197話 空の勇者達よ、暗黒暗礁空域を駆けろっ!突撃せよっ!ザタン・アタック作戦っ!10

 アースティア暦1000年・7月1日・午前9時18分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸・ユーラシナ大陸中央地域・シベリナ西部地方・パイプ・ライン大河・パイプ・ライン大河西部中央流域地方・オローシャ帝国・オローシャ帝国東方地域・ウルス山脈・南ウルス山脈・南パイプ・ライン大河流域・東ユールッハ街道沿い付近・ジャンブロー平野・ジャンブロー要塞基地及びローラーナ帝国・南東部ゾルモン地方との国境付近周辺地域・ローラーナ帝国軍・第四軍団所属・ゾルモン軍団及びローラーナ帝国・第四方面軍・東南方面制圧軍艦隊・ゾルモン要塞艦隊の集結地点・ローラーナ帝国・第四方面軍・東南方面制圧軍艦隊・ゾルモン要塞艦隊・オローシャ帝国侵攻作戦先鋒艦隊・ローラーナ帝国軍・オデュッサ軍団艦隊・オデュッサ軍団艦隊旗艦・ザンベルト級型空挺魔導戦艦・ザン・ジベルの艦長室にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




 ローラーナ帝国海軍の大佐で、オデュッサ要塞の司令官であるガルベ・マグベ大佐は、オデュッサ軍団艦隊の旗艦である400メール級の空挺魔導戦艦であるザンベルト級型空挺魔導戦艦7隻の内、艦隊中央に位置して居るザン・ジベルに乗って居た。



 ガルベは、自分の乗る戦艦を全艦隊の後方に配置させ、自分に被害が及ばないようにし飛行していた。


 ガルベはオローシャ帝国軍は強力な兵器を保有して居るとは言えども、戦力的な余裕が無い事を良く知って居るのである。



 彼は緒戦から大軍を上手く使った地味で嫌がらせめいた散発的な攻撃を繰り返して行きつつ、それを幾度も繰り返させる事で、味方の被害を抑える。


 そうすれば、何れはオローシャ帝国を疲弊させて、敵国内へと一気に攻め込む積りで居るのであるのたがら、本当に嫌な奴である。



 この世界の反帝国同盟諸国は、本当に後が無いのである。


 ローラーナ帝国の奴隷兵士の大軍と使い捨ての兵器の物量戦法に押しつぶされてしまい、単なる軍の質だけで戦って行く事は、只々自軍を疲弊するばかりなのであった。


「ふふっ・・・・・・」


 チーンと言う音、ガルベが古そうなガラス細工の壷を指先で叩く音が、彼の居る艦長室に響き渡る。


 その側で控えて居るのは、ガルベの副官であるザムラン・ジーン大尉である。


「何時聞いても良い響きだ。」


「良い壷と言うのは、こう言う音を響かせるものだよ、ザムラン大尉。」


「はぁ?私めには、その良さが分かりかねます。」


「これでも1000年前の一級品だと、我が帝国の鑑定士は、言ってるのだがね。」


「それが分からないと言うのは、実に勿体無い。」


「この世界は、長く戦い過ぎて居る。」


「それ故に文化財の多くが失われて居るのだよ。」


「こうして、わたし様な物好きが集めなければ、売り買いの道具か破壊される対象にしかならないのは、実に嘆かわしい限りだ。」


 少々ガルベはナルシストが入って居る様である。


「大佐殿それよりも、そろそろかと・・・・・・」


「おお、そうであったな。では戦を始めようとするか。」


「それで今日の我が軍のお相手は?」


「はっ!密偵の報告ではジャンブロー要塞基地の防衛の当番任務に就いて居る者は、シェスカーナ・フローレイティア海軍中佐だそうであります。」


 ガルベは、その名を聞いて目を丸くする。


「ほう、フローレイティア嬢か?」


「はっ!大佐殿とは我が国での国境付近とシベリナ東方での戦を通じて、大体20回は刃を交えて居ますが、何れも勝敗が10対10の互角と成って居ります。」


 この二人の関係は、天敵の様な関係に成りつつある。


 何れの戦場での戦いに措いて、幾度も戦って居るが、旗艦同士が直接ぶつかり合う砲戦には至って居ない。



 巧みに艦隊と地上部隊とを連携させて前線の部隊同士で決着を就けて居るので、今の所は艦隊決戦に縺れ込み、何方かの艦隊が壊滅するまでは戦いには至って居なかった。


「ふはははははっ!!これは面白いっ!!」


「ミスフローレイティアとわたしとが戦うのは、如何やら運命らしい。」


「大佐殿?」


「さぁて、今日はわたしをどう楽しませてくれるかな?ミスフローレイティア。」


 ガルベは振り返りザムラン大尉に全軍に命令を発した。


「ザムラン大尉っ!オデュッサ軍団艦隊の全軍に前進を命ずるっ!」


「手旗信号と魔導発光信号弾で伝達せよっ!」


「はっ!オデュッサ軍団艦隊に対して、全軍を前進させます。」



 ザムラン大尉は、上官であるガルベに対して敬礼をしてから、命じられた命令を伝えるべく艦長室を後にしたのである。



 こうしてローラーナ帝国軍のオデュッサ軍団艦隊を含めたゾルモン要塞軍団の魔導戦艦隊は、全597隻の艦艇と地上軍を合わせた270万人の軍勢で、一路をジャンブロー要塞基地へと軍を本格的に進軍を開始して行ったのであった。




 対するオローシャ帝国軍は、艦隊が全部で144隻、ナイト・マギアが4000機前後。


 その他にも帝国と同じような装備で対抗して居る兵力が35万人であり、シェスカの直営の艦隊に所属して居るのは凡そ3万人程度である。




 両軍は衝突すると、魔導戦艦同士の砲戦で始まる。



 ローラーナ帝国海軍とローラーナ帝国陸軍の駆逐級と巡洋級の陸空の帆船魔導戦艦並ぶ大艦隊が、横向きに成り、空と陸上で一斉に全砲塔がオローシャ帝国艦隊に向けられる。



 後方では第2陣として鉄鋼魔導戦艦が並んで居る。


 更にその後ろにて待機して居るのが、長射程力砲台を有する大型魔導戦艦と言う配置だった。


 オローシャ帝国艦隊の鉄鋼魔導戦艦隊と大型鉄鋼魔導戦艦隊の砲塔は前部と後方に備え付けられて居る。


 鉄鋼魔導戦艦の砲門の位置は、前部に上下に主砲2門づつと後部に1門。


 左右に副砲4門と魔導式機関砲10基が付いて居る。


 大型魔導戦艦には、前部に主砲3門と後部に2門。


 副砲が8門と魔導式機関砲20基である。


 陸上魔導戦艦にも前部2門と後部2門の主砲が装備されて居た。



 駆逐級と巡洋級の砲塔数も概ね同じ数である。


 大型クラスも上部に砲塔の数が空挺と変わらずである。


 それらの主砲の射程距離が約8キロから10キロ程度、副砲が4キロから5キロ程度であった。


 

 オローシャ帝国艦隊の当番先陣艦隊を率いて居るシェスカは、実家で所有して居る私設艦隊のフローレイティア艦隊を両軍が激突する平原の中央に配置して居た。


 砲撃戦の準備が整ったフローレイティア艦隊は、敵艦隊たるオデュッサ軍団艦隊が射程に入り始めると、敵の第1陣の横縦列の帆船艦隊から迎撃砲戦を開始した。 



 フローレイティア艦隊の後方には、第2陣の鋼鉄艦隊の遠距離砲撃が構えて待機して居た。


 第1陣の直後ろには、敵との白兵戦に備えて、オローシャ帝国陸軍の精鋭たるナイト・マギア隊と重騎竜隊が配置され、所々に疎らに点在して居る林の木々に隠れて敵との戦いに備えて待機をして居る。


 それらの更に少し後ろには、騎兵隊と歩兵部隊が第二陣の後方に位置して隠れて待機をして居る。



 この世界での戦争に措いて、戦場にも由るが、主力兵器戦の場合では、歩兵戦力は、やや後方配備が常なのであった。



 今回のローラーナ帝国軍は本気で侵攻して来て居た。



 攻め入る為にも、相当頭数を揃えて来た兵力と艦隊をこの要塞へと攻め掛からせて居るのだ。



 例え此処でオローシャ帝国軍に敗れても、彼らは痛くも痒くも無いだろう。


 迎え撃つ側であるオローシャ帝国艦隊は、大型戦艦の配備を1艦隊あたり3隻配備し、残りを巡洋艦と駆逐艦を組み合わせで、1編制数を14隻として居た。



 それらの艦隊を全部で10艦隊を編制して来て居る。



 これでは600隻近いローラーナ帝国艦隊を相手にするのは、キツイ所か無謀だろう考えるだろう。



 しかも、向かって来て居る帝国艦隊は、分厚い重列式の艦隊陣形を用いた戦術にて、オローシャ帝国艦隊が全てを蹂躙可能であり、更には完全に半包囲して居ると言うくらいの配置をジャンブロー平野で取って居るのだ。


 この戦はオローシャ帝国とローラーナ帝国の両軍の対決の有り様を言えば、質対量の戦いである。


 今の所は、オローシャ帝国の方が20キロ近い砲撃が出きる魔導力光粒子砲、所謂魔法のビーム砲とでも言えば良いだろう。


 対するローラーナ帝国軍艦隊は、魔導力光粒子砲も保有して居るが、オローシャ帝国等の兵器の質の良さに比べると、やや見劣りする性能と言えた。


 ローラーナ帝国艦隊の艦艇の砲門は、魔導力光粒子砲と攻撃魔法を弾丸として撃ち出す魔法弾砲の性能に措いて、反帝国同盟の一部の国と比べると射程で劣って居た部分が有るのだった。



 ローラーナ帝国は、この世界の昔から現存して続いて居る純粋な魔法帝国であり、対するオローシャ帝国は宇宙科学文明を取り込んだハイブリッド型の魔法帝国だった。


 この差はある意味、とても大きいと言える。


 衰退したとは言え、ロスト・テクノロジーを多く有するオローシャ帝国は現時点でローラーナ帝国に対抗が出きており、侵攻を完全に防ぎきれる国の勢力の1つとも言えるだろう。


「さぁて、始めるわよっ!」


「今日こそは、あの嫌味たっらしいキザなナルシストのクズを完膚無きまで叩きのめすっ!!」


 シェスカは艦橋で、指揮棒を鞭のようにペチペチと右手で左手を叩いて居る。


 周りの男性士官はある意味、ご褒美として見ていて、女性士官は百合的な視線で見詰めて居る。



 シェスカは男女共にモテて居る上に、そのクールでS的な性格であるが故に別方向の趣味に目覚める部下が多い。


 変態な性格には至らないまでも、『カッコイイ』ドS艦長として、一部の物好きから有名なお嬢様だった。


 本人は余りその辺の事は気にしていない様だ。働きが良ければ部下の趣味思考には余り口を挟まないのである。

 

「さぁて、栄えある我がフローレイティア艦隊の諸君っ!!!」


「戦争の時間だっ!!!」


「ガルベ艦隊を潰せっ!!!」


「今日こそは、あのいけ好かないナルシストの指揮する艦隊を残らず殲滅だっ!!!」


 シェスカのクールで美しい顔立ちが、目が据わった怖い目をして居て、冷淡なセリフを言い放つ雰囲気は、何処かの眼鏡を掛けている戦闘系ギルマスが、戦前に見せる雰囲気と同じものを出していた。



それを見た直属の部下はと言うと・・・・・・・・・・・・・


「イエスっ!!マムっ!!」


 男女の士官共に大喜びで命令を遂行する返事をし、慌しく動くのであった。


 アースティア大戦末期の終結へ向けての序盤での一大激戦の戦いであるジャンブロー平野防衛戦たるジャンブロー要塞の嵐戦役が始まる・・・・・・・・・・・・・・

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