らしてからにする。」
「後日、改めて使者を貴国に使わすから、それまで待って貰いたい。」
「承知しました。」と言って、ゲルヴァンは謁見の間を後にした。
「者共っ!!出陣する。戦だっ!」
「「「「「おおおおおぉぉぉぉぉぉーーーーーーーっ!!」」」」」
(くくくっ、上手く行った。精々暴れ回ってクララ地方をかき乱し捲ってくれよ・・・・・・・・・)
ゲルヴァンは、事前にフェルニー部族国内にも間者を潜り込ませて置き、タイミングを見計らって、テルリーナ部族国軍が攻めて来るとの嘘情報を流して置いたのだ。
これによりテルリーナ部族国とフェルニー部族国の二ヶ国は、ゲルヴァンの策略により、血で血を争う先の見えない大戦争へと発展してしまう。
時を同じくして、ドワーフ族の国家、ナカハラドラス部族国とクララ王国との間で紛争が起きた。
更にクララ王国では、跡目争いの内戦すら起きてしまうのだから、どれだけ、ゲルヴァンの策略が優れて居る物なのかを物語って居る。
この事は、後にクララ地方事変戦役と称される戦いの幕開け出来事と言えた事件と成った。
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