180話 新たなる嵐の前触れ 8

 アースティア暦1000年・6月18日・午後13時47分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸・ユーラシナ大陸中央地域・シベリナ西部地方・パイプ・ライン大河・パイプ・ライン大河西部中央流域地方・オローシャ帝国・オローシャ帝国東方地域・サマーラ地方平原・サマーラ州皇帝直轄領・州都・モルディナ市・皇族専用宮殿城・サマーラ・モルディナ皇宮殿城にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「えっ!?つてことは・・・・・・・・」


「誠に遺憾ですが・・・・・・我が国は既に詰んでます。」


「・・・・・・・如何にか成らないの?」



 幼いミランダの表情の顔付きは、悲壮に満ちた表情と成り、強張っていた。



「最早こう成れば、神の助けや偶然の奇跡を祈るしか有りませんね。」




「現実主義の貴女が、神や奇跡に頼るの?」


「ハッキリ言えば、この地に集まって居る物を含め、国内のオローシャ帝国軍と貴族商人等の私設軍の半分を生贄にすれば、今回限りは勝てるやも知れませぬ。」


「ですが・・・・・・・・・・」


「それをやってしまえば、次は無いという事ね・・・・・・・・」


「はい。生き残っても多方面からの攻撃を受ければ、我が国は殆んどの国土をローラーナ帝国に盗られ、次第に緩やかに疲弊して行き、何れは崩壊するのは必定。」


「それにその賭けは、良くて5割。欲を言えば5割5分が良い所だと思われます。」



 国内の総兵力と総艦隊の半分を犠牲にすれば、ゾルモン要塞軍団の侵攻を阻止が出きると言ったレンディ。



 だが、それでも勝ち目は5割を越すのがやっとだと言う予想だった。



 それでは迂闊な賭けに出るのは、不味いと言わざる負えない。


 年若いミランダでもそんな分の悪い博打を打つのは、不味いと考えられるし、素人でもやりたくは無いだろう。



「そんな・・・・我が国の勝ち目は、良くて半分とちょっと程度だなんて・・・・・」


「ねえ、噂のニホン軍の航空兵器の支援は出きそうかしら?」



 ミランダは噂に聞いている日本国空軍、航空自衛隊の航空隊が駐留しているガイダル・タバ日統合隊基地から何らかの航空支援を受けられないかとレンディに聞いて見た。



「外交筋から聞いた話では、少数の部隊だと聞いて居ます。」


「今はブラキュリオス湖・レジェンダリア諸島の戦いの最中の筈。」


「此方まで手が回る余力も有る筈が有りませんし、消費した弾薬や燃料の補給は、二ホン国と我が国のフローレイティア輸送商船商会の輸送業務の商取引の提携をして居る関係で、遥か遠くの本国から空挺輸送されて居る所です。」


「頼んだとしても小規模の攻撃に留まり、大軍に対して攻撃の効果は薄く、彼の国に取っては、お金が掛かるだけで、とても迷惑な事に成るでしょうね。」


「他国の税金を無駄にするのは、我が国に取っては沽券にも関わる事態ですね。」


「・・・・・と成ると、本当に国を挙げて、特攻作戦を仕掛けるしか・・・・・」


「取り合えず、アーヤ陛下に火急の報せとして使者を送り、その反応を見た次第の結果で、我が国の今後を如何するべきかを判断されては?」


「それって、苦し紛れの時間稼ぎよね。」


「ジャンブロー要塞基地を取られても、半年は遊撃戦に持ち込み。」


「秋から更に、敵の進軍速度を落とさせる遅延作戦を展開させて、地形と天候的に有利な時期に成る冬将軍とぶつけさせれば、或いは・・・・・・・」



 レンディはソ連軍がドイツ軍に仕掛けた様に、冬将軍で敵を弱らせつつ、遊撃ゲリラ作戦を展開する事で、敵の息切れを待つ作戦を提案をする。


 これは代々国を守る為に行なって来たオローシャ帝国の伝統的な主戦防衛作戦術である。


 この戦術展開のお陰でオローシャ帝国は、ローラーナ帝国を始めとする敵国からの侵略を防いできた歴史が有り、それを誇りとして来た。



「今はそれしか無い様ね。」


「それで今回の最前線の防衛に際しての定期召集の地方領主の先陣艦隊は何所かしら?」


「確か・・・・・・・フローレイティア侯爵家のシェスカーナ・フローレイティア海軍中佐です。」


 レンディは近くの文官で、軍事担当の者を呼び付けると、最前線の要地であるジャンブロー要塞基地の防衛当番の一覧のファイルを持って来させ、中を開いてミランダにその名を告げた。


 オローシャ帝国に籍を置いて居る全ての私設軍隊と私設艦隊は、その私設軍事の所持を認める代わりに、定期的な兵役と最前線の交代防衛を義務付けられて居る法律が課せられて居た。


 私設軍を持って居るのは、領地を持って居る貴族諸侯・大地主で大商会をして居る商人等が、私設艦隊か個人傭兵部隊又は私設陸軍を持って居る国民の義務と法律で定められて居るのだ。


 この世界の商隊や輸送商船団が、敵対している他国の軍や海賊・盗賊・山賊などから身を守る為に武装して居る事が多い。


 それに裕福な貴族諸侯は、その財を狙う輩から自領内の民と財を守る為に、国軍とは別に私設軍を設けて居る事も珍しくは無いのだ。


 それに各国の中央政府も、それらの存在を野放しにはせずに、何らかの法律での枷と活用方法で国に貢献をさせて、私設軍隊の力が強大に成り過ぎない様に努めて居るのだった。


 その中でシェスカのフローレイティア輸送商船商会は貴族諸侯系の商会で、オローシャ帝国を中心に大きな勢力圏を有している大商会であるのだ。



「フローレイティア侯爵家って、あの我が国有数の交易輸送船商会艦隊であるフローレイティア輸送商船商会を運営していて、オローシャ帝国の東に領地を持って居るシェスカの事よね。」


「はい。代々我が国の東方にて、商いと領地運営でオローシャ帝国・皇室と中央政府に多大なる貢献をして来た家柄の者です。」


「それって、まっ、不味いわよ。」


 ミランダはある事を思い出して、レンディに対して、叫ぶ様にして言う。


「はて?何が不味いのですか?」


「シェスカの事よ。あのお方は、我が国と皇室に忠誠を誓って居るの同等に、コヨミ皇国の紅葉様にも不滅の友情を誓って居るのよ。」


「しかし、それは私事の筈。公務に際しては。」


 当然の正論をレンディは述べる。


 当たり前だ、友人との約束は、公務の前には私情に他ならないからだ。


「分からないのっ!この私がっ!紅葉さまに恨まれる事に成るのよっ!」


 だが、ミランダは更に声高に叫ぶ。


 幼い時分の時に、シベリナ連合の国際会議の合間の宴席で事である。


 紅葉は幼い時のお転婆振りは、大人に成るにつれて鳴りを潜めて行く。


 だが、その根っ子の部分は変わって居なかった。


 普段は気優しく淑女を演じて居るが、直ぐに機嫌を損ねられたり、悪戯の衝動に駆られると、あの先読みの力で色々と怖い悪戯をされた者はトラウマを抱えてしまうと言う。


 そんな1人であるミランダも、紅葉に可愛い妹の様だと色々と悪戯を受けて居た為に、紅葉の事がトラウマと成ってしまって居たのだった。


 もし、彼女の機嫌を損ねたら何をされるのかと思うと怖くて堪らなかったりして居た。


「ですが・・・・・・」


「幼い時から稀に、私の遊び相手や話す機会が有った時に、シェスカや紅葉さまを始めとするご友人の方々から、お話を聞く機会が有りましたの。」


「絶対にローラーナ帝国を倒して、平和な世の中にしようと、死すときは最後までとお二人供、良く言ってらしたわ。」



 ミランダは社交界の席で、良く一緒に居た紅葉達の姿を幼いながらも、良く見かけて居たし、遊んでも貰って居た。


 だからミランダは、理解して居るのだ。


 あの人達は、何れが欠けてもダメなのだと・・・・・・


「そんな方々のお姉さま的な存在であるシェスカを死なせる様な事は、シベリナ連合同盟の破綻にも成りかねない事案なの。」


「それにシェスカはフローレイティア侯爵家のたった1人の跡継ぎよ。」


「跡目を失ったフローレイティア侯爵家は、当然ながら、そのままでは消滅してまうわ。」


「彼の家の領地から分配される我が国家への納税率は、我が国の2割にも上る割合なのよ。」


「それが消え去ると言う事は、我が国に取って非常に困る事では無いかしら?」


「それは・・・・・・」


 これには流石のレンディでも押し黙ってしまう。


 まだまだ皇帝としては、幼く若い女帝たるミランダに指摘され事にしては、確かに的を射て居る正論だったのだ。


 私情で動くかも知れない地方貴族の当主は、その実は自国に多大なる貢献をして居る家柄で、跡継ぎが1人しか居ない状態だと言われて、迂闊な事が言えないのであった。


「シェスカが生きて居れば、紅葉さまを中心に反撃の一軍と成り得る望みを残せるわ。」


「万が一、我が国の軍が敗れたとしても、フローレイティア輸送商船艦隊と残存オローシャ帝国軍が合わされば、まだまだ戦える。」


「陛下の仰られる事も、最もだと思います。」


「確かにフローレイティア侯爵家は、多大なる財力とこのユーラシナ大陸各地に拠点を多く有している大艦隊を有している貴族諸侯系の大商会。」


「コヨミ皇国への外交的配慮も入れても、助けるのには十分な理由と言えます。」


「こんな如何にも成らない戦で、彼女は失って良い命では無いわよ。」


「ですが、この戦に出て行く将兵は、何れも多くの命を失いましょう。」


「それに付いては皇帝である私の名に置いて、全責任を負います。」


「だから才が有り、国家と他国の繋がりの強いシェスカを助けてっ!」


「必ずや全力でっ!」


 ミランダに向って、礼を取って頭を下げたレンディは、直ぐに対ゾルモン要塞軍団戦に備えるべく行動を開始した。


 

 オローシャ帝国は、ダバード・ロード王国の女王であるアーヤに向けて緊急の使者を送る。



 サミットには参加出きないかも知れないと・・・・・・・・



 国家として詰みの状態に陥って居るオローシャ帝国。


 まさか、この使者を送った事が奇跡を起こす切っ掛けに成ろうとは、ミランダ達は、夢にも思わなかった。

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