179話 新たなる嵐の前触れ 7

 アースティア暦1000年・6月18日・午後13時30分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸・ユーラシナ大陸中央地域・シベリナ西部地方・パイプ・ライン大河・パイプ・ライン大河西部中央流域地方・オローシャ帝国・オローシャ帝国東方地域・サマーラ地方平原・サマーラ州皇帝直轄領・州都・モルディナ市・皇族専用宮殿城・サマーラ・モルディナ皇宮殿城にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 オローシャ帝国の若き女帝であるミランダ・ランティーは、ユーラシナ大陸の東の果て、遥か遠くの東シベリナ地方の沖合いに現われたと言う異界国家日本国。


 彼の国との国交締結を含む各種条約締結の話し合いを行うべく、その地域で開かれる事に成った国際会議である東京サミット(仮)に向うべく。


 東京サミット(仮)に参加を表明して居る西側諸国が集合場所として居るサマーラ州皇帝直轄領・州都モルディナ市へとやって来ていた。


 また、彼女と供に多くのオローシャ帝国の陸海空から成る魔導護衛魔導船団艦隊に守られ、皇帝専用の陸上魔導戦艦のシルバー・ウルフに乗り込んでやって来ていた。


 モルディナ市内の官舎や宿屋では、将兵や官僚達でごった返して居り、オローシャ帝国軍の基地では、一際目立って居る皇帝専用の陸上魔導戦艦のシルバー・ウルフが駐機して居た。


 その姿は豪華絢爛にして、その勇壮振りを市民達に取っては、ランティー皇室家が、この国の担い手にして、守り手であると言う威光を示して居り、その心を安心させても居たのであった。



 この地で同じく日本の東京へと向う事に成って居る西方諸国の反帝国国家群の首脳や大臣、国家元首代理の官僚とその各省庁の職員らと共に合流するべく、彼女は一週間前にサマーラ州皇帝直轄領・州都・モルディナ市に到着し、皇族専用の静養専用としても使われて居るサマーラ・モルディナ皇宮殿城へと到着して居た。




 さて、此処でオローシャ帝国の皇帝ミランダに付いて、簡単に説明して置こう。



 ミランダは若干16歳にして 皇帝の座に着いたのは、跡継ぎが少ない為だった。


 彼女が14歳の時に、先帝だった父親が病で先立ち、続けて母親である皇后が相次いで病死してしまう。


 長子の家系が彼女のみだったので、必然的に消去法で、即位を余儀無くされたが、その原因は両親が余りにも、子宝に恵まれず30代後半で娘1人しか出きなかった事である。



 悲しむ暇もなく、不幸にも戦乱の只中で即位した幼い女帝は、両親達が万が一に備えて、オローシャ帝国の皇室と国家の後見をエリノア・ドラグリア白龍大帝とアーヤ・シュチュ―ド女王に託して居た。


 この二人は地理的に近い国の元首であり、武に置いてはエリンを頼り、知と兵に置いてはアーヤを頼り、経済は東方諸国のシベリナ連合各国と西方諸国のリユッセル北欧同盟の二つを支えに、国を運営して居れば大丈夫と遺言書に書置きして有ったからである。



 その言葉通りに隣国のアーヤは、ミランダを実の妹の様に可愛がり、エリンは実の娘の様に扱い彼女を支えて居た。



 モルディナ市の北に位置するモルディナ城の皇室専用の部屋で、ミランダは此処最近の世界各地の動きに関する報告を受けて居た。


 特に最近の大きな動きとして、現在進行中である大きな戦いであるブラキュリオス湖・レジェンダリア諸島でのアルガス公国・アセリナ王国・日本国対ローラーナ帝国・グリクス地方軍団との武力衝突に付いてである。


 因みにドラグリア白龍大帝国の大帝エリンと供廻りの護衛たるドラグリア白龍大帝国軍・白竜騎士団らも参戦して居るが、公式には義勇軍扱いなのでドラグリア白龍大帝国の正規軍とは見なされて居なかった。


 だってエリンの気まぐれによる参戦だった故に、本国政府は物資は仕送りするが、正規軍としの参戦は体裁が宜しくない為、義勇軍とするとエリンには具申して居る。


 要するに、ドラグリア白龍大帝国政府としては、エリンには遊び歩いて居ないで早く帰って来てほしいと釘を刺されても居るのであった。


「ブラキュリオス湖・レジェンダリア諸島の戦いは、間も無く決着が付きそうなのね?」



 ミランダは幼い容姿で身長も155センチとやや低め。


 金髪のロングヘアーの愛らしい人形の様な姿をして居るので、オローシャ帝国内では絶大な人気を誇って居た。


その彼女に相対して話しているのは、レンディ・ファルルート。


 オローシャ帝国宰相で、メガネを掛けたツリ目で冷淡な口調で話す女性で、元々は幼い時にミランダに付けられた家庭教師であった。


 彼女はオローシャ帝国大学では、政治や経済関係の学部を専攻して居た。


 ミランダの皇帝就任に伴い閣僚人事を一新、一番近しい相談できる若い年の閣僚を就任させる為に、宰相としてレンディを指名したのであった。



「ダバード・ロード王国からの報せでは、そう成って居るわ。」


「だけど戦いの結果は終るまでは、楽観視は出きないぞ。」


「ニホン国に渡海した我が国の外交官たち等は、ニホン国の軍事力なら大丈夫だの一点張りだが、本当に安心して良いのかは、この目で確かめないと事には・・・・・・・」



「相変わらずレンディは、現実主義の冷静な思考して居るのね。心配性なのも考えものだと思うのだけど・・・・・・」


「あのアーヤお姉さまが、彼の国の信用とその真実の保障をして居る国なのよ。」


「あのお方は、ある意味、腹黒い所が有るので・・・・・・・・」


「はぁ、それを言われると流石の私でも、反論出きないわ・・・・・・・・」


「申し上げます。」


 二人の会話に入って来たのは、軍の伝令士官である。


「どうしたの?」


「はっ!我が国の国土南部の動きやローラーナ帝国・第四方面軍・東南方面制圧軍司令部要塞・ゾルモン要塞の情勢を探って居る我が国の諜報部からの緊急の報せです。」


「緊急だと?」


 レンディは、驚いた顔つきに成る。



 諜報部で皇帝や国の政府高官に報らされる国家的な危機に当たる緊急の案件など、この天然の要塞に囲まれ、冬将軍に守られているオローシャ帝国では、殆んど有り得ない。


 冬は水属性に属して居る氷と雪の精霊の活動が活発化するオローシャ地方は、秋の終わりから春先の終わりに掛けて、雪と氷に閉ざされた冬に成るのだ。


 従ってこの国に攻め入るには、春先から秋の初めに掛けて成し遂げなければ、地球世界でいう所で言えば、彼のナポレオンやヒトラー等がロシアに攻め込んだと同じ様な顛末と成るだろう。


 この二名の歴史上著名人である彼らが苦心して作り上げた精鋭の軍勢が、冬将軍と戦って同様に敗れる結果と成るのが、関の山と成り果てるのが確実だからだ。


「はい。ローラーナ帝国の東方への要である南方のゾルモン要塞軍団に、侵攻作戦計画と思わしき動きが在るとの事。」



「その目的は、如何やら我が国を攻め入る為の計画である可能性が、非常に高いと・・・・・・・・・」


「まっ、まさか・・・・ブラキュリオス湖・レジェンダリア諸島の戦いは、我が国に攻め入る為の囮か?」


 ゾルモン要塞軍団の動きに付いての報告を聞いたレンディは、少しはがり考えを巡らして考え、有る答えに行き着く。


「どう言う事なのレンディ?」



「はい。たった今報告された通り、ゾルモン要塞軍団が動くと成れば、その理由は二つほど想定されると思われます。」


「先ずは、西方のリユッセル北欧同盟諸国を攻めて居るローラーナ帝国・第一方面軍への後方支援。」


「又はかく乱作戦で有ると推察されます。」


「しかし、もう一つとして想定されるとすれば、彼の軍団は我がオローシャ帝国の動きを封じるか、叩き潰す為に備え置かれて居る軍勢なのです。」


「そして、東方諸国からの防衛と東方諸国への侵攻作戦の支援が目的とされて居ます」


「今は火山が休眠して居るかの如く、沈黙鎮座して居りますが、その軍勢は動かそうと思えば、何時でも進軍が可能と成って居ます。」



「ですが、元々彼の軍勢はと言うのは、その昔、東方への軍勢の補給物資の輸送経路の中継要塞の役目を担って居ました。」


「そんな歴史が在るゾルモン要塞軍団ですが、先にも説明をしましたが、今日では魔導戦艦隊の大艦隊が駐留しており、帝国本土を守る役目を与えられて居るのが主任務と成り果てて居ますが、ユーラシナ大陸東部地方・カリフア大陸・ユールッハ地方と何れの諸国であってもローラーナ帝国に取っては敵無しであるのです。」


「それ故に今まで出撃する理由が無かった為か、今日に至るまでゾルモン要塞軍団が動く気配がありませんでした。それが動くと言うのは、大規模な侵攻作戦計画を画策して居るのに違いありませんっ!!」


「それに付いての歴史講座は、貴女を含めた教育係りだった多く者から、散々叩き込まれて居るから十分、その事に付いては十分に理解して居るわ。」


「此処から本題です。」


「ブラキュリオス湖・レジェンダリア諸島の戦いを仕掛けさせたのは、ゾルモン要塞軍団ではないかと言う推論に、私は今の報告を聞いて気が付いたのです。」


「それって、豪く遠回りで回りくどい面倒な作戦を立てたものね。」


「そうですね。本来なら経費の無駄と切って捨てても可笑しくは無い、強引なやり方でしょう。」


「その強引な手口を仕掛けた理由は思い当たるかしら?」


「今の時点では、情報が少な過ぎて何とも言えないのが悔やまれる所です。」


「元々予定されて居た侵攻作戦なのか、それとも只の定期的な散発的な軍事行動なのか?」


「どれも推察の域を超えて居ませんので、何とも言い難い・・・・・・」


「だけれども、我が国を南部からの侵攻と成ると確か・・・・・・・」



 ミランダは、頭の中にオローシャの国土の地図を思い浮かべた。


 そして、敵の侵攻経路の予想を思い考えて行く。



「南から西へと抜けて行くパイプ・ライン大河の水路沿いを通り抜けた先が、ゾルモン要塞の在るゾルモン地方です。」


 そのゾルモン地方・ゾルモン内陸海を西へと進むとローラーナ帝国の有る海へと抜けて行く大河の水路と成って居るのだ。


「その北と成ると、平原や湿地帯、山脈と盆地内を一本道の街道と大河の通って居る我が国のジャンブロー平野のジャンブロー要塞基地。」


「此処をゾルモン要塞軍団が突破すれば、我が国は南部の玄関口とも言える所を取られ、強盗に家屋に押し入られたのも同然の状態に陥ってしまいます。」


「それは一大事だわ。」


「折角、遠方からの大勢のお客様方が、大事な会議に向う為に、此処に集まっていらっしゃる大事な時なのに・・・・・・・・・」


 サミット開催国、日本へと向う西方諸国の使節団が間も無く、このモルディナ市にやって来るのだ。


 そんな時に、強盗に押し入られましたなんて事態は、オローシャ帝国にとって、冗談じゃないし、堪った物ではないと叫ぶだろう。



「取り敢えず、アーヤお姉さまに、この事をお報せして援軍のお願いをさせて貰いまじょう。」



「ええっと、それからエリン様にも・・・・・・・・・」


 ミランダは先王の言い付け通りに、後見をして居る二人への援助の指示を出そうとする。



 だが、それは今現在の情勢下では叶わない物と成って居た。


「そのエリン様は、今はブラキュリオス湖・レジェンダリア諸島で戦の最中との情報が入って居ります。」


 そう、自由気まぐれなエリンは、ダバ派遣隊を視察と言う名の物見遊山旅に出て居たが、戦好きな性格も災いして、自らも加勢して居り、とても使者を送り付けても会ってくれそうに無い状態に有った。


「それにアーヤ陛下にお報せしても、ブラキュリオス湖・レジェンダリア諸島の緒戦で、大陽動作戦を展開したばかりです。」


「次にまともな軍事行動作戦を展開させるには、早くても秋頃で、それも1月の間だけが限界かと・・・・・・」



 更には兵の援兵を唯一出して貰えそうな隣国で、姉代わりであるアーヤは、東京へと行く前に、近隣地域のローラーナ帝国軍勢の大掃除をしてしまおうと、今はここぞとばかりに大きな賭けに出た。



 その結果、ローラーナ帝国東方の巨大な軍勢たるグリクス地方軍団は壊滅に追いやる事に成功する。


 それと引き換えにダバード・ロード王国は、数ヶ月間は大規模な軍事行動が起こせない状態と成ってしまって居る。


 何が良かったのかは、後々に成って検証をして見ないと分からない。


 だが、様々な事象が今現在のオローシャ帝国を滅亡の危機に晒す事態と成ってしまって居た。

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