外伝32話 ミンフィル王国東南諸国同盟編 魔神賢王と呼ばれた男 3

アースティア暦996年・4月9日・午前9時37分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸・ユーラシナ大陸東南部・レノア地方・レノア地方中原地域・レノア中央都市国家連合・ラクサ地方・ラクサ市共和国・ラクサ市共和国・市長・レノア中央都市国家連合・国家長官邸にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 後世の歴史書に書かれるルナック森林盆地夜襲戦で、カレールーナ帝国本国から派遣された、カレールーナ帝国東方征伐軍に勝利を収めたユーゴとミンフィル王国軍は、敵の大多数派遣軍を打ち破った事と予備兵を投入出来るだけの余力と背後に敵が居ないと言う状態出来上がった事に由り、完全に後顧の憂いが無く成った。


 此れにより、防備に回して居た6千人の後発軍を呼び寄せる事にした。


 ユーゴとミンフィル王国軍の次なる目的は、レノア地方の中原地域国たるレノア中央都市国家連合で最も東に位置して居るクラ市国と言う都市国家に向けて軍を進めたが、その途上でユーゴは、念には念を入れるべく、ルナック森林盆地の戦での生じた傷病者等の整理と後続軍との合流の為に、一時的に進軍を止めて居る。



 ユーゴとミンフィル王国軍は、クラ市国から五日ほど離れた距離に位置して居る街道沿いに野営地を築き、次なる行動を思案して居る。



 ユーゴは、ルナック大封鎖を打ち破る為に、カレールーナ帝国と戦争を起こしたが、巻き込まれたり、無関係な者達を出来る限り犠牲者を出さない様に努めたいので、強行な手段は最後の手段として居た。


 また、ローラーナ帝国と西方バルバッサ帝国同盟並びにカレールーナ帝国に反感を持って居る中小国家は多く、アースティア大戦に半ば巻き込まれて居る事も面白くないと感じて居るが、軍事力と国力を併せた、巨大な覇権主義国家同盟連合勢力であるローラーナ帝国と西方バルバッサ帝国同盟に対して、逆らいたくても逆らえない事情が在る事から、表立って反発する声を上げる訳にも行かない。


 しかしながら、ミンフィル王国を含めて、ローラーナ帝国と西方バルバッサ帝国同盟に圧力を掛けられたり、真正面から戦争を仕掛けられた利して居る国々への同情心と尊敬心を抱く国々も多く、如何にかして、その輪に加わりたいと考えて居る国々も水面下で動いて居るのであった。


 そんな戦局の中で、レノア中央都市国家連合の都市国家連合中央議会の置かれて居るラクサ市共和国では、ユーゴとミンフィル王国の素早い動きと、レノア地方の覇権を我が喪にするべく、それに逆らう様にして、旧ミンフィル王国・ザグナード王朝を崩壊させて、国家を簒奪し、我が物とした事への怒りから、ユーゴ達に戦を仕掛けて来たカレールーナ帝国に対して、敢然と立ち向かうと言う無謀な行動を称賛する動きが見られて居た。




 その中でもレイカーリナ・キッスニア都市国家長は、国王としてのユーゴの統率力の手腕とミンフィル王国の変貌ぶりに舌を巻いて居た。


「ふぅん、やるじゃない。噂に聞く魔人王の坊やは・・・・・・・・」


 石造りで建てられて居るラクサ市共和国国家長官邸の建物の3階の執務室のバルコニーからレイカーリナ・キッスニア都市国家長は呟く。


 レイカーリナこと、通称レリナは、ラクサ市共和国の下級階層出身の女性で、15歳過ぎから商家の下働きで頭角を現し、18歳を迎えた時には元の商家から独立した事業を順調に拡大し、莫大な利益を上げる事に成功を収め、19歳で大陸有数の巨大な商会をレノア地方に築き上げた人物として知られて居た。


 金髪ロングストレートの碧眼で、スタイル抜群の絶世の美女とも言うべき容姿を有して居り、商売に措いては一切の妥協をしない性格で、それは政治の世界でも発揮されて居る。


 そんな彼女がラクサ市共和国市長とレノア中央都市国家連合の都市国家長を務めている地域のレノア中央都市国家連合と言う場所は、ユーラシナ大陸東南部・レノア地方の中央地域であるレノア地方中原地域に在る都市国家連合の事で、国家と言うよりは、地球世界で言うEUやASEAN、国際連合様な体裁を取って居る都市国家連合の事である。


 レノア中央都市国家連合の政治体制は、元来から中立国家を謳い、どの国とも分け隔てなく商売と外交をやって来た都市国家体制を敷いて居る小国同士の連合体制の集まりである。


 その中でも珍しいのが、このアースティア世界でも取り分けて珍しい民主共和制を取って居り、一定金額の税金を納めて居れば、誰でも投票権と市会議員と都市国家議員に立候補する事が出来る。


 しかしながら、日本国と違って、明治・大正時代に有った様な制限選挙制をして居るのは、不正と汚職を出させない事が目的なので、決して差別的な考えから制限選挙制を敷いて居る訳では無い。


 主都が置かれて居るのは、レノア地方中原地域のラクサ市共和国と成って居り、レノア中央都市国家連合の最高意思決定権力者であるレノア中央都市国家連合・都市国家長と成るには、ラクサ市共和国市長と成るのが慣例と成って居る。


 因みにレノア中央都市国家連合では、首都の事を主都と呼称して居るが、これは中立公正な関係を謳う都市国家連合体制を築く上で、レノア地方中原地域のラクサ市共和国が中心地とされて居る事から、どの都市国家もラクサ市共和国の傘下には置かれては居ない事を示すべく、中心都市の事を主都と呼んで居るのである。


 

 それがローラーナ帝国の世界統一戦争による拡大戦略、西方バルバッサ帝国同盟と言う衛星国家形成による統治力の円滑化、最後にローラーナ帝国の影響化に在る衛星国家の地方での台頭が、レノア中央都市国家連合の中立国としての地位を低下させ、国力を下げさせてしまう事に成ってしまって居た。


 此処、レノア中央都市国家連合・都市国家連合中央議会が置かれて居るラクサ市共和国でさえも、東のクラ市国と同様に貿易路と外交官達の保護を名目として派遣されたカレールーナ帝国軍の治安維持軍に占拠されて居た。


 そんな苦しい状態に在るレノア中央都市国家連合を憂いて居る同志とも言えるクラ市国出身者にして、其処の都市警備隊長をして居る人物であるミシェル・クルートクラ市国都市警備隊長が、先々の事を憂いながら立って居た。


 ミシェルの務めている都市警備隊と言う組織は、中立国家たるレノア中央都市国家連合に加盟して居る全ての都市国家が非武装中立地帯を法で定めて居るからである。


 だが、それでは国家の国防と治安が守れないでは無いかと思われるが、準軍隊と同等の警備軍、又は警備隊と呼称する独自の武装軍隊が存在して居る。


 此処で更にアースティア世界での都市警備隊と言うのは何かを豆知識として、詳しく説明して置く。


 アースティア世界において主に都市国家政府や地方都市行政府等が、独自に保持して居る武装組織の事で、アースティア世界では都市国家は法律で中立国家を謳って居る事や地方都市行政府は、中央政府の許可なく軍隊を保持しないと言う法律がある事から、警備隊と言う武装組織を保持して居る。


 地球世界風に言えば、日本国の自衛隊様な組織形態と呼称形式体制を取って居る武装組織に当たる実力部隊の事に成る。



「ですが、レリナ。このままでは・・・・・・・・」


「ええ、このままでは、何れはローラーナ帝国とその傘下、西方バルバッサ帝国同盟の覇権国家の一つたるカレールーナ帝国に、アースティア世界に措いて、国際慣例上では、都市国家は何れの勢力に与せず、中立国家を是とすると言う理想を掲げて居る都市国家たる。我がレノア中央都市国家連合が呑まれてしまう事に成るわね。」


「其処でなんだんだけどね、貴女にやって貰いたい事が有るの。耳を貸しなさい・・・・・・・・・・・」


「?!」


 ミシェルは何だろうと思いつつ、耳をレリナの口元へと寄せた。


「ええっ!?」


「うふふ・・・・・・・」と、悪戯っ子ぽっく笑うレリナ。


「正気ですか?」


「そうよ。もう、これしか無いわ。」


「もう、追い込まれて居る私達には、後が無いのよ。頼まれてくれる?」


「・・・・・・・・分かりました。」


「やってくれるのね?」


「はい。ですが、彼の者が期待外れなら・・・・・・・・・」


「その時は、その時よ、それはそれで別の手を考えるわよ。」



 レリナは空を仰いで目をやった。



 果たして、レリナの献策した起死回生の一手とは?一体、何なのだろうか・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 アースティア暦996年・4月15日・午前9時00分頃・ アースティア世界・ユーラシナ大陸・ユーラシナ大陸東南部・レノア地方・レノア中央都市国家連合 ・クララ地方・クラ市国・カレールーナ帝国・カレールーナ帝国東方征伐軍とミンフィル王国軍・クラ市国内の各戦線にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 それから五日後、 カレールーナ帝国・カレールーナ帝国東方征伐軍とユーゴが率いるミンフィル王国軍の両軍は、クラ市国で激突する事に成る。



 後の世に言う、クラ市国解放会戦である。


 両軍の総数は、カレールーナ帝国・カレールーナ帝国東方征伐軍八千人に対して、対するミンフィル王国軍は一万二千人。

  

 

 それに加えて、同都市国家クラ市国を守るクラ市国都市警備隊も、クラ市国自体を人質に取られている為、致し方無く、カレールーナ帝国軍側として、4千人の警備隊を率いて参戦して居る。


 クラ市国都市警備隊の総指揮官は、ミシェル・クルートクラ市国都市警備隊長である。


 グリーンショートヘアーで、キリリとした感じのお姉さんタイプな顔立ちをした風貌の顔付きで、真面目で几帳面な性格と気遣いの出来る人格の持ち主。


 都市国家警備隊員と言うだけあって、身長170センチにして、鍛え抜かれた筋力の張りの在る身体付きをして居るが、ボディビルダーの様な肉体では無く。


 ファッションモデルの様な身体付きを残した華奢な肉体美と筋力を併せたた理想的な身体付きを持って居る。


 はた目から見ただけならば、秘書官をして居る様なキャリアウーマン様な感じのお姉さんと言った感じの女性にも見えるだろう。


 その彼女が率いるクラ市国都市警備隊の殆んどが、歩兵や弓兵で固められて居る防衛隊に過ぎないクラ市国都市警備隊は、都市国家クラ市国の市内の要所を抑えながら戦う構えを見せて居たが・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 アースティア暦996年・4月14日・午後21時15分頃・ アースティア世界・ユーラシナ大陸・ユーラシナ大陸東南部・レノア地方・レノア中央都市国家連合 ・クララ地方・クラ市国・クラ市国東部入口・ルナック街道付近・ミンフィル王国軍・本陣所にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


その戦いが始まろうとして居た開戦の一日前・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 都市国家クラ市国から一日の距離に陣を敷いたユーゴとミンフィル王国軍一万二千人は、明日の城塞都市攻めに備えて休息に入って居た。


そんなユーゴとミンフィル王国軍の軍幹部達の前に珍客が現れた。


「ほう・・・・・・・・」


「お初にお目にかかりますユーゴ・ラーシルズ国王陛下。 」


「私は都市国家クラ市国の防衛警備の総責任者、 クラ市国都市警備隊長を務めて居りますミシェル・クルートと申します。」 


「貴官の事は、噂話で聞いて居る。都市国家クラ市国の鉄壁な守りはミシェル殿無しには、絶対に有り得ないとな。」


「それに・・・・・外交防衛に置いてもな。」


「お褒め頂き、勿体なきお言葉です。」



 ユーゴは、ミシェルの事を事前に、間諜を放って、下調べをして居たらしく、その手腕を高く評価して居た。


 今日までの都市国家クラ市国の国防と外交に由る国防政策は、彼女に由る献策と手腕に由るこ所が大きかったと言われて居る。


 何せ、のらりくらりと怒涛為るカレールーナ帝国からの無理難題を吹っ掛けられても、平然と言い逃れを出きるほどの涼しい顔で、無理難題な要求案を突っ撥ねるほどのクールさと度胸を持ち合わせて居たからだった。


「貴国と貴官を含めて、俺と我がミンフィル王国との間には何の遺恨も刃を交える理由も無いが、戦乱の習い故に、明日には我らは弓矢を交あわさねば成らぬ間柄と成ると言うに、貴官は、何故・・・我が軍の陣屋へと如何なる要件で参られた?」


「はい。確かにその通りですユーゴ陛下。ですが、明日の戦と成る前に。如何してもユーゴ陛下と直接会って、お話をしたくて本日は無礼を承知で、此処に参りました。」


「ほう、面白い。その用向きを承りまわろうか?」


「はっ!」


「実は此処に私が参ったのは、我がクラ市国も加盟して居るレノア中央都市国家連合の都市国家長にして、ラクサ市共和国の市長でも在るレイカーリナ・キッスニア都市国家長からの密使で参りました。」


「ほう、それは益々面白い話だな。」


「このユーラシナ大陸東南部・レノア地方内でも指折りの大商人にして、優れた政治家でもある。あのレイカーリナ・キッスニア都市国家長殿がか?」


「はい。」


「それで、その要件とは?」


「はっ!今現在私が国防を預かって居るクラ市国をカレールーナ帝国からの開放したいので、手助けをお願いしたいと思っております。」


 その場に居合わせ、ミシェルの言葉を耳にしたミンフィル王国軍の幹部達は、一気に騒ぎ出した。


「それは・・・・・」


「実に面白い話ですね・・・・・・」


 ミルシス・ファーンミンフィル王国大将軍こと、通称・ミルスとミンフィル王国軍の総司令官も兼任して居るアイフィル・ハンス近衛騎士団長こと通称・フィルスら二人も目を見開いて驚く。


 レノア中央都市国家連合の代表であるレイカーリナ・キッスニア都市国家長が、この戦で最も不利な立ち位置に居るミンフィル王国側に寝返りたいと申し出をして来た事にだ。


 ユーゴを手を上げて、場を速やかに沈めて、その理由をミシェルに問い質した。


「今さらレイカーリナ・キッスニア都市国家長殿が、我々に寝返るのは何故だ?」


「カレールーナ帝国は、あの西方バルバッサ帝国同盟の盟主国であるローラーナ帝国の従属衛星国家なのだぞっ!!」


「ローラーナ帝国が、自らの信念を押し通すべく、アースティア世界に覇を唱えるべく、あらゆる国家に対して宣戦布告を為して居るのは、この世界の生きる人々の間では周知の通りの筈だっ!!!」


「我々はその大国を相手に、自らの自主独立を訴えて、盾突いて戦を仕掛けている居るのだぞっ!!」


「明らかに我々の側の方が不利に決まって居る。」


「無論、我々も生き残るため、奴らに抗って居るが、マトモな頭を持つ者ならば、何方に付くべきなのかは明らかな筈だっ!!!」


「それなのに、明らかに負けそうな方に付くと、レイカ―リナ・キッスニア都市国家長殿は仰られて居る。」


「何とも奇妙な話だな。」


 ユーゴの言う通り、どんな悪辣な国家とは言え、マトモな頭と考えが有る者ならば、カレールーナ帝国に味方した方が良いに決まって居る。


 それなのに何故?その答えはミシェルの口から明かされ様として居た。


「簡単に言えば、我々も、あなた方と同様に、もう西方バルバッサ帝国同盟の盟主国であるローラーナ帝国とその従属衛星国家であるカレールーナ帝国を味方して、扱き使われるのは真っ平ゴメンだからなのです。」


「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」


 ミンフィル王国軍の幹部達は、余りの馬鹿馬鹿しい言葉を耳にして、耳を疑い、黙り込んでしまった。


「プハハハハハハハハハハハハハハハハハっ!!そうーか、そうーか、もう扱き使われるのは、真っ平ゴメンなのか?コイツは傑作だっ!!プハハハハハハハハハハハハハハハハハっ!!」



 ユーゴは余りにも至極当然な真っ当な言葉を聞いて、思わず大笑いをしてしまった。


「なるほど、言われて見れば、至極最もな話ですね。」とフィルスと言いながら、真面目で納得した顔付きをして居た。



「国の大事を決める言葉にしては、些か緊張感に欠けるがな。」とミルスは呆れ顔だった




「理由は分かった。では明日、貴国は我らがクラ市国に総攻撃を仕掛けるのと同時に寝返ると言うのだな。」


「はっ!!」


「了解した。では早々に立ち返り、明日に備えて事を進めて置けっ!!」


「それでは明日、クラ市国にて、皆様方をお待ちして居ります。」


こうして、クラ市国とミンフィル王国との秘密会談は幕を閉じたのであった。




 アースティア暦996年・4月15日・午前9時00分頃・ アースティア世界・ユーラシナ大陸・ユーラシナ大陸東南部・レノア地方・レノア中央都市国家連合 ・クララ地方・クラ市国・カレールーナ帝国・カレールーナ帝国東方征伐軍とミンフィル王国軍・クラ市国内の各戦線にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 そして、決戦当日・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


時刻は午前九時丁度、両軍は高い城壁を挟んで睨み合って炊いた。


「それえええええぇぇぇぇぇーーーーーーっ!!」



 先ず先に動いたのは、ミンフィル王国軍の方であった。


 それらを迎え撃つべく、イマガワン将軍も自軍の将兵に命令を発するが・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 



「イマガワン将軍閣下、大変ですっ!!クラ市国都市警備隊が、ミンフィル王国軍に寝返りましたっ!!」


「何じゃと、ごじゃるかっ!!」


 イマガワンは強き者、由緒あるべき、人間族国家で有る国家こそが、この世界を統べるべきと言う典型的な人間族至上主義者で、都市国家にして、ゴミカス程度に等しい国土しか持って居ないクラ市国が、ミンフィル王国軍側に寝返った真意と理由が分からずに混乱し、気が動転してしまう。



「それえええええぇぇぇぇぇーーーーーーっ!!今こそ、我らがクラ市国を開放せん時ぞっ!!」


「「「「「おおおおおおぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!」」」」」



雄叫びと共にクラ市国都市警備隊が陣取って居る拠点には、一斉に深緑色に染められた布地にグリフォンの刺繡が入ったミンフィル王国の国旗が掲げられた。



「掛かれえええええええぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーーーーーーっ!!」


 クラ市国・都市警備隊長ミシェル・クルートは、レイピアを指揮棒代わりに敵陣へと突き立てた。



「相手は高が軽武装の小勢でごじゃるっ!!早々に蹴散らすのでおじゃっ!!」



 イマガワンはすぐさま、都市部内の地形を巧みに使ってゲリラ戦を仕掛けて来ている軽武装で、寡兵に過ぎないクラ市国都市警備隊の撃滅を味方に命じたが・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



ギイイイィィィィ・・・・・・ガタン。


「リネット・アスト・ミンフィル王国・近衛騎士団副団長閣下殿っ!!さぁ、お入り下さい。供にカレールーナ帝国を追い出しましょうぞっ!!」



 ミンフィル王国近衛騎士団副団であるリネット・アストは、 寝返りの定番である城内通に由る門開放を待って居た。


 クラ市国都市警備隊の手に由って東南城門が開け放たれ、3千人の軍勢と共に、イマガワンが陣取って居る都市中央部へと突入を開始する。


「手引き感謝するぞっ!!」


「各隊っ!!市内へ突入するっ!!行くぞおおおおおおぉぉぉぉぉぉーーーーーーーっ!!」


「「「「「うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!」」」」」

 

 リネットが率いるミンフィル王国突入先鋒隊は、一気に敵本陣へと迫る。


「イマガワン将軍閣下っ!!もうダメですっ!!我が方のお味方は、敵軍に周囲を取り囲まれ掛けてしまいましたっ!!!」


「おのれっ!!おのれっ!!簒奪者の小僧めっ!!」


「こうなったら・・・・・・・・・・・・」と、イマガワンは何か一計でも在るのかと言いたそうな口ぶりの言い回しで、イマガワンは暫し口ごもる。


「逃げるでおじゃっっ!!」


 コケっ!!と一斉に部下達は、お笑いコントみたいにズッコケた。


 その場に居る部下たちは、心の中で・・・・結局、逃げるんかいっ!!とね。


 内と外から挟み撃ちに在ったカレールーナ帝国東方征伐軍八千人は瓦解し、降伏か殲滅または逃亡を図ったと言う。


 一方のカレールーナ帝国の将軍たるイマガワン侯爵は、都市国家クラ市国での攻防戦であるクラ市国解放会戦で、都市国家クラ市国のクラ市国都市警備隊の裏切りに遭い、西門からそそくさ、すたこらさっと撤退。


 カレールーナ帝国の東隣国であるメガテリア公爵国へと逃げ帰ったのだった。


 ミンフィル王国側は、この戦いに措いて、ルナック大封鎖を無力化にする為のレノア中央都市国家連合中央部へと続く重要な拠点を得たのであった。

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